クレジット過剰与信に関する考察

クレジット契約の3面構造

平成18年5月20日に札幌で行われたクレジット過剰与信対策会議主催の「第3回シンポジウムin札幌〜駄目だべよ、過剰与信〜」に参加し、改めてクレジット過剰与信について、いくつか考えるところがあったので報告する。

なお、ここでいうクレジット契約とは、消費者と販売店との売買契約や役務提供契約(以下「売買契約等」という)、消費者と信販会社との立替払契約、販売店と信販会社との加盟店契約からなる3面契約を複合的に総称していうものとする。クレジット契約の構造上それらが4面契約になる場合もあるがここでは割愛する。

加盟店管理責任

売買契約等がクーリングオフされたり、取り消されたりすると、消費者は既に支払いを受けた立替金について信販会社から返還される場合がある(いわゆる「赤伝処理」)。この場合、信販会社は、既に支払った立替金を販売店から取り戻すことによって損失を防ぐ構造になっている。(なお、現実には、キャンセル料等の手数料の問題も生じるが、ここでは考慮しない。)したがって、売買契約等が後に消費者契約法や特商法によって取り消されるような問題のある契約であっても、信販会社の損失につながらないことが多い。その結果、それら問題のある売買契約等は本質的には信販会社の関心事にはならないため、信販会社は販売店の行う売買契約等に関与せず、傍観者の立場でいることがある。だからこそ、後述のとおり行政通達等によって規制をし、信販会社も一定の責任を負うようにしなければならないのである。

唯一、販売店が倒産・行方不明等の事情により、信販会社が販売店から既に支払った立替金を取り戻すことができないときは、赤伝処理は行われないので、既払い金を返還するか否かは、信販会社に損失が発生することになる(既払い金の返還については後述する)。

一方、クレジット契約を利用することによって、販売店は、現金一括払いでは購入できない層が顧客となり得るし、さらに、自社割賦に比べ、信販会社から立替金が一括で支払われるため、キャッシュフローに余裕ができるという2重のメリットが生じることになる。

しかしながら、悪質な販売店がクレジット契約を利用すると、「名義貸し」や「空売り」を行なうというクレジット制度そのものを悪用されるおそれがあり、現に悪質な販売店が社会問題となる中、信販会社は販売店の管理を強化すべきであるとの通達が行政庁より多く出されてきた(昭和57年4月13日通達、昭和58年3月11日通達、平成4年5月26日通達、平成7年10月23日通達、平成14年5月15日通達、平成16年12月22日通達等)。

以上のとおり、クレジット契約の実態や行政通達等から、信販会社には、クレジットの構造的被害の発生を防止するため、加盟店の調査・監督義務があると考えられる(以下「加盟店管理責任」という)。しかし、加盟店管理責任は名文上の責任ではないため、その責任の存否に関しては司法判断に委ねなければならないのが現状である(大阪高裁平成16年4月16日判決―信販会社の加盟店管理義務違反も考慮して消費者の立替金支払義務を否定した事例、仙台地裁平成17年4月28日判決―クレジット契約を締結した事業者の立替金支払義務を信販会社の加盟店調査義務違反を理由に否定した事例、静岡地裁浜松支部平成17年7月11日判決―信販会社に加盟店調査管理義務違反について重大な落ち度があったとして一定の限度で既払金について不法行為責任を認めた事例、等)。

過剰与信

赤伝処理が行われる場合、売買契約等から生じるリスクを販売店が負担することになり、それらについて信販会社を基準に考えると、販売店が消費者の連帯保証人類似の機能を果たすことになる(いわゆる「二本の手綱」)。したがって、信販会社の与信は、消費者と同時に販売店に対し与信しているともいえる。さらに、消費者が破産する等の法的処理を行った場合でも、サラ金等の貸金と異なり、売買契約等の目的物につき所有権留保していることが多いため、貸倒れリスクは軽減される。そのため、信販会社の与信は、サラ金以上に過剰与信となる傾向にある。つまり、信販会社の過剰与信は、クレジット契約の構造上の問題であると考えることもできるのである。

今後、杜撰な過剰与信については、当該与信行為が不法行為を構成するとして、損害賠償の請求を検討すべきであろう。もちろん、信販会社には過剰与信防止義務が存在すると主張し、信販会社が当該義務に違反したという債務不履行構成を検討する余地もある。

既払い金返還請求

販売店が倒産・行方不明等の事情により、信販会社が既に支払った立替金を取り戻すことができない場合、法的に、消費者が信販会社に対し既払い金の返還を請求するためには、売買契約等に生じた抗弁事由を信販会社に主張するだけでは足りない。なぜなら、抗弁接続の根拠である割賦販売法30条の4による効果は、支払い停止までだからである。つまり、法的に、既払い金の返還を請求するためには、立替契約そのものを取り消すことか、もしくは信販会社に対し相当額の損害賠償請求をしなければならない。立替契約を取り消すには、消費者契約法もしくは民法の取り消し事由に該当するか、否かを検討することになる。

なお、販売店に対する売買契約等については、特商法に基づく取り消しの主張も検討も必要であるが、信販会社に対する立替金契約については、特商法は適用されない。特商法は取引類型及び指定商品制度をとっており、立替金契約は取引類型外だからである。

消費者契約法の適用については、同法5条を活用することにより、販売店担当者が媒介の委託を受けた第三者であるとの主張をすることになる。

なお、近時、消費者契約法に基づき、立替金契約を取り消すことを認めた裁判例として、小林簡裁平成18年3月22日判決(控訴審係属中)等がある。

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