5.構成要件 5−1 構成要件の概念    (1)構成要件と違法性・責任との関係   *構成要件と違法性・責任とはどのような関係にあるか。B    →構成要件=別個の犯罪成立要件(曽根):構成要件は、違法性・責任とは別個の犯罪成立要件である。 構成要件=違法類型(結果無価値論者):構成要件は、違法類型である。主観を入れない。   c.主観を考慮しないといかなる構成要件に該当するかが判別できない。 構成要件=違法・責任類型説(通説):構成要件は、違法類型であると同時に責任類型である。  (2)構成要件の機能    構成要件の違法性・責任推定機能    人権保障機能 罪刑法定主義機能‥国民に行動の予測可能性を与える。  {犯罪個別化機能  殺人罪・傷害致死・過失致死罪など。    社会秩序維持機能‥国民の行動を規律する機能  (3)構成要件の種類    基本的構成要件…刑法各本条や各種の刑罰法規において個々的に定められている構成要件   {修正された構成要件…未遂犯・共犯の構成要件    閉ざされた構成要件…刑罰法規の構成要件中において犯罪構成要件の全てが規定されているもの。   {開かれた構成要件‥刑罰法規の構成要件中に一部だけが規定されており裁判官の補充を予定されているもの。  過失犯・不真正不作為犯    記述的構成要件要素…解釈によって確定可能な構成要件要素   {規範的構成要件要素…法解釈によってその要素の内容を確定することには限界があり、ある事実がその要素に該  当するかどうかは最終的に裁判官が社会常識によって規範的・評価的な価値判断を行なっ  て決定せざるを得ない部分を含んでいる構成要件要素。ex.わいせつ    積極的構成要件…犯罪の成立要件を積極的に示している構成要件   {消極的構成要件…犯罪性を否定する要件を定めた構成要件               ex.非現住建造物等放火罪「但し公共の危険を生じなかったときはこれを罰しない」 5−2 構成要件要素     客観的構成要件要素  行為  行為の主体 行為の客体  行為の結果  因果関係 行為の状況   主観的構成要件要素  一般主観的要素  特殊主観的要素  (1)客観的構成要件要素   @行為 作為…社会的観点から一定の身体運動を基準として、その身体運動をすること。    {不作為…社会的観点から一定の身体運動を基準として、その身体運動をしないこと。   真正不作為犯…構成要件的行為が不作為の形式で規定されている犯罪。 不解散罪・不退去罪  {不真正不作為犯…一定の作為を法律上期待されている者がそれをしないことで作為犯を実現する場合。   A行為の主体 身分犯…行為の主体として、一定の身分のあることが必要とされる犯罪。 収賄罪・背任罪  真正身分犯…行為者に身分があることによって犯罪を構成する場合。 収賄罪 {不真正身分犯…行為者に身分があることによって法定刑が加重されるか減刑される場合。 常習賭博罪 法人 *法人の犯罪能力は認められるか。B  →否定説(通説)        r.法人は意思及び肉体を有しない擬制的存在であるから、刑法的評価の対象たるべき行為能力がない。         責任は行為者人格に対する非難であるから倫理的実践の主体でない法人は責任を負担する能力はない。         自由刑を中心とする現行の刑罰制度は法人の処罰に適合しない。         法人の機関を担当する自然人を処罰すれば足りる。      肯定説(判例)        r.法人も機関の意思に基づいて機関として行動するから行為能力を有する。         法人の意思に基づく行為がある以上は法人を非難することも可能である。         法人に適した財産刑があるから処罰に不都合はない。         法人自体を処罰の対象とすることは法人犯罪を抑止する上で必要である。  折衷説:行政刑法についてのみ法人の犯罪能力を認めるべきである。 r.行政刑法においては社会倫理規範違反の面よりも合目的的な政策的要請の侵害の面が重視される。 *法人処罰の形式   代罰規定‥従業員の違法行為について業務主である法人のみを処罰する。  {両罰規定‥従業員の違法行為について行為者本人と業務主である法人を処罰する。 *両罰規定における法人処罰の根拠は何か。B  →犯罪能力否定説 無過失責任説‥行政取締目的から従業員の責任が無過失的に法人に転嫁される。  {過失擬制説‥事業主の過失を擬制するもの。   犯罪能力肯定説 純過失説‥従業者の選任監督上の過失を根拠とする。  {過失推定説(判例)‥従業者の選任監督上の過失を推定するものであるとする。過失が     ないことを証明すれば責任を免れる。   B行為の結果 結果犯・挙動犯・結果的加重犯  結果犯‥構成要件の要素として結果を必要とする犯罪  挙動犯‥構成要件的行為として人の外部的態度があれば足り、結果の発生を必要としない犯罪。 偽証罪  結果的加重犯‥行為者が一定の故意に基づく犯罪を行なった際その行為からその故意を超過する重い結果が     生じたことを構成要件として規定し、その重い結果が生じたことをもって基本となる犯罪よ り重い刑が定められている犯罪。 傷害致死罪  *結果的加重犯において重い結果の発生に付き過失を要するか。B   →過失必要説(通説):重い結果に付き因果関係のみならず過失も必要である。r.責任主義    過失不要説(判例):重い結果に付き因果関係があれば足りる。  r.重い結果が生じた場合には行為者に過失があるのが通常であり、なくても法      律が結果を予見すべき義務を課しているとみることができる。 実質犯・形式犯  実質犯‥犯罪が成立するためには法益の侵害または侵害の危険の発生が必要である犯罪   侵害犯‥保護法益を現実に侵害したことが構成要件要素となっている犯罪   危険犯‥保護法益侵害の危険を生じさせたことが構成要件要素となっている犯罪    具体的危険犯‥法益侵害の具体的危険が発生したことが構成要件要素となっている犯罪 ex.建造物以外放火罪   故意の内容として危険の発生の認識を要する。    抽象的危険犯‥法益侵害の危険が一般的にあると認められる行為があれば犯罪が成立する犯罪  形式犯‥命令に形式的に違反しただけで成立し、法益侵害の抽象的危険の発生さえも必要としない犯罪  ex.運転免許不携帯罪 即成犯・状態犯・継続犯  即成犯‥構成要件的結果の発生によって法益侵害または危険が発生するが、それによって犯罪が完成し同時  に終了し、その後行為者が関与せずに法益侵害の状態が継続するもの。 ex.殺人罪・放火罪  状態犯‥構成要件的結果の発生によって法益侵害または危険が発生するが、それによって犯罪が終了し、そ  の後行為者が関与することによって法益侵害の状態が継続してもそれは犯罪事実としては認められ  ないもの。ex.窃盗罪  継続犯‥構成要件的結果の発生によって法益侵害が発生するが、その後も法益侵害が継続している間は犯罪  の継続が認められるもの。ex.監禁罪  既遂後に加担した者でも共犯が成立する。  (2)主観的構成要件要素   @一般的主観的要素‥故意または過失 故意…犯罪事実即ち客観的構成要件要素に該当する事実を認識・認容して、一定の作為・不作為をすること    {過失…不注意により犯罪事実の認識または認容を欠いて、一定の作為・不作為をすること    *故意・過失の体系的地位 C →通説)故意及び過失は、責任要素であると共に違法要素でもある。構成要件がそれらを主観的違法要素・責     任要素として類型化している。   A特殊的主観的要素 目的犯における目的  目的犯‥一定の目的を主観的構成要件要素とする犯罪   真正目的犯‥目的が犯罪成立の要件となっている犯罪 ex.公文書偽造罪「行使の目的」   不真正目的犯‥目的が存在することによって刑が加重または減免される犯罪 ex.「販売の目的で所持した」 傾向犯における傾向 *強制わいせつ罪におけるわいせつの心情は主観的構成要件要素か。B  →肯定説(通判):わいせつの心情は主観的構成要件要素である。   否定説(大谷):わいせつの心情は主観的構成要件要素ではない。 表現犯‥行為の要素として行為者の心理的経過または状態の表現を必要とする犯罪 ex.偽証罪 6.実行行為 6−1 実行行為の意義    実行行為‥特定の構成要件に該当する法益侵害の現実的危険性を有する行為   ※論点的に実行行為性が問題になるもの 不能犯  不能犯と未遂犯との限界の問題について法益侵害の現実的危険性の有無の検討が必要となる。 不作為犯  間接正犯 原因において自由な行為(間接正犯類似説を採った場合) ex.過失犯 6−2 不作為犯   1.意義  (1)意義 真正不作為犯…構成要件が不作為の形式で定められている犯罪を不作為によって実現する場合   {不真正不作為犯‥構成要件が作為の形式で定められている犯罪を不作為によって実現する場合  (2)不真正不作為犯の問題点   @不作為の行為性 行為を人の身体の動静と考えると、不作為にも行為性を認めうる。   A不作為の因果関係 もしその不作為がなかったならば、通常その結果は生じなかったという関係があれば因果関     係は認められる。   B罪刑法定主義との関係    イ)類推解釈の禁止との関係 *不真正不作為犯を認めることは類推解釈の禁止の原則に反しないか。  →通説)反しない。 r.作為犯は「‥してはならない」という禁止に違反するのに対し、不作為犯は、「‥せよ」という   命令に違反するものであり、作為の形式で定められている構成要件も単に作為を標準として規定   されているに過ぎず、禁止も命令も共に法益保護の目的に向けられた規範であるから、いずれも   同一構成要件に含まれている、と解すべき。条文は禁止規範であると共に命令規範でもある。    ロ)明確性の原則との関係→作為義務によって解釈上明確化を図るので反しない。   C作為義務の体系的地位    *作為義務の体系的地位をいかに解すべきか。A →違法性説:作為義務は違法性の問題である。   c.すべての不作為が構成要件には該当することになるため構成要件の違法性推定機能は論理的     にも事実的にも働かなくなる。作為義務の錯誤を常に違法性の錯誤と解することになるが、 作為義務の発生を基礎づけている前提事実に関する錯誤は事実の錯誤と解すべきである。  構成要件該当性説−保障人説(通説)  :構成要件的結果が発生しないようにするための法律上の義務を有する者を保障人とし、その者の   不作為についてのみ不作為犯の構成要件該当性を認める。     r.作為義務を構成要件段階の問題と捉えることで構成要件の違法類型としての性格を維持する。      二分説(曽根・川端)  :不真正不作為犯の構成要件該当性と違法性とを区別し、保障人的義務(作為義務)の発生を基礎   づけている保証人的地位のみを構成要件要素と解し、保障人的義務(作為義務)違反自体は違法   要素であるとする。   c.保障人的地位と保障人的義務を分けることは実際上困難である。保障人的地位だけでは構成     要件の違法性推定機能が十分働かない。    *作為義務の錯誤は故意を阻却するか。 →保証人説‥不真正不作為犯の作為義務はいわゆる規範的構成要件要素であり、素人的な作為義務の認識がな   ければ構成要件的故意を欠き故意犯は成立しない。素人的認識がある場合には構成要件的故意は   認められ、違法性の意識(またはその可能性)の有無により責任故意が阻却されるか否かが決ま   る。  二分説‥保障人的地位の錯誤は構成要件的故意を阻却するが、保障人的義務の錯誤は構成要件的故意を阻却  せず、違法性の意識(またはその可能性)の有無により責任故意が阻却されるか否かが決まる。    ●作為義務の位置づけ ●錯誤の効果   保証人説 構成要件要素 素人的認識 なし→構成要件的故意阻却  {あり→構成要件的故意は認められる。   二分説 保障人的地位→構成要件要素 構成要件的故意阻却 保障人的義務→違法要素 構成要件的故意は認められる。   D不真正不作為犯の実行行為性    不真正不作為犯の実行行為性を肯定するためには、その不作為が作為犯の実行行為と同視できる実質を備えてい    ることが必要となる。(同価値性の原則) 2.不真正不作為犯の成立要件    不真正不作為犯 法的な作為義務 作為の可能性・容易性 作為と不作為との構成要件的同価値性  (1)法的な作為義務…社会生活上その者に当該法益の保護が具体的に依存していること(保障人的地位) 作為義務に違反するところに不真正不作為犯の違法性の根拠がある。 結果防止可能性がない場合には当然に作為義務がない。    法令 親権者の子に対する監護義務(民法820条)・夫婦の扶助義務(民法752条)    契約・事務管理 契約によって幼児の養育を引き受けた場合    慣習または条理    イ)保護者的地位にある者の作為義務   に該当しない近親者    ロ)先行行為に基づく作為義務  →先行行為によって当該法益の保護が行為者に具体的に依存している場合に作為義務が発生する(大谷)。    ハ)管理者の作為義務  (2)作為の可能性・容易性 ‥法は人に不可能を強いるものではない。  (3)作為と不作為との構成要件的同価値性  (4)既発の危険を利用する意思の要否   *既発の危険を利用する意思は不真正不作為犯の成立要件か。B    →積極説 r.不作為犯は処罰範囲が広がる危険性を内在しているので行為者の主観的事情で限定すべきである。     消極説(通説)r.作為の実行行為には要求されていない主観的要件を不作為に要求することは妥当でない。  これを要求すると法律上の作為義務違反の不作為があってその不作為が作為と同価値であっ      ても処罰できないという不合理な結論になる。  処罰範囲の限定は作為義務の認定を厳しくすることで行なうべきである。 6−3 間接正犯   1.意義 間接正犯…他人を道具として利用し、実行行為を行なう場合  *間接正犯の正犯性の根拠   →他人を自己の意のままに使ってその動作や行動をあたかも一種の道具として自己の犯罪に利用した場合には規範    的な評価の問題としては、自ら手を下して実行行為をしたのと同一に考えることができる(道具理論)。 2.間接正犯の成立要件  (1)主観的要件‐故意+正犯意思(「自己の犯罪」として実現する意思)  (2)客観的要件   *いかなる場合に間接正犯の実行行為性が認められるか。A    →行為者が被利用者の行為をあたかも道具のように一方的に支配・利用し、被利用者の行為を通じて構成要件的     行為の全部または一部を行なった場合。(道具理論) r.このような場合にも当該構成要件の予定する法益侵害の現実的危険性があると言え実行行為が認められる。 3.間接正犯の類型  (1)被利用者の行為が刑法上の「行為」とは言えない場合    被利用者が意思能力を欠いている場合 ex.高度の精神病者・幼児等を利用した場合    被利用者が意思を抑圧されている場合       ex.12歳の養女をつれて四国の霊場めぐりをしていた者が反抗するたびに顔に煙草の火を押しつける等して       意のままに従わせていた場合  (2)被利用者が一定の構成要件要素を欠いている場合   @被利用者が構成要件的故意を欠く場合     *被利用者が他の犯罪事実について故意を有している場合にも利用者に間接正犯が成立するか。A  ex.甲が屏風の背後にいるAを殺害する目的で、それを知らない乙に対しその屏風を打つことを命じ、        乙がこれに従って発砲し、その結果Aが死亡した場合 →否定説:甲は殺人罪の教唆、乙は器物損壊罪と過失致死罪  r.乙には器物損壊罪の故意があり規範的障碍があるので「道具」とは評価できない。  肯定説(通説):甲は殺人罪の間接正犯、乙は器物損壊罪と過失致死罪  r.間接正犯においては被利用者を実質的に支配しているのが誰かということが重要であり、この    観点からは被利用者に規範的障碍があるかどうかは決定的ではない。甲は乙に殺人の犯意を生    じさせたわけではないのにこれを教唆と評価することも不自然である。    *被利用者に過失が認められる場合にも利用者に間接正犯が成立するか。 →する。被利用者に故意はない。   A目的犯において被利用者が目的を欠く場合(目的のない故意ある道具)      ex.教材用と称して、行使の目的を欠く印刷業者に偽札を作らせる場合   B身分犯において被利用者が身分を欠く場合(身分のない故意ある道具)      ex.公務員が事情を知った一方的に支配する非公務員を使って賄賂を収受する場合  (3)単なる故意ある道具の場合(故意ある幇助的道具)   …ある犯罪について完全に故意、構成要件としての目的などを有しているが、正犯者としての意思を欠き行為を専    ら他人の従犯として行なおうとする者 ex.会社の社長が事情をわかっている運転手を利用して賄賂を政治家のところに持っていかせた場合   *故意ある幇助的道具を利用する行為につき間接正犯が成立するか。B+    →肯定説(判例)r.単なる機械的事務処理者として利用者によって一方的に利用されている道具に過ぎない。 否定説:教唆犯に過ぎない。r.客観的にも主観的にも完全に正犯行為を行なっている者がいる以上、命令し    た者は教唆としての責任しか負わない。  (4)被利用者の行為は構成要件に該当するが、正当行為等の理由により違法性を欠く場合    ex.被害者Cが怒りやすいことを知っている利用者Aが被利用者BをけしかけてCを怒らせ、怒ったCが      突然Bに殴りかかってきたのでBは正当防衛でCに反撃し傷害を負わせた場合の、全てを意図していたA。(争いあり) 7.因果関係 1.意義   因果関係…実行行為と結果との間の原因・結果といえる関係。これがない場合は未遂にとどまる。    結果が発生した時にのみ問題となる。  現に発生した結果が何か。 { その結果に問題となる行為が結果を与えたのは明らかか。 2.条件関係の存在  (1)意義 条件関係‥「あれなければこれなし」の関係   ※条件関係の存否の判断をする上での注意点    @行為と結果との条件関係という場合の行為は、当該犯罪の実行行為でなければならない。    A結果についてはその時点において現に発生した具体的な結果を問題にしなければならない。 ex.熊と間違えて人を撃って瀕死の重傷を負わせたところあまりに苦しむのでこれを射殺した場合にも、 具体的結果から見るとそのような死に方はしなかったという意味で射殺行為に条件関係が認められる。    B甲の行為がなかったならばという判断をする場合には甲の行為を除いて考えるだけであって、その条件以外に    C現実に存在しなかった事実を仮定的に付け加えて判断してはならない。(仮定的因果経過) ex.死刑執行人が死刑囚の死刑執行ボタンを押そうとしたその時に、他の者がボタンを押して死刑囚を殺した場合にも       条件関係は認められる。  (2)因果関係の断絶   …実行行為から結果に向けて因果の流れが進行中、行為者の行為とは無関係の偶然の事情が介入し、それによって    当該結果が発生してしまった場合。刑法上の因果関係は否定される。  (3)条件関係の判断に関する問題点   @合義務的な択一的挙動…行為者が法に違反する行為を行ない、ある犯罪的結果が生じたが、法を遵守したとして   も、同じ結果を避けられなかったと見られる場合。  ex.法律の定める車間距離をとらなかったために先行車両に追突したが、仮に法定の車間距離を                守ったとしてもやはり追突事故の発生を免れなかったであろうという場合。    *合義務的な択一的挙動の場合に過失犯は成立しないがその理論構成について。B →条件関係を欠くので因果関係がないとする説 c.条件関係に仮定的条件を取り込んで判断すべきでない。  条件関係は存在するが刑法的な因果関係がないとする説 r.保護範囲説・客観的帰属説から  過失犯における客観的注意義務が欠けるとする説(通説)   r.回避不能な結果に対してはその発生を防止すべき義務を論じえない。実行行為性が欠ける。   A択一的競合…複数の独立した行為が競合して結果を発生させた場合において、それらの行為のいずれもが単独で  同じ結果を発生させることが出来た場合。         ex.AB両者がそれぞれ独立して殺意を以て甲の飲物に致死量の毒を入れ、甲がそれを飲んで死亡した場合    *ABいずれの毒物が甲の死を招いたかが明らかである場合 →Aが殺人既遂罪、Bが因果関係の断絶により殺人未遂罪となる。    *AB両名の与えた毒物の相乗作用によって、甲の死期が早められた場合 →両者に条件関係は認められ殺人既遂罪が成立する。    *ABいずれの毒物によって甲が死亡したかが明らかでない場合 B →殺人未遂罪説(曽根)r.条件関係の公式を徹底する。  殺人既遂罪説(通説)   :条件関係を「いくつかの条件のうち、いずれかを除去しても結果は発生するが、すべての条件を除けば       結果が発生しない場合には、すべての条件に付き因果関係を認める」と修正する。    r.双方の実行行為を全体としてみれば結果との条件関係が認められる。重畳的因果関係の場合と比べ、      より危険な行為をしていながら未遂にとどまるのは不均衡。    重畳的因果関係…単独では結果を発生しえない行為が2つ以上重畳して結果を発生させた場合。    ex.AB両者がそれぞれ独立して殺意を以て甲の飲物に致死量に満たない毒を入れ、             両者あわせて致死量に達し、甲がそれを飲んで死亡した場合    →条件関係は認められる。しかし、相当因果関係は否定されることが多い。    疫学的因果関係…ある因子とそれに基づく疫病との関係が、医学・薬理学の観点からは法則的に証明しえなくて    も、統計的な大量観察の方法によってその間に高度の蓋然性が認められる場合。    不作為の因果関係 「一定の期待された作為がなされたならばその結果は阻止できたであろう」という関係。 3.相当性が認められること  *条件関係のほかに、法的な観点から因果関係に絞りをかけるか。A   →条件説:条件関係が認められる限り刑法上の因果関係も認められる。    c.一般の経験からすると偶然と思われるものについてまで因果関係を認めるのは妥当でない。    中断論:条件関係の存在を前提としてなお因果の経路に被害者もしくは第三者の故意行為または自然力が介在し    たときには、因果関係が中断したとして刑法上の因果関係の存在を否定しようとする理論。    c.因果関係は存在するかしないかで、一旦存在した因果関係が進行の途中で中断すると解することは 理論的に不可能である。中断論で妥当な結果を導き出せるわけではない。    原因説:条件の中からなんらかの規律によって原因となるものを摘示し、この原因と結果との間にだけ刑法上の    因果関係を認める。c.原因とは何かを決める基準が曖昧である。    相当因果関係説(通説)   :条件関係の存在を前提として、結果に対する諸条件のうち、社会生活の経験に照らしてその行為からそ    の結果の生ずることが相当であると認められるものに因果関係を認める。   r.構成要件は、当罰的行為を社会通念に基づいて類型化したものであるから、条件関係が認められる結     果のうち、行為者に帰属せしめるのが社会通念上相当と思われるもののみを行為者に帰属させるのが 妥当である。  *相当因果関係説の立場に立った場合その相当性を判断する基礎としていかなる事情を考慮すべきか。A   →主観的相当因果関係説:行為者が行為の当時認識・予見した事情及び認識し得た事情を判断の基礎にする。 c.行為者が認識・予見し得なかった事情については、一般人が認識・予見し得なかった場合でも判断の基礎   とすることが出来ないから、この場合にも因果関係が否定されることになり、相当性の判断において社会   経験則上偶然的な結果と言えないものまでも排除してしまう点で判断の基礎として狭すぎる。    折衷的相当因果関係説:行為の当時(行為者の立場)に立って、一般人が認識・予見することが出来たであろう   一般的事情及び行為者が現に認識・予見していた特別の事情を判断の基礎にする。 r.構成要件は当罰的行為を社会通念に基づいて類型化したものであるから一般人の事情を考慮すべきである。   また構成要件は責任類型として責任判断の前提となるものであるから、行為当時に行為者が認識した特別       の事情をも判断の基礎とするべきである。    客観的相当因果関係説:裁判の時点(裁判官の立場)に立って、行為当時に客観的に存在したすべての事情及び   行為後に生じた事情のうち一般人にとって予見可能であった事情を判断の基礎とする。 c.裁判の時点に立って事後的に判断すれば行為と結果は殆どの場合相当の関係にあることとなってしまう。 判断の基礎事情   判断基準 判断時点 行為時の事情  行為後の事情    主観説 行為者の認識した事情  行為者の予見した事情    行為者  事前 行為者の認識し得た事情  行為者の予見し得た事情      折衷説 行為者の認識した事情  行為者の予見した事情    行為者  事前 一般人の認識し得た事情  一般人の予見し得た事情   一般人    客観説 客観的に存在した全事情  一般人の予見し得た事情   一般人  事後  *具体的判断について   *行為時の事情についての判断  被害者が血友病だった場合 基礎事情とそれを基にした相当性の判断という二段階の判断構造で因果関係の有無を判断する。   *行為後の事情についての判断  病院に運ばれ医者により故意に殺された場合    →イ)基礎事情とそれを基にした相当性の判断という二段階で因果関係の有無を判断する考え方。 ロ)基礎事情の予見があった場合はそれだけで相当性ありとする考え方。(通常これで処理すれば良い) ハ)前田説  実行行為に存在する結果発生の確率の大小    介在事情の異常性の大小    介在事情の結果への寄与度の大小  の各要素を総合して相当性を判断する。