|
■Printing Nikkor 150mm F2.8 Optical Fantasy
|
Printing Nikkor 150mm F2.8 Camellia Red Garden
Pure Apochromat
Heavy Macro Lens
Printing Nikkor
150mm F2.8
Optical Fantasy
Camellia Red Garden
●
カメリアレッドな風景を曳く
植物園。人影なし。山茶花元気。
という文字を不安定に並べると、もうこれで完結してしまうが、それはそれで、
きょうはベローズユニットを載せた三脚を立てたことだし、
自由に咲くピンク色の山茶花の下で小春日和という音も空にみえたことだし、
レンズの話でもしてみたい気分。
山茶花の花びらがびっしり落ちている。
ピンク色の花の照り返しが鏡胴に写るのは、
プリンティングニッコール150mm F2.8だ。
カタログの表記では、プリンティング・ニッコールとなっているが、
ここはプリンティングニッコールと書いてみる。
●
プリンティングニッコール
プリンティングニッコールとは耳慣れない名前かもしれないが、
きわめて少ない特殊用途ニッコールのなかの生き残りのひとつである。
プリンティングニッコールがデビューしたのは、昭和43年(1968年)だった。
75mm F2.8、95mm F2.8、105mm F2.8、150mm F2.8の4本だ。
この年は一眼レフカメラ用のニッコールでも個性的なレンズが登場している。
特殊な魚眼レンズOP-Fish Eye 10mm F5.6、
シフトレンズのPC 35mm F2.8、それに超広角レンズはUD20mm F3.5だ。
プリンティングニッコールは、
劇場映画フィルムのオプチカルプリント専用の完全アポクロマートレンズである。
おなじアポクロマートでも、
非常に大きな拡大率となる劇場映画用フィルムのプリントでは、
ごくわずかな色のにじみさえも許されない完全な色収差除去が求められる。
極限の解像度と歪曲収差・色収差の完全除去を実現した超ニュートラル・マクロレンズが、
このプリンティングニッコールシリーズだ。
ニコンのアナウンスによると、
映画フィルムのオプチカルプリント用として開発したレンズではあるが、
産業分野における微細なパターンの検査・
計測などの高精細画像の撮像用に最適であると公表している。
現行製品で唯一アポクロマートであることと、
歪曲収差が基準倍率で完全な無収差(0%)である点を宣言しているレンズに注目したい。
EDガラスを利用して各種収差を補正する設計技術を、
プリンティングニッコールに採用していることはよく知られている。
Bellows PB-4 Make the Complete Operation with Printing Nikkor 150mm F2.8
●
ゴージャスな限界性能
プリンティングニッコールはこのサイトで画像を公開している第一世代と、
鏡胴デザインがシンプルとなり軽量化が図られた第二世代のレンズがある。
第一世代の詳しい仕様が掲載された資料が手元にないので、
この点が明確な第二世代のレンズから性能を探ってみよう。
Printing Nikkor 150mm F2.8A
−焦点距離: 149.8mm
−最小絞り: F11
−レンズ構成: 6群14枚
−基準倍率: 1/1X
−画角: 16度 43分
−色収差補正波長域: 400〜800nm
−歪曲収差: 0.0000000000% (1/1X)
−解像力: 240本/mm (中心、1/1X), 170本/mm (88mmφ、1/1X)
−画像サイズ: 88mmφ
−原稿サイズ: 88mmφ
−基準倍率における原稿から画像までの距離: 559.2mm
−重量: 1,050g
−価格: 865,700円(受注生産、1994.04.01)
さらに、ほかのラインナップについても、このさいだから掲載しておきたい。
備えあれば憂いなし、釣られてやってくる可能性も無しとはいえないわけだから。
なお、2002年12月現在、150mm F2.8Aは製造中止となっている。
ほかの2本のラインナップも現在の価格が未確認だが、
参考に最後の価格表から調べてみた。
Printing Nikkor 105mm F2.8A
−焦点距離: 103.9mm
−最小絞り: F11
−レンズ構成: 6群14枚
−基準倍率: 1/1X
−画角: 16度 25分
−色収差補正波長域: 400〜800nm
−歪曲収差: 0.0000000000% (1/1X)
−解像力: 240本/mm (中心、1/1X), 180本/mm (60mmφ、1/1X)
−画像サイズ: 60mmφ
−原稿サイズ: 60mmφ
−基準倍率における原稿から画像までの距離: 388mm
−重量: 375g
−価格: 550,000円(受注生産、1994.04.01)
Printing Nikkor 95mm F2.8A
−焦点距離: 95.0mm
−最小絞り: F11
−レンズ構成: 6群14枚
−基準倍率: 1/2X
−画角: 16度 50分
−色収差補正波長域: 400〜800nm
−歪曲収差: 0.0000000000% (1/2X)
−解像力: 320本/mm (中心、1/2X), 250本/mm (32mmφ、1/2X)
−画像サイズ: 32mmφ
−原稿サイズ: 64mmφ
−基準倍率における原稿から画像までの距離: 349.9mm
−重量: 345g
−価格: 502,000円(受注生産、1994.04.01)
|
|
Printing Nikkor 150mm F2.8 and Original Blue Box
元箱は青いデザインの紙製ボックス。
大ぶりの箱にゆったりと格納されている。
製品検査証はM. Hirao (平尾 松男氏) の直筆サイン入りだ。
|
●
撮影作法
プリンティングニッコール150mm F2.8のフィルターサイズは62mmである。
また、レンズの最後尾が同様の62mmネジになっている。
このため、62mm径レンズ用のBR-5リバースリングと
52mm径レンズのリバースリングをリンクすることで
きわめて簡単で確実なF-マウントが完成する。
|
|
Nikon BR-5 Ring and BR-2 Ring
もちろん現行製品のアダプターである。
本来の機能はレンズをリバースしてベローズなどに取り付けるときに使う。
アタッチメントサイズが62mmのBR-5リングと、
52mmのBR-2リングを用意する。
|
|
|
Printing Nikkor 150mm F2.8 and BR-5 + BR-2 + M2 Ring
いずれも純正のニコン製リングを3個リンクして、
ガッシリとF-マウントレンズが完成する。
ベローズにマウントする場合には、M2リングはなくてもよい。
|
●
豊穣の驚異的マクロ映像
このレンズを装着したニコン一眼レフカメラで、
ファインダーをはじめて覗いたときの感動が忘れられない。
驚異的に鮮明で、豊穣の色再現のなかに、
なんとも艶やかなやわらかい光線を眺めることができる。
リバーサルフィルムには総天然色の優美な映像が定着した。
完全円形絞りのせいか、
それとも14枚もの特殊光学レンズを詰めたガラスブロックの存在のせいか、
なんともシャープな画像の背景に真綿のようなボケ具合はなんなのだ。
ほんとうにこれが工業用レンズなのか。
美しく、そして驚異的な豊穣のマクロ映像。
レンズを選ぶことでできる写真表現もあることが実感できる。
果物博物館の標本ケースには、古いラベルのコレクションがあった。
長い年月で脱色した白っぽくなった印刷は、桃の贈答用木箱に貼ったラベルのようだ。
"多摩川水蜜"と読める端正なデザインのプリントラベルコレクションに、
私はプリンティングニッコール150mm F2.8を置いた。
なぜかそうしないといけないような、
映画のシーンのような、
スローモーションで音のしない時間だったことは覚えている。
このレンズは映画だ。
Printing Nikkor and Collection of Printing Label in Fruit Museum
Back to RED BOOK NIKKOR
Copyright Akiyama Michio, Tokyo Japan 2002
|