解雇について

解雇を含む労働契約の終了について検討する以前に、そもそも労働契約の性質について論ずる必要があろう。

労働契約とは使用者と労働者の合意に基づく契約である。労働契約の性質は、民法上の雇用契約に近いが、労働基準法等により大幅な修正が加えられている契約であるといえる。

この点、契約終了の局面から検討するならば、次のことが特徴として挙げられよう。すなわち、期間の定めのない契約の終了は、民法上一方的な意思表示により、いつでも契約の解除が認められることが原則であり(民法627条)、労働基準法、判例法理によって使用者からの契約終了には制限が加えられるという構造であるという点である。

※ ただし、労働契約の独自性に着目し、そもそも解雇権とは制限されているものであり、一定の理由があるときに限り解雇権の行使を可能ととらえる説もある。

本来、契約とは当事者双方を契約内容によって拘束することが原則であり、契約からの一方的離脱は許されない。例えば、いったん締結された契約から開放されるために、消費者法ではクーリングオフの規定等が設けられていることを想起されたい。これに対し、労働契約においては原則と例外の規定が逆となっており、原則として契約解除が容易になされ得るのである。

労働契約の終了に関する問題が生ずるのは、使用者からの契約終了の意思表示である解雇において顕著である。なぜなら、労働者は使用者からの賃金が生活の糧であり、予告なく賃金が途絶えることは憲法に保障される健康で文化的な最低限度の生活を営むことが困難となることを意味し、その影響は甚大となるからである。

そこで、様々な判例法理の積み重ねにより、解雇制限・整理解雇の要件の厳格化など労働者の保護が行われてきたのである。

しかし、現実には、退職勧奨・退職強要に見られるように、現行の労働法規の及ばないところで、労働者の働く権利が奪われている。

われわれは法の専門家として、解雇・退職を主とした労働法規について精通していなければならないのは勿論のこと、職場内で自ら希望しない「退職」を余儀なくされる労働者が多数存在するということを決して忘れてはならない。

労働者が使用者の精神的・経済的な圧力のもとで余儀なく退職届を提出した場合、使用者が労働者を事業場から追い出そうとする意図を具体化する行為があったこと、およびその行為と労働者の退職届との間に因果関係が認められるときは、労働者より使用者に対して損害賠償請求を行う余地もある(京都セクシャルハラスメント事件・京都地判H9.4.17)ので、今後、注視していくべき分野であろう。

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