08月03日
小川 隆・山岸真/編
『80年代SF傑作選』上下巻
ハヤカワ文庫SF988〜989
以下の短編の他、評論のようなエッセイのような
オースン・スコット・カード(山岸真/訳)
「私的80年代SF論」
エレン・ダトロウ(小川隆/訳)
「回想のサイバーパンク」も収録。
それぞれの作品はおもしろいものの、全体としては、読むのに時間がかかりました。残念ながら、ひとつ読んで、すぐに他のも! という気分になれなくて。
ウィリアム・ギブスン(浅倉久志/訳)
「ニュー・ローズ・ホテル」
フォックスたちは、マース生命工学のヒロシ・ヨミウリ博士に狙いを定めた。東京で最大手の財閥ホサカに売り込み、ガードの固いヒロシをヘッドハントしたのだ。作戦は成功するが……。
ポール・ディ=フィリポ(内田昌之/訳)
「スキンツイスター」 ストロードは生体彫刻師。彼らは「思考としか呼びようがないもの」によって治療に当たる。人間の配線をやり直すことで、不調を治したり、整形したりするのだ。新しくストロードの患者となったエイミイは、何者かによって疲労毒素を溜め込んでいた。ストロードは懸命に治療するが……。
なぜか記憶に残らないのですが、おもしろい作品。短い中に、ストロードの人となりがきっちり入って、結末も歓迎できるもの。どことなく、ロジャー・ゼラズニイ『ドリームマスター』思い起こさせます。
キム・スタンリー・ロビンスン(山岸 真/訳)
「石の卵」
トム・フィンは、目的地も決めずにバス旅に出発した。バスは、州間高速道をひた走る。やがて夕食時間になると乗客は、アリゾナ砂漠のさびれたレストランへと案内された。フィンは食事を済ませ、付近の散策に出かける。戻ってみると、バスがいなかった。フィンは取り残されてしまったのだが……。
コニー・ウィリス(大森 望/訳)
「わが愛しき娘たちよ」
オクテイヴィアは、信託子。両親はなく、モウルトン・カレッジの寄宿舎暮らし。新学期になり、久しぶりにボーイフレンドのブラウンに会うが、なにかを隠している様子。その秘密とは?
ジャック・ダン(宮脇孝雄/訳)
「ブラインド・シェミイ」
ファイファーは、女友達のジョーンを誘ってカジノに出向いた。ファイファーの目当ては、ブラインド・シェミイ。賭けるのは、自分の臓器。ファイファーとジョーンはサイ連結し、対戦相手に挑むが……。
ロジャー・ゼラズニイ(中村 融/訳)
「北斎の富嶽二十四景」 マリは、かつて住んでいた日本に偽名で戻った。日本へ帰ってきたのは、人を殺すため。北斎の画集を持ち、ひとり浮世絵の景色を巡るマリ。その行き着く先には? ヒューゴー賞受賞 ネビュラ賞受賞
徐々に明らかにされていく、マリの過去や目的。最初は意味の分からなかったことが、やがてはっきりと見えるようになります。じっくり読みたい一篇。
ハワード・ウォルドロップ(黒丸 尚/訳)
「みっともないニワトリ」
リンドバールは、テキサス大学鳥類学部の院生。たまたま乗った市バスで、偶然隣り合わせた老婦人に、びっくりする話を聞いた。婦人は子供のころ、リンドバールの本に載っている“みっともないニワトリ”を見た、と言うのだ。近所で飼っている家があったのだと。その“みっともないニワトリ”こそ、絶滅したはずのドードー鳥。リンドハールは、早速、調査に乗り出すが……。
ネビュラ賞受賞
世界幻想文学大賞受賞
時代背景と共に、ある一家の歴史が徐々に明らかになっていきます。彼らに飼われていたドードー鳥のたどった運命とは?
知らない、というのは実に怖い。
ルーシャス・シェパード(内田昌之/訳)
「竜のグリオールに絵を描いた男」
巨大な竜のグリオールは、肉体は死に絶えたが、精神の働きは今でも健在。暗い霊気を出し続け、町の人々に悪い影響をおよぼしていた。
若き画家のキャタネイは、彼らにある提案をする。毒になりうる絵の具でグリオールに絵を描き、息の根を止めようと言うのだ。これまでのグリオール抹殺計画はことごとく失敗に終わっていた。町人たちは疑心暗鬼ながら、キャタネイに資金援助するが……。
ラスト、うなりました。そういうことだったのか〜、と。
アレン・M・スティール(小川 隆/訳)
「マース・ホテルから生中継で」
火星のアルシア基地で、バンド<マース・ホテル>は誕生した。人に聴かせるためではない。楽しみのない基地で自分たちが楽しむための、ささやかな音楽。やがて演奏は評判になり、地球でも大流行するが……。
関係者へのインタビューを積み重ねていくスタイル。このドキュメンタリー仕立てが、物語のラストによく合っていました。火星には行ったことはありませんが、郷愁を覚えます。
ジョージ・アレック・エフィンジャー(浅倉久志/訳)
「シュレーディンガーの子猫」
少女ジハーンは、自分の未来を見ることができた。それはひとつではなく、無数の可能性を秘めたもの。未来でのジハーンは、犯罪被害者として過酷な運命に翻弄され、殺人犯として処刑され、成功者として外国に暮らしている。ジハーンはどの未来を歩むことになるのか?
ヒューゴー賞受賞
ネビュラ賞受賞
シオドア・スタージョン記念賞受賞
ジハーンの見ている未来を垣間見ながら、ジハーンの現在を追います。いろいろな展開がありますが、複雑さは感じさせません。
なお、舞台となったブーダイーンは『重力が衰えるとき』で始まる三部作と同じ町です。
マイクル・ビショップ(小尾芙佐/訳)
「胎動」
ロウソンが目覚めると、自宅のベッドではなく川べりの胸壁に寝ていた。しかもリンチバーグではない。着ている服もおかしい。あたりには人があふれ、皆、言葉も通じず恐慌にかられていた。いったいなにが起こったのか? ネビュラ賞受賞
この作品からは、ストロスの『シンギュラリティ・スカイ』に思いをはせました。(書的独話「残された人びと、あるいは……」に記載あり)
ジョアンナ・ラス(冬川 亘/訳)
「祈り」
修道院のある村に、バイキングたちがやってきた。ちょうど修道院には、おそろしい掠奪から逃れて来たアイルランドの司祭が逗留しており、バイキングの到来に皆が震えあがる。院長のラーデグンデは人々を院内に避難させ、単身で交渉にいどむが……。
ヒューゴー賞受賞
ローカス賞受賞
とにかく暗い作品。淡々と語られ、突如としてSFの世界に突入。違和感が残りました。別のアプローチで読みたかったような……。
ブルース・スターリング(小川 隆/訳)
「間諜(スプーク)」 地球は<統合>の保護下、ひとつのサイバネティクス経済網のもとに統一されつつあった。
ユージーンは<財閥体>の訓練を積んだ間諜。間諜は記憶を封印され、組織のために働いている。今度の仕事は、中米に発生した反体制新興宗教・マヤ復興派を内部崩壊させること。ユージーンは、彼らの支配地域に潜入するが……。
スピード感あふれる楽しい作品。ただし、背景設定が複雑なので、それをクリアしなければなりませんが。
ルーディ・ラッカー&マーク・レイドロー(小川 隆/訳)
「確立パイプライン」
デルとゼップは大親友。ふたりはサーファーでもあった。デルはひょんなことから、シティのボスとサーフ対決することになってしまう。デルの頼みの綱は、ゼップが新しく作っているカオス・アトラクター。ゼップはドラッグに溺れており、デルが提供した資金を使い果たしてしまう……。
ジョイムズ・P・プレイロック(中原尚哉/訳)
「ペーパー・ドラゴン」 奇人のフィルビーは、名のみ知られるアウグストゥス・シルバーを信奉していた。それが、彼の家の納屋から聞こえる槌の音の原因なのだが……。
世界幻想文学大賞受賞
オクテイヴィア・バトラー(小野田和子/訳)
「血をわけた子供」
人類はある惑星で、異星種族と共生関係を結んでいた。彼らトゥリックは、地球人の特別保護地域をつくり、保護に努めてくれている。その見返りとして何人かの地球人は、ヌトゥリックとなることを求められた。
カーンはヌトゥリック候補。ある日、ヌトゥリックの実態を目撃してしまい……。
ヒューゴー賞受賞
ネビュラ賞受賞
ローカス賞受賞
ローレンス・ワット=エヴァンズ(中原直哉/訳)
「ぼくがハリーズ・バーガー・ショップをやめたいきさつ」
人里離れた州間高速道路の出口に、ハリーズは出店していた。そこで働くことになったぼくは、夜半に奇妙な常連客と遭遇する。やがて彼らの虜になってしまうが……。
ヒューゴー賞受賞
グレッグ・ベア(酒井昭伸/訳)
「鏖戦(おうせん)」
はるか未来の原始星雲において、人類の末裔たちは、古い種族と戦っていた。このころには人類は変貌し、かつての面影はまったくない。敵と戦うために産まれてきたプルーフラックスは、やがてある疑問を抱くようになるが……。
ネビュラ賞受賞
難解な作品。「分かった!」と思っても、どういう話なんだか表現することができない、もどかしさ。
イアン・マクドナルド(浅井 修/訳)
「帝国の夢 −地上管制室よりトム少佐へ−」
トムは12歳。父親は爆死し、自身は白血病を煩ってしまう。しかも、型通りの化学療法には反応を示さない。トムには試験的に、矯正治療法を用いられることになった。深層夢を見せ、自身に治療をさせるのだ。療法は成功し白血病は完治するものの、トムは目覚めなくなってしまう。
トムの深層夢として利用されたのが、映画「スター・ウォーズ」。トムに割り当てられていたのは、主人公のルーク・スカイウォーカー。では、トム少佐とは?
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