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■Fax-Ortho-NIKKOR 400mm F5.6 Huge Daimajin
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Fax-Ortho-NIKKOR 400mm F5.6, Sakura Party with Excellent Lens
The Huge Daimajin
Shipbuilding Lens
Big Dreaming
Nippon Kogaku
Sakura Party
Super Rare High End
Fax-Ortho-NIKKOR
400mm F5.6
You Go Melt Down
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幻の造船用ニッコール
造船用、つまり船舶を建造するために、専用ニッコールレンズが存在していたのをご存知だろうか。
船といってもボートではなく、60年代の造船ニッポン、大型タンカーの建造を支えたのが、
このファックス・オルソ・ニッコールのスーパー工業用レンズシリーズだ。
日本光学から3種類がリリースされていた。
造船とレンズが結びつかない方のために説明をすると、ファックス・オルソ・ニッコールは
造船用の鋼板罫書装置にマウントされていた超無歪レンズだ。
大型タンカーは鋼板でできている。
鋼板は設計図の通りに切り出して、大きな船舶に組み立てるわけだ。
巨大な船舶であるから、鋼板切り出しのための原図は原寸大というわけにはいかない。
10分の1程度のスケールで原図を作り、原図をセットした鋼板罫書装置で10倍に拡大投影する。
鋼板にはファックス・オルソ・ニッコールを通して原図が写し出され、
その線に従って手でなぞるわけだ。
原理的にはエンピツでなぞればよいが、現実には電子写真の技術を使って鋼板に焼き付けたという。
60年代の初頭には、
EPMシステム(電子罫書装置)が機器メーカーから相次いで開発・リリースされている。
レンズ製造だけは特別な設計・製造技術が必要なため、
ファックス・オルソ・ニッコールがこういった機器メーカーに供給されたと思われる。
EPMによる精度化技術が日本の造船パワーをさらに強化したことは言うまでもない。
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高価な超無歪レンズ
画角54度の広角レンズである。
40センチ×40センチの原図でも、
10倍に拡大するから4メートル×4メートルの非常に大きな出力を出す。
歪曲収差は10倍の拡大率で驚愕の0.00%だ。
つまり4メートルに拡大しても誤差は1ミリとない。
造船用の鋼板罫書装置というのはシビアな精度性能が要求されるため、
日本光学は特別なレンズ材料を使い特別に溶解した硝子を使用したと記録にある。
可視光線はもちろん350mμの紫外線域にいたるまで一様の透過率を持つ。
紫外線のみに感光する乳剤を使ってもOKということだ。
このあたりが、日本光学製スーパー工業用レンズのチャームポイントである。
当時のニコン産業用レンズ価格表を調べてみた。
1974年当時で650,000円である。
65万円とは、高いといえば高いが、安くないといえば安くはない。
当時の会社員の初任給とかで換算すると、現在の200万円くらいの感覚か。
ただし、現代でこのレンズを造るとすると、
とてもではないが高額なレンズになることは間違いない。
特殊ガラスが詰まったレンズブロックを
手作り同然の鏡胴に収め、専用の大型プロテクションフィルターまで造ったら、
尋常ではないことが理解できる。
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大魔神は重たい
ファックス・オルソ・ニッコール、通称、大魔神は重たい。
大魔神の性能をここで整理してみよう。
−焦点距離: 400mm
−最小絞り: F45
−レンズ構成: 4群6枚
−基準倍率: 10X
−画角: 54度
−色収差補正波長域: 350〜700mμ
−歪曲収差: 0.00%
−画像サイズ: 3200×3200mm (4525mmφ)
−原稿サイズ: 320×320mm (452.5mmφ)
−基準倍率における原稿から画像までの距離: 4840mm
−重量: 3850g
このレンズには専用のガラスプロテクションフィルターが用意されている。
幸運なことに、この極めてレアなフィルター付きでやってきた。
1枚1枚手作りのフィルターには、
for Fax-Ortho NIKKOR 400mm F5.6 との刻印が彫り込まれている。
フィルターを取り付けると4キロの重量となる。
大魔神は重たい。
曲率の大きい前玉はノンコーテングの潔さ。
冷たくてまるいレンズに風景が写る。
Fax-Ortho-NIKKOR 400mm F5.6, Ship Making Lens Dreaming
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大魔神救出劇
この非常に珍しいファックス・オルソ・ニッコール400mm F5.6は、
数奇な縁により救出できた。
絶滅稀少種ではあるが、その存在は知っていた。
ただし、個人の力で救出できるものではないと思っていた。
しかも、造船用のレンズだ。
70年代ならばともかく、西暦も2000年を超えると設備はとっくの昔に更新され、
時代の花形だった造船用の鋼板罫書装置も破壊され消えていたはずだった。
神奈川県は相模原市の守屋さんから、緊急の連絡をいただいたときには、まず驚いた。
ファックス・オルソ・ニッコール400mm F5.6が市場に出たという。
守屋さんはAPO Nikkor 760mm F11やAPO Nikkor 610mm F11などの極超大型レンズを使いこなす、
この世界では知られた方だが、
その守屋さんをもって「分からないレンズが出ている」ということだった。
「このようなレンズに手を出すのは貴殿しかいないだろうから」との、
嬉しい情報提供だった。
売りに出された方も、大きくて重くて珍しそうなレンズなので
部屋のインテリアにどうか、とのお話だった。
鋼板罫書装置用の超無歪レンズがインテリアに置かれている風景も、
それはそれで立派なことだが、ここはだいじに捕獲してあげて、
桜の日本の情景を見せてあげるのが正しい作法ではないかと思想し、
私はいくばくかの資金により、
ザ・ファックス・オルソ・ニッコール400mm F5.6を迎えた。
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日本光学の川田さん
世界的にも珍しい産業用ニッコールレンズコレクションのよき理解者が、
ニコンファンなら誰でも知っている日本光学の川田さんだ。
日本光学の川田さんは、
ニコン本社にも残っていないこれらの資料を唯一探索されている方だ。
私のウルトラマイクロニッコールコレクションも、
川田さんの誰も見向きもしなかった資料探索がなかったら成立していない。
何種類かの資料とともに、
ファックス・オルソ・ニッコール400mm F5.6の詳細スペック、用途説明、
そして幻のレンズ構成図、詳細寸法図面が川田さんから送られてきた。
ニコン75年史の本体、および付録の資料集には、
ファックス・オルソのフの字も出てこない。
造船ニッポンの一時代を支えた名レンズを忘れてしまうようでは困る。
ここで、しっかりとWeb空間上に記録しなくてはいけない。
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桜は花見の宴日本
むかしから使っているデイパックに、
ファックス・オルソ・ニッコール400mm F5.6を
詰めて桜を見に行った。
ボーリングのボールを背負っているような、少々アバンギャルドな気分だ。
桜木は日本である。
日本は桜木だ。
そういうことだ。
完結する様式美は、桜の下で酒ということになるが、
愛用の高級ウイスキイでも詩情はきこえる。
造船所の鋼板罫書装置で冷たい鉄を見ていたファックス・オルソ・ニッコール400mm F5.6だが、
桜を見て、言った。
「生きていてよかった」
鉄しか見ない人生もあるが、
桜を見せたい人生もある。
大魔神はだまり、桜木の下を離れようとはしなかった。
鉄を見つづけた大魔神が、自分は日本人であることに気がついた瞬間だった。
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コレクターズノート
幻の造船用ニッコールであるファックス・オルソ・ニッコールは、
日本光学から3種類がリリースされていた。
以下の3種類である。
−Fax-Ortho-NIKKOR 250mm F5.6 (重量900g)
−Fax-Ortho-NIKKOR 400mm F5.6 (重量3850g)
−Fax-Ortho-NIKKOR 500mm F5.6 (重量6000g)
いずれも同じような外観だ。
重量に注目。
とにかく重くて大きいレンズだ。
なお、似たようなレンズで、ファックス・ニッコールがある。
これは事務用複写機に搭載されていたレンズで、比較的ポピュラーである。
サイズも小さい。
海外のショップなどから、商品リストだけからオーダーする場合には注意が必要だ。
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大型カメラにも最高の組合せ
日本光学の資料によると、
投影用の目的のほかに、縮小用、
つまり写真撮影用のカメラに搭載して最高の性能が得られるという。
重量級のレンズだけに、堅牢なレンズボードに取り付ける必要があるが、
夢の超無歪レンズを向けた風景には花が咲くだろう。
人物に向ければ寿命が延びる。
生き延びたレンズの力はすごいのだ。
大魔神は現代も生き続ける。
Fax-Ortho-NIKKOR 400mm F5.6 Huge Daimajin, Under the Sakura Sky
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Copyright Akiyama Michio, Tokyo Japan 2002
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