旭化成は10年点検時点でわが家の基礎に白華現象が起こっていることを知っていました.そして(04年)4月18日に掲載した第11章の写真によって,基礎表面の一部が剥離していることを知りました.この解釈は誤りであることが,以下の経過でわかりました.
5月21日金曜日の昼頃,突然旭化成ホームズ(リフォームではない)から,明日土曜日に外回りの点検を行いたい旨の電話がありました.(無論定期点検ではありません.)Yというものが伺うということでしたので私は承諾しました.ところが翌22日,見事にすっぽかされました.行けないという電話すらありませんでした.
いたずら電話ではないと思います(Yという人は実在するはずです).点検を承諾したということは,第11章の写真に信憑性があるということです.それだけ知れば十分だったのでしょう.
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シュミットハンマー法(以下SH法)による強度の測定です.規則的に穴があいた黄色のシートは打撃点を指定するためのテンプレートです. 測定時,H氏が安東邸と入った数字の埋まった表を手に持っていることに気づきました.10年点検時のSH法のデータであることがわかりました.そんなデータが取られていたとは夢にも知りませんでした. H氏は先日の15年点検時にデータを取らなかった点を釈明しました.10年のあとは20年時点でデータをとる予定で,今回は特別です,とのことです.10年点検時に白華が発生していたから「特別に」データを取ったのではないかと,私は疑っています. 測定が終わったとき,I氏は一言「問題ありませんねぇ」と言いました.旭化成H氏無言.私はI氏の態度に少し不信感を持ちました.H氏は,測定結果の棒グラフに,どういうわけか,私のサインを要求しました.数値の説明一切なし.(ちなみに,H氏はSH法の原理を説明できませんでした.) 旭化成がどういう結論を出すか不明ですが,この簡便な測定を第三者(公的)機関で実施してもらうのは簡単だと思われます.まぁ,いずれにせよ,旭化成がデータを公表してからの話です.当然,設計値・10年時の値・15年時の値の3点セットです. |
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中性化深さの測定です.SH法と違いこちらの測定原理は極めて簡単です.ドリルで穴をあけると,コンクリート屑がでてきます.屑は容器下に溜まっているフェノールフタレイン液におちます.液が赤色に変化した時点の穴の深さが中性化深さです. 容器は3列からなり,各列にドリル位置を指定する穴があいています.つまりこの容器は「テンプレート」を兼ねています. 左の上の写真がI氏が最初に実施した時のものです.「テンプレート」の上端を基礎の上端に合わせるのが旭化成の標準のようです.ごらんのようにここは白華が全く発生していない個所です. 私はもっと下を測ってくださいと要求しました.その結果が下の写真です.ごらんのように,この「テンプレート」を使う限りこれ以上下は測れません. 上と下で3箇所ずつ,合計6箇所の測定を行いました.結果は以下のとおり.(単位ミリ)
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4月8日(金)お昼,旭化成H氏より電話がありました.2週間後の4月21日(木)午後に,H氏とI氏(すなわち3月3日測定実施時の顔ぶれ)で,白華に対する旭化成の公式見解書面を携えて,拙宅に来ていただけるとのことです.まだ2週間も待たせるのかと私は思いました. どういう趣旨の見解かは教えてもらえませんでしたが,シュミットハンマーの値はわかりました.もともと測定結果の棒グラフを私は見ておりサインまでしているのです.もし私がSHのことを少しでも知っていたら,あるいはH氏に教える気があったなら,中性化深さの値がその場でわかったように(これはI氏が測定結果を口頭でH氏に伝え彼がノートにメモするのを,横で見ていてわかったのです),その場でわかった筈のものです.H氏に拒む理由はないと思われます. H氏は言いました.「40近くでています」.ついでに私は10年点検の時の値も聞きました. 私のメモに39.01,40.48と言う二つの数字が並んでいます.どちらが10年点検の値か定かではないのは,ボケが始まったからでしょうか.私は「単位は何ですか」とまた,ぼけた質問をして,H氏を困らせました.私は強度だと思って単位を聞いたのですが,反発度でした(その後の勉強の結果によると,反発度39.01は,15年の材令係数0.63を使用して,約204kgf/平方cmになると思われます.) シュミットハンマーで検索していたら,新築間もないヘーベリアンのブログ日記の中に次のような記述がありました. (シュミットハンマーは)けっこう高価なものだそうです。基礎コンクリの強度240キロ以上あるか、確認のため硬化が完成する28日後にコンクリートの堅さをコレで計測するそうです。現在の旭化成は,この様子からみて,240kgf/平方cmはヘーベルハウスの最低限守るべき基準であるという風に,客に説明しているように思われます. 旭化成が使用したSHのテンプレートは1箇所につき4×5で20ポイントの圧縮度を計測するようになっています.旭化成は東西南北すべて測りましたから,少なくとも80個の数値が存在します.39.01というのは何の数値でしょうか.忘れてならないことは,今回の測定目的が我が家の基礎の全般的強度を調べるためではなく,<白華現象>が異常なのか正常なのか書面見解をだすために実施されたということです. 旭化成がこれまでとってきた行動を,確たる証拠である「点検カード」を中心にまとめると次のようになります. (1)「10年点検カード」には現場状況欄に白華発生と書かれています.そして総合所見欄は異常なしです.客が白い粉がでていると指摘したことにより,旭化成は白華が目立っていた和室前だけなにかを塗りました. (2)「15年点検カード」には,白華に関する所見はありません.ただ白華に関する見解を客が要求したことだけ書かれています.外壁に対しては3〜4年を目処にメンテお勧めのチェックが入っていますが,基礎に対して「早急な対処が必要」などとは一切書かれていません. もし白華は劣化のシンボルであるという小林一輔氏の指摘が真実だとすれば,旭化成が「お客さまの資産価値を守るため」と大々的に喧伝している長期点検は,(悪徳業者の)点検商法となんら変わらないことを示していることになります.一円の金にもならない基礎には目をつぶり,外壁など金になるところだけ客に告知していることになるからです. このことは白華が旭化成責か顧客責かを問いません.この場合にも客に責を押し付けることは不可能ではありません.お宅の炭酸ガス濃度は異常に高いとか,お宅の土地は異常に水分を含んでいるとか,その他その他.『それから』で述べた水俣病事件の「腐った魚原因説」を思い起こしてください. 一番大切なことは,白華の原因が何でありその責任がいずれにあろうとも,客にまずその重要性を告知すべきであるということです.旭化成は10年点検時にも15年点検時にも,白華が劣化のシンボルであり対処が必要などとは一言も述べていないのです.そのことは点検カードに明らかです.塗料すりかえ事件の時は,「打合せ記録書」に塗料変更を記載してまずいことになりましたが,今度は「点検カード」になにも記載されていないことが厳しく追及されるのです. こうしてもし小林氏の指摘が真実だとすると,旭化成がこれまでとってきた行動に釈明の余地はないと考えられます.残された道は,白華が重要であることを知らなかったなどとマヌケなことを言うか,白華はとるに足らない些細な現象だと証明するか,二つに一つです. 前者の釈明は素人には許されますが,プロに許されようはずもありません. 残るは後者です.白華がとるに足らない些細な現象であることを証明してはじめて,旭化成がとった行動はすべて正当化されます.なにも知らない素人がうるさいことを言っているという,旭化成完全勝利で話はおわります. 中性化深さの測定結果は旭化成にとってまずい値のように思われます.強度に関して言えば,「耐力」が目にみえて劣るという結果がでるのは,最終局面の話だと思われます(旭化成が見解を出したあと,ある論文を引いて説明する予定です). 旭化成の書面見解は,以上述べたことに加え,回答まで時間がかかりすぎていること,説明が現場担当者に任せられたことをあわせて考えれば,期待しても無駄な内容だと私は予想しています. (05年4月12日記)
追記:私は旭化成が頭を悩ませているであろうこととは別のところでちょっと悩んでいました.小林氏はマンションの物理的耐用年数は35年であると主張しました.マンションが35年なら,家が30年であって一向におかしくありません.品質劣悪なコンクリートで施工された基礎のことを考慮すれば,「日本の家は27年しかもたない」という熊野コンセプトは,結果として,成立するのではないかという意見に対するきちんとした反論です.これがないと『寿命すりかえ事件』のエピローグとは言えないのです. |
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東京オリンピックが開催された1964年を境にして,それ以降に建設された橋梁,建築物のいずれも寿命(物理的耐用年数)は短くなっている(同41頁)と述べその原因として「コンクリートポンプのコンクリートの品質に与えた影響ははかり知れないものがある」と指摘しています(同147頁).この指摘は国の調査によって「実証」されていることを知りました.
| 劣化度 | 一般的状況 |
| 1 | 劣化の兆候なし,健全 |
| 2 | 劣化の兆候あり.軽微なひび割れや錆汁等.条件によっては劣化の進行が予想される. |
| 3 | 劣化あり,追跡調査必要.現時点では耐力,使用性に影響ないが,将来的には劣化の進行が予想される. |
| 4 | 劣化が著しく,詳細調査を行い補修するかどうか検討の要あり.耐力や使用性に悪影響がでているおそれあり.放置すると劣化の進行が予想される. |
| 5 | 劣化が著しく,補修,補強が必要.耐力や使用性低下が明白. |
「コン低品質」と判断されたものには,豆板やコールドジョイントのように施工に起因することが明らかなものと,エフロレッセンスの析出やコンクリート表面の変状など原因が必ずしも明確でないものがあったが,前者が比較的目だった.また,配筋不良と判断されたものは,そのほとんどがかぶり不足に起因した鋼材露出および錆汁の流出であった.この基準に従って判定された結果が竣工年別に示されています(三井論文図-3).論文の棒グラフを表になおすと次のようになります(数値にはすべて約がついていると思って下さい.また(-)とはグラフでは読み取れないほど小さいという意味です.)
| 竣工年 | 劣化度1 | 劣化度2 | 劣化度3 | 劣化度4 | 劣化度5 |
| 〜64年 | 60% | 28% | 10% | 2% | - |
| 65年〜74年 | 65% | 28% | 7% | - | - |
| 75年〜84年 | 78% | 20% | 2% | - | - |
| 85年〜 | 90% | 10% | - | - | - |
| 劣化度 | 症状 | 所見 | 対処 |
| 1 | 劣化の兆候なし | 健全 | 不要 |
| 2 | 劣化の兆候あり | 条件によっては劣化の進行が予想される | ? |
| 3 | 劣化あり | 現時点では耐力,使用性に影響ないが, 将来的には劣化の進行が予想される. | 追跡調査必要 |
| 4 | 劣化が著しい | 耐力や使用性に悪影響がでているおそれあり. 放置すると劣化の進行が予想される. | 詳細調査を行い補修するかどうか 検討の要あり. |
| 5 | 劣化が著しい | 耐力や使用性低下が明白 | 補修,補強が必要. |
| 劣化度 | 症状 | 所見 | 対処 |
| 1 | 劣化の兆候なし | 健全 | 不要 |
| 2 | 劣化の兆候あり | 条件によっては劣化の進行が予想される | 簡易調査要. |
| 3 | 劣化あり | 現時点では耐力,使用性への影響は不明. 放置すると劣化の進行が予想される. | 詳細調査要.補修要. |
| 4 | 著しい劣化あり | 耐力や使用性に悪影響がでている.放置できない. | 補強,補修要. |
| 5 | 甚だしい劣化あり | 倒壊の危険あり. | 早急に取り壊すべし. |
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これは『コン危』の24頁にある写真です.私はこれを見て愕然としたのです(第11章参照).小林氏は次のように説明しています.和歌山県下の高速道路では,高架橋橋脚の根元の部分が深くえぐりとられたように崩落していた.人間がまったく手を加えていない状態で崩落したのである.この部分だけ崩落した理由は明らかである.地中部の基礎からたえず供給される水分がもっとも活発に上昇するためである.同じような劣化は,大阪府下の高速道路の高架橋橋脚でもおこっている.橋脚の場合,根元がしだいに削られていくので,放置することはできない.白華を放置するとこのような状態になります(崩落部の中および周辺に白華の跡が見られます).小林氏は「放置できない」と認定しました.役人なら「追跡調査必要」といったところでしょうか. |
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コンクリート中の水酸化カルシウムは空気中の炭酸ガスと反応して炭酸カルシウムと水に分解します. 水酸化カルシウム+炭酸ガス→炭酸カルシウム+水この反応によってコンクリートが本来持っている強アルカリ性(pH12〜13)は失われます.この現象は中性化と呼ばれコンクリートの経年劣化と関連して建築分野では古くから研究対象になっていました.近年,コンクリートの強度や耐久性の源泉であるケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)と炭酸ガスの反応の重要性が認識され,中性化より広い意味で炭酸化と呼ばれることがあります.その場合も現象としては(より急速な)中性化の進行として現われます. 中性化深さは,コンクリート表面からどこまで深くアルカリ性が失われているかを表わします.中性化深さは経過年の平方根に比例するとされ,その比例係数は中性化速度係数と呼ばれています.すなわち, 中性化深さ(mm)=中性化速度係数×√経過年 (1)となります.この式は中性化の速度が二酸化炭素のコンクリート中での拡散過程によって決まると仮定すれば理論的にも得られます.この式は数多くの実験結果や実態調査によって成立することが認められています. 中性化速度係数は,「もの」の特性値ではなく,「もの」+「環境」で決まる量です.同じ「もの」であっても,「環境」によって次のように変わります(「もの」から見れば仕上げ材は広義の意味で環境です). 炭酸ガス濃度の高い環境なら中性化速度係数は大きくなります.モルタル,エポキシ等で厚く塗られていたなら,裸のものより係数は小さくなります.基礎の土中部分は,空気にさらされている立ち上がり部に比べ係数は小さくなります. さて(1)式が特に重要なのは,1927年(昭和2年)に浜田稔が「鉄筋にさびの発生した部分はそれに接するコンクリートはアルカリ性がほぼ消失しており,一方鉄筋にさびのない部分はアルカリ性であること」を発見したからです. 浜田は「鉄筋のかぶり厚さとコンクリートの水セメント比から鉄筋のさび始める時間を推定する式を誘導」し,「鉄筋コンクリート造の寿命を長くするには中性化のおそいコンクリート(水セメント比の少ないもの)を用い,密実に施工することが必要であると結論」しました.(岸谷孝一著『鉄筋コンクリートの耐久性』,鹿島建設技術研究所出版部63年刊より.これは岸谷の学位論文です.) 浜田は「施工が中程度以下の場合に適用する次の関係式」を導入しました.浜田式は,中性化深さが時間の平方根に比例して進行すること,中性化深さがかぶり厚に達すると鉄筋がさび始めること,そして中性化速度係数は水コンクリート比をパラメータにこれこれで表わされること,以上3点を主張しています.岸谷は浜田の研究によって,「鉄筋コンクリート造の耐久性解明の最も大きな部分が明らかにされた」と述べています(上掲書).私も実にその通りだと思います. さて今日でも浜田の考えに従って,中性化深さがかぶり厚30mmに達する年数を物理的耐用年数(の目安)とするのが一般的です.物理的耐用年数は(1)より次のようになります. (中性化による)物理的耐用年数=(30/中性化速度係数)^2中性化速度係数が3の時,物理的耐用年数は100年になります.係数が6の時,耐用年数は25年になります.係数が2倍になれば,耐用年数は4分の1になるという関係です.ちなみに,水セメント比が0.6とすると浜田式による係数は3.7となり,耐用年数は65年となります. 中性化のようなケミカルな過程はどうでもよく,鉄筋が錆び始めてからはじめて物理的耐力の劣化が始まると主張する「工学的立場」からすれば,中性化による寿命は安全側に過ぎる,つまり短く出過ぎるということになります.しかし後に示すように多くの(まともな)コンクリート構造物は十分長い「中性化寿命」を示しています.またコンクリートの強度の源泉であるC-S-Hが化学反応すれば,鉄筋が発錆する前であっても物理的耐力に大きな影響を与えると思われます.そして最後に,安全側に出ることがなぜ問題なのか,という根本的な疑問が残ります. 中性化速度係数に関しては次のような研究があります. 1.浜田式(28年,69年) 2.岸谷式(63年) 3.白山式(76年) 4.依田式(82年) 浜田式については上述しました.その他の式はしかるべき成書をご覧下さい.二つコメントしておきます. 4つの式のすべてに,水セメント比がパラメータとして入っています.重要なことは水セメント比で中性化速度係数が次のように変化し,それに応じて物理的耐用年数が大きく変化することです(かっこ内は物理的耐用年数).
赤字で示した水セメント比0.6の値(耐用年数65年)が,コンクリート建造物の法定耐用年数を決める際のベースになった値だと思われます.水セメント比を0.55に下げれば,現在よく使われているという岸谷式によれば,耐用年数は100年を越えることがわかります. 浜田,岸谷式は,水セメント比は別にして,材料(骨材種別,セメント種別等)がきまれば中性化速度係数がきまる形になっています.一方白山,依田式は,仕上げ材という「環境」を考慮しているほか,施工品質を反映する形になっています. 白山式では「施工程度による係数」が導入されています.施工程度が優と劣では,中性化速度係数に2.8倍の違いがでます.また依田式の「品質係数」では,「施工が優れている場合」と「施工が普通(下)」で中性化速度係数に2倍の違いがでます.(仕上げ材に関しては,いずれの式もタイル張りと裸では中性化速度係数に3倍近い違いがでます.) 施工品質は,水セメント比だけでは説明できない,高度成長期の劣悪コンクリートの異常な中性化速度を説明するために導入されたと考えられます. 我が家に残っている新築時のヘーベルハウスFシリーズパンフレットには,「土台の鉄筋コンクリート連続布基礎は,70年以上もの耐久性を備えています」とありますから,ヘーベルハウスの想定中性化速度係数は3.6以下ということになります. わが白華ヘーベルハウスはどうなっているでしょうか? 旭化成が計測した我が家の白華近傍の3点の平均値23mm,経過年15年を代入すると,中性化速度係数は5.9となります.物理的耐用年数は(30/5.9)の2乗すなわち,約26年になります.あらあら,まるで絵にかいたような数値になりました.これに対する旭化成の公式見解は,「中性化進行は少し早いと思われます」・・・・・・です. 準備終わり. |
「白華公団住宅」は『コン危』106頁(14号棟),東名高速道路と山陽新幹線は同38頁の値から算出. |
1965年以降は64年以前に比べて,中性化速度係数の小さいものと大きいものの両端で頻度が低くなり,中性化速度係数が1〜6mm/√年の範囲でそれが高くなっていることが認められる.この傾向と劣化の関係については不明であるが,この傾向はポンプ圧送工法の普及によりコンクリートの品質が一定化したことによるものと推測される.「ポンプ圧送工法の普及によりコンクリートの品質が一定化した」 ???
つまるところ,鉄筋コンクリート造りの建物は定期的な修繕をほどこせば,構造耐力を保つうえで致命的な問題を生じないとすることができるのである.定期的な修繕をくりかえし,本書で説明した設備関係の更新,更正をおこない,陳腐になった付帯物を交換していけば,100年でも十分に耐用することが期待できるのである.これは一定の基準,たとえば浜田規準を満たしているマンションにだけあてはまることです.「定期的修繕」は万能ではありません.小林氏自身は『コン危』において次のように述べています(同208頁).
調査では,コンクリートの強度が設計規準強度に満たないような建物基礎が多く存在していることが確かめられた.建物の外壁や屋根などは補修が可能であるが,基礎の補修・補強は困難である.もし実施するとすれば,莫大な費用が必要であり,分譲マンションの管理組合の手に負えるものではない.物理的耐用年数35年のスクラップマンションにいくら「定期的修繕」をほどこしても,100年もたせるのは無理です.わが白華ヘーベルハウスの基礎にいくらエポキシを塗っても,旭化成の公称値70年もたせるのは土台無理です.それが水準に達していない,できそこないのコンクリート構造物の宿命です.
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| 三井論文は図について次のように説明しています.両者の間に明確な因果関係は認められないが,強度が大きくなるにつれ中性化速度のばらつきが小さく,かつ遅くなっていることから,コンクリートの強度を大きくすると,中性化による劣化に対して信頼性を向上させることができ,逆に強度が小さい場合には,中性化が遅い事例と速い事例が混在しているが平均的には早くなるため,信頼性が低下する傾向にある.すっきりしない文です.係数と強度の相関図の説明に「信頼性」を持ち出し「因果関係」を論じようとしています. |
中性化速度係数=A/√圧縮強度−B (A,B>0)これを今回の相関図にプロットするとおおむね次のようになります(福島書図−5.4から目の子で変換).
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| 「両者の間に明確な因果関係は認められない」とは,たとえばこの馬場式に沿ってきれいな分布が得られなかったという意味だと思われます. 中性化速度係数は,時間の関数ではありませんが,「環境」たとえば仕上げ材には大きく依存します.一方,圧縮強度は仕上げ材には依存せず,時間に依存すると考えるのが常識的です. 馬場式は一定材令で「裸」の数種のコンクリートに対して得られたものです.現実の構造物は一定材令でも裸でもありません.したがって現実の相関図が,一本のきれいな曲線に沿って分布しないのは当然だと思われます. しかし馬場式(あるいは和泉式)に類する関係が根底で成立しているとすれば,この相関図の唯一の特徴といっていい,右上の「空白の三角地帯」は説明できます. |
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図を強度側から見て, (1)十分大きな強度をもつものは,係数が十分小さい ということが言えます(左図参照).しかし そうでない強度のものに関しては,なんともいえません. 三井論文の考察は端的にいうと以上で尽きています. |
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今度は図を係数側から見て, (2)十分大きな係数をもつものは,強度が十分小さい ということが言えます(左図参照).しかし そうでない係数のものに関しては,なんともいえません. (1)と(2)は「対偶」のように見えますが実は独立した命題です.十分小さいの「否定」は普通または十分大きいだからです. 高規格超高層マンションの住人にとっては(1)が重要で,「白華住宅」の住人には(2)が引導です. もう一つ図から明らかに成立する命題があります. (3) (1)も(2)も「逆」は成立しない. エポキシで塗り固められたブロックは,強度も係数も十分小さいのです. |
JR西は尼崎脱線事故直後のきわめて早い段階で粉砕痕を持ち出して,各方面からその隠蔽姿勢を厳しく批判されました.調査というものは,調査の目的によって結果が大きく異なります.真実を見つけようとする為の調査なのか,真実を隠す為の調査なのかが問題なのです.『コン危』にある埼玉の「白華公団住宅」に対する調査は,その意味で非常に教訓的です. 「白華公団住宅」は公団の5階建て分譲住宅です.全31棟,1000戸の大規模集合住宅で,施工した会社は4社です.工期は73年から74年,入居開始は75年4月です.入居後10年時点で,3分の2の20棟に,外壁などのPC板にひび割れ,5階住居に雨漏り,浴室天井,ベランダなどに鉄筋腐食とそれによるコンクリート剥離という劣化現象を起こしていました. 住民からのクレームに対して公団側は,「コンクリートの建物は10年も経てばこんな状態になるのが普通で,あなたの団地が特別ひどいわけではない,あなた方の管理が悪いのではないか」という対応をしていましたが,問題が大きくなり国会にまで持ち込まれた結果,国の調査委員会が設けられました. 調査委員会は,1.圧縮強度は202〜553kgf/平方cmで設計規準を満たす,2.中性化深さは,屋根大庇下面,ベランダ先端部以外は,5〜10mmで通常のコンクリートと同程度である,3.アルカリ骨材反応はみられない,という結論を出しました(『コン危』12頁).要は通常の経年劣化であり異常ではないと結論したのです.これに対し住民側の要請を受けて調査した東大小林グループは,この結論を真っ向から否定しました. 焦点となったアルカリ骨材反応に関しては,両者とも同じ土俵すなわち異常膨張が生じるかどうかで判断しています.『コンクリート構造物の早期劣化と耐久性診断』(小林一輔著,森北出版,91年刊:以下『早期劣化』と略記)には,アル骨なしの根拠となった実験結果が示されています.そしてその実験がコア抜き方向を誤るというチョンボの為,アル骨の判定には無意味な実験であったことが,素人にもよくわかるように説明されています. 本物の専門家を相手にしてしまったのですから,公団側としては相手が悪かったというところです.では,専門的知識を要する「潜在膨張性」の実験よりずっとポピュラーな圧縮強度や中性化深さの測定でなぜ結論が異なるのでしょうか.それは結局どこを測るかです.そしてどこを測るかは,異常を見つけようとするのか,異常を隠そうとするのかによって,まるで違ってくるのです. 次の表は『早期劣化』の210頁の表を簡略化したものです(『コン危』106頁の「変色深さ」の表に対応しています).表中の14号棟の基礎は「白華が活発に発生」したところです.国の調査委員会は,こういう所は測らなかったか,あるいは測っていても隠したかのいずれかです.
この表は多くのことを教えてくれます.同じ基礎であっても,地上と地中でいかに中性化の進行が異なるか,中性化の進行とともにいかに圧縮強度が低下しているか,そして中性化が基礎の裏側からいかに進行しているか・・・ 小林氏は調査委員会について次のようにストレートに述べています(『早期劣化』214頁) 一般に官公庁がこの種の調査を行う場合には,どのような結論が得られることが好ましいかという方針が先行して決められているのである.この場合,調査委員会はこれをオーソライズするために用意されると考えればよい.調査委員会の委員長は表面的には第三者である大学教授が任命されるが,“表面的には”と断った理由は依頼者と十分に意志の疎通が可能な人,たとえば住宅・都市整備公団の場合には身内の建設省建築研究所出身の大学教授ということになる.調査委員会の委員は依頼者である公団が上記の委員長と相談して決めることになる.このようにして作成された報告書に対して,住民側が「団地の建物にはいろいろな変状がおこっている.報告書はその原因について何一つ明らかにしていない」と感じたのは,まことにもって当然至極な話だったのです. 私は白華近傍の3点の平均値23mm(中性化速度係数5.9)だけで議論してきました.サンプルが少ないと思われた人がいるかもしれません.しかし測定対象となるコンクリート面積との比率で考えると,これは「白華公団住宅」あるいは山陽新幹線,東名高速道路(『コン危』38頁),あるいはまた三井論文での中性化深さの測定などより,実はずっとサンプル採取密度が高いのです. 目視で異常が認められない劣化度1の場合であれば,適当な所を測定するしか手はありません.しかし変色していたり,ひび割れしていたり,白華が生じていたならば,その近傍を測るのが理にかなっています.無論,隠そうとする立場ではそういうリスキーな場所は避け,たとえば旭化成が最初したように白華発生ゾーンから20cm上を測定する方が合理的であることは言うまでもありません. 我が家の白華近傍の中性化深さ,21.5mm,23.0mm,24.5mmの三つ組みは,各値が接近していること,そして大きな値がでては困る(であろう)旭化成が測定した結果であることから,珍重するに値すると私は考えます. | |||||||||||||||||||||||||
塩害とアルカリ骨材反応に対しては,1986年にコンクリート中に含まれる塩化物量の総量規制やアルカリ骨材反応の暫定対策が出され,それ以後に製造されたコンクリート構造物では,塩害やアルカリ骨材反応の兆候は見られず,規制による効果が出ているものと考えられる.83年にNHK斎藤記者が報道した山陽新幹線工事での未除塩海砂使用や大阪工大二村誠二氏が発表したアル骨反応事例などを契機として,コンクリート劣化問題は社会問題化しました.小林氏は次のように述べています(『早期劣化』23頁).
コンクリート構造物の早期劣化問題について,国内の各界をあげて取り組む契機を与えたのは,土木学会でもなければ建設省でもなく,NHKを初めとするマスコミの力であったこの点は米国やドイツなどと大きく異なる点であり,わが国の早期劣化問題を考える場合に「きわめて重要な意味をもっている」と小林氏は強調しています.建設省はマスコミに叩かれてあわてて規制しただけであり,自慢げに規制の効果を喧伝できるような筋合いのものではないのです.
アルカリシリカ反応(ASR)とは,骨材中の反応性をもつシリカ(二酸化けい素)と,コンクリート中に含まれるアルカリ(Naイオン,Kイオンなど)が反応することによって生じた生成物が吸水して膨張し,コンクリートにひび割れなどを生じさせる現象(JISA1145の説明)2.低アルカリ形セメント(セメント中の酸化ナトリウム換算のアルカリ量が重量比で0.6%以下)を使用する.
欧米諸国ではアル骨反応対策として,反応性骨材のチェックと並行してセメント中のアルカリ量を規制しています.アメリカでははやくも41年に重要工事にはアルカリ量0.6%以下の低アルカリセメント使用を決めています.2はこの「国際基準」に対応するものです.3.コンクリート中のアルカリ総量を3kg(コンクリート1立方mあたり)以下に抑制する.
骨材として海砂を使用していたイギリスは83年に総量規制を開始しています(中性の塩化ナトリウムは,その中の塩素がフリーデル氏塩として固定されるため,アルカリとして機能します).3はこのイギリス方式に対応します.(旧対策ではアルカリ総量の中味は表にでていませんが,新対策では(セメント中のアルカリ+骨材中のNaCl起源のアルカリ+混和剤中のアルカリ)と明確になっています.)
旧対策→国交省案(たたき台)→寄せられた意見と国交省の見解→新対策の4つを比較する(WEBで閲覧できます)だけで,種々の問題点が浮かびあがってきます.
国土交通省としては,現在の4つの対策が根本的に問題があるとは考えておりません.そのため,ひとつひとつの対策を改訂するつもりはございません.ただし,低アルカリセメントが事実上生産されていないこと,骨材の反応性試験結果が十分に信頼できる状況にないこと,等の状況変化に対応するため,改訂を提案しました.低アルカリセメントという選択肢は国交省案の段階で姿を消しています.残すべきであるという意見(6件)に対して国交省は次のように答えています.
セメント会社の大手4社における,過去10年間の低アルカリセメントの生産量を調査した結果,1995年に11000t生産されている他は全く製造されておりません.また,現在製造されていう普通ポルトランドセメントのアルカリ量も低くなってきています.したがって今回の改定案では「低アルカリセメント」の条文を削除することにいたしました.この削除理由は注目に値します.低アルカリセメント使用は,セメント中のアルカリ量だけでアル骨反応を抑制しようとするものです.国交省が削除した理由は,それでは不十分であるという「根本的な理由」によるものではない,ことがわかります.もっと低次元のセメント業界都合で削除したのです.
アルカリ総量の問題は、高強度コンクリートではセメント量が450kg/m3使用されることも少なくなく、セメントから持込まれるアルカリ量は低アルカリセメント並みのアルカリ量0.6%としても2.7kg/m3に達し、その他混和剤、水から来るアルカリを考えると3.0kg以内に抑えること困難である。なるほどセメント量が多い(富調合)コンクリートは富調合であればあるほど,アルカリの絶対量を規制する総量規制が守りにくくなるのは道理です.しかしそれなら0.6%規制に従えばすむ話です.こちらなら超富調合コンクリートであってもなんの問題もありません.ところが国交省は低アルカリセメントを削除してしまいました.すると高強度コンクリートの場合,2の道しか残されていないことになります.
近年セメント中のアルカリ量が増えたとする見方がありますが,セメント協会の資料によれば,わが国における昭和30年以降のセメントのアルカリ量は下表のとおり推移しているのが実状であります.20年前にも,最近はアルカリ量が減っていると言っています! アルカリ量はこの見解以前には一切公表されていませんでした.(セメント試験成績表にアルカリ量が表示されるようになったのは,見解の3年後の86年10月からです.したがって我が家で使われたセメントのアルカリ量がいくらであったか,旭化成は当然知っています.)
これによれば,セメントの製造方式の変遷によって必ずしもセメント中のアルカリ量が増加しているとはいいがたく,むしろ最近数年間のアルカリ量は微減の傾向にさえあることを,ご認識いただきたく思います.
なお,わが国におけるアルカリ骨材反応によるコンクリートの劣化は最近報道されたものを除いてほとんど見あたらず,反応性骨材の使用を避ければ問題はないと考えます.
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左は見解にある表をグラフ化したものです.国際基準の0.6%をベースにしました.参考のため驚異的に増加した生産量の推移も追加しておきました(70年以前の値は概数). 見解には最小値はありませんが,協会が83年度に45工場に対して調査した結果によると,約2割にあたる8工場が0.6%以下(最小は0.3〜0.4%の1工場)です.逆に高い方では0.9%以上が全体2割にあたる9工場(最大は1.0〜1.1%の3工場)で,平均は0.73%です(『コン危』85頁). セメント製造方式の転換は,東京オリンピック(64年)頃から始まっています.「セメントの製造方式の変遷によって必ずしもセメント中のアルカリ量が増加しているとはいいがたい」というのは本当でしょうか. 生産量が少なくちょっと怪しげな先頭の55年(昭和30年)データに惑わされなければ,増加傾向を明瞭に見て取れます.0.1%の増加はアルカリ量でみれば1割以上の増加であることにもご注意下さい. このいわば「犯人側」提出資料によっても,高度成長期に高アルカリセメントが大量に市場に出回ったことは明々白々です. |
(略)わが国でアルカリ量の少ないセメントを製造するには低アルカリ粘土の選択使用やキルン排ガスのバイパス方式によるダストの処理などが必要となります.アルカリ量の規制は国家的損失とまで極言しています.水俣病事件におけるチッソの姿勢とそっくり瓜二つです.
前者の場合このような粘土の入手は極めて困難であり,後者の場合は熱消費量の増大や膨大なダスト量の廃棄という問題をかかえ,現実には工業生産上・流通上大変な困難を伴い,高価なセメントとなります.
したがって,ごく一部の反応性骨材のために,アルカリ量を規制することは,国家的に大きな損失を招くことになり慎重な対応が必要です.
岩波新書『マンション』を読んで知りましたが,小林一輔氏はエフロレッセンス(以下エフロ)と白華を区別して使っていました.氏によればエフロとはひびわれに水が浸透して溶出してくる白色物質で,ものは炭酸カルシウムです.その形状は堅くこびりついた付着物です.一方『コン危』にでてくる白華は,簡単に除去できる雪状の結晶で,ものは炭酸ナトリウムです.それは水に簡単に溶けます. 小林氏はなぜこの二つを区別したのでしょうか.それはもちろん,この二つが全く違うものだからです. 地元の図書館にあった建築関係の辞典でエフロを調べてみました. (1)建築大辞典(第一版,76年,彰国社) 石材・コンクリートおよび煉瓦などの表面に侵出して結晶化した白い物質.石材中のアルカリがセメントおよび空気中の硫酸分と化合して出来た硫酸ソーダで,石材を著しく損傷し,石材の風化を促進する.軟石類に多い.コンクリートの場合はセメント中の水酸化石灰が加水分解した水酸化カルシウムの晶出による.「擬花」「白華」「鼻垂れ」などという.(2)建築大辞典(第二版,93年,彰国社) 内容は後述. (3)建築用語辞典(第二版,95年,技報堂出版) 石材やコンクリートの表面にできる白い結晶のこと.石材の場合は,石材中の少量のアルカリ金属がセメント中のせっこうや空気中の亜硫酸ガスと反応して硫酸ソーダとなるもので,コンクリートの場合は,主にセメントの加水分解によって生じる水酸化石灰のためである.擬花,白華,鼻垂れなどといわれる.エフロともよぶ.エフロとは石材またはコンクリートに発生する白い物質のことです.白い物質の正体は,石材の場合とコンクリートの場合で違うことがわかります.違うものに対して同じエフロという名前(=擬花=白華=鼻垂れ)が与えられているわけで,混乱はここから始まります.白華という日本語が喚起するイメージと鼻垂れのそれはまるで違います.もともと名づけた人は別のものを指していたに違いありません. コンクリートに話を限ります.建築大辞典の第一版は,コンクリートの劣化といえば,中性化による経年劣化(水酸化カルシウム→炭酸カルシウム)を意味していた古き良き時代に書かれたものです.この大辞典第一版も,その定義を踏襲している(3)の用語辞典も,エフロを水酸化カルシウムに関連付けています. WEB上でみた建築関係の(豆)用語辞典,たとえばヤフー不動産の用語集も,次のようにエフロを炭酸カルシウムだとしています. エフロレッセンス 【えふろれっせんす】 (略)原因は、セメントの水和生成物としての水酸化カルシウムや硫酸塩などが、ひび割れを通ってくる水に溶け出して外気にさらされ炭酸カルシウムに変化して析出するため。コンクリート劣化の指標のひとつ。同じくWEB上で北海道農材工業の笠井という方はレンガに発生したエフロをどう処置すればいいのかという質問に対して次のように回答されています. レンガおよび目地部分の白い結晶は「エフロレッセンス」と呼ばれ、セメントの硬化で生成した水酸化石灰と大気中の炭酸ガスが化合した炭酸カルシウムが結晶化したものです。その原因はモルタルの乾燥収縮等によりひび割れが発生し、その部分に水が浸入したためだと考えられます。懇切丁寧な説明です.エフロの除去には塩酸処理が必要なのです.また放置しても水酸化カルシウムがなくなればそれ以上ひどくならないが,「意匠的には見栄えがしない」と述べておられるのも,そのとおりだと思います. コンクリートの場合も,なんらかの理由でひび割れが発生しそこに水が回ると,同様のメカニズムでエフロが発生します.この場合「鼻垂れ」という呼称にふさわしい形状を示すでしょう. 小林氏が定義したエフロは,以上見てきたエフロの定義と同じです.水酸化カルシウムはセメントの水和反応で大量に生成する物質であり,それを起源とするエフロは,おそらく明治時代からよく知られていたと思われます. エフロ自身は異常現象ではなく,ひびわれがあり,そこに水が回れば出てきて当たり前です.なぜひび割れが発生しているのか,なぜ水が回っているのか,の方が重要です. 一方,小林氏の定義による白華は,コンクリート中に少量含まれているアルカリ金属が関係しています.その意味では,建築大辞典第一版で石材の方に書かれている石材を著しく損傷させるエフロ(ものは硫酸ソーダ)に類似しているといえます. コンクリート分野の研究者の関心が,早期劣化が社会問題化して以降,水酸化カルシウム起源のありふれた<善玉エフロ>ではなく,アルカリ金属起源の<悪玉エフロ>に移ったのは必然だと思われます.そしてそれは建築大辞典第二版のエフロの定義に,まともとは言い難い形で,反映されました. 93年に出た建築大辞典の第二版では,エフロは次のように説明されています. 石材,コンクリートおよび煉瓦目地などの表面に晶出し結晶化した白い物質.セメントや煉瓦中に硫酸アルカリ,特に硫酸ソーダを多く含む場合に出やすい.軟石類は著しい損傷を受ける.透水しやすいコンクリートにも発生しやすい.エフロレッセンスは冬季の工事で目立つ傾向がある.「擬花」「白華」「鼻垂れ」などともいう.石材とコンクリートを区別せずに無理やり統一的に扱おうとしています.その結果,第一版の石材劣化に関する明快な説明は失われました.また第一版にあった水酸化カルシウムは姿を消し,明治以来多くの人の眼に触れてきたであろう善玉エフロは,なんの断りもなく,排除されたと思われます.にもかかわらず,「擬花」「白華」「鼻垂れ」に関しては古い版の記述をそっくりそのまま踏襲しています. 驚くべきことに,第二版のこの定義では白い物質の正体に一言も言及していません.謎の白い物質なのです.ここには,謎の白い物質がどのような条件の時発生しやすいか,だけが書かれているのです. 93年の第二版は,76年の第一版以降,大幅に増えたに違いないコンクリートの知見を反映し,エフロの定義を整理する好機だったと思われます.ところが舌足らずでまことに中途半端で曖昧な記述に終わっています.落ちたのはコンクリートの品質だけでなく,建築学者の質も落ちたのでしょうか. 建築大辞典第二版のあいまいな定義は,さまざまな混乱を生んだと思われます.これも地元図書館にあった02年刊の永井達也著『コンクリートがわかる本』(日本実業出版社,02年刊)には次のように書かれています. 風雨にさらされたビルの外壁などには,コンクリートの深いひび割れから浸み出した,見栄えの悪い白色の結晶が見られます.これをエフロレッセンスといいます.これは,ひび割れからしみこんだ水にコンクリート中の硫化カルシウム,硫化マグネシウムなどが溶け出して浸み出し,空気中の炭酸ガスと化合して生じた塩類です.(155頁)「ひび割れから浸み出した,見栄えの悪い白色の結晶」,硫化カルシウム,硫化マグネシウム・・・? さて同じ本のわずか5頁うしろには次のようにあります. また,コンクリート中の水分の蒸発とともに,セメント中に含まれる硫酸ナトリウム,硫酸カルシウムなどが表面に出てきて白い羽毛状に結晶することがあります(エフロレッセンス).これと似たものに,セメント中の水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素と化合して炭酸カルシウムになり,白色の析出物が生じることがあります.これを,白汚といいます.(160頁)おわかりのように,前の定義と後ろの定義では,結晶の形状も関与する物質も,まるで違っています.注目すべきは,後ろの定義において,善玉エフロに白汚という別の名前を与えてエフロから追い出していることです.前の定義は建築大辞典第一版が,後の定義は第二版が,下敷きらしいことがわかります. 後ろの定義は,小林氏がいう白華と似て非なるものです.硫酸ナトリウムが表面に出てきて云々というのでは,溶けていたものが結晶化するだけであり劣化とは無関係なつまらん話です.劣化メカニズムには多くの場合<化学反応>が関与しています.この定義には肝心の炭酸化がすっぽり抜け落ちているのです(白汚の方には明記されている!). 巻末の「さくいん」は,二つの「矛盾する」エフロの定義を,きちんとインデックスしています.これらは別の人が書いたとみるのが自然です.原稿の見直しを怠って本にしたか,それとも読者を混乱させる事が目的なのか,いずれでしょうか.著者は40年近く大成建設に勤められた方です. さて建築大辞典第二版にもどります. 第二版のエフロの記述が言葉足らずでどうしようもないものであることは疑いようがありません.しかしそれだけにかえって,寡黙な一言一言に,ありがたみがあるのです! 第二版は次のように述べています. セメントや煉瓦中に硫酸アルカリ,特に硫酸ソーダを多く含む場合に出やすい.セメント中のアルカリは,原料の粘土に由来するアルカリ金属と,燃料に由来する硫黄分が結合して硫酸アルカリ(硫酸ナトリウムあるいは硫酸カリウム)の形をとっています.つまり建築大辞典第二版は,エフロ(小林氏が言う白華)は高アルカリセメントが使用された場合に出やすいと明記しているのです. 小林氏は「白華公団住宅」で多量の白華が発生した原因について,「この原因については明快であってアルカリ量の多いセメント使用以外には考えられない」と述べています(『早期劣化』213頁) 同書の別の個所では「白華現象は使用したセメント中のアルカリ量が酸化ナトリウム量換算で約1%を越えると顕著に顕れるといわれている」と述べています(『早期劣化』167頁). アルカリ量とアル骨反応の関係については,小林氏は次のように述べています. わが国でアルカリ骨材反応を引きおこしたセメントは,いったいどのていどのアルカリを含んでいたのか? 私は0.9〜1.1%と推定している.(『コン危』78頁)「白華公団住宅」では,アル骨反応も白華も起こった. 「白華ヘーベルハウス」では,骨材規制のおかげでアル骨反応は免れた(?),しかし白華は起こった. 「白華公団住宅」と「白華ヘーベルハウス」で共通することは,アルカリ量の多いセメントが使われたことです.「白華公団住宅」を施工した会社は,その事実を知らなかった(アルカリ量は公表されていなかった)と思われますが,「白華ヘーベルハウス」を施工した旭化成は知っていた筈です.もし知らなかったとすれば,建設省のアル骨反応対策は旭化成には馬の耳に念仏だったことになります. 白華は羽毛状,綿状,雪状などと表現される結晶形態にふさわしいきれいな言葉です.鼻垂れは,たしかにその姿をよく表わしているので裏でそう呼ぶ分には問題ありませんが,正式にはやはり上品にエフロと呼んでおくことにしましょう. 白華という美しい名をもち,水を撒けば淡雪のように溶けてしまうものの本性が実は魔性で,俗称鼻垂れで処理に手がかかるエフロが,実は根は善良なのです. |
水酸化カルシウム+二酸化炭素 → 炭酸カルシウム+水 (1)(1)が進行すると,水酸化カルシウムがなくなり,水酸化カルシウム起源の水酸基イオンによって保たれていたコンクリートの毛管空隙中の水分のアルカリ性は失われます.これが中性化です. 水酸化カルシウムだけでなく,(2)のケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)や,エトリンガイト,フリーデル氏塩等と二酸化炭素の反応まで含んだものが炭酸化です.
ケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)+二酸化炭素 → 炭酸カルシウム+二酸化ケイ素+水 (2)
炭酸化の速度を支配する要因は何か?コンクリートの多孔性とアルカリ性である.炭酸化を加速する要因としてアルカリが登場しています.
前者は物理的要因で,セメントに対して水分の割合の多いコンクリートほど炭酸化しやすい.後者は化学的要因で,アルカリ量の多いセメントや,塩分を含む海砂の使用が,コンクリートの炭酸化を加速する.
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左は『コン危』にある図です(同書66頁). 炭酸化は現象として中性化を伴います.一定材令の炭酸化深さの比較は,以前の用語でいうと中性化速度定数を比較するのと同じです.したがって図は中性化速度定数とアルカリ量の関係とみることができます. 中性化速度定数が,水セメント比,セメント種別,施工品質などによって変化することは,浜田式のところで述べました.この図は,同種のセメントであっても,含まれるアルカリ量によって中性化速度定数が変化することを示しています. アルカリ量が0.3%多いと水セメント比が10%増えたのと同じくらい炭酸化を加速する,と図から読めます. 図の縦軸の単位は小さすぎます.『早期劣化』に記載の図では縦軸もグラフの形も少し違っています.この点に曖昧さが残りますが,過剰のアルカリ分が耐久性に悪影響を与えるという結論は動かないと思われます. |
「セメントの品質は工場によってかなりの相違があり,また,同一の工場で生産されるセメントの品質も,原料や燃料の関係で大幅に変動する可能性をもっている」(小林論文より)というものであったのに対し,セメント協会は
「日本中の 全工場製品をひとつの銘柄とみなせるほど均質化が進んできている」と主張しているのですから,これは正面衝突です.
「どの工場のセメントかを知る必要はない」(協会論文より)
(略)奥リングが付くのはきわめてまれなケースではあるが,万が一奥リングが形成され,それが落ちた場合の対処について以下に述べる.すでに万事解決済みの問題であるという紋切り型の反論です.これに関して『コン危』に後日談が載っています.セメント協会研究所の技術部長と次長が東大小林研究室を訪れたというのです(同書172頁).小林氏は次のように述べています.
奥リングが形成されたかどうかはキルンシェル温度等で判断しており,これが落ちた場合にはキルン駆動用のモータ電流または電力値,焼点温度等の異常で速やかに察知することができるようになっている.異常が生じた場合は,(略)などの操作により,焼成不十分なクリンカをキルンから出さない運転方法が確立されている.従って,論者のいわれるような「欠陥セメント」が製造・出荷されることはないのである.
私が明らかにしたロータリーキルンにおける奥リングの話になった.最初,「奥リングなどはできないんですよ」と切り込んできた.私の論説は聞きかじりでまとめたのではないかと探りを入れてきたのである.これに対して,「じつは国内のあるセメント工場で奥リングを見ましたよ」と応じた途端,それまで居丈高だった相手の態度が急変した.「それは関東の工場ですか?」と聞いてきたのである.続く部分で小林氏はSPキルン方式の問題点を次の二つに要約しています.
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“セメントは同じ普通ポルトランドセメントであれば,いずれの銘柄・工場のものでも品質が大きく異なることはない”ということが,現在の土木学会の「コンクリートおよび鉄筋コンクリート標準示方書」の大前提になっているのに,工場間でこんな差があるのは問題ではないかと小林氏は指摘しました.
現在のセメントは当時の1銘柄に匹敵し得る品質変動となり,一層均質化され,品質変動の少ないセメントになっていることを物語っている.(最大値−最小値)100が問題ではなく,標準偏差20に着目すべきである,100というのは±3σの範囲内で「統計的」には異常ではないのだ,どうだわかったか・・・・・・とまで思ったかどうかは知りません.
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“(セメント協会発表の数値は)どちらかといえば控えめの結果であって極端な値はオミットされている.実態はこの程度のものではなく,これらを上回る変動がある”と指摘する人が多い.セメントの品質試験成績表なるものがセメントメーカーから出されているが,これをどのように評価すればよいのか,改めて考えてみる必要があろう.共同試験に参画している人ならそう指摘して当然です.JISに満たない200台の強度が「極端な値」であることは言うまでもありません.セメント協会会員の試験所が「極端な値」を報告することは<絶対ない>のです.
私と同業であるコンクリート工学分野の学者は,ほとんどが土木工学科や建築学科出身であるが,「いったい何がおこったのか?」「セメントに問題があるなど考えてもいなかったが?」という受けとめ方が一般的であった.小林氏の指摘を真正面から受け止めた人も中にはいたでしょうが,大部分の関係者はいつまで経っても「いったい何がおこったのか?」「セメントに問題があるなど考えてもいなかったが?」を繰り返すだけだったのではないでしょうか.みなそれぞれに立場というものがあるからです.ところが
セメントやセラミックス分野の学者の反応は違っていた.私が提起したセメント製造と原料問題はまさにこの分野の問題であった.門外漢である私の指摘した問題に対して,多くの学者が理解をしめした.日頃から心配していたことを代弁してくれたという思いがあったのであろう.ことあるごとに私をサポートしてくれた.まったく予想もしていなかったことであった.本物の専門家たちは門外漢の指摘に耳を傾け理解をしめし門外漢を支援したのです.とてもいい話です.
せっかくセメントで家をつくっても,ぼろ家になるようなことは困るわけですから,それは原料の段階でそういうことが最初からわかっているようなセメントをつくらせてもいけませんし,極めて技術的なことでありますから,きちっと研究をいたさせます.たしかに極めて技術的なことでしたが,JISに「きちっと」反映させるのに,6年かかりました.もちろんセメント業界が抵抗したからです.
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| 左は5月7日に撮った写真です.1と2は中性化深さを測る際にドリルで開けた穴を旭化成がモルタルで埋め戻した跡です(1が旭化成の測定場所,2が私の指示した白華近傍場所でこれだけ違っています).1箇所で横並びに3つ開いた穴を丁寧に埋め戻したため,その跡はご覧のような形になっています. 私はこのモルタルの色を見て,10年点検時に和室下に旭化成が塗ったのはモルタルだとわかりました.旭化成はモルタルを薄く塗って白華に対処したのです.これは考えられるもっとも安直な対応です. 3はSHで打撃を加えた痕跡です.5行4列で計20ポイントですが,一番上の4点を矢印で示しました.少なくとも一番下の4点には白華の影響がでている筈だと私は思いましたが,イヒ報告書によるとこの南面基礎がもっとも強いということになっています. |
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| - | 10年点検 | 15年点検 | 5年減小率 | 30年推定値 | 60年推定値 |
| 南面 | 238.7 | 224.5 | 0.94 | 186.9 | 129.5 |
| 東面 | 211.3 | 205.5 | 0.97 | 189.3 | 160.5 |
| 北面 | 199.4 | 180.1 | 0.90 | 132.9 | 72.3 |
| 西面 | 213.3 | 204.3 | 0.96 | 179.5 | 138.6 |
| 平均 | 215.6 | 203.6 | 0.94 | 171.3 | 121.4 |
Q16. エフロレッセンスはなぜ、発生するのですか?水酸化カルシウムが発生?? プロとは思えないひどい説明ですが,長谷工はエフロ=白華=炭酸カルシウムという立場のようです.エフロ=炭酸カルシウムとしている点は,笠井氏と同意見です.
「白華現象」ともいいます。この現象は石材やコンクリートなどの表面に浸みだして結晶化した白い物質が垂れ下がる現象で、コンクリートの場合はセメント中の水酸化石灰が加水分解して水酸化カルシウムを発生させて、コンクリートの劣化を促進させる現象です。
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| 左と下の写真はちょうど一年前の昨年7月4日午前9時頃撮ったものです.この2,3日前は雨でしたが,この日は快晴でした.左の写真で矢印の,玄関横の雨どいの後ろあたりが下の写真です.大きな影は雨どいの影です. 拡大画像をよく見ると小さな穴にぎっしり白い粉がつまっているのがわかります(特に右隅あたり).内部で起こった化学反応の生成物が噴出しているのです.毛管空隙の孔径は2nmから1μmだそうですが,写真の穴は目にみえるほど大きくなっています.初めはこのような形で表面に白い華が咲くだけですが,進行すると画面中央のようにセメント硬化体が崩れ骨材が露出してきます. 白華の正体は水に難溶の炭酸カルシウムではありません.強アルカリの炭酸塩です.反応性骨材がもしあれば,アル骨反応を起こしていたであろう過剰のアルカリ分の炭酸塩です.白華はアルカリ分の多い低品質セメントが使われた動かぬ証拠です. |
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| ― | 「白華公団住宅」 | 我が家 |
| 施工年 | 70年代前半 | 90年 |
| 現象 | 雨漏り,ひび割れ,基礎に白華 | 基礎に白華 |
| 調査 | 1.公団側調査委員会(85年06月完) 2.小林グループ調査(85年12月完) | 「イヒ報告書」(05年4月) |
コア採取位置 | 中性化深さ(mm) | 圧縮強度 (kgf/平方cm) | ||
| 外側 | 内側 | |||
| 12号棟 ベランダ下基礎 | 地上部分 | 31 | 21 | 164 |
| 地中部分 | 0 | 0 | 254 | |
| 14号棟 北側基礎(白華発生) | 地上部分 | 28 | 7 | 147 |
| 地中部分 | 0 | 0 | 198 | |
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85年11月18日付け朝日新聞 |
左は小林氏側の調査結果が出る少し前の時点の住民側と公団側の交渉の様子を伝えた朝日の記事です(『早期劣化』より).同記事によると対立点は次のようにきわめて鮮明です. 公団側は「原因はコンクリート板製造上の部分的な施工不良.コンクリートの品質に起因するものではない.できるだけ早く補修していきたい」と主張. 住民側は「素人目で見ても,単純な施工ミスとは思えない.原因解明を遠ざけて,やみくもに補修しても住民は安心できない」と主張. その後の経緯は『早期劣化』の年表によると次のようになっています. 86年11月,団地管理組合臨時総会,日本住宅・都市整備公団に対する損害賠償請求訴訟を起こす議案を圧倒的多数(賛成816,反対31)で可決. 87年5月,団地管理組合,日本住宅・都市整備公団と和解.公団の補修費分担による大規模補修工事に着工. 「大規模補修工事」が実現して一件落着か? ところがそうではなかったのです! |
このような(基礎の)強度低下は建設後,わずか15年でおこっていた.不安を感じた管理組合は,分譲した旧住宅・都市整備公団(現都市基盤整備公団)にたいしてくりかえし善処を要望していたが,具体的な対応策はとられなかった.「大規模補修工事」の中に,<基礎の補強>は含まれていなかったのです!
1995年,阪神淡路大震災によって多くのマンションが倒壊した.この約1週間後,旧住宅・都市整備公団から管理組合に対して,「強度低下のいちじるしい9棟の建物基礎の補強工事を実施したい」と申し入れてきた.
建物の外壁や屋根などは補修が可能であるが,基礎の補修・補強は困難である.もし実施するとすれば,莫大な費用が必要であり,分譲マンションの管理組合の手に負えるものではない.(『コン危』208頁)しかし,はたして金の問題だけで,公団は最後まで基礎補強に反対したのでしょうか.
このマンションのように建物基礎のコンクリートの強度が設計規準強度に達していない例は1970年代以降に建設された建物に多く見られる.基礎に問題を抱えた知らぬが仏の家が日本中にごろごろしているのです.すでに3面で設計規準強度を下回っている90年築の我が家はその一例にすぎません.まがりなりにもアル骨,塩害対策が打たれていた90年築の家ですら,このありさまですから,70年代,80年代に建てられた家は推して知るべしです.
もしあなたの家の基礎が,変色していたり,ひび割れしていたら,たぶんアウトです.
もしあなたの家の基礎が白華まみれなら,たぶんアウトです.
もしあなたの家の基礎の圧縮強度が,某式使用でJISぎりぎりなら,確実にアウトです.
もしあなたの家の基礎の中性化進行が,旭化成が言うちょっと早い程度なら,たぶんアウトです.
もしあなたの家の基礎にいつのまにかモルタルが塗られていたら,たぶんアウトです.
・・・・・・皆さん素人はコンクリートというのは頑丈なものだと誤解されているようですが,コンクリートなんてもともとそんなものなんですよ・・・・・・(詳しくは『早期劣化』参照.)その心は「依らしむべし知らしむべからず」です.私も同じ言葉をイヒに対して前に使いました.
「おっしゃるとおりです.建設白書にあるとおり,それが日本の住宅の平均です.我々に法的責任はむろんのこと,なんの道義的責任もありません.」最前線の住宅業者がこうして責任を免れれば,それより遡って生コン業者,セメント業者そして建設省に責任が及ぶことは絶対にありえないのです.
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「日本の住宅が26年しかもたないって本当ですか?」 |
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基礎工事や住宅の構造体が「こんなに他社よりも大きく丈夫だ」という台詞は,「だから値段が高い」というメッセージである.それでも安いと感じるなら相見積もりを取ったダイワハウスに比べ,ヘーベルハウスは値段がおなじ位で外壁・床がALCパネルである分,安いと感じました.もし上の文が,「品質を疑ったほうがよい」あるいは「基礎の品質を疑ったほうがよい」と続いていれば,私はナルホドと納得したかもしれません.しかし現実には上の文は次のように続いているのです.
基礎以外の品質は疑ったほうがよい.なぜか品質からわざわざ基礎の品質が除かれています. 読んだときはよくわかりませんでしたが,今やその意味は明らかです.
「なにやら、コンクリートの中性化が予想を上回るスピードで進んでいるという。」「予想を上回る」の「予想」とはなにか.浜田・岸谷式による中性化速度定数3.7(65年で中性化深さ30mm)がそれです.コンクリートの寿命(=物理的耐用年数)は60年以上というのが日本の常識でした.ところが70年代後半には予想外に短寿命の事例が出始め,「建築学会の大御所」たちが対策を講ずべき大問題であると認識していたことがわかります.
「これでは、30代でやっと手に入れたマンションが、定年を迎える頃には寿命がきていたということになり兼ねない。 そこで、中性化に対する何らかの対策を講じなければいけないということで、住宅公団の中に中性化委員会なるものが設置されたのである。」
| 寿命26年説 | 普通の家は26年しかもたない |
| 隠すべき真実 | 欠陥基礎が一定数存在する |
| ストックフロー分析 | アメリカは100年,なのに日本の家の寿命はなぜ30年なの? |
| Before(品確法以前) | アメリカ100年,なのに日本はなぜ30年なの? |
| After(品確法以後) | アメリカ100年,日本も100年 |
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左は05年8月11日付け朝日新聞の署名入りの1面記事です. 国交省は高度成長に建設された大規模団地の「再生」に乗り出す方針を固めました.その二つの柱は,建て替えの促進と住み替えの促進です. 住み替えとは,都心居住を望む高齢者と郊外での子育てを希望する若年層を入れ替えるという意味で,その促進策として団地の間取り変更,水回りの改善などのリフォームが挙げられています. つまり「再生」とは建て替えるかリフォームするかです.そのどちらかを必要とする団地は「少なくとも約4万戸ある」そうです.両者の割合はどうなっているのでしょうか. 「国交省は,戦後の高度成長期に築いてきた貴重な住宅資産を活用する必要があると判断した.」 実に立派な判断です.きっと「貴重な住宅資産」をリフォームして大事に使いつづけるということなのでしょう. ところが違うのです.見出しをご覧下さい.「国交省 建て替え促進」となっているではありませんか.4700億円再生事業の本質は建て替え事業なのです.リフォームは添え物なのです. なぜ建て替えが「必要」なのでしょうか.築30年以上で「老朽化」しているから,と国交省は言いたいのです. |
1984年はアルカリ骨材反応が社会問題にまで発展した年であるが,このとき,官庁の建築関係者はさかんに,「アルカリ骨材反応は建物にはおこらない」と主張していた.欠陥基礎の場合も「大幅な資産価値の低下」が避けられないのはアル骨反応の場合と同様です.つまり
建築物が土木構造物と異なる点は所有形態で,だいたい民間が所有している.アルカリ骨材反応は「コンクリートのがん」とよばれており,いったんその建物にアルカリ骨材反応がおこっていると判定された場合,資産価値は大幅に低下するおそれがある.
調査の結果,アルカリ骨材反応がおこっていると判明し,このことがなにかの拍子に外部に漏れると,資産価値の低下は避けられない.
それならば,「建物にはアルカリ骨材反応はおこらない」ことにしようというわけである.気にかかるひび割れは,ごくありふれた乾燥収縮によるひび割れとして,めんどうな原因調査を抜きにして手直ししておけばいい.
このような行政的配慮は,なにも行政官庁だけの専売特許ではない.真理の追究を目的に研究しているはずの大学教授が,これを錦の御旗にして情報隠しに加担するケースも多いのである.
Xだと判定されれば,大幅に資産価値が低下する,だからXではないことにして建物所有者の利益を守る(ここでXとはアル骨反応または欠陥基礎).盗人にも三分の理の典型です.一見すると建物所有者の利益に「配慮」しているように見えます.しかしXではないことにすることによって最大の利益を得ているのは,疑いもなく,「大幅な資産価値の低下」に責任を取らなければならない側です.建物所有者は資産価値が大幅に低下した危ない家に住んでいることに気づいていない「知らぬが仏」です.
・・・どうせ技術的な話は聞いてもよくわからないだろうし,まさか×××がウソを言ったりするはずがない.担当者の対応もそこいらの悪質業者とは大違いで懇切丁寧だ・・・そしてメーカーが対処を急ぐことも
・・・さすが×××だ,言ったらすぐに「無償」で対処してくれた・・・となります.
「しゃしゃり出て騒ぎを起こしたような気がしないでもないが,(周辺住民への被害拡大で)伏せてはいられないところまで追い込まれていた」播掛社長の英断によって国民は知らぬが仏から脱することができました.その意義がいかに大きいか,その後の経緯が如実に物語っています.
娘の希望を容れ遅ればせながらDVDレコーダーを買いました.HDDへの録画の簡便さは予想以上のものがあり,10月に入って次のようなものを録画しました.このうち@は操作ミスにより後半だけの録画です(BSチューナー内蔵型でなかった為しくじったのです).BのNHKスベシャルは3時間を越える力の入った特集でした.日本石綿協会専務理事や協会側医師も出演しています.
@10.3放映 NHKBS世界のドキュメンタリ『終わらないアスベスト問題』(フランス・カナダ共同制作)
A10.3放映 テレビ東京 ザ・真相(5)「アスベストはなぜ止められなかったか」
B10.9放映 NHKスペシャル「アスベスト」(Q/Aが10.11のNHKほっとモーニングで放映された.)
小泉首相は26日夜,アスベスト(石綿)による健康被害に対する政府責任について「反省すべき点もある.被害が起こっているわけだから,ないとはいえない.危険性を察知できなかった」と述べ,対応に不備があったとの認識を示した.(朝日8月27日付)小泉首相のコメントは西コメントから大きく後退しています.<決定的失敗>から<知らなかった>への後退です.「危険性を察知できなかった」とは,いったい誰のことを指しているのでしょうか.
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左図は日経新聞05年8月15日付け「検証アスベスト」より採りました.日本におけるアスベスト使用総量は約1000万トンでその9割は建材に使用されました(ちなみに1000万トンを1億人に分配すると,一人100キロです). 建設白書平成8年版に倣って(皮肉です),日米英の70年〜90年の使用量を下に示します.値はAのグラフから読み取ったおおよその値です. ILOが発ガン性を指摘した72年頃が日米英ともに使用量ピークで,日本35万トン,アメリカ80万トン,イギリス20万トンです(米英はそれ以前もこの水準に近いアスベストを使用していた).80年には米英がピーク時の半分に減っているのに対し,日本はピーク時の水準.85年時点では日本25万トン,アメリカ20万トン,イギリス5万トン(米英はピーク時の4分の1),そして90年には米英ともにピーク時の20分の1程度に激減しているのに対しバブルピークの日本は,あろうことか,30万トンという第二のピークを形成したのです. 右下の短い赤線は中皮腫による死者数です.95年500人から年々増加し,04年で953人です(10年で約7000人).潜伏期間から考えてこれらの死者は第一のピーク以前にアスベストを吸った人たちです. もし日本が,米英と同一歩調でアスベストの使用を減らしたとしたら,図中央の長い赤線のようになります.ピンクで塗りつぶしたおよそ400万トンのアスベストが,製造・施工・改修・老朽化・解体・廃棄の過程で飛散することによって今後顕在化するであろう人命の損失は防げたのです. 日本はなぜ米英と歩調を合わせて減らせなかったのか.代替品がなかったという石綿協会の言い訳(B)は通用しません.米英に代替品があって日本にない筈がありません.それとも米英は70年初頭から90年にかけて,ビルや住宅の建設が激減したとでも? |
「アメリカ,北欧の一部で非常に厳しい規制をしているけれども,要はアスベストを取り扱う労働者が病気にならないような方向で使うことによって国民全体の生活は良くなる」アスベストを直接扱う労働者の安全さえきちんと守ればよい,アスベストを封じ込めた製品自身は安全である,(アスベスト製品は安価で断熱性にすぐれ)国民全体の生活の向上に寄与するのだ・・・という論理です.
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左は旭化成ヘーベルハウスで使用されてきたアスベスト含有建材の一部です(後述).90年築の我が家の軒天はアスベスト含有です. 7年前ある塗装業者が誤って軒天に径15cmの穴をあけてしまいました.旭化成リフォームに補修を依頼したところ20万とふっかけてきたことが『塗料すりかえ事件』の幕開けでした. 穴は1ヶ月放置されたのち,旭化成配下の工事店は,頭上のボードを半分に切断して取り替えました(添木された継ぎ目は今でもよくわかります).「アスベスト繊維が浮離した状態」が存在したことは確実だと思われます. |
「アスベストは社会に広く浸透していた.製造現場で使用を管理することができても,広く世間に出回ってしまえば管理は不可能.管理して使えば安全というのは完全な妄想」
季刊『ヘーベリアン』05年秋号が10月下旬に届きました.「石綿(アスベスト)問題の対応について」と題する「大切なお知らせ」が載っていました.巻頭でも巻末でもない目だたない所にさりげなく挿入された,わずか1頁半の「大切なお知らせ」でした.お知らせは次の4項目からなっています. (1)過去の使用状況 ヘーベルハウスで使用されてきたアスベスト含有建材の「使用部位と使用時期」が一覧表になっています(全体26項目の一部を上で示しました).設備メーカー情報であるユニットバス,キッチンセット関連を除くと16項目です.72年以来33年の歴史をもつヘーベルハウスの石綿使用状況が16項目に集約されているのです.この一覧表が概要にすぎないことは,(4)に示すようにリフォーム時には改めて旭化成に相談せよとあることから明らかです. (2)現在の使用状況 「現在販売しているヘーベルハウスには石綿を含んだ建材は使用しておりません」 (3)通常の居住による石綿を含む建材の健康への影響について 「現時点で,通常の生活で健康に影響が生じたとの情報を確認していません.」 「現在大きく報道されているのは,石綿そのものを原材料として製造工程などの作業者,そのご家族,工場周辺住民の健康被害であり,石綿の粉塵を多量に直接吸入することに起因したと言われています.弊社が使用した建材に含有された石綿は,セメント板,プラスティック材料等の原料の一部として固定され設置しているものがほとんどです.」 「ヘーベルハウスにて通常の生活をお送りいただくには,石綿による健康障害はまず考えられませんので,安心してお過ごしください.」 (4)今後の解体工事,リフォーム工事について 「通常の生活では石綿の飛散する恐れはありませんが,リフォームや解体時には事前調査等専門的な配慮が必要な場合があります.」 「特にヘーベルハウスの解体をされる場合は,弊社窓口ホームサービス課にご相談ください.」 「ヘーベルハウスでリフォーム工事をご検討の際は,各建物のアスベスト混入建材の使用状況を確認する必要があります.弊社窓口ホームサービス課にご相談ください.」 |
「クボタの従業員は自分の意志で会社に勤めてたんでしょう.それで3200万円.でも住民は近くに住んでいただけで,後からきたクボタにわけのわからん粉を吸わされて200万円.不公平だと思いませんか.」同記事にはクボタ発表に至る経緯が書かれています.05年3月以降,患者遺族らがクボタに情報開示を強くせまった結果,クボタは因果関係をみとめないまま数人に見舞金・弔慰金200万を出すことを決めた,支払い前日の6月29日,毎日新聞夕刊が「クボタ社員ら“石綿死”10年で51人」,「工場周辺住民も2人」という見出しでスクープ,同日クボタは記者会見して事実を公表,という経緯です.
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クボタは同工場の石綿が住民被害の原因の可能性があることは認めたが,因果関係は認めていない.患者らに謝罪もしていない.当時,尼崎市内で石綿を使っていたのは同工場以外にもたくさんあったとクボタは主張している.しかし同工場は57年から60年にかけて日本の石綿輸入量の1割以上を使用するなど,石綿全体の取扱量が格段に多かったのも事実だ.
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周辺住民に石綿被害が起こる可能性をいつ認識したのか,との私の質問に,(略)クボタは,今年の4月になってからだと答えた.(略)しかも,クボタは「国による被害救済の新規立法化が進められていることなどから,現時点で,クボタ独自で補償することは考えておりません」という.
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政府は最近「石綿新法」の骨子を決めたが,補償ではなく,240万円の一時金で済ませる方向だ.患者や支援者らでつくる石綿対策全国連絡会議は「一時金では到底『補償』制度とは呼べず,治療費はもとより労災補償に準じた所得・遺族補償等がなされるべきだ」と主張する.
政府は(石綿)新法の財源を,税金のほかに石綿業界からの拠出金にも求める.その負担も定まらない.この記述に私はもやもやした印象を持ちました.
建材などの石綿製品メーカーには零細業者が多く,業界は石綿規制の強化で90年代以降,斜陽化が急速に進んだ.石綿製品は04年に生産・販売が原則禁止になり,業界は消滅寸前だ.
「新法の財源は,石綿の輸入業者,製品メーカー,使用企業と国が,それぞれ負担するべきだ」 日本石綿協会の福田道夫専務理事は10月25日,自民党の合同部会で議員たちにそう訴えた.しかし,
石綿製品を部品として使ってきた自動車や造船,化学メーカーなどに負担を引き受ける動きは鈍い.
国土交通省は12日,既存のマンションやビルで使われた吹き付けアスベストについて,飛散防止や除去を所有者に義務づける方針を明らかにした.来年の通常国会で建築基準法改正をめざす.これまで事業所については労働安全衛生法で飛散防止や除去が義務づけられていたが,既存住宅でのアスベスト使用に規制はなかった.家主の責任が明確になることで,中古マンションの売買や賃貸にも影響が出そうだ.ご覧ください.国や建設業界の責任が明確になる前に,いち早く国民の責任が明確になろうとしています!
規制の対象とするのは,室内などに露出している吹き付けアスベストとアスベスト含有の吹き付けロックウール.対策がとられていない場合は建物の使用を禁止する.
アスベストの吹き付けは75年,「特定化学物質等障害予防規則」で原則禁止されており,現在,新規の使用はないが,建築基準法で禁止することで,市町村が建物所有者に報告を求めたり,勧告や是正命令を出したりできるようになる.また,増改築の際には,除去などの対策が持ち主の義務となる.
国は業界がアスベストを使わなくなるのを待った.業界は規制がないから使えるだけ使った.国は業界が使わなくなるのを待って04年原則使用禁止,そして06年に全面禁止を予定しています.
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| 2%とはいったいどれくらいでしょうか.(ちなみに日本の人口は全世界の人口の2%,大阪市の人口は日本の人口の2%です.) 我が家の外壁面積は200uでその2%は4uです.外壁のヘーベルパネルが,30cm×30cmの大きさで「コンクリートが劣化,一部がはがれ落ちて鉄筋がむき出し状態」になっているとしましょう.そういう個所が44箇所,これが「表面積2%劣化」のイメージです. こんなヘーベルハウスはいったいどう見えるでしょうか.きっとボロボロに見えるでしょう.それが「鳥の眼」から見た山陽新幹線高架橋の現状です. 山陽新幹線は建設後まだ「わずか」30年しかたっていません.すでに40年たった東海道新幹線はどうなんでしょうか.劣化表面積は1桁以上小さいと思われます. 小林一輔氏は山陽新幹線高架橋は東名高速道路にくらべて6倍の速さで老化が進行していると警告しています(『コン危』38頁).山陽新幹線の中性化深さが建設後わずか10年ですでに平均15mmに達しているのに対し,東名高速道の方は建設後22〜24年の段階でわずか5mmなのです.東海道新幹線は東名高速道路と同等のコンクリート品質だと思われます. 「建設から年数がたち,劣化が進んだためらしい」とはいったい誰の推測でしょうか.天下の日経は,無知な素人の推測を,記事にしたのでしょうか. 山陽新幹線高架橋が建設後30年でボロボロなのは,コンクリート品質に問題があったためです.塩害・アル骨反応・炭酸化の3重苦のためです. |
安全投資が遅れたという批判に対しても,95年の阪神大震災や99年のトンネル崩落事故を例に,「思わぬことでお金がどっと出てそこを集中的にしないといけないことがあるとすれば,全体として(投資)を調整しなければならない.鉄道会社の第一は安全で,投資額の半分は安全対策にかけている」とした.同氏はまた「高架橋の問題,新幹線のトンネルの壁の剥落など,国鉄時代にやった工事のツケがさまざま発生」(『論座』05年12月号)と述べています.「年数がたって劣化」ではなく「国鉄時代にやった工事のツケ」が回ってきているのです.高度成長期の負の遺産にJR西はいまだに苦しんでいるのです.
JR西日本はすでに,高架橋の補修・補強のために200億円をこえる費用を投じていると聞く.しかし,これらはその場しのぎのもので,その効果が持続する期間は意外と短い.また補修・補強がおこなわれても,設計時に想定された耐力が回復されたという保証はない.「安全対策費」は現在莫大な額になっていると思われます.そして井出氏はいつ噴火するかわからない火口の傍らで踊っていることを自覚しているように思われます.しかしコンクリートがボロボロで危険な状態になっているとは口が裂けても言えず安全に問題はないと言い続けるのです.まさに「沈黙と先延ばしの歴史」です.これがJR西日本の頽廃の根源です.
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・05年11月29日(参考人質疑直前) ・ 12月03日(参考人質疑) ・ 12月07日(第2回参考人質疑) ・ 12月11日(隠ぺい疑惑) ・ 12月17日(証人喚問) ・ 12月19日(NHKスペシャル) ・ 12月31日(朝日トップ記事) ・06年01月17日(品質不良) ・ 02月13日(国の責任) ・ 03月07日(静香ショック) ・ 03月14日(新計算法) ・ 04月02日(アウトロー作家) ・ 04月13日(建築基準法の穴) ・ 04月21日(強制捜査直前?) ・ 04月23日(プロ集団JSCA) ・ 04月29日(小川コンセプトと民主党案) ・ 05月11日(ゆゆしき事) ・ 06月07日(隠ぺいの森に茂る木々) ・ 06月30日(真っ赤なウソ) ・ 12月31日(国交省重大発表) ・07年01月31日(既存不適格物件と耐震診断) ・ 02月18日(アパ問題) ・ 03月10日(国交省の悪意の証明) ・ 03月26日(「もちろん建築学会式です!」) ・ 04月21日(国交省重大発表の続報) ・ 05月23日(藤田東吾氏「月に響く笛」) ・ 06月25日(藤田東吾氏VS.八方美人の市民派権威) |
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建物の仕様を記載した建築設計書が最重要ドキュメントであることはいうまでもありません. 建築設計書から柱や梁の太さ,鉄筋の本数など,構造計算に必要な数値を抽出して構造計算プログラムに入力します.その結果がOKでもコスト削減の要請により,NGなら必要強度がでるまで,設計内容を変更して繰り返し再計算するのが,建築設計書のFixつまり設計完までの通常の設計作業です. 問題の構造計算書とは,もちろん設計完の建築設計書に対応するものです.それは構造計算プログラムに対する入力データと出力データを紙に記載したものです.入力データはかなりの数ですが,出力データは乱暴に言えばOKかNGかだけです. 構造計算書は数100頁になりますがそれは数多い入力データを転記してあるからにすぎません.構造計算書には概要もついていますが,それはお飾りでその本質は入出力データなのです. |
「我々は性善説に立って検査している.書類上の不備はなかった.独自に県の方で構造計算の専門家に依頼した結果,偽造がわかった.」特に後半部にご注目下さい.自分達では「再計算」もできないなどと恥ずかしげもなく表明しているのです.自治体の「建築主事」たちの実力はこの程度のものです.
11月15日 伊藤元国土庁長官がヒューザー小嶋社長とともに国交省幹部と会談という経過を辿ったのです.11月15日は,臭いものに蓋をしようとする勢力が最後にあがいた日だったと思われます.
11月17日 国交省が事件を公表
長野県も一日,県が建築確認した建物について専用のシステムを購入して構造計算を再計算することを決めた.対象は2002年ど以降の3階建て以上のホテルやマンションなど約200件.田中康夫県知事の対応はさすがに早いと思われます.第二,第三の姉歯がいるかもしれないことを考えると,全件再計算する必要があることは言うまでもありません.ここの「専用のシステム」とはなにを意味するのでしょうか.長野県は「大臣認定プログラム」を持たずに検査してきたのでしょうか.まさかそんな筈はないとすると・・・
4日のサンプロによるとイー社藤田社長は田原氏に対して,経済設計は意匠屋の仕事であり,構造設計には経済設計という概念はないと述べたそうです.
昔は建物の外観を決める「意匠屋」と建物の構造を決める「構造屋」が,建築設計の二本柱でした.しかしコンピュータ技術の急速な進歩により「構造屋」の肩身はずっと狭くなってきました.
「意匠屋」は施主も設計者も満足する「最適な」外観を決めます.最適という意味は施主の好みと設計者の好みは通常は相反するところがあるからです.一方「構造屋」はコスト,性能という明らかに相反する要素のもとで最適解を求めます.
もし藤田氏のいうように構造設計に経済設計の概念がないとすると,構造設計はもはや設計とはいえないと思われます.なぜなら種々の制約条件のもとで最適解を求めるという設計行為の本質的要素がないからです.コストを無視できるのであれば性能をあげるのは極めて容易です.鉄筋の数を増やし,太くすればいいのです.梁や柱の太さを太くすればいいのです.
イー社藤田氏のような「検査屋」は性能面で規準以上か検査します.むろんコスト面の検査などしません.つまり検査屋から見たら,構造設計=構造計算に見えるのです.構造設計から経済設計を取り除いてしまうと,残るのは構造計算というコンピュータが得意とするルーチンワークだけです.「検査屋」から見たら構造設計はたんなる構造計算に矮小化されてしまうのです.
進歩した設計支援システムの存在を前提にすれば,経済設計は意匠屋でも可能です.つまり「意匠屋」が建築設計のすべてを見通すことが可能な時代にすでになっていると思われます.構造設計の専門家も,まして構造計算の専門家など不要になっているのです(誤解のないように言い添えますが,以上の話は姉歯物件のようにごく普通の建物を対象にした話であり,特殊な建物は除きます.当然それらには本物の構造設計の専門家が必要です.)
04年1月 日本ERIが建築確認をおろす.となっています.
04年3月初旬 アトラス渡辺氏,総研四ヶ所氏,姉歯氏等による打合せ.姉歯氏偽造を認める.
(その後) 渡辺氏は検査した日本ERIの「担当者」に重大アドバイス(上述).
(その直後) 日本ERI社内対策会議(上述).
04年4月 日本ERIは計画変更の形で「新たに」建築確認をおろす.
久しぶりの証人喚問で,各党の「追及力」も注目されたが,自民党は余りにもお粗末だった.まさか,業界批判を遠慮しているのではあるまいが,材料も乏しく,演説のような話をだらだらと続けられては時間の無駄だ.その分,質問時間を野党に配分した方がましだった.実にその通りであるというのが,計7時間の中継を全部見た私の感想です.しかし当事者たちの「編集されていない」生の声がまとめて聞けるという機会は他にありません.与党議員の質問の間は「テトリスしながら」時間をつぶしますから,今後も是非すべて生中継してほしいものです.
自民党がマンション耐震偽装事件の政界への波及を食い止めようと懸命だ.先週の姉歯秀次らの証人喚問では,(略)党本部に抗議が殺到し,幹事長・建部勤(64)は「申し訳なかった」と陳謝したが,単純な人選ミスではない.コラムはこの後「森派は公明党に弱みを握られた」という「地獄耳」にふさわしい話で終わるのですが,上で引用した部分はすべてさもありなんと思われます.こういう場合だけ「人権問題」を持ち出すのは狡猾きわまりない話です.
「国土交通委員会は建設・不動産業界と近い建設族議員の牙城であり,自民党は『疑惑の段階で証人を呼ぶのは人権問題だ』と関係者の喚問に消極的だった.やる気のない質問者を立てて時間稼ぎをしたのも,野党に質問時間を与えないための作戦で,最初から真相解明などする気はない」と民主党幹部は見る.
実際野党側は(略)森派の元国土庁長官・伊藤公介(64)の参考人招致を再三要求しているが,自民党は「疑惑はない」と拒否して逃げ切りの構えだ.ヒューザーなど業者から多額の献金を受けていた森派も,慌てて金を返してまるで何もなかったかのように,口をぬぐっている.
国交省はプログラム改良で偽造を防ぐのは難しいとみて,構造計算書の審査省略制度を見直す方針を固めた.建築確認の申請時に構造計算を書類ではなく,再計算しやすい電子データで提出させ,コンピュータですべて点検する方法や,別の構造計算の建築士に分析させる制度の創設などを検討.この短い文にいくつかポイントがあります.一つ.プログラムを「改良」しても,「偽造を防ぐのは難しい」というのです.こんな結論は「総点検」などしなくても常識で考えれば明らかな話です.「計算プログラム総点検」は国交省が怠けずに働いていることを国民に示すデモンストレーション以外のなにものでもないのです.
建物へのアスベストの使用は,これまで建築基準法に規制がなく,労働安全衛生法により工場や事務所での使用禁止や飛散防止が定められているだけだった.アスベストが社会の隅々にまで浸透したのは,建築基準法がまったくのザル法だったからであることは明らかです.そしてそのもっとも深刻な影響が建設労働者を直撃しているのです.12月7日の筑紫哲也のNEWS23はアスベスト被害を取り上げ,早くから建設労働者の石綿被害に取り組んできた海老原医師(アスベストのところで触れました)の活動を紹介していました.
7年前我が家で起こった塗料すりかえ事件も設計品質不良の事例といえます.外壁塗り替えという小さな工事の場合は,契約書が設計書を兼ねています.その契約書が工事店によって改ざんされました.ヒューザー,総研が姉歯にだまされた可能性はほとんど無いと思われますが,旭化成が工事店にだまされた可能性はかなり高いと思われます.数からいえば設計品質不良は欠陥住宅全体の中でごくわずかです.欠陥住宅といえばその多くは施工品質不良(手抜き工事)です.欠陥住宅番組が扱っているもののほとんどはこれです.そしてもう一つ忘れてならないのが,コンクリート品質不良を代表とする材料品質不良です.
年末27日のみのもんた「朝ズバ」は,グランドステージ川崎大師の住民による「怒りの自室破壊検査」を取り上げていました.その結果やはり設計書(竣工図)どおりに施工されていないことが発覚しました(スリットの施工など).0.3という設計強度より実態強度は更に低いのです.
「大手ゼネコンの施工だから信用した」と住人の言葉にあるように,この物件の施工は木村建設ではなく,一部上場の新日鉄直系ゼネコンの太平工業です(四季報によると太平工業の時価総額は317億,清水,大林といった超大手が5,6千億,飛島建設,銭高組,安藤建設などの中堅で300億近辺です).太平工業は,わが社は図面どおり施工した,図面を見せてもいいがマスコミには出すなという風な対応をしていると報じられました.
「大手ゼネコン」の施工ですらこれです(太平工業は下請けへの丸投げつまり名義貸し疑惑は否定しています).木村建設の施工物件では住民はいまさら調べてなんになる,調べなくてもわかっているというあきらめの心境でしょう.
小嶋社長は証人喚問の直前に週刊誌でしゃべりまくっています.週間朝日(1月27日号)によると12,13の両日計11時間にわたって,「核心を赤裸々に語った」そうです(それがわずか4頁に編集されています).その中で小嶋社長はイーホームズに対して「ヒューザーを悪の権化に祭り上げようという悪意を感じます」と述べています.もし「地震で倒壊した時に発覚したことにしてほしい」と言ったというのが真っ赤なうそなら,そういった話も少しは説得力をもったでしょうに.
「診断の結果,数値が低かったら,資産価値が下がってしまう」と,居住者自身が後ろ向きになるケースが多いという.耐震診断にせよ,コンクリートの圧縮強度・中性化深さにせよ,住宅性能表示にせよ,構造計算の見直しにせよ,正常な値が出てあたりまえであり,もしおかしな値がでると,所有者は非常に困惑するというのはまぎれもない真実です.だからこそ,そこにつけこんだ「安心」を与える甘い基準が生き延び,欠陥住宅,欠陥マンションが世の中に広く潜在することになるのです.
国交省は8日の発表段階時には熊本県の6件を把握していませんでした.国交省小川課長があわてて熊本に飛び,熊本県知事の謝罪会見,北側大臣の遺憾声明とドタバタ劇が演じられました.毎日記事によると,熊本県建築課は国交省指示で木村建設施工物件を調査したが問題は見つからなかった,「念のため日本建築構造技術者協会九州支部(JSCA九州)に依頼し再計算した結果,強度不足が判明した」という経緯です.強度不足が判明したと言っているだけで,偽装判明とは言っていないことにご注意下さい.
| 再計算件数 | 強度不足件数 | 偽装判明件数 |
| (22以上) | 22 | 6? |
姉歯元建築士だけであってほしいと願っていたが,偽装の手口は特殊ではなく,他の建築士がやっていたとしても不思議ではない.やっぱり出たかという印象だ.正直な感想です.しかしこの担当者と違って,「権威たち」は姉歯だけだと考えて事を進めていたフシがあります.
姉歯元建築士だけなら例外的な事件とみることもできたが,もう一人いたとなると中間検査の強化などの再発防止策を重点的に考えないといけないだろう.そして東京構造設計事務所協会の榊原信一会長は次のように「指摘」しています.
構造計算の途中で別の数値を使ったり,ごまかしたりするのはメリットがあまりないと思っていた.再計算では見抜けないものもあり,設計の考え方や入力データが妥当かを構造設計の専門家がチェックする態勢が必要だと感じる.中間検査は施工品質を検査するためのものであり,設計品質を検査するためのものではありません.それでなくても施工品質には検査項目が沢山あるのです.中間検査も完了検査も,設計が正しいことを前提に設計どおり施工しているかどうか検査するものです.なぜ村上教授は設計書偽造の再発防止策の本命として中間検査の強化などというマヌケなことを言ったのでしょうか.
10日ほど前日本中は荒川静香の金メダル獲得に沸きました.早朝のライブを見た私も人並みに興奮しました.野球にしろサッカーにしろ大相撲にしろ,あるいはまた囲碁名人戦にせよ,結果がわかってからの録画鑑賞は気の抜けたビールです.何が起きるかわからないという緊張感に溢れたライブ中継には絶対的な魅力があります. ところが荒川静香の場合は少し違いました.昨年お盆に買ったDVDレコーダーで再生して見たとき,何度見ても感動するのです.金メダルが獲れたという事実に対する感動ではないことは明らかです.事実というものは,それがいかに驚嘆すべき事実であっても,起こってしまった途端に,起こって当たり前に転化してしまいます.感動も一過性なのです. 朝日新聞のスポーツ欄の署名記事に,フリーの演技が終わった時メモを取る手が震えた,隣のアメリカ人は涙を流していたという文章がありました.テレビ席での私の感想は,転ばず,けなげによく滑ったという感動であり,泣くような感動ではありませんでした.しかし再生して何度も見ていると(何度も見たいと思わせること自体珍しいことですが),時にはそれに近い感情が起こってくるのです.なぜか. 荒川のフリーは,聴きなれない緊張を強いるような高音のヴァイオリンの音で始まります.張りつめた緊張のうちに最初の3回転−2回転のコンビネーションジャンプが「決行」され,無事着氷した後に,一転して優しいメロディが流れます.この導入部は見るものの心をしっかり捉えます. クライマックスは短いレイバックイナバウアーとそれに続く3−2−2の連続ジャンプです.イナバウアーの時,荒川は初めて歓声が聞こえた,スケートを楽しんでいると感じたと後に語っています.笑みが自然にこぼれています.そしてそれに続く3連続ジャンプに成功した後荒川ははっきり笑顔をみせます. 本屋の五輪コーナーで立ち読みした『Little Wings』という本で荒川は,トゥーランドットを選曲した理由の一つとして無理に笑顔を見せなくてよいからと語っています.まるで能面のような荒川の表情は,緊張でこわばっているわけではなく,それはまさに冷酷なトゥーランドット姫の心情を表すものだったのです.そしてそれがイナバウアーで一気に氷解するのです. 終りの方にステップがあります.足の動きの巧みさは私にはよくわかりませんが,腕の動きは素人にもよくわかります.ジャッジ席の前での一連のステップの演技が終わった後,荒川は5本の指を広げたまま振り払うような腕の動きを見せたのち中央での最後のスピンに移りました.私のステップのよさがあなたにわかった?,これでおしまいよと言っているかのように私は感じました.素人のオジサンにも,媚びとは対極にあるなにかが,伝わりました. 何度見ても感動する理由の半分はプッチーニの曲にあると私は思います.昔落ち込んだ時期に,トスカの中のアリアが心に染みた記憶がありますが,プッチーニは叙情に流れすぎると私は思っていました.しかし荒川のトゥーランドットにそんな心配は無用でした.五輪という最高の舞台で長期間の苦しい練習に耐えたアスリートが全力を尽くしているのです.感傷が支配する余地などないのです.荒川の訓練された肢体の美しい動きが,プッチーニの叙情性の極めて上質な部分と融合し,それが涙を誘うのです. トゥーランドットの舞台である中国風の,どこか垢抜けない衣装とヘアースタイルにもかかわらず,演技中のいくつかの小さな瑕疵にもかかわらず,荒川の4分間のフリーの演技は,技術性と芸術性が高いレベルで融合した最高の「作品」として,後世に残ると思われます.それはワーグナーの目指した総合芸術としての楽劇に匹敵する,とまで言ったらさすがに言いすぎでしょうか. 日本メディアは当然ながら荒川を絶賛しました.しかしアメリカの一部メディアは「荒川静香は卑怯な女王」と報じました(『週刊ポスト』3月17日号,ちなみに記事タイトルは“「荒川静香は卑怯な女王」とは頭に来た!”で,記者の怒りが伝わってきます).その中で前回五輪の女王サラ・ヒューズは次のような感想を述べています. 「今回のオリンピックでは信じられないような素晴らしい演技はひとつもなかった.誰も自分の人生を賭けた演技はしていなかった.抑圧された戦いだった.どんなオリンピックでもあってはならないことだった.」このコメントは荒川の達成したものが一部アメリカ人の考えるフィギュアの概念といかに異質であるか物語っているように思われます.私はコーエンもヒューズの妹も嫌いです(16歳のナンバー3は好きです).彼らの演技は観客うけを狙った美です. ロシアの女王スルツカヤはすこし違います.彼女の一つ一つの動きは荒川の丁寧さに比べると極めて無造作です.しかし彼女には荒川にない,高いジャンプで象徴されるダイナミックさがあります. SPの「死の舞踏」で思ったほど荒川を引き離すことができなかったスルツカヤに焦りが見られました.公式練習や本番前の練習で彼女は荒川を気にしていました.荒川の自分とは全く異質なスケーティングの完成度を見て,ミスは許されないと思ったに違いありません.彼女は語っています.「私のもっとも得意なジャンプで失敗するなんて考えられません.試合では何が起こるかわからないのです.それが人生です.」私はスルツカヤの男らしい(?),さっぱりした性格に好感を持ちました. 「スルツカヤが転倒して3位になり,“それでも満足だ”といっているがそれは負け惜しみでしかないんです」と上記週刊誌でスポーツライターT氏が語っています.そうでしょうか.スルツカヤこそ,自分が敗北したことを,負けるべくして負けたことを,他の誰よりはっきりわかっていたのではないでしょうか. 娘はエキシビジョンの「YouRaiseMeUp」がお気に入りですが,オヤジはプッチーニです.アマゾンで注文したアリア集はまだ届きません.しかしなんといっても,実況アナウンサーと解説者の声が入っていない,会場アナウンスと観客の声だけの,タラベーラ会場のライブDVDの発売が待たれます.「芸術作品」に余計な解説は不要です. |
おお夜よ,失せろ! おお,星たちよ,沈め!荒川静香が精神的に非常にしっかりした女性であることは衆目の一致するところでしょう.イナバウアーしながら,歓声を楽しみましたなどと言いながら,実のところ「私は勝つのだ!」と思っていたのかもしれません.
星たちよ,沈め! 夜が明ければ!
私は勝つのだ!
今回偽装が判明した浅沼建築士の関連物件が市内にあるかどうか早急に調査したい.その後,理想的には,なるべく多くの物件の構造計算書を再計算して安全性をチェックすべきだろう.ただ費用がかかり簡単ではない.大阪市は姉歯の時は姉歯関連物件だけ,そして今回は浅沼関連だけ調べるおつもりのようです.このような考えでは存在するに違いない「なにわの姉歯」を見つけ出すことは金輪際できないでしょう.理想的には?理想的にはではなくて,再計算は最低限の必要条件です.費用がかかる?いったいどれほど金がかかるというのでしょうか.一声100万というのは「悪徳業者」のふっかけ価格です.私見ではせいぜい10万です.ウソだと思うならNHKスペシャルで紹介された長野県の建築主事の再計算作業をじっくり御覧なさい.(くどいですが再「設計」作業ではないことに是非ご留意下さい.)
| − | 旧計算法 | 新計算法 |
| 計算法の名称 | 許容応力度等計算 | 限界耐力計算 |
| 計算ロジックの特徴 | 建物の変形を限定的に許容 | 建物の変形をより大きく許容 |
| 外面(そとづら) | ポピュラーな計算法 | 「技術力」のある人しか使えない「高度な」計算法 |
| 新宿物件への適用結果 | 強度0.85 | 強度1以上 |
| 一言で言うと | 厳しい基準 | 甘い基準 |
(姉歯元建築士の使用したソフトつまりSS2やSS1(改)は)「全構造設計者の99パーセントが使用している非常にポピュラーなものだった」姉歯事件で何度も登場した計算ソフトは,実に意外にも,広く普及しているという意味でも安全サイドの値が出るという意味でも,「事実上の標準」と呼ぶにふさわしいソフトだと思われます.
「あまり知られていないが,(それらは)国交大臣が認可している設計法の中では鉄筋やコンクリート量が最も多くなるように設定されている」
(「限界耐力計算法」は),優秀な技術者しか扱えない.だから技術や知識レベルの優秀な人材が必然的に集中する大手ゼネコンの一部で実際に使用されているのである.事実,朝日記事で,大手ゼネコンの設計担当者は新計算法を次のように手放しで礼賛しています.
「自由度が高く建築主が求める耐震強度をより精密に実現できる高度な計算法だ」いくら「高度な計算法」であっても,そのロジックを実装したソフトが存在すれば,「技術や知識レベルの優秀な」技術者しか扱えないということは,ソフトの外部仕様ができそこないの場合を除いて,普通はありえないことです.設計支援ソフトの開発に昔従事した経験から,そう断言します.
「限界耐力設計法」を使うと,(SSシリーズで計算した場合に比べ)鉄筋の量をなんと20パーセントも節約できる.「限界耐力計算法」は「最も経済設計に適している」と氏は語り,朝日新聞は,新計算法にはコストダウンを実現する手段に使われているという批判がつきまとっていると報じています.
他の設計法では建物全体の変形が500分の1まで許容されている(私は1000分の1以下に抑えられる設計が望ましいと考えているが).それが「限界耐力計算法」では300分の1まで許容される.外力による建物の変形について,旧計算法ではたとえば,柱や梁がわずかにひび割れした状態をもって,建物の限界だと考えます.一方新計算法では,いやいやその程度の変形では崩壊に至らず人命には影響しない,もっと外力が加わっても大丈夫だ,と考えるのです.
私は「経済設計」そのものを否定するつもりもない.ただ「限界耐力計算法」で設計されたマンションが,通常の設計法で建てられたマンションよりも危険性が高いことは事実なのである.そして朝日記事は次のように述べています.
専門家の間では「大地震が起きたら従来の計算法による建物より被害が大きくなり,大規模補修や建て替えを迫られる建物も増えるのではないか」と懸念する声が出ている.
新しい計算法による建物がどの程度の割合になっているかははっきりしないが,従来の計算法と同等の強度を保つように内規で定めているゼネコンもある.東京都の強度基準はたしか1.2と厳しいものでした.上のゼネコンの「内規」というのは,新計算法で1.2,旧計算法で1が目標ということかもしれません.これでは基準の厳しい東京都のマンションの実際の強度は地方のマンションとなんら変わるところがないという話になります.
「新しい計算法が認められた際は,問題点について十分な検討がなされなかった.(基準を満たしていても)実際には従来の計算法による建物より強度が低いということもありえる.そうしたことがマンションの購入者に知らされていない点が問題だ.」十分な検討がおこなわれないまま新計算法は導入されました.もちろん大手ゼネコンの圧力によるものでしょう.中小業者には縁のない話なのですから.
計算結果が大きく食い違う場合こそ,安全性を判断するためには専門家の助言が必要になるだろう.ただ,元の強度が著しく低い場合は別の計算法で数値が上がったとしても,安全だと判断されるとは限らないのではないか無責任極まりない見解です.新計算法と旧計算法では考え方がそもそも違いますから,両者の結果がかなりの程度,時には大幅に食い違うことは必然です.新計算法導入時にそうした問題点を検討する為に,日本でトップクラスの専門家を招集して委員会が開かれたのではありませんか.いまさらなにが「専門家の助言」なのでしょうか.「専門家」とは具体的に誰のことを指すのでしょうか.ダブルスタンダードが現に存在することに対して責任をもつべきは,正体不明の「専門家」ではなく,監督官庁である国交省(旧建設省)なのです.
誰にも住む家があるちなみに「血税が眠る墓標」の代表は大阪の第三セクターの一群の建築物です.
庶民は終の棲家のために気の遠くなるようなローンを・・・
人生のすべてを賭けて購入したマンション
しかし耐震偽装
夢の結晶は家族の思い出すら作れぬままコンクリートの塊に
誰にも住む街がある
都市開発の名のもとに次々と作られる高層ビル
街の景観を破壊しながら
しかし所有者を満足させ
それはまさに資本主義・拝金主義の象徴
誰も訪れぬ街がある・・・
それは我々の血税が眠る墓標
何のために? 誰のために?
自らの存在意義を見つけられぬ建築物の数々は
もはや魂の抜け殻と化した鉄と砂のオブジェ
生みの親の責任は
建築確認の審査強化では建築基準法を改正.構造計算が適正かどうかを判断する第三者機関「構造計算適合性判定機関」を新たに設置し,7階建て以上に相当する高さ20メートル超の鉄筋コンクリート造りの建物については,自治体や民間検査機関が建築確認する際にこの判定機関で専門家による審査(ピアチェック)を受けるよう義務づける.3月13日のNHKクローズアップ現代に登場した建築学会会長の村上周三慶応大学教授は自らが座長としてとりまとめた国交省案をお話なさったたわけです.
| 1 | 構造計算書の再計算など審査体制強化 | 北海道,茨城,新潟,静岡,三重,滋賀, 兵庫,和歌山,福岡,佐賀,鹿児島 |
| 2 | 建築指導担当者の増員 | 群馬,愛知 |
| 3 | マンションなどの耐震診断, 改修費用の一部負担 | 千葉,東京,岐阜,奈良,岡山,徳島 |
| 4 | 工事開始後の中間検査 | 石川 |
| 5 | 相談窓口の設置など | 神奈川,栃木 |
茨城県は地上5階建て以上の物件などを対象に,建築確認時に提出される構造計算書を再計算する.1と2で13の県が06年度に再計算を実施しようとしています.耐震偽装が発覚したのは05年11月ですから役所としては迅速な対応です.中央は腐っていても,まともな地方自治体も多いのです.もちろん中央と同じパターンで腐っている地方自治体もありますが.
耐震偽装問題とは,一体何なのか?当事者やその周辺を人々の取材を行いながら私は,日本というこの社会の,この国のそして日本人の「ほころび」を見る思いを持った.実に文学的感慨です.
「ほころび」の根底には,庶民の「持ち家志向」という幻を求める意識とそれを金融システムとして取り込んだ銀行の存在がある.最初の参考人招致の折公明党高木氏が,居並ぶ参考人たちに対し,「あなたにも責任がある,あなたにも責任がある,そしてあなたにも責任がある」と述べていたことを思い出させます.宮崎氏は銀行に責任がある,役人にも責任がある,そして庶民にも責任があると言っています.
「ほころび」は,そうした「庶民の意識」「銀行の営業戦略」の上に立った国交省の住宅政策にもある.更に問題とすべきはこれである.国交省の建築に関わる役人は,当然今のマンション市場がある種の架空の基礎の上に成り立っていることは百も承知しているはずである.そうしたことから,建築物の安全基準などは「所詮は砂上に立つものの基準」ということになる.
が,しかし,この「幻の市場」の恩恵には自分たちも浴すべきであるとしたのが,建築基準法の出鱈目な改「正」であり,一級建築士の濫造であり,天下り先の確保のための「官」から「民」への緩和であった.最後にあえて言うなら,庶民の「持ち家志向」も「ほころび」であると私は考えている.
いろいろ取材していくと,国交省の責任は絶対に免れない.小嶋が仮に100悪いとするとしたら,国交省は500ぐらいかもしれない.捜査のメスが,なぜそこに向かわないのか.小嶋氏逮捕で,幕引きされるのではたまったものではない.小嶋が100悪いとすれば国交省は500悪いと言っているのですから,宮崎氏は国交省こそワルの本丸だと主張しているようにみえます.
宮崎 地震が起こったときに発表すればいいじゃないか,と小嶋さんが言ったという人がいますが.ここは証人喚問時に最大の焦点になった個所です.嘘を言えば偽証罪が科せられる証人喚問の場で,小嶋社長はいったんは「言ってない」と明言しながら,あとでそれを翻しました.小嶋社長は,真下メモにあるとおり,公表を迫るイーホームズに対してはっきりそう言ったのです.心情的には殺人未遂罪です.
小嶋 言ってないですね.「それだったら,殺人マンションの販売会社の社長になってしまう」と,自らマスコミに言ったくらいですから.
小嶋 (略)イーホームズの藤田社長のメールの件ですが,彼は嘘つきの名人っていうか,嘘八百もんですね.われわれの何10億というプロジェクトを審査するのに,100万か150万の(建築確認用)ソフト代をケチって再計算しなかった.偽装を見抜けなかったのは再計算しなかったからだと小嶋社長が認識している点にご注意ください.この点では,検査機関の検査員はマヌケぞろいだと主張した一部の専門家たちよりずっとマシです.
宮崎 たしかに,イーホームズの藤田は臭いと思います.この事件のある面でのキーマンではないでしょうか.国交省と利益がぴったり一致している.
ザル検査,ザルシステムの実態については,イーホームズの藤田社長も,ヒューザーの小嶋社長も,当初から,一貫して叫んでいるところだ.国交省は,彼らに指摘されるまでもなく,そのことはとっくに承知していたはずだ.だからこそ,彼ら二人を敵対する立場に追いやり,問題の核心をそらそうとしたのではないか.なるほど関係者の中で国交省に対して異議申し立ての姿勢をとったのはこの二人であることは確かです.日本ERI鈴木社長など,国の制度不備は一言も言わず,担当者に罪を着せて隠ぺい疑惑から逃げ切りました.
2005年10月7日,国交省への匿名のタレコミがすべての始まり(同書46頁の見だし)宮崎氏がこの匿名電話を重視していることがわかります.そして宮崎氏はタレコミと告発を「いっしょくた」にしていることがわかります(後述).宮崎氏は匿名電話に関して次のような説を紹介しています.
問題の発端は,イーホームズの文書管理の不備を指摘したとされるタレ込みだったが,これにいちばんドキッとしたのは,ほかならぬ国交省だったかもしれない.いよいよ来たか,とうとうザル法,ザルシステムが明らかにされてしまうのか,と.(同書127頁)
今回の問題のそもそもの発端は,国交省への関係者を名乗る者からの告発だった.その告発はどういった経緯からなされたのか.非常に興味あるところだ.(同書78頁)
さらに不可解なことがある.10月24日に,イーホームズの立ち入り検査を行い,匿名の電話の主が指摘したように,帳簿の不備を確認し,かつ,翌日にイーホームズから報告を受けているにもかかわらず,その後の対応はあまりに鈍く,事態の公表は翌月の17日と,1ヶ月近くを要しているのだ.なんとも,不自然,かつ,怠慢とも思えるような対応だ.二つの異質なことがらが,「かつ」によって結合しています.10月7日の匿名電話を受けて国交省は10月24日にイーホームズに立ち入り検査しました.しかし11月17日の国交省発表に繋がるような成果は何一つ挙げることができませんでした.タレコミの結末は10月24日に完結しているのです.
私は,トラック業界の闇カルテルをメディアに内部告発したため30年余,企業内で昇格を見送られ,言葉に尽くせないほどの屈辱と不利益を受けた.02年に勇を鼓して提訴,今年2月に高裁控訴審で会社と和解した.その経験から内部告発者を守るとされる公益通報者保護法(4月1日施行)の問題点を指摘したい.続いて
この法律は通報先に順番を決めている.まず不正や違法行為が起きている事業者,つぎに所轄の行政機関,それでも改善されなければ新聞などメディアに通報していい,という.まず事業者に通報せよという事に関し,氏は次のように述べています.
問題を自由に指摘できる社風なら「不正の通報」など必要ない.関係者が知りながら,見てみないふりをする組織だから不正・違法行為が起こるのである.そのとおり!続いて
この法律がおかしいのは,訴えるには危険すぎるところに,真っ先に通報することを義務づけていることだ.告発しようとしている者が通報先を自ら決められないのでは公益通報者保護の名に値しない.そのとおり!通報された事業者が証拠隠滅に走るのは確実ではありませんか,かった旭化成が「打合せ記録書」の偽造に走ったように(『塗料すりかえ事件』参照).続いて
次は行政機関への通報だが,どこまで信頼できるだろうか.天下りや官製談合などを例に引くまでもなく,業界と役所には密接な関係がある.02年に明らかになった東京電力の原発ひび割れ事故も,米企業の技術者が旧通産省に通報してから2年あまりたっていた.その間,東京電力は最後まで隠し通そうとしていた.そのとおり! 国交省が昨年末,やれ検査機関の一斉立ち入り検査とか,やれ構造計算ソフトの一斉調査とか,さも活動しているかのようにデモしたのは「国民世論が厳しい視線を投げかけている」時だったからです.二重基準問題まで露見してしまった現在,国交省はいったいなにをしているのでしょうか.
行政機関が重い腰を上げるのは,国民世論が厳しい視線を投げかけている時である.通報が役所に止まっている限りその対応が不十分に終わる可能性が強い.
行政機関に内部通報するなら,同時に外部のマスコミなどへの通報を併用することが必要である.内部告発するものがメディアに訴えるのは,不正や違法があることを社会に知ってもらいたいからだ.公開の場に出ることが不正をただす早道であり,自分を守ることにもなる.企業内部や裏での交渉は強い者が有利だ.イーホームズ藤田社長はまさにこのとおりのことを実践したのです.そして国交省官僚も,ある意味でこれを実践したのです.官僚と与党有力政治家の力関係を考えた時,どちらが「強い者」であるか明らかです.伊藤元国土庁長官と密室で対峙した国交省住宅局長ははたして何を思ったか.
私は,この法律は内部告発を密告と考える人,内部告発は企業を滅ぼすと考える人などの意見が反映されたものだと思う.事業者が優先されているのだ.西宮冷蔵の水谷洋一氏が,この法律を「内部告発者規制法」だと批判しているのはもっともな話だと思われます.内部告発されたら困る側が作った欠陥法律としかいいようがありません.
今回の事件は,いわゆるタレこみに発端があった.このような内部告発という行為にも,ある種の意味はあるだろうが,それによって,社会や組織のあり方が変わるきっかけになるかというと,私は疑問だ.たいていの内部告発は,ある対象に向けての個人的恨み,つらみなどをぶちまけて,単発で終わってしまうからだ.
たとえば,型枠などのコンクリート打ちをやっている職人が,「この建物のコンクリートは水が混ざっていてヤバイ」と外部に内部告発したとする.するとマスコミなどは,彼は職を賭して会社のウミを暴いたなどと,美談に仕立てる.しかし,その種の内部告発は,ほとんどが社会的正義などに基づくようなご立派な告発などではない.動機的には,当人がその現場で損をしたか,得をしたかによるものだ.現場でとんでもない嫌がらせを受けたとか,さんざんこき使われたあげくクビにされたので,その腹いせにやったというような,なんらかの形で利害関係を背景とした内部告発にならざるを得ない.それは,内部告発などではない.単なる鬱憤晴らしにすぎないのである.
ある現場でシャブコンを打つという違反行為がなされ,それを目にしても,自分がその儲けのおこぼれに預かれるのであれば,人間の心理として,さらには損得勘定として,見ざる,言わざる,聞かざるでもって,黙っているに決まっている.社会正義のために,わざわざシャブコンの内部告発など自分からすすんでやる者がいるだろうか.
逆にいうと,社会正義に基づく内部告発がたくさんあるほうが,よほどおかしい.「おまえ社会正義やりたかったら,どこかのボランティアでもやってろよ,土方工事なんかするんじゃねぇよ」という理屈の方が,はるかにわかりやすい.とりわけ,建設,建築業界などでは,社会正義に基づく内部告発など,発生する可能性は限りなくゼロに近いだろう.宮崎家は父の代から建築関係の仕事をしているから,私など,建築業界ほどいい加減なところはないと,とうの昔から知っている.ご感想はいかがでしょうか.宮崎氏のホンネがストレートに出ています.ここはおそらく一気に書かれた文だと思われます.
公正な社会建設に,内部告発が重要であり,告発者を保護する風土を築かなければならないことは一般的な理解を得た.だが,法律制定の過程が拙速であり,内容に問題あることは弁護士などからも指摘がでている.暴走する企業に警報する人がいなくなれば公益は守られず,この法律では公益通報者は守られない.社会正義を大上段に振りかざすような言い方では全くありません.告発内容を公正な第三者がみれば,告発がなんのためのものであり,なにが正義でなにが公益に資するか,自ずから明らかだから,社会正義を振りかざす必要はないのです.
2005年12月19日の衆院国土交通委員会の参考人質疑で,(平成設計の元社員)徳永氏は「(資料を)見たか記憶はないが,渡辺氏が構造について姉歯氏に間違いを指摘していた.結構,大きな声だった」と述べている(同書47頁).かもしれない…だって.かもしれないではなく,ERIが事態を公表していれば,以降の姉歯偽造物件が生まれなかったのは100%確実ではありませんか.
渡辺代表は日本ERIに,姉葉元建築士の設計は杜撰だから,調べなおすよう勧めている.しかし同社はその真偽を確認しないまま,偽造を見逃したのだ.もしこの時点で,同社がきちんと精査していれば,それ以後の姉歯偽造物件は生まれていなかったかもしれない(同書79頁).
長妻 きちんと捜査がなされ,政・官・財の癒着がきちっと明らかにされると,偽装に対する防止策などもガラッと変わってくると思います.当局の捜査の焦点は詐欺罪の立件にあると思われます.しかし小嶋社長が詐欺罪に問われようが,問われまいが,それと,偽装に対する防止策がいったいどう関係するというのでしょうか.だいいち,まさに宮崎氏も言っているように,<政・官・財の癒着>といった全体像が,司直の手によって解明されたことが,日本でかってあったのでしょうか.
耐震強度偽装事件の再発防止に向けて,政府は31日午前,建築確認の審査の厳格化や強度偽装に対する懲役刑の導入などを盛り込んだ建築基準法や建築士法など4法の改正案を閣議決定した.同日中に国会に提出する.大幅改正となる両法は6月18日までの会期中の成立,1年後の施行をめざして,5月の連休明けから本格的な審議に入る見通しだ.翌4月1日の朝日・日経・毎日の社説は,3社とも民主党前原氏辞任と耐震偽装の再発防止案に関するものでした.
構造計算の方法次第で建物の強度の数値が大きく変わることも明らかになっただけに,審査方法について国土交通省は明確な指針を示すべきだ.と国交省案を批判し,毎日の社説は
そもそも建物の安全についての考え方も,統一されていないようだ.姉歯元建築士が設計し,耐震基準を下回るため補強が必要とされた東京・新宿のマンションが,別の計算法で計算したら基準を満たしていたと伝えられた.複数の計算法が認められ,その整合に明確なルールがない現状では,安全検査すらスムーズには進まない.と問題点を指摘しています.ところが朝日社説はこの二重基準問題には一言も触れていないのです.この社説を書いた人は自社の記者の書いたスクープ記事の重要性がわかっていないと思われます.しかしこのマヌケな社説が,私にとって,非常に有益でした.次のような一節があります.
高さ20メートル以上の建物の構造設計は,自治体や民間検査機関のチェックに加えて,第三者機関で専門家の審査を受けるよう義務付けた.建築士の団体がかねて強く求めていた制度である.業界団体がかねてより強く要求していた制度を国はようやく取り入れようとしているという意味で国交省案を肯定的に評価しています.ちなみに朝日社説のタイトルは「この案でも安心できぬ」というもので,国交省案に一定の意味を認めていることは明らかです.(せめて「この案では安心できぬ」であるべきでしょう.)
「偽装を見逃してはいけないが,行政庁・民間ともに確認検査機関では構造を審査できない.それを簡単に行うには再度計算データを流すことである.これは頭を使わない,最も簡単で確実な方法で,確認制度に不安をもつ国民も納得することができる」パチパチ!これに対しパネラーの一人である多田英之氏(日本免震研究センター)が意見を述べました.
それに対して多田氏は「認定プログラムは技術の進歩をゆがめ,行政が建築に対して力をもつための道具になっている」と反論した.これは反論になっていません.認定プログラム制度の問題に話がすりかわっています.ちなみに多田氏は基調講演の中で次のような考えを披瀝しています.
一貫構造計算プログラム(認定プログラム)の普及が,設計者の能力を低下させ,姉歯元建築士のような計算屋を生み出したずいぶんと時代錯誤な御意見です.計算ソフトのおかげで「設計者の能力」は低下どころか,倍増している筈ではありませんか.計算というルーティンワークに時間をとられることなく,クリエイティブなことができる筈ではありませんか.
「補強する技術は十分にある.しかし構造設計者個人が補強できますと発言しても声が届かない.建築学会やJSCAなどの団体が発言すれば影響力はあるが,彼らは国と喧嘩したくないので手を挙げないだけ」建設業界に,国に対してきちんとものがいえる,御用団体でない団体が,はたして存在するのでしょうか.
Qu/Qunが1以上です.耐震強度0.5と報道されているものは,この値が0.5であるわけです.ここでQuは保有水平耐力,Qunは必要保有水平耐力と呼ばれるもので,後者は「施行令82条の4」で次のように定められています.
Qun=Ds・Fes・QudここでDsは各階の構造特性を表す係数で(0.25〜0.50),Fesは各階の形状特性を表す係数で(1.0〜3.0)となっています.これに関して戸谷氏は次のように述べています.
このDs・Fesの数値の裁量幅は0.25〜1.5(掛け算ですからこうなります:引用者注)と極めて大きく,構造設計者個人の判断に大きく左右される部分である.分母がこれだけ変化すれば耐震強度もこれだけ(最大は最小の6倍)変化することになります.「設計者個人の判断」の「裁量幅」が,こんなに広いのなら,そもそも姉歯元建築士は偽装という違法行為をする必要はないと思われます.この点に関して,元都庁専門副理事(構造担当)で現東京建築検査機構部長の春原匡利氏は次のように述べています(同誌93頁).
耐震強度指標値(Qu/Qun)の分母(Qun)は,政令で定められた式で計算する比較的変動の少ない数値であるのに対し,分子(Qu)は動く.そもそもQuの数値は,壁の剛性評価,モデルの設定条件や最終的な安全の確認でかなり動くものである.戸谷氏はきっと『建築知識』の読者をなめているのでしょう.
それほど短期間にできた耐震強度判定を,確認検査機関である日本ERIやイーホームズが通常の確認でなぜ行わなかったのか.イーホームズのあとに,<XXやYYやZZといったあれやこれやの検査機関も>という言葉があるものとして下さい.偽装が見抜けなかったのは2社に限りません.それどころか「通常の確認」によって偽装を発見した検査機関は,官,民問わず,日本でひとつもないのです.アトラス設計渡辺氏は「通常の確認」とは全く違うアプローチで見抜いたのです.
今回の耐震偽装事件は,建築行政法規が機能を果たさなかったことによって発生した.日本ERIやイーホームズのような建築確認検査機関や平塚市の建築主事などは,すべての工事は工事契約上の設計図書にもとづいて実施されるので,その設計図書が建築関係規定に適合するという確認が工事検査上必要とされているにもかかわらず,それをまったくやっておらず,事実上法律の求めている工事検査はまったくやられていない.前段はどうやら中間検査,完了検査をまったくやっていないと主張しているようです.計算書偽装を見逃した話と,中間検査・完了検査をどれだけきちんとやっているかは,本来関係のない話です.なぜなら後者は設計図書が正しいとして,そのとおり施工されているかを検査するものだからです.(この点を素人が誤解しやすいのはよくわかりますが,後述するETV特集で「構造設計家」まで中間検査をきちんとやっていれば偽装は見抜けた筈だと発言しているのにはビックリしました.)
それにもかかわらず,これらの確認検査機関や行政機関は,耐震偽装の違反建築物を数百棟見逃しながら,異口同音に「確認事務は適正に行われた」と公然と国会証人喚問の場で答えている.
施行令82条の4の耐震強度の判定は,構造設計の結果から安全性を確認するものであり,その作業自体は手順と操作性のバラツキがなくなるようにすれば,簡単にやれるはずである.「耐震強度の判定」は「簡単にやれるはずだ」と主張しています.しかし能力がないと無理かもしれないと戸谷氏は自問し次のように補足します.
確認検査能力がない場合でも,ほかにも構造安全チェックのやり方にはいろいろある.耐震偽装の目的は,建設コストの引下げ,つまり材料と労務の数量を減らすことであるから,使用数量が著しく少ない設計には,構造計算上の間違いか偽装があるという推測が成り立つ.続く部分で具体案を述べています.それは要するに鉄筋量などが「過去の実績」を集積した統計データの「標準偏差以内」に収まっているかチェックする,納まっていない場合は,「疑問を持って調べる」という,平凡な方法です.そんな平凡な「推測手段」は法が定める検査手順には存在しないことにご注意.
確認事務は建築基準関係法への適合を確認する業務として規定されているため,その内容確認に欠陥があったという事実に議論の余地はなく,建築主事または建築確認検査機関および特定行政庁の担当者にすべての責任があったという事実は否定できない.ここで特定行政庁(つまり自治体)は次のような理由で入ってきます.
検査済証の交付は確認検査機関の権限のもとで行われ,特定行政庁に報告されていた.つまり検査済証の最高行政責任は特定行政庁にある.すべての責任は,建築主事(という個人),民間検査機関の担当者,特定行政庁の担当者にあると建設省OBは主張しているのです.国の責任には全く触れていないことにご注意ください.戸谷氏は国が行うべきことを次のように述べています.
国家は,国民が法律で適正な建築物としてつくられたマンションを購入したにもかかわらず,それに欠陥があった場合には,まず国家がマンション購入者に対して損害賠償を行うべきである.国家はその後マンション購入者に対して支払った損害賠償請求額を,その業務を適切に行わなかった建築主事や建築確認検査機関,特定行政庁に対して行うことになる.被害者に対してひとまず金を支払い,その後真の責任者(検査機関,自治体)から金を回収するのが,国の役割だというのです.
国家と国民の関係は憲法にもとづいており,制定された行政法の適正な履行を前提として国民に納税義務が課せられている
国家は行政法で定められたことの完璧な施行義務を負っているが,それが実現しなかったことで国民に損失を与えた場合には,国家賠償請求される法律制度構成になっている今回事件は行政法の適正な履行に問題があったというよりも,行政法そのものに欠陥があったケースです.
行政法に欠陥がありそれが原因で国民に損失を与えた場合は,国家賠償請求の対象となるというのが,私のごく常識的な意見です.
今回の事件が発覚した時,私はすぐ議事録をとりよせ,何を議論したか調べました.いろいろ議論したけれども,法的に首尾一貫した論理的なシステムの検討は……ヤッテイナイ(小さな声で首を左右に振りながら)五十嵐敬喜氏は,建築基準法に重大な穴があることを認めておられます.この証言以上に信頼できるものはおそらくないでしょう.
耐震偽装事件を受けての改革の総本山「社会資本整備審議会 建築分科会 基本制度委員会」.氏によれば,今国会では建築基準法の検査機関に関する部分と,建築士などの罰則の強化について建築士法改正が行われる予定であり, 「その後,春から夏にかけて,建築士法の問題を中心に審議する予定」だそうです.つまり建築基準法はあまり熱心に審議されないようです.
26名の委員の一員に数少ない建築家として参加しているのが,現代計画研究所代表,藤本昌也氏である.
日本建築士会連合会理事を務め,これまでも建築士制度改革に声を上げてきた同氏に,
今後の法改正の見通し,あるべき建築士制度の方向性についてうかがった.
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左は同記事89頁の一部です. 再計算センターというのは,検査機関はどこも再計算していなかった,これはたいへんだというので言い出されたものだと思われます.再計算センターなど不要であることは論をまちません.検査機関が再計算すればいいのです. Aの曖昧な文が,もし二重基準問題を含んでいるとすれば,現状はある自治体主事が言ったように「収拾のつかない」状態であり,安全性の基準をどう考えるかという根本的な問題に対し,氏が言われているような「JSCA(日本建築構造技術者協会)のような機関が柱」となった第三者機関で検討するというのは,明らかにナンセンスです. 氏が言われているように,そして私も何度も書いたように,再計算など誰でもできるのです.そして再計算さえしていれば,今回の偽装物件は100%見破れたのです(再計算ですべてのおかしな物件が摘出できるなどとは一言も主張していません,念のため). 再発防止策も簡単です.すべての検査機関に対して(誰でもできる)再計算を義務付ければいいのです. 藤本氏や「構造のプロ」たちがはっきりそう明言しないのは,明言すれば現行の建築基準法に大きな穴があったことを認めることになり,国の主張と対立することになるからです.彼らは国と争いたくないのです,たとえ国に責任があることが明白だったとしても. |
上記『建築知識』に竹中工務店が開発したBRAINという「構造設計システム」の広告が出ていました(66頁).同ソフトは新計算法と旧計算法の両方をサポートしています.姉歯元建築士がこのソフトを持っていれば違法物件件数は半減した(?)でしょうが,きっと高すぎて姉歯事務所では買えないでしょうね.同番組によれば「構造計算書偽装問題に関する緊急調査委最終報告書」は,「耐震偽装がなぜ見逃されたのか」という問いに対し
技術的能力については,規制する側が規制される側よりも同等以上の能力を持つという制度創設当時の状況が逆転し審査の形骸化の誘引となったと答えているようです.この問いが今回事件の核心の質問であることは上に述べたとおりです.2,3ヶ月も税金を使って調査した結論がこんなバカげた答えでは批判する気も失せますが…
偽装を見逃した建築確認の問題点を指摘する声もあった.ゼネコンに勤務する45歳の建築士は,「審査が全く形骸化している.構造設計の経験のない者が審査しており,悪意のある者がいくらでもつけこめる」という.ここにも検査官無能説を主張する「専門バカ」がいます.検査機関がザル機関になりはてているのは,建築基準法がザルだからだということに気づかず,検査官の個人的能力のせいにしている「専門バカ」です.しかし国の責任を指摘する声が多いことを考えると,このような「専門バカ」は,構造設計の実務に従事している人には少ないようです.みんなわかっているけど口に出せない,ぷうたろうだから言える……ということかもしれません.
「日本の警察の実力を示す意味でもやらなければならない」と警察庁長官が表明し検察庁は東京地検に専従班を設け,捜査当局は異例の部厚い体制で臨んでいる.しかしその一方で国民が期待するような結果はでそうもないという予防線もすでに張られています.同社説によると
警察庁長官は記者会見で「現行法令で使える法令は使って解明する.それでも解明できない部分があれば現行法令に欠陥がある.問題提起する必要がある」と述べている.この日経社説のタイトルは『耐震偽装の捜査を通じ法の不備も探れ』というものです.ここで言う「法の不備」とは
数多くの偽装物件を設計し建設し販売するのにかかわった企業や個人にどのような逸脱行為があったのか,捜査を通じて解明できれば,その行為を取り締まる法令がなかったり,あるいは罰則が軽すぎて法令に抑止力がない「法の不備」がおのずと明らかになる.という意味の「法の不備」です.「犯人側」を取り締まる上での「法の不備」であり,私が問題としてきた検査機関が偽装を見逃した原因に関わる「法の不備」とは全然別の話であることにご注意ください.
「増資が適法と確認され,検査機関の免許が維持できると判断されるまで,株価下落などのリスクを回避するための緊急避難的措置」としている.すでに述べたとおり,株取得金額はイー社の資本金を下回る模様と日経新聞は報じました.つまり1億とか2億とかいったレベルです.ライブドア株の数100億といった金額に比べ本当にゴミのような金です,もちろんSBIにとってです.だとすると「株価下落などのリスク」「緊急避難的措置」などといったSBIの説明が大げさすぎるものであることがわかります.
イー社株というのは上場企業がそれを保有すること自体適当ではないほどうさんくさい株である.ことを,世間に対して印象付けるという役割を果たしています.
イー社というのは免許取り消しになってもおかしくないほどうさんくさいことをしてきた企業である.
警察庁の漆間厳長官は20日,耐震偽造データ偽造事件について「現行法令の中で使える法令は使って解明したい.日本警察の実力を示さなければならない」と話した.「日本警察」の威光が地に落ちないよう,せいぜい頑張って下さいネ.
99年から確認検査機関の民間解放が始まった.この背景には,建築確認の件数が増えすぎて行政だけでは十分な対応ができなくなったことに加え,民間の実務者の能力を生かして,審査の質を向上させる狙いがあった.しかし現実には,民間審査員の資格には審査実務経験が2年以上必要という条件がついたので,実態として民間審査員のほとんどはそれまで審査をしていた行政OBが担当するという,審査の質の向上というより,むしろ以前からの行政のやり方がそのまま引き継がれることになった.明快な説明です.なぜイーホームズやERIに元建築主事が多いのか,この説明でよくわかります.
マスコミの報道では,意匠設計者,確認検査機関,施工会社,現場監督や職人,施工検査をした検査員みんなが重大な不正を見逃していたと伝えられている.しかし,(略)その職業と役割からして,不正をチェックできるのは,確認検査機関(特定行政庁を含む)しかない.施工検査(中間検査,完了検査)で偽装が見抜けた筈だという意見は,素人ばかりか一部専門家まで口にしました.計算書の偽装は基本的には検査機関でしかチェックできないのです.
現状の確認検査機関の構造担当者は,実務経験がほとんどないので,書類上の不備など形式的なチェックが中心になっている.これは,民間の検査機関も行政の機関も同じである.このような偽装があった場合,現状の日本の確認検査体制ではチェックすることが難しい.ただ単に電算の出力結果の数字を確認するだけでは意味がないからである.現状の確認検査体制が<形式的なチェックが中心になっている>ことは間違いありません.しかしそれは山辺氏の言うように<検査官に実務経験がない>ためではなく,建築基準法で定める検査手順がそうなっているからです.
国交省は,この値(耐震性能)が0.5以下の場合をとくに注目している.耐震性能が0.5以下というのは,明らかな耐力不足である.実務経験のある構造設計者であれば,構造図をチェックするだけでおかしいと気づく.0.5という数字は,行政の立場から,建て替えか補修かを何らかの基準で線引きする必要があり,基準強度の半分にエイヤッで決めた値にすぎず,その数字に「技術的」な意味などある筈がないと私は思います.
しかしその値が0.5を超えてくると,構造図だけでは気づかない場合がある.その場合は,構造計算書を入念にチェックするか,場合によってはチェックする側で構造計算書を再計算して検証する必要がある(これをダブルチェックという).いくら「実務経験のある構造設計者」がチェックしても,構造図だけでは気づかず,構造計算書を入念にチェックしてもわからず,再計算してようやくわかるというケースがほとんどだろうと私は勘ぐっています.
| (2桁の偶数×3桁の奇数)という掛け算で,A君が出した答をB君がチェックするとします. チェック手順は左図のように2段階に分かれます.答えが6桁になっていたり,奇数になっていたりすれば誤りであることは,「一目瞭然」です.このように行われる「事前チェック」がOKの場合,電卓を用いて「再計算」します.事前チェックは頭を使い,再計算は頭を使いません. 事前チェックで誤りが見つかれば効率的です.しかし正解がいくらであるかは,再計算しないとわかりません.現行の建築基準法のチェックというのは,チェックリストを豊富に用意することで1だけで検査済にしていることに相当します.つまり欠陥手順なのです. ダブルチェックとは,B君のチェックだけでは万が一電卓の操作ミスをしているかもしれないので,念には念を入れてC君もチェックするという意味です.再計算=ダブルチェックという意味では全くありません. ちなみに,二重基準(新・旧計算法で結果が違う)とは,B君の使う電卓とC君の使う電卓で結果が違うということに相当します. |
このような偽装があった場合,現状の日本の確認検査体制ではチェックすることが難しい.ただ単に電算の出力結果の数字を確認するだけでは意味がないからである.すぐ続けて山辺氏は次のように述べています.
重要なことは,前提条件である建物のモデル化や基本となる計算条件,そして設計の考え方など建物全体を把握する総合力である.そのなかで,プログラムを使っての解析は構造設計を行う上でのひとつの要素であって,それがすべてではないことを考え合わせると,構造設計は専門的な知識と経験がないと審査できないことになる.つまり,確認審査のなかで最も専門性が高く難しい構造設計の部分だけは,実務経験豊富な構造設計者に委託する必要がある.構造計算がすべてではないことはもちろん言うまでもない話ですが,今回問題になっているのは構造計算なのです.
最後に,国土交通省から今後のチェック体制について,次のような提案がなされている(未決定ではあるが).私は再計算センターなるものは,検査機関はどこも再計算していなかった,これはたいへんだというので,「素人の」委員から提案されたものだとばかり思っていました.ところが意外にも国交省が提案した案であるとは!
「一元的に構造計算書を集めてコンピュータで再計算し,偽装をチェックするセンターの設置」案である.
これは,構造設計の一部分である,電算プログラムによる計算の部分だけをコンピュータでチェックするというものだ.コンピュータはあくまで計算するための道具であり,その部分だけをチェックしても,構造設計の全体をチェックしたことにはならない.再計算がすべてではないことはもちろんです.
この案が実施されても,コンピュータによるチェックで問題がなければ,それだけでよいという考え方を変えなければ,根本的な解決にはならない.結局,5年後,10年後には,構造的に粗末な建物をたくさん建設してしまう可能性は非常に高い.計算上の耐震強度が1以上であっても,構造的に粗末な建物がたくさんあるとは具体的にどういう意味でしょうか.二重基準問題のことでしょうか.では二重基準問題に対してJSCAはどういう見解をお持ちなのでしょうか.「根本的に解決する」ためには,何が必要なのでしょうか.
先に構造設計の過程で示したとおり,構造設計者は,建物の安全性に関わる専門性の高い職業であるゆえ,将来にわたり基本的事項を明快に押さえられる人材を育てる必要がある.そこで,構造設計がわかっているプロが審査し,構造設計者を育てると同時に,建物の質の向上を図ることが重要である.ということだそうです.
いずれにしても今回の国土交通省の再計算センター案が,問題を解決する案でないことは明白である.というのが,この章の結語です.
「プロがプロとしての尊敬を得ているのは,その背後に高い専門性と責任が伴うからである」(北城恪太郎経済同友会代表幹事,4月22日毎日新聞より)この言葉を姉歯元建築士に対してだけでなく,テレビに登場した多くの「構造のプロ」に対しても謹呈いたします.彼らの多くは「検査官無能説」を唱え国の責任を隠蔽しました.「確認審査のなかで最も専門性が高く難しい構造設計の部分だけは,実務経験豊富な構造設計者に委託する必要がある」という利益誘導的言動に終始した「構造のプロ」を,真のプロとして尊敬することは到底できません.
姉歯氏だけが悪いわけではなく,それを強要したであろう建設会社,それを見逃した確認検査機関も同等だと私たちは思っている.と述べ,別の住人は
イーホームズのチェック体制が機能していれば問題はおきなかった.確認検査機関が本当に正しいことをしているのかどうか捜査の手を緩めず本丸に向かって進んでもらいたいと希望を述べました.ここでいう「本丸」が国あるいは国交省を指すものでないことは明らかです.
捜査本部は,耐震強度が基準値に満たないことを知りながら住人から代金を受け取ったとされる行為が「不作為による詐欺」に該当すると判断した模様だ.とあります.不作為の詐欺とは,
うそをつくなどの言動で他人の財産をだまし取る通常の「作為の詐欺」とは異なり,本来やるべきことをせずに財産などを手に入れるケースをいう.例えば,土壌が汚染されている事実を言わず,土地を売る行為などがそれに当たる.捜査本部は当初組織的詐欺に当たるとみて捜査を進めたが,「関係者による共謀や偽装に対する認識の立証が難しいことがわかり」「多角的に立件を目指した」結果,「ヒューザー側による不作為の詐欺の容疑」が浮上したということです.
建築基準法がザルならば,それをまじめに(あるいは中にはふまじめに)適用している検査機関がザルになるのは当然の話です.すべての検査機関がザル機関であってもなんの不思議もないのです.国が定めた検査手順では,まじめに検査していようがいまいが,検査機関は偽装を見抜けないのです.したがって「藤田容疑者」の逮捕は明らかに別件逮捕です.毎日新聞は別件逮捕の正当化に手を貸しました.
私はオガワ氏が官から民に検査事務を移すにあたって,「事務的機械的にたんたんと検査」できるよう手順を定めたというその精神はまったく正しいと思います.建築確認における審査は,構造設計コンペの審査とはまったく違うのです.シドニーのオペラハウスのような特殊な構造を審査しているわけではないのです.馬渕氏はオガワ氏のコンセプトそのものを問題視していることが今回わかりました.馬渕氏は検査業務というのは事務的機械的にできるものではなく,エキスパートでなければできないと考えているのです.これこそまさに事件発覚直後の05年12月4日のNHKの「日曜討論」に出演した旧建設省OBで明海大学教授の松本光平氏が述べた
オガワ氏のコンセプトは正しかったのです.しかしコンセプトを具体化する段階で誤ったのです.再計算というきわめて「事務的機械的」作業を義務付けなかったという致命的誤りを犯したのです.
「一般論だが高度な専門領域で不正を専門家がしようとすると,同等以上の専門知識をもった人でないと発覚できない」に沿ったものです(05年12月7日掲載分).
耐震強度偽装問題の本質は建築確認制度の破綻.構造計算のコンピュータ化などで審査不能になっていたことだ.そういう事態を招き,放置してきた国の責任こそ問われるべきではないか.「国の責任こそ問われるべき」という結論は賛成です.しかし<構造計算のコンピュータ化などで審査不能になっていた>という認識には賛成しかねます.審査不能に<見えた>のは法に欠陥があったためであり,<構造計算のコンピュータ化>に罪を着せるなど,的外れもいいところです.
みんな構造計算のことがわからんわけです.みんな無知,国交省も無知で,こういう無知が誤解を生んで「きれいな構図」を想定してしまった.み〜んな無知だった,マスコミも,国会議員も,国交省も無知だった … で,検査機関の検査官はどうだったの,国交省官僚が無知だと言っているくらいですから,検査官など魚住説では当然ながら無知です.こうして<なぜ検査機関が軒並み偽装を見逃したか>という事件の核心は,法の不備に一切触れることなく,見事に解明されたことになるのです!
国交省が問題.一つは無知,一つは責任逃れ.これを聞いて田原氏またまた腕を振り上げて大喜び.北側大臣きいてますか,国交省が無知だと言ってますよ,と例の調子.
国交省は本当の専門家ではなかった.0.5とか0.3という数字を見せられてビックリしちゃったんですよ.驚愕の数字だったと建築指導課の幹部が言っていた.建築指導課の幹部と言えば,予算委員会で答弁に立った建築指導課課長の小川氏のことだと思われます.驚くべきは,小川課長が驚愕の数字だと言ったと,魚住氏が鬼の首を取ったように言っていることです.
役人の質が落ちたのが問題.
具体的な数値で,「倒壊のおそれがある」と国に突きつけられたとき,住民はどのような感情をもつだろうか.ほとんどの住民は建築の専門家ではないのである.住民がどのような感情をもつか想像できます.しかし,専門家がどういう感情をもつのか,想像し難いものがあります.
事態を混乱させている原因の一つは,適法かどうかと実際に安全かどうかには随分ギャップがあることが理解されていなかったことがあると思われます.10月11月段階ではみんなギャップはないと思っていた.強度が1なければならないのに,0.5しかないのは<ゆゆしき事>だとみんな思っていた.ところが0.5というのはある計算法でやったら,<たまたま>0.5になっているだけで,別の計算法でやったら0.8になる.神田氏の眼には「事態は混乱している」と映っています.そして氏は混乱の原因を指摘しています.しかし実は,神田氏のこの話の中に,事態を混乱させている原因が潜んでいるのです.
速度違反だって10kmオーバーなら<ゆゆしき事>だと大騒ぎするにはあたらない.強度が0.5だって同じだ.それがどれくらい<ゆゆしき事>かは,個別にしっかり調べないとわからない.国交省は0.5以下に対して退去命令を出したが,それがどれくらい<ゆゆしき事>か住民に対して説明責任があるが,国交省はしていない.
確かに,「耐震偽装指標値1.0未満=建築基準法違反」,ではある.しかし,前述のとおり,それがすなわち倒壊に結びつくとは限らない.では,絶対壊れないかというと,これもいえない.つまり,耐震強度指標値1.0未満の建物は,構造設計上の数値をクリヤしてしていないため,地動の加速度400〜500gal程度の地震により倒壊しないとは言えないが,逆に倒壊するとも誰も断言できないのである.これは「耐震強度指標値0.5未満であれば震度5強で倒壊するか」についても同様で,誰も断言できないはずである.国交省は断言などしていないのに,「誰も断言できないはずだ」と力み返って国交省を批判している,なかなかの迷文です.それはともかく,春原氏のいうとおり断言できないのは真実です.実大実験が事実上不可能で所詮きわめて不完全なシミュレーションの世界だからです.実際はどうかがほとんど検証されていないのですから,車の衝突安全性のシミュレーションに比べると精度はずっと低いに違いありません.
米からの開放要求を受ける形で行われた98年の法改正時に,政令で定めた計算方法で計算して大丈夫なら安全とみなす(安全の定義)という考え方が導入された.従来の仕様規定から性能規定に考え方が変わった.限界耐力計算法というのは,大学院で専門にやっている人でないと理解できないような高度な計算法だが,法改正の目玉として導入された.「実態」といっても「実際の」耐震強度という意味ではないことは上で注意したとおりです.「実際に安全かどうか」など誰もわからないのです.つまり氏は,みなしに関して,建前と実態が乖離していると指摘しているのです.旧計算法の世界では<みなしの幅>は小さかったが,新計算法が登場したとき<みなしの幅>が「バーンと広がった」と氏は述べているのです.
建築基準法では複数の計算法が認められていて,すべて同一だとみなしているが,実態とみなしの乖離が限界耐力計算法でバーンと広がった.
| − | コンクリート寿命の計算値 | 実際の寿命(ケース1) | 実際の寿命(ケース2) |
| マンション1 | 40年(厳しい評価:中性化深さによる) | 80年(評価は厳しすぎた) | 40年(評価は正確だった) |
| マンション2 | 40年(甘い評価:鉄筋腐食膨張による) | 40年(評価は正確だった) | 20年(評価は甘すぎた) |
| − | 耐震強度の評価 |
| 新宿の投資用マンション | 0.85(旧計算法・許容応力度等計算法による) |
| 1 以上(新計算法・限界耐力計算法による) |
| − | 耐震強度の評価 |
| 中堅業者施工のマンション | 1.0(旧計算法・許容応力度等計算法による) |
| 大手ゼネコン施工のマンション | 1.0(新計算法・限界耐力計算法による) |
日本の耐震基準というのは世界一厳しくて,姉歯氏が偽装したのもそのせいではないか.と発言したのです.それまでの耐震強度の計算法の話から,突然,耐震基準を話題にし,姉歯氏の不法行為と耐震基準を関係付けることにより,暗に日本の耐震基準は厳しすぎると主張している点にご注目ください.
本来は指定確認機関でやるべきことなのですよ.やれる人がいればやればいいのですよ.田原氏答えて曰く.「そうか,検査機関でできないものが,第三者機関でできるわけがないか.な〜んだ,どうしよう」.ここでどっと笑い声.田原氏はじめ皆どういうわけか実に楽しそうです.
別の機関を作ってどうしてチェックできるとわかるのですか.
「国土交通省が求めている書類チェックでは巧妙な偽造が見抜けないと判断した」そして当の国交省も<再計算こそキーである>ことを骨身にしみて認識したことはまちがいありません.だからこそ,再発防止策として,その名もズバリ再計算センターを提唱したのです.
佐々木晶二・県まちづくり復興担当部長は「国が示したチェック方法自体が甘かった.偽造を見落とさないために,国が再計算を義務付けるべきだ」と話している.(毎日新聞12月3日付)
どういう仕組みにすべきかしっかり検討しないとだめなんです.第一姉歯さんがどういうことをしたか,まだはっきりしないのですよ.またも<しっかり>検討しないとわからないです.オイオイと言いたくもなります.
たしかに現在の建築基準法があれをやれ,これをやれと規定している検査手順の中に再計算しろという項目はない,しかし再計算してはならないとも書いていない,姉歯事件で再計算実施が必須であることが明らかになった以上,再計算の制度化は,建築確認制度の行政上の最高責任者である特定行政庁が責任をもってすすめるべきことだこれであれば建築基準法に手を入れる必要はありません.
制度の不備を放置してきた「国の責任」については(北側一雄国土交通大臣は)「制度上の問題と法的責任は別の話.司法の判断を待つ」と明言を避けたままだ.被害者(たとえばホテルオーナー)が国を訴え,司法が国家賠償すべきだという判断を示さない限り,国の方から国賠責任を明言することはないという姿勢です.
今回の耐震偽装事件は,建築基準法,建築士法,建設業法および宅地建物取引業法に欠陥があって発生したものではない.これらの法律の施行に重大な欠陥があったため発生したのである.これはまさに氏の主張の核心です.氏は法に欠陥があったのではなく,法の施行に欠陥があったと主張します.すべての責は,確認検査業務の施行に責任を持つ特定行政庁,検査機関にあり,「公的支援」の80億というのは,国が一時的にたてかえて支払ったものであるというのが氏の主張であることは前に見たとおりです.
しかし社会資本整備審議会基本制度部会建築分科会は,現行の建築基準法行政が,建築基準法どおり行われない理由を明らかにせず,その原因が建築基準法自体の制度的欠陥のように勘違いして,中間報告を行い,これを受けて改正案が提出された.戸谷氏の主張が非常に極端なところに位置していることを,自ら表明しています.ところが驚いたことに…
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左は6月号の巻頭座談会,すなわち「学識者,構造家,元建設官僚,元建築主事,被害者住民による緊急座談会」(出席者8名,うちグランドステージ東向島の住民代表3名)の先頭頁から採ったものです. 『建築知識』がつけた「キャッチフレーズ」すなわち「納税者である住民の財産は国家が補償すべき」には,ビックリしました.これなら私の主張と同じではありませんか(笑い).戸谷氏は座談会で次のように発言しています. 日本は憲法によって国民の納税義務に対して国家が安全の保障を約束し,それを行政法で担保しています.また建築基準法による検査済証の交付によって,マンションの使用が許され,保存登記,抵当権の設定ができ,不動産売買が可能になります.ヒューザーの小嶋社長が「検査済証が交付されたから売った」と言ったことは法律上理にかなっています.これに対し「学識者」神田氏は,阪神・淡路大震災の時もそうであったように「国が本気で責任をとるとは思えません」とコメント.これに対して戸谷氏曰く. そこに責任をとらせるのが法治国家維持のために最も重要なんです.行政の責任逃れは許せません.「法治国家維持のため」とはまた,たいそうな言いようですが,欠陥法の制定に責をもつ「元建設官僚」の責任逃れは断じて許せません. 「キャッチフレーズ」は,出席者の4割を被害者住民が占める場における,「元建設官僚」のリップサービスです.氏は国が補償すべきなどとは,露ほども思っていないのです. 確認検査業務に従事した「個人」が責を負うべきだと,戸谷氏は主張しているのです(4月号). 確認事務は建築基準関係法への適合を確認する業務として規定されているため,その内容確認に欠陥があったという事実に議論の余地はなく,建築主事または建築確認検査機関および特定行政庁の担当者にすべての責任があったという事実は否定できない. |
戸谷氏は,国交省が「10月28日の事件発覚以降,わずか2ヶ月余りで,800棟を超す耐震偽装マンションを再検討し,その耐震強度評価を仕上げた」と国交省の対応を持ち上げた後,次のように述べています.NHKでご覧になられたとおり,最大手の日本ERIすら構造計算ソフトを持っていませんでした.法が定める検査手順に再計算による確認というステップが存在していなかったからです.再計算せずして,いったいどんな手段で,基準に達しているか否か,すなわち<適法か否か>の審査が可能でしょうか.それほど短期間にできた耐震強度判定を,確認検査機関である日本ERIやイーホームズが通常の確認でなぜ行わなかったのか.イーホームズのあとに,<XXやYYやZZといったあれやこれやの検査機関も>という言葉があるものとして下さい.偽装が見抜けなかったのは2社に限りません.それどころか「通常の確認」によって偽装を発見した検査機関は,官,民問わず,日本でひとつもないのです.アトラス設計渡辺氏は「通常の確認」とは全く違うアプローチで見抜いたのです.
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左は『建築知識5月号』より.氏は次のように述べています.
諸悪の根源は建築基準法だと私は考えています.そもそも最低基準を定めたものなのに,それ自体が複雑になり,計算方法も告示のなかで詳細に規定されています.そのため,構造安全の最低基準を満足すること,つまり「確認申請を通す」ことが大きなことと認識され「確認が通ればすべて安全」という状況ができたのです.「諸悪の根源」としている中味に是非ご注目ください.欠陥があるからという理由では全くありません.基準法は複雑で計算方法まで詳細に規定している,「そのため」,「確認が通ればすべて安全」という状況になった,と仰っているのです. 人々は確認検査など通っていて当たり前だと思っています.市場に出ているマンションはすべて検査に通っている,しかしチャチなマンションもあれば,頑丈なマンションもある,さてどれにするか,と考えているのです. 検査済証は最低水準に達していることを示すだけであることなど,多くの人が知っています.「確認が通ればすべて安全」と考えるほどのお人よしは稀です. 確認さえ通れば<すべて>安全と考えているのは誰? そう考えているのは一部の「業者」だけではないの? 人々が驚いたのは,「最低基準」の半分以下のものが堂々と売りに出され,そして「最低基準」の半分以下であるにもかかわらず,安全かどうか<しっかり>調べないとわからないと,主張する専門家の存在に驚いたのです. |
どの程度安全か,また安全性が今の技術レベルに照らして妥当かどうかを判断する場合,同業者が別のプログラム・検証方法で評価するピアチェックは,非常によいことです.同時に費用が掛かるので,それを社会の仕組みとしてどのくらい建物の用途・規模までを取り込むかを検討する必要があります.ただし,建築主が希望すれば用途・規模にかかわりなく行うべきでしょう.規模の大きい建物は,その公共性からもお金をかけて安全を確認する必要があるでしょう.4月23日のサンデープロジェクトにおいて,氏は「第三者機関」に対し否定的見解を述べました(ゆゆしき事).ところがここではどうみても肯定的見解です.注目すべきは第三者機関の性格を「どの程度安全か」を審査する機関であるとした上で,意見をのべていることです.否定的見解には「人がいれば」という留保条件がついていたように,この肯定的見解にも留保条件がついているのです.
事態を混乱させている原因の一つは,適法かどうかと実際に安全かどうかには随分ギャップがあることが理解されていなかったことがあると思われます.5月号の氏の記事は次の言葉で始まります.
まずはじめに言いたいことは「構造安全や耐震安全の考え方には,専門家と一般の人には大きなギャップがある」ということです.また氏は次のように述べています.
多様な方法で検証することはいいことです.許容応力度等計算で1.0を下回るものが,限界耐力計算だと適法になるのは問題だといわれていますが,本当の問題は適法か否かではなく安全か否かです(図).ですから多様な検証結果を示して,住民に使用の可否の判断ができる状況をつくることが重要なはずです.神田氏が「適法かどうか」ではなく「安全かどうか」を論じようとしていることは明らかです.
形式的に数字だけ再計算しても,建物全体の安全性に与える影響を考えると,それはほんの一部にすぎません.にもかかわらず,「国が計算書を確認したから安全」とするのは危険です.「誰が設計をしてどのような方法で検証したから安全」とすべきです.そして,どのくらいのレベルの地震を想定し,どこでどのくらいの頻度を想定して設計しているかを丁寧に説明するのです.神田氏にとって再計算など取るに足りないものです.なぜならそれは単に「適法か否か」を示すだけのものにすぎず,「安全か否か」を示すものではない,からです.
確率とか統計とかは,社会全体としてものを考える時には意味があるが,自分が死ぬかどうか,という点では問題は別になる.確率も統計も,保険会社にはきわめて有益な情報です.それに応じて地震保険料が変化するのは合理的です.しかしそれに応じて耐震強度を下げられては,<危険を蒙る側>はたまったものではありません.
技術なので差が出るのは当たり前ですが,本来どの程度まで建物の変形を許容するかは,技術者の経験の範囲で評価するもので,人によっても大きく結果が異なることがあります.そして結果が異なるならば,その結果を理解し,建築主・販売業者に分かりやすく伝えることが重要です.まず後ろの文から.
性善説・性悪説といわれていますが,結局構造は分かっている人でないと分かりません.分からない人があたかも分かっているかのようにするから問題になるのです.今回は構造技術者の職能を問われている面もあるので,それを育て確立していく必要があります.具体的には,構造設計者に説明機会をつくることで,信頼がおけるようになる.誰がやったかで質が決まるということは,厳然たる事実です.「分かっている人でないと分からない」のは,構造に限らずなにごとにおいてもあたりまえの事であり無意味な言明です.しかし次の「分からない人があたかも分かっているかのようにするから問題になる」というのは注目すべき主張です.事件の本質がここにあるという主張です.
この問題について徹底的に戦いたいのですが,実際には僕らもどこまでリスクを負えるか,ということがあります.後先考えず,破産してもよいという気持ちでどこまでもリスクを負えると言うのであれば,いろいろな行動がとれます.しかし,実際のところはこうして働きながら,現在の家賃の2/3を家賃補助として受けながら行動しているのです.これに対し専門家の一人である神田氏は,次のように「第三者的」に答えています.
こうすることで最良の結果が得られるという道筋があれば,腹をくくって突き進むこともできるんです.そのためにも,力になっていただける専門家が必要なんです.特に建築関係団体などにももっと協力していただきたかったというのが本音です.
建築学会などもきちんと動けていなかったのは確かですよね.ただし,あの当時,いろいろなことが明らかになっていない時点で発言することは難しかった.といっても,今でもすべてのことが明らかになっているわけではありません.またこれはさまざまな議論の場でごちゃごちゃになっていることですが,適法か否かということと安全か否かを分けてきちんと議論しなければいけないと思います.でました,お得意のフレーズが! が,しかし,この状況では,このフレーズに格別の味わいがあります.なぜなら強度0.31のまぎれもない違法マンションを買ってしまった人の面前で発せられたからです.
ぴゅーざーの「顧問構造家」が被害者住民を前に言いました.専門家が「適法か否か」ではなく「安全か否か」が問題だと主張したとき,そうか最低基準を満たしているだけでは問題なのか,適法だから安心と考えてはダメで,「安全か否か」が問題なのだ,と思うのが普通の素朴な受け取り方です.専門家が「ユーザの立場」に立つ人ならばそのとおりです.しかし神田氏はそうではないのです.
「皆さん,パニックにならずに落ち着いてよく聞いてください.
適法か否かではなく,安全か否かが問題なのです.
安全か否かは<しっかり>調べないとわからないのです.」
怒った被害者住民は「顧問構造家」の鼻面を殴りつけました.
1984年5月のある日,私が関係していた学会の専務理事から電話がかかってきた.「力になっていただける専門家」は,「国を相手にまわす覚悟」を持った人でなければなりません.
「埼玉県下の公団分譲の団地で,建設後数年足らずのあいだに,建物の雨漏りやひび割れなどのトラブルが大規模に発生している.居住者は公団に補修を頼んでいるが,いっこうに改善される気配がなく,不安に駆られている.(略)なんとかめんどうを見てもらえないだろうか.」
「建物の調査だから,建築の先生にお願いするのが筋ではないか」と言ったところ,「何人かの先生にあたってみたが,どうも反応が思わしくないとのことだ」と言う.分譲者が日本住宅公団であり,しかも居住者のクレームに応えて,そのつど補修などをおこなっていたのであれば,この依頼におうじることは,公団の技術陣,場合によってはその後ろ盾の建設省の技術陣を相手にまわす覚悟が必要となる.建築の先生方が尻ごみするのもとうぜんのことと思われた.「少し考えさせてほしい」と電話を切った.
なぜ検査機関が軒並み偽装を見逃したのかに関して,春原氏はどういう意見をお持ちなのでしょうか.
神田 でも構造計算は本来,民間確認検査機関や建築主事がみるべきものですよね??氏は検査官無能説を受け入れています.無能説には法の欠陥を指摘する視点が完全に欠落しています.無能説からは「だから法改正よりまず構造の専門家を育成する仕組みをつくる必要がある」(神田氏発言)といった的外れの話がでてくるだけです. 春原氏によると「適合性判定機関」(以下これまでどおり「第三者機関」と呼ぶことにします)とは,構造の専門家が高度な工学的判断を下す機関です.したがって,氏の論理に従う限り,検査機関は「第三者機関」になり得ないはずです. ところがなんと東京建築検査機構も「第三者機関」に立候補するつもりだそうです.その心は? 「年間10万件といわれる件数を処理するためには相当数の判定員が必要です.日常の設計業務を抱えるJSCA構造士からどの程度確保できるものか,人員不足が心配です」.だから「構造の専門家ではない」自分達も立候補するのだというわけです.あきれた話です. |
ピアチェックというのは調べてみると,同じレベルの構造技術をもっている設計者相互の構造の確認・提案なんです.偽装を防ぐための道具としては,ピアチェックは関係ないんです.「第三者機関」というのは,国交省が提案した「再計算センター」が変形したものです.なぜ変形したか.JSCAなどが再計算だけでは不十分である,「安全か否か」もチェックすべきである,ピアチェックの要素も取り入れるべきである…云々と反対したからです.純粋に「適法か否か」を検査するつもりの「再計算センター」は,こうしてもっと高次の安全性を審査する「第三者機関」に変容したのです.
建築確認の現場では限界耐力計算(新計算法)を審査する場合,たとえば層間変形角をどこまでとるべきか判断が悩ましいときがあるという声を聞きますがという問いに対し国交省建築指導課担当者は次のように答えています.
限界耐力計算の扱いについても留意していかなければいけないと考えています.建築基準法上の技術的基準としてさらに明確化すべきことがないか検討したいと思います.さらに,建築物の構造などによって適正な工学的判断が必要になる場合もありますので,建築確認時に限界耐力計算等を審査する場合には,規模に関わらず,すべてピアチェックという方向で検討しています.同じ5月号に限界耐力計算法が全体に占める割合を民間検査機関10社にアンケートした結果がでています.それによれば,2社が5%,3社が1〜5%,2社が1%未満,2社が0%(残り1社は受け付けていない)となっています.アンケートには新計算法に関して検査機関が感じている疑問,問題点がいろいろ書かれています.たとえばヒューローベリタスジャパン社は次のように述べています
安全限界変位の設定などに法的しばりがなく,設計者の判断に委ねられている.「高度な計算法」である新計算法は「検証に時間がかかる」(国交省)し,計算ソフト自体も法外価格(?)だと思われます.しかし,さいわいにも件数が少ないので,全件を「第三者機関」でピアチェックして再計算する事は不可能ではないでしょう.この場合に限り検査料がいくら高くても私はかまいません.
(今回の改正では)一貫計算プログラムは認定しないようです.応力計算など部分的な計算プログラムだけを認定対象にします.このような状況では,偽装する動機は少なくなるのではないでしょうか?氏はまた次のように述べています.
多くの人の一致した意見として大臣認定プログラムの一貫構造計算プログラムは偽装を助長するものになるからやめたほうがいいということです.一貫構造計算プログラムが偽装を助長する,などというおかしな意見が,「多くの人の一致した意見」???
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「構造計算プログラムは是か非か」で氏は次のように述べています.
この事件は,構造計算プログラムに尽きると思うよ.この問題の本質はこのプログラムにあるのであって,そのプログラム自体を見直していかないといけないと思う.プログラムの問題さえ解決すれば,これほどまでに法改正をする必要はないんだよ.東京オリンピックの頃なら「12階の建物を構造計算をやるには5年くらいの修練がなければできない」というのはまぎれもない真実だったと思われます.「そろばん時代」は構造計算はたいへんな作業だったのです. しかし現在においては「既製のプログラムなら構造を理解していない人間が安易に構造計算できてしまう」のがまぎれもない真実です.「構造を理解していない」検査官でも「安易に」再計算できてしまうのです!「再計算は誰でもできる」のです. で,それがなぜ「一番の問題」なの?構造計算できることが構造設計できることを意味するの?もしそうなら「構造家」はいずれ消え去る運命にありますが,そんなハズはないんでしょう,渡辺殿. 「構造家」はユーザ要件からどのような構造にするか<創意をもって>設計し,構造図が作品なんでしょう.構造計算なんて,構造図の情報を入力に強度を出力する機械的手順にすぎないんでしょ.ブラックボックスでいいんでしょ. グラフィックアーティストは,毎日使っているソフトがどんな手順で処理しているか,知ってる?建築士が構造計算の原理を知っているほどには原理を知らないでしょう.しかしそれは彼の作品が優秀かどうかとは,全く無関係です. |
マンションの宿命として,構造設計者にとって本当のエンドユーザーの顔が見えないということ.デベロッパーがクライアントになってしまう.だから,クライアントが壊れてもいいから安いものをつくれと言われたら,断りにくい構図です.重要な指摘です.どうすればユーザの顔が見えるでしょうか.この旧公団案件のような「欠陥住宅問題」に参画して経験を積むことも一策です.<危険を蒙る側>にとって安全性がいかに大切な要件であるか,骨身にしみてわかるでしょう.そのような経験のない設計士にいくら倫理を説いても,クライアントからのプレッシャに抗することはできないでしょう.
「(X氏が再計算に使った入力データを)プログラムに入れて計算したところ平面形状が私たちの構造計算書の控えに付けたものと違っていることが分かったんです.」中山氏はインタビューの中で,再計算者は「設計者の判断」が分かっていないからミスした,と取れる説明をしています.しかしミスがあったのは,鉄筋の太さ,本数など「構造図」に含まれる情報であり,設計が分かっていない云々というより,「構造図」から再計算用の入力データを抽出する際にミスしたという単純ミスのように思われます.
「入力データから図面化するソフトを使って梁のリストなどを出力して,本来私たちがつくっていた構造図と対照しました.すると鉄筋の太さも本数も私たちのものとまったく違うんです.」
「ほかにも主筋の違いやSTP(あばら筋)の違いなど多々見つかりました.」
建築確認業務はすべて人のやることですから過ちはありえます.過ちを犯したら即それが処分となるのではなく,定められたプロセスのなかで結果責任と過ちを犯した事象に対しどんな対処をしたかに関し,公開で調査,究明し白日の下で処分を決定するシステムが必要だと思います.これらの情報を関係者が共有することで,同種の過ちの再発防止にもなると思います.公開で調査,究明し白日の下で処分せよ! すばらしいメッセージです.密室でごちゃごちゃやってイーホームズの免許を取り消した国交省官僚諸君,聞いてます?
ヒューザー小嶋社長が逮捕された翌日の日本テレビのワイドショーに,弁護士の吉岡和弘氏が出演していました.青で示した言葉が私を刺激しました.しかしインスペクタをご存知の方の中には,本当にそんなことを言ったのかと思われた人がいらっしゃるに違いありません.
氏はグランドステージ川崎太師住民の,公的支援ではなく国が補償すべきという意見を,自分の意見ではなく,あくまでも住民の意見として紹介しました.そしてアメリカで氏が最近調査したところインスペクタ制度がいかに有効か知った,小嶋社長も現場にインスペクタをはりつけていたら,偽装を発見できただろう,などと述べていました.
中間検査,完了検査で設計書偽装を検出することはできません.今回事件において工事検査の重要性を強調することは,建築基準法の欠陥から眼をそらさせ,国の責任を隠ぺいすることに,結果的になります.吉岡氏は国と対峙することに尻ごみしているように,私は見ました.
| 1.今国会で審議中の耐震偽装事件の再発防止策には「場当たり的」との批判が続出. 2.「私は再発防止の決定打は「行政」が「現場で見張る」ことだと考えている」.(左の写真参照) 3.欠陥住宅の多くは工事現場での手抜きが原因であり,手抜きは現場で見張れば防止できるからである. 4.「「現場で見張る」体制が確立されれば,姉歯元建築士のような計算書の偽装は現場で容易に見破られる.」(左の写真参照) 5.なぜ「行政」に期待するか.規制緩和の「先進地」アメリカでは「行政」が「現場で見張る」システムが確立されているから・・・だそうです. 6.カリフォルニア州のインスペクション(検査)制度を「見聞」した結果の紹介.(後述) 7.日弁連は今年2月に建築主事のもとで現場検査を行う「住宅検査官」制度の導入を提言.(後述) |
私は先日,米ロサンゼルス市の建築安全局(LADBS)と全米建築基準協会(ICC),民間の検査会社や建築工事現場などを訪問し,カリフォルニア州で採用するインスペクション(検査)制度を見聞した.例えば,ロス市は厳格な耐震基準を定め,戸建て住宅については同局職員が各工程ごとに6ないし8回,現場で施工をチェックし,工事に問題があればその場で工事の改善命令を発し(以下略)アメリカの検査制度に関する解説は,多くの本に載っています.たとえば小林一輔氏は『コンクリートが危ない』の付録で「日本版スペシャル・インスペクター制度」という節を設けて説明しています.この本は99年刊で,官が確認・検査を行っていた時代です.小林氏は当時の状況を次のように述べています.
日本の現状はどうなっているであろうか.建築確認や完工検査などの住宅検査制度はある.しかし,建築確認は建築基準法に合った設計図を出せば済み,チェックはゆるい.施工後になると,行政側が現場に出向いて検査する実例はほとんどなく,現場まかせが実情である.完工検査も施主が完了届けを出さない場合が多いことから,実際にはなされない例が多い.「そもそも官から民へが問題だ」と主張する人たちは,官の時代がこんな状況であったことをきれいさっぱり忘れ去っています.小林氏は続いて次のように述べています.
しかし,わが国でも,アメリカのような制度の確立を目ざした動きが活発である.小林氏は「現状改善に向かっての第一歩として」法改正に希望をつなぎました.しかし結果はどうだったでしょうか.
1998年6月に,建築基準法の改正法案が国会を通過している.改正の主な骨子は,(略)建築確認と検査手つづきにおいて,建築着工と完了検査のあいだに,「中間検査」を導入したこと,これまで特定行政庁の建築主事がおこなっていた確認・検査業務について,新たに必要な審査能力を備える民間機関(指定確認検査機関)も実施できるようにしたこと,の二点である.
アメリカのように施主が直接雇用するスペシャル・インスペクターのようなシステムとはやや様相を異にするが,現状改善に向かっての第一歩として今後の展開に注目したい.
「英米では中間検査を7,8回行っている.しかし日本では業界がコストがかかると難色を示した為,1回だけになってしまった」ちなみに吉岡氏は北側大臣,建築Gメンの会会長と共にこの番組に出演しています.吉岡氏は建設省OBの言ったことの裏をとるために訪米した・・・? さすがにそれはないと思われます.
(1) アメリカでは,建築に際して詳細な設計図がつくられ,行政担当者(Building Officer)はそれが建築法規に合致しているか否かを入念にチェックし,合致していない場合は着工を許可しない.(1)は設計図が「適法か否か」を審査するフェーズであり,耐震偽装事件で問題になったのはまさにこのフェーズです.アメリカでは「行政担当者(Building Officer)」が設計図を審査します.「行政担当者」の役割とインスペクターの役割は全く違います.
(2) 許可が出されて施工に入ると,こんどは設計図どおりかどうかを,市の検査士であるシティ・インスペクターが,現場に何度も出向いて検査する.そして一定規模以上の工事や,学校など特別の場合には,有資格の民間のスペシャル・インスペクター(特別検査士)が,シティ・インスペクターの監督を受けつつ,現場に常駐して検査・監視する.違反があると,再度の検査がパスするまでつぎの段階に進めないうえ,罰金の制度がある.
(略)(スペシャル・インスペクターは)もちろん,ゼネコンとのあいだには利害関係はなく,全面的に検査に対する責任をもつ.歴史は古く,およそ60年にもなっており,これにより建物の品質管理,構造体強度の信頼性向上などの向上につながっている.
(略)このようにアメリカでは正しい設計図にのっとり,コンクリート強度の管理,鉄骨の溶接,高力ボルトの締め付けなどについては,かならずインスペクターを必要とする.
アメリカでは,建築に際して詳細な設計図がつくられ,行政担当者(Building Officer)はそれが建築法規に合致しているか否かを入念にチェックし,合致していない場合は着工を許可しない.の部分が実際どう行われているか視察する,ことにあったと推測するのが自然です.で,その結果は?
蛇足ながらこのETV特集にはもっと重要な話があったことは「建築基準法の穴」で紹介したとおりです.この建築主事がやっている作業は実はくだらない単純作業です.しかし,日本の紙資料ベースの審査制度のもとで,再計算を意味のあるものにするためには,この単純作業が不可欠なのです.なぜなら(施工フェーズの検査で使用する)構造図に記載されている,たとえば鉄筋の太さ・本数と,異なる太さ・本数で再計算しても,それは何の意味もないからです(熊本の事例のように).
京都府は今月1日,構造計算書の再計算を手がける10人の専門チームを土木建築部に新設.00年4月以降に建築確認した3階建て以上の建物130件について,構造計算をやり直している.これらの自治体における再計算能力は,2日から3日で1件ということがわかります.「構造力学をよく
府は昨年末,舞鶴市や京丹後市のホテルにいったん安全宣言しながら,10日後に撤回した.その教訓を得て,態勢を強化したが,これまでに再計算できたのは10件ほど.府建築指導課の担当者は「構造力学を理解し,建築技術の進歩に対応するには時間がかかる」と漏らす.
神戸市も同じ悩みを抱える.02年度以降に建てられたビルなどの再計算を昨年末から進めているが,4ヶ月を経た今も,対象となっている128件の半分も終わっていない.