作成 2001.9.10
加筆修正 2001.9.24
1972年


(その1)

8月17日朝刊に<もう30年?って感じです>ではじまり,<「30年目点検」,異常なし>で終わるヘーベルハウスの全面広告が掲載されました.

ヘーベルハウスの1棟目が販売されたのは1972年です. ヘーベルハウス販売開始は旭化成にとって住宅事業に進出という意味で重要なできごとです.旭化成公式サイトの旭化成の沿革 には次のようにでています.

住宅・建材事業では、1967年8月に軽量気泡コンクリート「ヘーベル」を企業化したのをはじめ、高強度基礎杭、鋼管コンクリート複合パイルを企業化し、建材事業に 本格的に進出しました。

住宅分野については、1972年“ヘーベルハウス”の販売を開始。以来、二世帯住宅、3階建住宅さらにはロングライフ住宅(長期耐用住宅)の提案など多彩な生活提案を行い、大都市圏を中心に、順調に業績を伸ばしています。
旭化成は1967年「ヘーベル」という建材の商売を始め,その建材を使用した“ヘーベルハウス”というプレハブを1972年から販売開始したのです.

1999年9月14日の『家は建てた後が大事なんだ』の全面広告でも1棟目は27年前に建設されたとはっきり述べています.



家の点検は車の点検と同じく例えば10年経過した時点で10年点検です.1972年築の1棟目のヘーベルハウスの30年点検は来年すなわち2002年です.しかし旭化成は今年の夏あるお客の実例をだして「30年目点検」異常なしと全国紙の全面広告で叫びました.

旭化成は30年目に入った点検という意味で「」付で「30年目点検」とごまかして表現したと私は最初思いました.しかし表現のごまかしではありませんでした.「30年目点検」は30年点検と同じ意味でした.



右側の写真の余白にS46.11月と撮影年月が手書きで書いてあるではないですか. この御宅は1971年の7月に建設されたのです.建築後まる30年を経過して31年目に入っているのです.

全面広告に登場する宮部邸は一棟目のヘーベルハウスの前の年の夏に建設されたものです.つまりヘーベルパネルという建材を使用したプレハブ商品化テスト用ハウスです.ヘーベルハウスではありません.
宮部邸は<子どもの成長に合わせて>増築されています.新築時小学生だったお子様が中学入学あるいは高校入学時点で増築されたのでしょう.つまり遅くても築10年頃までには増築されたと思われます.

常識的には新築時に当然この程度のことは考慮して間取りを考えます.増築は明らかに割高だからです.この御宅の増築はどのヘーベルハウスの増築より早い時点で実施された増築試験用にも使用されたと考えられます.

「30年目点検」では<屋上防水シートのきずなど,軽微な補修>とあります.この御宅の防水シートは商品と同じ厚さのものが使用されたのでしょうか.現在の厚さは何ミリでしょうか.30年間の補修の歴史はどのようなものでしょうか.
宮部邸は一般に売り出されたヘーベルハウスではありません.旭化成は商品ではないものをもちだして商品が長持ちする実例として宣伝に使ったのです.そしてこの<お客>は一般消費者ではありません.一般消費者は新発売される前の年の夏に新製品を買うわけにはいかないのです.

1972年というのはヘーベルハウスを事業化した当時の技術屋にとって光輝ある大切な年です.しかし現在の旭化成はこの広告から1972年を完全に隠蔽しました.そしてきわめてさりげなくS46すなわち1971年を表にだしました.旭化成の栄光の過去を改竄しようとしているのです.「50年点検システム」なるものを大々的に宣伝するために.

日本全国どこを探してもただの一人もヘーベルハウスの30年点検を受けた人はいないのです.本当に信用を大切にする会社ならこんな姑息なまねは恥ずかしくてとてもできないでしょう.しかし旭化成の住宅事業責任者土屋氏はやりました.



(その2)

私は宮部邸の広告を9月7日に日本広告審査機構(JARO)に報告しました.私は30年点検の広告を以前に見た覚えがあったので,JAROを訪れた翌土曜日地元の図書館で調べてみました.7月19日に全面広告がでていました.これが第一弾の30年点検異常なしの全面広告です.趣旨は同じですが,登場するお客が違っていました.

終わりから3行目に事業設立30年目とあります.1972年に住宅事業に進出したのだからまさに事業設立30年目です.ところが

事業設立1年目の夏に建てたヘーベルハウスの30年点検は,事業設立30年目の今年ではなく来年の夏です.
入社1年目の夏に新車を買ったとします.3年点検は入社3年目の夏ではなく入社4年目の夏です.
終わりの3行をよくご覧下さい.

事業設立30年目の今年30年目点検だと言っています.旭化成はだましているのです.白昼堂々と.



この広告の鴨川邸は宮部邸とは違い本物のヘーベルハウスかもしれないと思います.理由は次の三点です.
1.お客の感想が「」付で引用されている.感想の内容は穏当なものである.我が家の築11年のヘーベルでも30年時点でこのような感想を持てることを期待している.

2.築16年時点での増築の理由が納得できるものである.宮部邸の増築経緯とは全く違う.

3.写真に客,客の家族の姿が写っていない.家の写真だけで十分だ,相変わらずお美しいなどと歯の浮くような言葉は無用だ・・・と普通の客なら思うのではないか.
鴨川邸は1972年のヘーベル一期生かもしれません.もしそうだとすると事業設立30年目だから30年点検だと旭化成はインチキしたのです.しかし宮部邸とおなじく築30年とあります.もし築30年の意味が宮部邸と同じ意味だとすると,鴨川邸も1971年に建設されたことになります.

鴨川邸が1972年に建設されたものなら30年点検異常なしというのは嘘です.1971年に建設されたものなら,鴨川邸は宮部邸と同じ意味でヘーベルハウスではありません.

旭化成は鴨川邸を<ヘーベルハウスの30年点検の実例>として持ち出したのです.旭化成がインチキしたのは明らかです.
蛇足ですが日本の住宅の寿命は二つの広告で1年ちがっています.1ヶ月の間に新たな統計値が発表されたのでしょうか.平均寿命をもちだす事自体が不適切であることは『「30年目点検」って?』で説明しています.

お客の言葉のなかに今だにという当て字が残っています.たいした分量ではないのですから,ご自分でちょっとはチェックされたらいかがですか,土屋殿.


(その3)

鴨川邸が本物のヘーベルハウスだとすると,次のような推測が可能です.
旭化成は第一弾の全面広告を正規顧客の鴨川邸で打った.30年点検と嘘をつくのだから旭化成は慎重だった.

万が一クレームがでれば,「30年目点検」は30年点検とは違い30年目に入って行う点検だと言い逃れするつもりであった.

なにもクレームがでなかった.旭化成は大胆になり,第二弾でテスト仕様棟(宮部邸)を持ち出した.

故意かどうか不明だが,建設年が1971年であることを表に出した.そのことにより「30年目点検」は30年点検と同じ意味であることが証明された.

こうしてせっかく「30年目点検」とわざわざ「」までつけて造語した苦労が水の泡になった.(ちなみに旭化成の公式サイトでは30年時点検という用語は見受けられるが30年目点検という言葉はない.)

調子に乗った宮部邸の全面広告は大失態である.建設年が1971年で販売年が1972年だという苦しい言い逃れも通用しない.建設年から<お客>が住んでいるではないか.


(その4)

9月17日JAROから電話がありました.旭化成に口頭で私の報告した内容を伝え,口頭で回答があったその内容をそのまま連絡してきたのです.私は7月に第一弾の全面広告があったことを伝え電話をきりました.

JAROはなにも子供の使いを職務としているわけではありません.JAROは広告監視機構として消費者と広告主の双方から独立して独自の見識を持つことが期待されるのは当然の話です.

JAROはテレビで広告監視機構だと宣伝しています.JAROのCM自身がJAROの広告監視にひっかかるというおかしなことにならないようJAROがきちんと職務を果たしてくれることを期待しています.