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作成 2001. 8.24
最新修正 2001. 9.10
8月17日朝刊にもう30年?って感じですではじまり,「30年目点検」,異常なしで終わるヘーベルハウスの全面広告がまた掲載されました.旭化成が使う日本語をテキストをもとに吟味してみましょう. 地味で文字の多い広告です.地味だからといって中身がまじめだとは限りません.全面広告で旭化成はいったい何を伝えようとしているのでしょうか. 顧客との長年にわたる信頼関係を誇示したいのでしょうか.30年前のヘーベルハウスがいまも健在であることを伝えたいのでしょうか.それとも旭化成の(無償)長期点検によってヘーベルハウスはいつまでも異常なしだといいたいのでしょうか. 40年点検,50年点検は金をとるようですのでかっこ付無償です.58年前ドイツで生まれたALCコンクリート・ヘーベルを使用したヘーベルハウスは先進のプレハブ住宅でした,今を去ること30年前は.しかし今なおそうであるかは大変疑問です. 日本の住宅の平均寿命が約26年で,一方ヘーベルの30年は通過点だと誇らしげです.しかし割高な全面リフォームをする位なら建替えた方がいいと思う人が多いから,26年になっているだけです. コストの比較を『どっちが得?2回と1回』で旭化成は試算しています.「30年耐用住宅」のメンテナンスコストが30年で600万,ヘーベルハウスは60年で1200万,改築費用は60年で700万を想定したものです.建物の物理的な寿命だけでいえば,ヘーベルに限らずどこのメーカーのプレハブでも30年は通過点にすぎないでしょう.旭化成は話をすりかえているのです. 2年前旭化成は「家は建てたあとが大事なんだ」という全面広告を打ちました.ヘーベルの頑健さだけを訴えた広告でした.私は家というものはメンテナンスが大事だという意味で「建てたあとが大事なんだ」という批判をしました.(『家は建てたあとが大事なんだ』)旭化成は今回次のようにメンテナンスに触れました. <さらにヘーベルハウスでは,50年目まで定期的に点検するシステムをとっている.この7月に宮部邸で行われた「30年目点検」.玄関ドアのビスのゆるみ,屋上防水シートのきずなど,軽微な補修を必要とする数箇所を除いて,異常は見つかりませんでした.また同時に,綿密なメンテナンスプログラムにより,耐用年数に応じた補修や部品交換を計画的に行っています.>「30年目点検」の結果,大きな異常は見つからなかったとのことです.ヘーベルは30年経ってもほとんど手入れしなくてもいいのだという印象を持たれたのではないでしょうか.しかしその印象は誤りです. ヘーベルは他社プレハブと同じように(あるいは防水シートが原因でそれ以上に)手入れが必要なのです.旭化成はさりげなく主張しています. <また同時に,綿密なメンテナンスプログラムにより,耐用年数に応じた補修や部品交換を計画的に行っています.>この文の隠れた主語は旭化成です.(無償)点検の結果を受けた有償メンテナンスを旭化成は宣伝しているのです.車ではあるまいに,いったい建物本体のどんな部品交換を計画的に行っているのでしょうか. 戸車の交換でした.『旭化成リフォーム株式会社の中期経営計画を策定』にちゃんとでていました. 旭化成はリフォーム工事をハウスケア工事,リフレッシュ工事,増改築工事の三つに分類しています. ハウスケア工事とは網戸の設置や戸車交換のような小額工事です.中期経営計画ではハウスケア工事について次のように説明しています. <これらは売上金額が小さく手間がかかるため、リフォーム事業としては一般的に敬遠されがちです。顧客の高い満足と信頼を得るためにはこの「ハウスケア」を地道に行うことが最も重要と当社は考えます。>立派な心得です.しかしけじめをつけずに,「ゼネコン」旭化成がいくら奇麗事を言ってもだめです. 外壁の再塗装工事はリフレッシュ工事に入っています.防水シート補修もリフレッシュ工事に入っていると思われますが例にはあげられていません. ハウスケア工事では戸車の交換まで例に出しておきながら,それとは比べ物にならないほど重要な防水シート補修に触れないというのもおかしな話です.外構工事は増改築に入っています.我が家の付帯工事の数十万は増改築に分類されていると思われます.また内装リフォームもここに入っています. さて先ほどの『どっちが得?2回と1回』のメンテナンス,改築費用をご覧下さい. 60年でリフレッシュ工事費用は1200万です.増改築費用は700万です.増改築は必要な人だけ行うものですから0の場合もあります.つまりリフレッシュ工事がもっとも大事なのです.ハウスケア工事は費用的にはごみです. 中期経営計画の事業計画のグラフをご覧下さい. 2006年度には2000年度実績の3倍の工事件数12万件(棒グラフ),3倍の売上500億(折れ線グラフ)を目標としたものです. このグラフはなかなかよくできています.旭化成がハウスケア工事に今後も地道にとりくんで売上をあげようと努力するつもりだという錯覚を与えるという意味でよくできています. 棒グラフの内訳は工事件数の内訳です.戸車交換も1件,防水シート1枚張り補修も1件です.単価の全く違う工事の件数を合計してそれを売上と対比してもあまり意味はありません. ハウスケア工事の件数はリフレッシュ工事件数の4倍から7倍です.地道に戸車交換をやるといってもせいぜいこれくらいしかしないつもりです.一方ハウスケア工事の単価はリフレッシュ工事の100分の1程度でしょう.売上に対する寄与ではハウスケア工事はリフレッシュ工事の10分の1以下だということです. 増改築工事の方はどうでしょうか.純粋の増改築は新築と同様に旭化成が手間暇かかる見積・設計を担当しています.利益面ではリフレッシュ工事(と外構工事)が増改築より寄与しているのではないでしょうか.工事店に丸投げしてピンハネする方が効率的であるのは明らかだからです. 旭化成は小額工事を積み上げて地道に儲けているのではなく,リフレッシュ工事のピンハネでがばっと儲けているのです.小額工事は大物を釣り上げるためにまいた餌であり,これで商売しようとしているわけではありません. 顧客は旭化成に対して<蛍光灯交換から押し売り撃退まで頼まれればなんでも>というサービスを期待しているのではありません.本業を適正な価格できちんと責任もってやってくれることを期待しているのです. さてこれは旭化成による10年点検の診断結果です.プレハブの点検はこの程度の簡単なもので,この程度ですむことこそ規格化された工業製品であるプレハブの長所です.コストのかかる建物本体の補修項目も決まっています.外壁補修と防水シート補修です.このことは打合せ記録書の書式を見れば一目瞭然です. 綿密なメンテナンスプログラムによる計画的な補修や部品交換という表現は客を欺くものです. 綿密なメンテナンスプログラムは,光ディスクで保存されているという邸別顧客情報(ハウスカルテ)と連携しているようです.ハウスカルテの内容は上述した点検結果と本物の打合せ記録書原本です.それ以上の何か特別なものが入っているわけではありません.メーカーである旭化成が「建てた後」もお節介をやく正当な根拠はありません.より正確に表現すると正当な根拠を備えたビジネスモデルを旭化成はまだ考え出すことができていません. もし旭化成の<綿密なメンテナンスプログラム>に従わなければ早く壊れるという論理であれば,ヘーベルは工業製品としてできそこない,すなわち欠陥住宅だということになるから,話は簡単ではないのです.旭化成がお節介をやくうさんくさい根拠ならあります.旭化成を信用している顧客を<もう30年?って感じです>のような金をかけたイメージ広告でおびきよせ,工事店に完全丸投げしてコストを浮かせ,ピンハネだけはしっかりやって旭化成が儲かるという根拠です. この全面広告にはうさんくさい話がもう一つありますが,これはJAROに報告した件でここからは分離して『1972年』としてまとめなおしました. |