■COM-Nikkor 37mm F1.4 Super Recording Lens

COM-Nikkor 37mm F1.4 Super Recording Lens with NAGRA PL-L

COM-Nikkor 37mm F1.4 Super Recording Lens with NAGRA PL-L

Dear Stefan Kudelski,

Your NAGRA
Recording System is Great!

Do You Know
the Limited Super
Recording Lens?

Yes!
Super Recording-Nikkor
COM-Nikkor
37mm F1.4

COMニッコール37mm F1.4

この写真を見て驚いた方は、かなりの日本光学エンスージアストだ。
世界で初めてWeb公開の画像だ。
全世界20億7,300万のWebページを検索した限りでは、 このレンズについての画像はもちろん情報も公開されていない。

長い間探していたレンズだった。
com-nikkorでインターネットを検索してみると分かるが、 COMは一般すぎる言葉ということで検索のキーワードにならない。
したがって、非常に情報が得にくいレンズなのだ。

ナグラのような金属芸術

古くて新しいナグラの真空管アンプを通して、 ザ・バンドの「ザ・ラストワルツ」を聴いているのは、 COMニッコール37mm F1.4である。
精緻な金属の質感と究極の完成度はスイスメイド・ナグラの存在理由だ。

その金属の質感そのままに、アルミ色の絞りリングが、 カチリ、カチリと小気味よいクリック感で動く。
小さいが重たい鏡胴には、COM-NIKKOR 1:1.4 f=37mm M=1/8 800505 Nikon と刻印されている。
日本光学のレンズにしては珍しく、ロッコールグリーンのコーテングだ。
手に冷たいレンズである。

クロームめっきされたライカスクリューマウントの仕上がり。
リアキャップは金属削り出しの手作り品である。
なにもここまで丁寧に仕事しなくてもいいのではないかと思うが、 当時の日本光学製である。プライドが許さなかったのだろう。

もっとすごいのは、40.5mm径のプラスチック製レンズキャップだ。
ごくふつうのレンズキャップに見えるが、 なんとキャップの外周が旋盤加工してあり、 鋭角をもって精密な仕上げをしているのだ。
レンズ鏡胴にピタリ合う。
きっと後年、誰かが気が付いてくれるだろうと、 密やかな期待を込めて旋盤を廻した青年もしくは おじさんがいたはずだ。
私は認めたよ。あんたの仕事を。

何者かこのレンズは

COMとは、Computer Output Microfilmingの略称であり、 電子計算機から取り出される大量の情報を、高速度で直接マイクロフィルムに記録して分類、 保管、輸送、検索、再生等を容易にしようとするものです、 と日本光学は説明している。
CRT(陰極線管)の蛍光面上に表示された情報を マイクロフィルムに縮小撮影するための大口径比、高解像度レンズである。

1960年代後期から70年代初頭。
汎用機でいえばFACOM 230-60から230-75の時代か。
今考えると信じられないことだが、 FACOM 230-75の外観は木目調のキャビネットだった。
タタミ一畳くらいの大型の操作パネルには、 びっしりとランプとトグルスイッチが埋め込まれていた。
空前の8進数マシンが動き出すと、 この世のものとは思えない美しくランプが高速点滅し、 まるでSF映画に出てくる電子頭脳のようだった。
この時代を境に、コンピューターの外観はただの箱になってしまうが。

COMニッコール37mm F1.4は、 当時のデジタル電子計算機のプアな表示装置画面をトレースするのに使われたのだ。
表示管に浮かび上がるみどり色の文字列をマイクロフィルムに撮影した。
感光感度の低いマイクロフィルムには、 開放値F1.4の明るい高速超高解像度レンズが必要だったのだろう。

仕様

レンズの保護とほぼ同じ時期に、 ロサンゼルスからCOMニッコールの英語版資料が届いた。
日本で発行されたレンズ資料では見出せなかった レンズ構成図などの情報も含まれるが、概要をまとめてみたい。

−焦点距離: 37.2mm
−最小絞り: F8
−レンズ構成: 6群8枚
−基準倍率: 1/8X
−画角: 20度45分
−色収差補正波長域: 400〜650nm
−歪曲収差: +0.07%
−画像サイズ: 15mmφ
−原稿サイズ: 120mmφ
−基準倍率における原稿から画像までの距離: 351mm
−重量: 300g

ザ・ラストワルツ

このレンズはカリフォルニア州はベンチュラで出土し、 ニューヨーク経由で日本に帰ってきた。
残念ながら日本では、もう絶滅したレンズである。1本も存在しない。
しかしまだ、海外ならばひっそりと生きている可能性はある。
まだ遅くはない。全世界から絶滅する前に救い出さなくてはならない。

ザ・ラストワルツは終焉ではなく、過去を見直した新しい創造がテーマだ。
ナグラのオープンリール・テープ録音機でしか聴こえない音があると、 かたくなに磁気録音テープにこだわる人たちもいる。
精密な音が音楽かと問い詰める人たちだ。

非日常的な選択は、大人の特権だ。
たった1本のスーパーレンズで幸せな気分になれるのだったら、 安いものだ。

レンズから音楽が聴こえてくる。
それはそれで、そういうものなのである。

新品デッドストック

下の写真には、コレクター用語でいうところの、 新品元箱付きの姿である。
ニッコールゴールドの紙のハコには、 IBM電動タイプライターの活字でレンズ名が打ってある。
印刷ではないのがキメだ。
発泡スチロールの梱包材で固め、 ビニール袋にはスポンジのクッションと、 ニコンシリカゲルがレンズをキープしている。

これはこれで、こういうものなのである。

High Speed Recording-Nikkor, COM-Nikkor 37mm F1.4 Lens New in Box

High Speed Recording-Nikkor, COM-Nikkor 37mm F1.4 Lens New in Box

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Copyright Akiyama Michio, Tokyo Japan 2002