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■APO Nikkor 240mm F9 True Story
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APO Nikkor 240mm F9 True Story
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すごさの成立
アポニッコール240mm F9。最小絞りはF128。
世の中には、すごい人がいる。
すごいというのは、他人がそのすごさを認めて初めてすごくなるわけで、
何がすごいか分かればすごいといえるわけだ。
この、カメラとかレンズが好きな人々のなかには、
やはりすごい人がいるわけで、
例えばこの世界で「ねこさん」といえば猫洞さん。
ドイツ語翻訳までこなす、本職は研究者なのだが、カメラがすごい。
ステレオニッコールとかレフレックスニッコール2000ミリ望遠レンズ
を個人で両方持っている人は日本でもいるかいないかのレベルだろう。
新聞社の報道機材はべつとして。
艦載用の双眼鏡コレクションとか、完全にいってしまっている。
このあたりは、分かりやすいすごさである。
この方にかかると、私がすごいと思うものが彼には普通で、
彼が自分ですごいというものは、私にはわからない。
「あきやん、これ。ほい」と手わたされても、まったく聞いたことも、
見るのもはじめてのカメラ・レンズなのだ。
ものごとは、普通にすごいことが重要であって、ほんとにすごいのは、
そのすごさが成立しないためにすごくないということになる。
彼のお道具拝見をするとき、私はいつも言う。
「ねこさん。これ、何がすごいの?」
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すごくはない普通の美しさ
アポニッコール240mm F9。
このレンズは、まったくすごくない。
たぶん一家に1本や2本転がっているかもしれない。
でも上の写真を見て、見る人がみると、たぶん少しすごいかもしれない。
レンズは写真製版用で、可視光線はもちろん近紫外線についても色収差を除去・補正した
完全なるアポクロマートレンズだ。
Nikon銘が入っているので、生産を終了する間近の1970年代の製品と思われる。
金属製のリアキャップ付きの状態で購入した。
レンズはやや濃い目のパープルコーテング。
53ミリネジ(ピッチ0.75)マウントの座金が付属している。
APO Nikkor 240mm F9
最小絞りF128 !!
4群4枚完全対称型
色収差補正波長域380〜750mμ
重量220g
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貴重なマウント座金
米国市場で中古品がよく流通しているこのクラスのレンズは、
撮影装置からレンズだけを手で持ってクルクル回して外したのだろう。
座金は装置本体に残したままだ。
6本のネジやボルトで止めてあるため、座金を外すのは手間がかかるのか。
それとも解体業者は、それほど座金が重要なパーツと思わないのかもしれない。
とも角、上の写真ではこの53ミリネジ(ピッチ0.75)マウントの座金が4枚写っている。
じつは苦労したのは、このレンズボード座金を探すことだった。
4枚とも日本光学製のオリジナルで新品だ。
非常に精緻な金属加工された座金は、うすいみどり色の質素な紙に包まれている。
必要な人は探す。でも、なかなか出てこない。
そういうものなのだ。
少しばかりすごいと思う。が、なんか書いていてチマチマした気分になってきた。
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趣味のおもしろさ
けっきょく、世間にわずかしか存在しないけど、
見つかったところでたいした値段でもない。
でも、お金を出したからといっても入手できるものではない。
そういうところが、おもしろいといえばおもしろいのか。
東京カメラ倶楽部の友人のある方は、
以前買ったライカM3オリーブモデルを売ったけど、
M3の黒ペイントは残してあると話していた。
M2の黒の方が数字的には台数が少ないと聞くけど、実際は数が多くかんじる。
M3の黒はやはり希少なのだろう。
でも、数の少ないM2やM3の黒でも首から下がっているのを見ると、
なにが希少なのか分からない。
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熱い視線にはよわい
この53ミリネジ(ピッチ0.75)マウントの座金を探していた理由は、
ほかの特殊用途ニッコールには座金がこのサイズのレンズが多いのだ。
座金さえあれば、たとえばFマウントにするアダプタもひかくてき実現しやすい。
オリジナルのため精度も最高。
このレンズは、めずらしく国内で入手した。
しかも、あの東京は首都圏で年に何回か開催される中古カメラ市でだ。
初日に行けず、土曜日に落穂拾いに行ったら、誰にも相手にされず待っていた。
もう1本、ワイドアングルアポニッコール210mm F8も出ていた。
ワイドアングルの方が希少で当時でも高価だったのだが、
ふつうのアポニッコールには、
オリジナルの縮緬塗装の金属製リアキャップが付いていたのだ。
当然キャップが付いている方をゲット。そういうものなのだ。
もう1本買ってもよいリーズナブルな値段だったが、
私が2本レンズを並べて品定めしていたら熱い視線を手元にかんじた。
ここはマニヤ同士ゆづりあいの気持ちで1本だけ求めた。
熱い視線の人は、すごい勢いで残されたワイドアングルアポニッコール210mm F8
を手にとり、こころの中でガッツポーズをしたようにみえた。
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レンズのためなら情けは
大きいバレルレンズも迫力だけど、そのままスケールダウンした手に乗る業務用レンズ
もかわいくてよい。
しかし。
しかし、あのとき無情にも、ワイドアングルアポニッコール210mm F8と
2本とも買っておけばよかったなあ。と、思うことしきり。
数年前のこの出来事いらい、ワイドアングルアポはその後一度も姿を現していない。
レンズのためなら情けは無用。苦労は買ってでもするな。
逃がしたサカナはなんとかと言うが、これは、この世界の鉄則なのです。
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