カンナビス・カーニバル (Cannabis Carnival)について


【解説:佐藤哲彦】 欧州を中心に近年盛り上がりをみせているのが、カンナビス(マリファナ)自由化運動である。この場合の自由化とは二つの意味で 用いられることが多い。一つは正確には非犯罪化(decriminalization)であり、これは、違法と合法の中間にあるような方策である。つま り、原則的には違法なのだが、取締りレベルで公認するという方策。英国ではつい先頃、ロンドンのある地域の警察が公式に非犯罪化をアナウンスして話題に なった。これまでは一応調書までとっていたが、今回の措置で、それさえも止めることにしたという。もう一つは合法化(legalization)である。 これはまさに文字通り、カンナビスの使用が合法化されるということを意味している。最近ではスイスがこれを行い、話題になった(ただし居住者のみ合法 化)。

このような状況の中、今年(2001年)6月はじめ、ロンドンで行われたカンナビスの自由化を求めるお祭り(Cannabis Carnival March & Festival) は、雨が降ったにもかかわらず、昨年と同様の人出、30000人を記録した(主催者発表)。これに参加してみたので、ごく簡単にどのような様子か綴ってみ たい。

まずMarch、すなわちパレードの方は、Tube(地下鉄)のOval駅を出たところにあるKennington Parkで集合し、いくつかの山車やバンドなどとともに、徒歩で2時間ほどかけてFestivalの会場であるBrockwell Parkまで行進した(写真参照)。

雨だったので思ったより人出は少ない印象を受けたが、それでもたまに数人が(全員ではないところが笑える)「合法化しろ〜」などとシュプレヒコール を挙げつつ通りを、のんびり(あくまでのんびり)練り歩いた。普通のデモ行進と違うのは、おそらく多くの人が実際にカンナビスを吸いながら行進しているこ とだろう。先に述べたように、このCarnivalの一週間ほど前に、地元の警察署が非犯罪化を公式にアナウンスしており、各自がめいめい持ってきて大っ ぴらに吸っている。道端で、多少隠しながら(笑)巻いていたりもする。別に隠さなくてもいいのだろうけど、なんとなく習慣になっているのかもしれない。道 に沿った住宅から顔を出して、参加者にカンナビスを分けてもらう住人もいた。私はパレードをビデオ撮影していたのだが、撮っていたらニコニコしてご機嫌の 男性に大量のカンナビスを見せられ、「これ品が良いから買ってよ、今日は安くするし」とも言われた(笑)。国家公務員だから買いませんでしたけどね(国家 公務員には外国にいてもなぜか日本の法律が適用されます)。

確かにこれだけ大勢大っぴらに吸っていると手の出しようもないだろうし、さらにいえば、これは一種の人権運動なので、その点か らしても取締りは難しいかもしれない。この場合、人権運動、というのは、要するに個人の人権を尊重し、不当に厳しい処罰をやめるべきだという主張を基にし た運動のことを意味している。したがって、この運動は単なるカンナビス好き(笑)の次元だけでなく、より幅広い論点をも取り込んだものとなっている。

Festivalの会場であるBrockwell Parkでは、たくさんのテントでいろんな音楽をやっていたり、チャイを飲ませてくれるような出店もあったり、子供用の遊び場もいたるところにある。残念 ながら雨模様で、芝生の上でくつろいで、という感じではなかったが、それぞれのテントは雨やどりしつつ、楽しむ人たちで賑わっていた。中心となるのは、中 央に位置するステージ(写真参照)。ここでは、英国各地から集まったバンドが演奏していた。他にも、喫煙用具を売る店が出ていたり、定番(?)のレゲエ・ コーナーなどもあった。このような様子は、しかし、普通の音楽イベント(たとえば昨年度、英国ではLeedsで行われたLove Parade=ベルリンのLove Paradeの英国版)とほとんど変わらない。

先にも触れたように、この運動は、単にカンナビス好きという枠に留まらず、ヘンプ(麻)を加工する製品のマーケット拡大、医療用カンナビスの合法 化、そして人権運動など、さまざまな側面が合わさっている。その意味で、単一の社会運動とよりはむしろ、いくつかの社会運動の合流点として機能していなく もない。「いなくもない」というのは、確かにそのような形で展開している部分があり、それが運動を牽引しているのだが、その一方で参加者の中には明らか に、吸って楽しめればいいという部分を一番大事にしている人たちも多くいるからである。もちろんそれは非難されるべきものではなく、逆に、社会運動として 成功するためには、このような側面を見過ごしてはならないということであろう。

し かしある意味でコアの部分を構成している、そのようなアクティビストたちが集うスピーカーズ・テントは、数あるテントの中でも異色の真面目な(?)テント である。ここでは合法化を求める運動で有名な「Mr. Nice」をはじめ、アクティビスト達が演説(講演)を行っていた。そこでは英国の様子だけでなく、5月に行われた各国の運動の様子(英国だけ会場のコン ディションのせいで6月に延期になった)なども紹介されたりもした(東京のカ ンナビストの運動も言及された)。が、キマリ過ぎて大の字に寝ている聴衆もいた(笑)。

講演が一段落すると、ある女性が、ローリング・ペーパーをばらまき、「皆さん、巻いて下さい、一緒に吸いましょう」とかけ声を掛けた。そして次に は、巨大なジョイントが出てきて「吸いたいヤツは前に来い」ということになり(写真参照)、大勢並びだし、テント内が煙くて大変なことになってしまった (笑)。そこで、私は潮時かなと思ってこのテントを後にした。その後テントからは、サンバの演奏が聞こえてきた。

以上簡単に6月はじめに行われたCannabis Festivalを紹介した。ちなみに逮捕者はなかったと報じられた。今回参加して感じたのは、かなり前(1995年)に調査のために行ったオランダ・ア ムステルダムでのCannabis Cupと違って、非常にリアリスティックであったということである(当時の資料と調査記録の一部はある写真雑誌の記事に使用したが、帰国後に紹介する予 定)。Cannabis Cupは米国のHigh Timesが主宰してい るせいもあって、ヒッピー系の末裔みたいな運動だった(が、ここ数年はどうであるかは知らない)。そもそもCannabis Cupは今回のような運動とはかなり異なり、表向きはいわば「ききマリファナ大会(投票で一番良いコーヒーショップを決めるお祭り)」であるのだが、この あたりは主催者のお国柄が出て、非常に興味深いものがあるともいえるだろう。

(30th June 2001)


 【追記:佐藤哲彦】その後、カンナビスを含めたドラッグの合法化に関する議論が英国では盛んになっている。これは一つには、著名な調査ジャー ナリストであるNick DaviesによるGuardian(14th June 2001)のコラムが影響していると考えられる。そこでは、英国のドラッグ政策(アメリカ流の戦争型政策)が失敗であったことが具体的なエピソードととも に訴えられている。このコラム以降、ほぼ同内容のドキュメンタリーをChannel4が放映したり、各紙が合法化についての記事を連日のように掲載するな ど、議論が盛んになってきたのである。また、現在英国では保守党(Tory)の党首を決める議論が盛んだが、その候補者を集めて政策などを質問し、議論す るBBC1のQuestion TimeというTVプログラムでは、フロアからカンナビス合法化をどう思うかという質問が出され、候補者の中には理解を示す意見も出た(が、もちろん、 ハード・ドラッグの入り口になるからダメだという、いかにも保守党議員らしい意見も出た)。いずれにしても、ここ最近カンナビスを含めたドラッグの合法化 はパブリック・イシューの一つとなっているのである。おそらく日本では、このような状況は報道もされないだろうけれども。

(9th July 2001)
【さらに追記:佐藤哲彦】さらにその後、カンナビスは、社会的危険度を示すドラッグのクラスを変えられて、事実上「非犯罪化」されたようである(2002 年英国ドラッグ政策要綱)。実際、2002年夏に会った使用者の一人は「もう今は使ってるだけなら逮捕されないので安心だ」と語った。ただし、マンチェス ターなどでは、コーヒーショップを開こうとして警察にお取り潰しにあっている事件などが起きており、オランダ流というわけにはいかないようである。
(30th Jan 2003)

業績一覧
雑文的領域

ア マゾンのドラッグ関連書籍

一般的でおすすめのドラッグ関連の映画      

総目次に戻る