過失割合と道路交通法
一時停止について
過失割合は、道路交通法の規定による優先関係や弱者保護などを勘案して定まります。


【事故例】一時停止規制のある交差点における直進車同士の出合い頭の衝突事故(注)
<基本過失割合> A:の割合
@A同程度の速度 20 : 80
AA減速せず 減速 30 : 70
BA減速 減速せず 10 : 90
C一時停止後進入 40 : 60
A:一時停止の規制なし
:一時停止の規制あり

1.事故例の過失割合が適用されるケース

 事故例の過失割合(『別冊判例タイムズ』No.15・46図)は信号のない、同幅員または広路と狭路との交差点における直進車同士の出合い頭事故において、一方に一時停止規制がある場合に適用されます。また、一方に赤点滅、他方に黄点滅の信号がある交差点における直進車同士の出合い頭事故についても適用されます。
(注)『別冊判例タイムズ』No.15「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(平成9年・全訂3版)46図より引用。過失割合の決定に際して『別冊判例タイムズ』を参考として実務を行っています。

2.基本過失割合

 上記のように、ABそれぞれの減速の有無や一時停止履行の有無によって基本過失が決まりますので、減速の有無、一時停止履行の有無を必ず確認しましょう。
 ただし、図の@〜BはBの一時停止義務違反を前提とした基本過失割合です。
 一時停止義務違反を理由に、基本過失割合をさらに修正することのないよう注意しましょう。

ex.AB同程度の速度で交差点へ進入し、接触。Bに一時停止義務違反があった場合。
 ○…基本過失A20%:B80%
 ×…基本過失A20%:B80%にB一時停止義務違反で10%修正し、A10%:B90%

3.一時停止と減速
 一時停止規制とは?  一時停止の履行とは?

 道路交通法(以下道交法)第43条により、次のように定められています。
道交法第43条指定場所における一時停止)〉
 車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあっては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第36条第2項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
第36条交差点における他の車両等との関係等第2項
 車両等は、交通整理の行なわれていない交差点においては、その通行して いる道路が優先道路(道路標識等により優先道路として指定されているもの及 び当該交差点において当該道路における車両の通行を規制する道路標識等によ る中央線又は車両通行帯が設けられている道路をいう。以下同じ。)である場合を除き、交差道路が優先道路であるとき、又はその通行している道路の幅員よりも交差道路の幅員が明らかに広いものであるときは、当該交差道路を通行 する車両等の進行妨害をしてはならない。

1.標識がなく、停止線のみの場合も一時停止義務はあるか?

 一時停止義務の有無は「止まれ」の道路標識(規制標識)の有無によって決まりますので、標識の有無を必ず確認しましょう。
 一時停止の道路標識の設置は、都道府県の公安委員会が、道交法第4条の規定に基づく交通規制のために行います。「止まれ」の道路標識は「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令(以下標識令)」第3条・別表第2に定める規制標識に該当し、公安委員会によりこの標識が設置され、道交法第43条に定める一時停止義務が生じます。
 停止線(道路標示)については標識令第9条・別表第5に定める指示標示に該当し、一時停止の規制標識と併設された場合には、車両が一時停止すべき場所を指定する効力を持ちますが、一時停止規制の効力そのものは持ちません。公安委員会等での標識設置時に、一時停止の道路標識と道路標示については原則併設することとなっているものの、必ず併設しなけらばならないという規定はありません。
 公安委員会ではなく自治体などが設置する一時停止標識の場合は、道交法上の一時停止義務は生じませんが、個別事情の中で注意義務が加重されるケースはあり得ます。
 なお、「とまれ」「トマレ」「止マレ」などの路面に書かれた文字は、事故防止の観点から注意喚起のために書かれているものですが、標示についての法的な規定や規制力などはありません。
道交法第4条公安委員会の交通規制)〉
 都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、又は交通公害その他の道路の交通に起因する障害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、信号機又は道路標識等を設置し、及び管理して、交通整理、歩行者又は車両等の通行の禁止その他の道路における交通規制をすることができる。

2.「 一時停止しなければならない 」とは?

 「一時停止」の場合における停止は、その車両等の車輪の回転が完全に止まることを意味するものであり、完全に停止する前に加速した場合は、その車輪等の回転が止まっていないのであるから停止したとはいえません。
 車両等が停止線や交差点の側端を越えて停止した場合や停止線や交差点の側端の前でない相当手前で停止した場合などは、一時停止を履行したということにはなりません。完全に停止したのか、停止位置はどこか、詳細をよく確認しましょう。

3.「 交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない 」とは?

 「進行妨害」とは、道交法第2条第1項第22号より、「車両等が進行を継続し、又は始めた場合においては危険を防止するため他の車両等がその速度又は方向を急に変更しなければならないこととなるおそれがあるときに、その進行を継続し、又は始めること」 をいいます。したがって、交差道路の車両等が、急ハンドルや急ブレーキなどを用いなければならないこととなるおそれがあるとき、つまり、相互にかなりの近距離の位置関係にあるときに進行を継続したり、進行を始めるという、さしせまった妨害をいうものと解されます。
 交差点の形状などにより、停止線で停止したのでは左右の確認ができないときは、停止線で停止した後、さらに徐行発進しつつ左右の安全を確認しなければなりません。仮に停止線で止まっても、左右の安全確認を怠ったまたは確認が不十分であったため、交差道路を通行する車両の進行妨害をした場合は、その分基本過失において不利に扱われることになりますので、停止の有無だけでなく、安全確認の有無についてもよく確認しましょう。

 減速とは

 衝突の危険が具体的となった時点での速度を基準に考えます。つまり、衝突直前の急ブレーキによる減速はここでの「減速」には該当しません。
 法定の徐行の程度に達している必要はありませんが、当該道路の制限速度より明らかに減速していることを意味し、一般的に当該道路の規制速度の半分程度の速度に落とすことをいいます。

ex.40キロ制限道路では20キロ前後まで減速した場合はここでいう「減速」に該当しますが、40キロ制限道路を60キロで走行していた者が30キロに減速しただけでは「減速」にはあたりません。規制速度と走行速度の両方を必ず確認しましょう。