“SAKURA MODEL“, a project of advancing the personal assistant system for PALS in TOKYO


2006/11/29 The presentation for ALLIED PROFESSIONALS’ FORUM, International Symposium on ALS/MND in YOKOHAMA,
BIOGRAPHY and ABSTRACT:
http://homepage2.nifty.com/ajikun/memo/apf2006yokohama.htm


The International Symposium and International Alliance of ALS/MND Associations will be holding a one-day Allied Professionals’ Forum in Yokohama on 29 November 2006. This seminar is specifically for allied health and social care professionals, and will be held between the International Alliance meeting (27-28 November) and International Symposium (30 November - 2 December).


日本語版

「サクラモデル」東京都のALS療養者によるパーソナルアシスタンスシステムの構築

 

1、みなさんこんにちは。川口有美子と申します。日本ALS協会とNPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会で支援活動をしています。このたびは貴重な発表の機会をいただき、大変に名誉なことで、アライアンスのAPFプログラム委員の皆様には心から感謝申し上げます。


2、私は、これから東京都内に在住のALSの患者家族が、どの国においても使いにくいと言われる既存のコミュニティケアの制度をどのように利用し、私たちが「サクラモデル」と命名いたしましたような、利用者主体のケアシステムとして再構築し利用してきたかお話いたします
ここ(スライド)に見えます二人の女性患者さん(高井綾子さんと橋本操さん)。



この方たちはもう何年も素人の有償ボランティアによるケアで在宅療養をしてきました。今では彼女や家族はそれぞれ自分の介護派遣会社(高井さんはビタミンスタジオ、橋本操さんは在宅介護支援さくら会)の経営者です。そして自分たちで探した無資格の者に自分のケアを教え、その上でヘルパーの資格を取得させ、他のALSの患者にも派遣したり紹介をしたりしてきました。この方法はあっという間に近隣の患者家族に伝わりました。そして、私がこれから「サクラモデル」と呼ぶ、当事者主体の地域ケアシステムへと進みました

会場のみなさんもよくご存知のように、「桜」は日本の国花で、私の所属するNPO法人さくら会の「さくら」でもあります。桜の花は毎春必ず同じように美しく咲き誇るので、長期療養中の病人にとっては復活の象徴とも言えるのですが、同時にその散り際の潔さが、日本人の死生観に合っているという面もあります

日本では4月上旬、親族友人たちが集まって桜の花の下で、桜花を愛でる宴席をします。これは「お花見」と呼ばれ、日本特有の年中行事です。特にALS患者や家族にとっては、長い冬の後の春の訪れを表象する行事です。外出もお花見を境に計画されたりします。私はこのようなさくらの華やかなイメージを採用し、ALS患者の潜在能力を開花させて欲しいとの願いもあり、このたび患者が主体的な役割を務めるケアシステムをサクラモデルと命名しました。私たちはこのシステムを日本のみならず他の国々にも広めたいと思っています。

3、まず、最初に本報告で使いますいくつかの言葉について、説明申し上げます。PALSとは、Patient of ALS,あるいはPerson with ALSの略語です。皆さんにはなじみの言葉かもしれません。Personal assistant=パーソナルアシスタントは患者さんに一対一で長時間滞在して介護するケアギバー(介護者)のことです。彼らは最初は無資格でまったくのケアの素人ですが、PALSと家族によって個別にトレーニングされますので、じきに素晴らしい介護者に成長します。サクラモデルはこのように、当事者が中心的役割を果たすシステムで、介護者は利用者であるPALSによって直接指導されます。患者の個別性重視でオーダーメイドのトレーニングを利用する患者・家族、そして地域の医療専門職により、介護の現場で施されます。また同時にサクラモデルでは、そのように育てた介護者を自分の会社に登録し、制度のヘルパーとして派遣したり、自分でも利用したりするために、事業所の設立も支援していますので、当事者によるビジネスモデルでもあります

4、この図は、サクラモデルを説明したものです。



日本における在宅療養でPALSは、2006年現在大まかにふたつの公的なケアシ ステムを利用しています
。ひとつは福祉制度によるコミュニティケアで、国が認定したヘルパーが地域の介護派遣事業所を通じて派遣されるシステムです。しかし、これは利用者よりも事業所本位のシステムになりやすく、ALSで呼吸器を利用して いる人にとってニーズの高いケア、気管からの吸引を実施する事業所は大変に少ないという現状があります。
また土日祝日は休業する事業者が多く、これは家族介護者のニーズにもあっていません。また、もう一方は医療保険により派遣される 医療プロフェッショナルによるケアです。これは医療保険でカバーされるため、安く看護師のケアを受けることができますが、地域の訪問看護ステーションで働く看護師がまったく足りないので、派遣を依頼しても断られてしまったりしますし、また医療専門職による長時間滞在型のケアは国が医療費削減を目指す折からコスト面においてもあまり現実的ではありません。また、PAの仕事は家族介護者がおこなってきた、手足口の代行を行うものです。これは医療の専門家である看護師の仕事ではありません。
 患者の生存をSOLレベルを支える医療があってこそ、実現可能になるPAのシステムですが、たとえば体圧による身体の痛みをそっと解除したり、かゆいところをすぐにかける、長時間の見守りによる安心感など、患者の尊厳とQOLを高めるために、PAのケアはもっとも必要なケアです。

 サクラモデルでは、そのようなケアを提供しない一般の事業所を利用しない代わりに、患者家族が自分で事業所を設立し経営することを推進してきました。そうすれば事業運営費は直接自治体から現金で支給されることになります。それで自分のニーズに見合った吸引などの医療的ケアや、マスターするまでに相当時間かかるコミュニケーション補助を行うヘルパーを自分で育 て、自分や介護者のいない患者に派遣することが可能になったのです。

5、 

6、これは東京在住の加藤さんの一週間のケアプランです。




 彼は2000年に呼吸器を利用しだし、現在まで妻と息子と同居していますが、彼の妻は家業があり日中働いていますので、彼のケアはできません。 しかし、彼は3つの制度を絶妙なバランスで利用することにより、ラウンドクロックケア(24時間ケア)を実現しています。そのうちPAは、家族の代理として、寝返りや吸引やトイレの介助、コミュニケー ションの補助、コンピューターの設置など多様なサービスを提供しています。

7、加藤さんのように、ALS患者もPAによるケアシステムを利用するようになると、たくさんのPAを養成する必要がでてきます。そこでこのようなPAのトレーニングと、資格取得にための養成機関として、NPO法人さくら会では、「進化する介護」という名称のパーソナルアシスタント養成研修講座をおこなってきました。このコースは今も毎月行われており、研修内容は9時間の座学と11時間のOJTに分かれています。9時間の講義では、意思伝達の方法、移動介護の方法、人工呼吸器の仕組み, 疾病や障害の特徴, 衛生、経管栄養、吸引手技、障害者制度、生命倫理、業務上の倫理、エンパワメントの方法などを学び、11時間の実習では実際にケアを行う利用者の自宅で、吸引やコミュニケーションの実技を訪問看護師や医師、家族やPAKS本人に教えてもらいます。費用は、さくら会の会員には1万2千円、非会員には1万7千円。講師は地元の医療専門職のほか、患者家族など在宅療養の当事者や、実際にALSのケアをおこなっている介護専門職、難病に関する研究者などがあたっています。
2006年11月までに、受講生460名が研修課程を修了し、半数以上が都内近県のPALSの在宅で働いた経験を持ちます。(個々の就労期間については調査中)

8、さくら会の研修会を受講した研修生のテータがこれです。


 

 全体の4割以上を看護学生が占めています。当コースを受講している彼ら(彼女たち)は難病の在宅療養について学びたいとい う気持ちが強く、看護大学の教員の助言もあります。家族はこのような学生ヘルパーに対して彼らができる範囲のケアを要望し、ALSの介護を懇切丁寧に教えています。PALSは彼らのことを「自分が育てたヘルパー」と呼び、大学卒業と同時に病院や診療所に就職していく彼らを、誇らしく見送っています。そして、正規のナースや福祉職になった彼らの突然の訪問を大変に喜んでいます。
 このようにして、低コスト長時間滞在型の介護は、学生を中心にPAを大量に養成することで実現してきましたが、地域の医師や専門職、難病研究者の理解と協力が背景にあったことは言うまでもありません。

9、2006年9月、9名のPALSが他の全身性障害者の団体(TIL、要求者組合など)と都庁を訪れ、PAによる見守り制度の継続について交渉をしました。特にALSは入院先でも自分のケアに精通したPAの利用を認めて欲しいといいました。このように、サクラモデルの利用により、PAを自分の手足として利用することで、家族の都合に左右されない、自律的な生活を手に入れたPALSは自分の要求を直接的な行動として表現できるようになります。家族に頼らないケアに慣れると、外出も遠慮なくできるようになるので、自由に社会参加できるようになり、社会の一員としての自覚を新たにすることができます。障害者の自立生活運動の一翼を担うPALSも出現しています.




11、  現在、さくら会に研修委託し、実習の協力先に登録している事業所は都内近県に20箇所あります。そのうちPALSや家族介護者など当事者による経営8箇所。「進化する介護」の研修修了生を利用しているALS患者は30名の名簿を確認していますが、もっといるはずです。追跡調査の必要を感じています。           

12、  最後に、まとめます。

サクラモデルは以下の問題を解決する可能性があります。
・     家族がいない/家族に介護力が期待できないPALSのケア
・     24時間365日、途切れることない家族介護者の負担感
・     PALSや家族の長期療養にかかる経済的不安

サクラモデルは以下のようにケアの質を高めます。
・   PAシステムによる長時間の見守り介護の実現
・     社会的サポートの視点
・     PALSにダイレクトペイメントを実現
・     そして、自分で選んだ介護者の雇用を実現
・     地域の医療専門職のエンパワメント

サクラモデルを利用しているPALSは自分のケアの自己管理ができるとともに、次第に人生に対して前向きになるので、支援をする者にとっても達成感を感じる瞬間がたびたび訪れるようになります。これにより難治性疾患のケアに携わる専門職や支援者の無力感や負担感も解消されるようになります。また自立的な生活を手にした患者の口からは、周囲に対する感謝やねぎらいの言葉も出るようになります。

このようなシステムは東京だから実現したのだと言われることもありますが、そうではありません。
名古屋の藤本さんや秋田の松本さんも介護事業主です。北海道北見市のPALSも、障害者団体の支援を受けて、ただいま事業所開設に向けて準備中ですが、このような先進的なPALSの出現により、周囲のPALSも刺激を受け、自分にもできないはずはないと思うようになります。

 医療専門職や既存の難病支援ネットワークが、社会福祉の視点から行うべきことは、重点的な支援により、その地域でもっとも困難な事例を、他のPALSの手本になるような成功事例に変えることです。そしてALSの障害モデルとして生き抜く事例を地域にひとつ作れば、あとはほっておいても連鎖的に周囲の患者家族に広がっていくのが、ピアシステムの特徴ではないでしょうか。
 前述の橋本操さんや高井綾子さんが20年前に学生ヘルパーを利用しだした際に、実際に学生を集めたり行政と交渉をして必要な支援を引き出したり、学生にケアを指導したのは、日本ALS協会の理事SWや地域医療に熱心な看護職や診療所の医師でした。
 また、私が事業所を立ち上げる際にも、自治体に提出する申請書類の書き方を懇切丁寧に教えてくれたのは、地域の介護保険課の課長でした。障害者運動からはたくさんのヒントをいただきましたが、その情報や精神的なサポートは社会学者や障害者団体の事務局の人に与えられました。
 このように、専門家による十分な情報提供と継続的な励ましによって、PALSや家族介護者は生きる自信を取り戻し、PALSは自分のケアニーズを的確につかむことができるようになります。これは決して、専門家がPALSや家族を監視したり、教育的な指導者として素人を管理し、否定的な視線で上から眺めたり評価したり点数をつける、ということではありません。

 難病の支援は難民支援とほとんど同じ方法論によって組み立てることができます。PALSや家族に対する最初の関わり方や、重点的な支援の引き際などは、後者の支援をよく学ぶこと、すなわち難民や海外における貧困支援の歴史からもたくさんのヒントをもらうことができます。
 難病者は難民のように、一時的にアイデンティティを失い将来が見えず大変に不安に思うのですが、今の自分にとって何が必要かがわかれば、周囲に対して要求することができるようになります。これは、発症初期からの自律支援のための情報提供や患者会へのアクセスの保障が、難病告知やICと同時に大変に重要だということを示しています。しかし、そうやっても、PALSの要求の仕方が最初はどうしても不平不満を身近な支援者にぶつけるような所作になりがちで、それがトラブルの元となり、支援者を遠のかせてしまう原因にもなってしまいます。そのような時には患者会や先輩の患者家族のアドバイスや介入が必要になってきます。



13、ALSとは取り返しのつかない人生の終末なのでしょうか、
それとも、乗り越えることが可能な障害なのでしょうか。
私たちはパーソナルアシスタントを利用してきたPALSから多くを学べるでしょう。


これで私の報告を終わります。ご静聴ありがとうございました。


up:20061230
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