演 題:当事者の《生きる力》を支える制度のありかた

―――さくら会の「進化する介護 ALSヘルパー養成講座」実践―――

分担研究者(研究協力者)氏名(所属): 清水哲郎1)

共同(協力)研究者 氏名(所属): 武藤香織2)、橋本操3)、○川口有美子4)

1)東北大学文学部、2)信州大学医学部、3)日本ALS協会、さくら会4)立命館大学大学院先端総合学術研究科院生、さくら会

◆ 本研究の背景

平成12年以降の度重なる介護施策改革で、ALS患者家族の在宅療養も柔軟な対応に迫られてきた。ただ、東京都では先駆的なALS患者らの努力によって当事者のエンパワメントが進んでいたので、情報交換やセルフヘルプなどの草の根ネットワークを活用した患者の在宅療養体制は何とか維持され現在に至っている。

◆ 研究の目的

本研究ではさくら会(ALS療養者、橋本操ら)によるヘルパー養成事業の実践の結果もたらされた利点/問題点と制度との関連性を明らかにし、新たな制度のありかたについて考察をおこなう。

◆ 調査対象

@東京都西北部在住のALS患者家族Aさくら会の日常生活支援従業者講座で資格取得し、ALS患者の在宅介護を始めたヘルパーや古くからALSの在宅介護に携わってきたベテランヘルパー、看護師らB地域の医療従事者C日本ALS協会の人々など

     方法

@ フィールド実験的なさくら会のヘルパー養成研修事業の約1年間に及ぶ実践記録と新人ヘルパーらの参与観察で得られた各データ(介護記録、サービス提供記録、ヘルパー研修レポート、ローテーション表など、)から問題点を抽出した。

A @を受けて必要に応じて上記の人々に聞き取り調査をおこないテープお越しをして逐語録を作成し、問題の所在を探りその原因を分析して解決方法を考察した。

◆ 分析と考察

都内在住のALS患者/家族が運営する基準該当事業所は「制度の隙間」を自力で埋める、いわば「吸引等医療的ケア問題」の受け皿として位置づけられ許可された。そして、彼らの必然かつ実験的な起業実践はALS患者でも自覚的に自立を目指せば自力救済も射程に入ることを証明しつつある。

しかし、一方では依然として困難ケースは現存しており、総体としてALS患者の真の安定した在宅療養の姿はないに等しい。そのような状況において、ALS患者たちは難病者が抱え持つ諸問題を社会問題としてすべての人々と共有したいと欲しているのに、力を発揮すれば当事者性があたかも特殊技能のように認知され、かえって制度の隙間を自力で埋めることを社会から期待され、再び当事者固有の問題に回収されてしまっていることがわかった。また、このような社会の眼差し―やればできるじゃないか―は介護力のない患者や家族中心の介護を望みとする患者に対する社会的救済の機会を狭めてしまうことにもなる。 

     本発表のまとめ

@当事者のセルフアドボカシーによるヘルパーの養成と配置(紹介)が可能であることが証明された。

AALS患者の主体性(ケアに関する学習と自己管理)を認め、育てる制度の在り方が求められる。

BALS患者が望むのは主体的であると同時に常に他者(家族を含む社会)に暖かく見守られた生活であり、社会的救済として介護サービスの供給が安定的に保障される普遍的な制度が求められる。