水晶岳から真北に延びる尾根を歩き、黒部湖まで行きたいと思った。
かつて、ダイアモンドコースと呼ばれる立山室堂より、五色ヶ原、薬師岳を経て
新穂高温泉まで縦走したとき絶えず左側に見えていたあの山容は、以前に高天原
から見上げた時、夕陽にその山肌を照らしながら静かに聳えたっていたあの山塊である。
一度は行ってみたいと思いつつも昨年、時々利用している北アルプス総合案内所から
そのツアーのチャンスが舞い込んだ。
しかしパンフレットの日程をみると、最後の日は奥黒部ヒュッテから歩き始めその日の
うちに東京に帰ってしまうという、なんとも忙しいスケジュールだ。
何泊もして黒部の秘境の地に到着したかと思ったら、翌日はもう東京に帰っているのは
山旅への余韻というか、あまりにもあっけない。温泉にも入りたい。下山したら温泉だ。
ということで、この夏は夏休みの長さが合わない事も有り、実行は一年後という事にな
った。
日程 1998年8月19日
新宿 ⇒ 信濃大町 ⇒ (木炭バス) ⇒ エネルギー博物館・・・
途中からタクシー ⇒ 七倉 七倉山荘(泊)
8月20日
七倉山6:30 ⇒ タクシー ⇒ 高瀬ダム6:40・・・濁沢7:00・・・ブナ立尾根・・・烏帽子小屋11:40
・・・烏帽子岳・・・烏帽子小屋14:30(泊)
8月21日
烏帽子小屋5:27・・・野口五郎小屋8:30−9:00・・・野口五郎岳9:30・・・東沢乗越11:30昼食
・・・水晶小屋13:00−13:30・・・ワリモ分岐14:00・・・水晶小屋14:40(泊)
8月22日
水晶小屋5:38・・・水晶岳(黒岳)6:10−6:30・・・温泉沢分岐7:22−7:30・・・赤牛岳9:25−10:00
・・・2578 11:00・・・2356 12:00・・・クサリ場・・・読売新道・・・奥黒部ヒュッテ15:20(泊)
8月23日
奥黒部ヒュッテ7:00・・・平の渡し9:00−10:20・・・平の小屋11:00・・・ロッジ黒四14:30
・・・黒四ダム15:10 ⇒ 扇沢
⇒ 大町温泉(泊)
8月24日
大町温泉 ⇒ 信濃大町・・・大町山岳博物館・・・信濃大町 ⇒ 新宿
この夏は雨が長い、いつ出発すれば良いのか、天気予報と自分の天気予想とを考え合
わせて休みをとった。
夜行で行って翌朝から山登りでも良かったんだが、雨模様が悪かったため前日に
七倉山荘に電話して宿泊の予約を取り、そこで晴れ待ちの時間調整をもくろんだ。
信濃大町から七倉まで歩いて行こうと思いつつ、駅前の観光案内所で聞いてみると、
そのにいさん思いっきり目を丸くして、”歩いて七倉までですかぁー”と驚いた様子。
こちらは、タクシー代も高いし、今夜は登山口までだから30分間タクシーに乗って着い
ても夜まで暇で時間をつぶす方法を知らない。歩いていけばエネルギー博物館にも立ち
寄れるし、と言ったら、無料のバスが出ていると言う。パンフを見せてもらうと運良く20分
後に出発する便があった。
しかもこのバス、木炭バスで夏シーズンの期間の運行のみで、明後日には終了してしま
う観光用であった。これを利用すれば、歩く距離も半分になり時間も金も節約出来るので、
風体登山姿であるが、気分を観光客になりすまし乗車する事になった。
大町駅前の木炭バス
エネルギー博物館前(入館料¥400) 奥がこのバスの車庫
ここまで上り坂が続くため、もし途中でバスが止まったら乗客は降りて
後ろを押すことになる
エネルギー博物館を出て歩き始めて約1Kmほど進んだ時、後方から空の
タクシーがやってきた。
道はこのまま行くと七倉が終点の一本道で、迎えの車両かと思ったが、一度やり過ごし、
車の後方から手を上げたら運ちゃんバックミラーを見ていたのか、急停車した。
まだ歩き始めて少ししか立っていないのに、車を止めてしまって、いいのか悪いのか
当初のもくろみは、ここで中断した。(七倉まで料金は3500円位で、大町から乗車するよ
り半分で済んだ。)
車は七倉から高瀬ダムを通行するため認可の通った車両で、明日営業するために
登ってきたと言う。認可の車両は五台で、利用者は予約をするのが普通だ。
相乗りでも利用者が26人以上ともなると、折り返し戻って来るまで40分位は待たなくては
ならないからだ。
七倉山荘前の道 この先のトンネルが高瀬湖へ行く
七倉山への登山口は一旦このトンネルに入ってすぐ右側にある。
しかし、雨の長かった前日は、数名の人しか利用しなかったとの事。
また、この雨の影響で
烏帽子からの下山パーティーの内2名が鉄砲水で流され、女子学生1人が
いまだ見つかっていないらしい。
翌朝の高瀬湖 朝もやに覆われている。晴れていれば
ここから烏帽子岳を見上げることが出来る。
タクシーはここまで。またここを下山口としたら公衆電話が建物の中に
あるので、タクシーを呼ぶ事もできる。
ダムの端に烏帽子方面に行くトンネルがある。
トンネルの中
トンネルを出て少し行くと不動沢のつり橋がある。
高瀬ダムが出来た当時は高さが20m位あったらしいが、今では堆積した土砂で
3mもない。最近ここのトンネル出口に扉を設置したそうで、川の水があふれた時
に備えてトンネル内へ水が入らないようにしてある。(三俣山荘主人 伊藤さん談)
不動沢
不動岳と船窪岳の間の沢で地図で見るとロート状になっているため
一度大雨が降るとこのような状態になる。この先の濁沢も同じ風景だ。
ブナ立尾根
登山道は12箇所の休憩ポイントがありペースを乱す心配は無い
烏帽子小屋
右側にはこれから行く赤牛岳の稜線が見える。
何人かのパーティーは烏帽子岳に寄った後野口五郎小屋を目指し、
昼過ぎ後を発った。
烏帽子小屋の玄関
烏帽子小屋より高瀬湖を望む

ニセ烏帽子岳からみた烏帽子岳
烏帽子小屋からこれから行く三ッ岳と裏銀座方面
裏銀座の稜線
野口五郎小屋
野口五郎岳山頂
黒部五郎岳ほど石がゴロゴロしていることはなかった。
この先、猿2匹と遭遇
水晶小屋 この後小屋の前でブロッケンを見る。
内部は定員30人の狭さなのでザックは小屋の外に置く
内部は厨房のほか一部屋であるが大きな小屋より小さい小屋のほうが
経験的に寝心地はよい。
チョモランマに行かれた桑原さんがここの主人だ。
時間が余ったので、ワリモ岳の分岐まで往復する。
水晶小屋より野口五郎方面を振り返る。
水晶小屋より槍方面を望む
翌日の水晶岳山頂
水晶岳から薬師岳よりに沿って岩を下りながら40分ほどで
高天原温泉への分岐に出合う。
赤牛岳稜線を赤牛岳に向かう(正面が赤牛岳)
読売新道と呼ばれるこのコースは奥黒部ヒュッテまで水場がない。
約七時間の工程で、赤牛岳稜線は日陰を見つけることはまず困難
水1.5リットルと桃の缶詰で水分補給したが不足気味であった。
赤牛岳の頂上は薬師岳と相対して、展望がいい。
以前泊まったスゴ乗越小屋が見えた。
双眼鏡で見ると北薬師岳の斜面のハイマツの模様が、女の子が
笑っているような姿を発見した。双眼鏡と望遠レンズはこの山行
には持っていたほうが楽しみが増える。
これから行く方向をみると黒部湖も見える。
読売新道の下りはヒュッテまで続くが、途中ほとんど垂直の鎖場や
大岩の1枚岩の上をロープで下る(登りに利用するには難所)。
いいかげん下りが続くのに飽き飽きしたころに小屋に着く。
黒部湖の上流に位置する奥黒部ヒュッテ
本日の泊まりは私と野口五郎小屋からきた男性の2名と
写真の男女2名。彼らはが明日読売新道を登る。
登りのコースは大学の山岳部のトレーニングに利用されるらしい
が絶対登りたくない。
沢から引いた水は冷たくてうまい。風呂も完備しているので水に不自由
しない。
奥黒部から黒部湖までは黒部川右岸を通行する。
道はこのようなはしごがいたるところにかかっており、登り降りに汗をかく。
平の小屋の先まで、はしごの昇り降りがあるのでかなりつらい

平の渡し
黒部湖の右岸から左岸へ船で移動する。
船上では乗船名簿に住所氏名を記入する。黒部湖の観光船は
黒四ダムからここまでを遊覧するが、登山客は約三時間半の歩き
を強いられる。

黒部湖左岸から赤沢岳「猫の耳 第2峰と第3峰を見る
赤沢岳はアルペンルートから見ると猫の耳の様には見えない。
頂上が第2峰の後ろ側にあるため、ここからだと赤沢岳の第2峰と第3峰が均等に見える。
このピークが猫の耳と呼ばれる。