作成 03.07.14
最新修正 03.12.08

それから

第一部 詐欺師

1.M氏邸
2.東京都鴨川邸
3.インチキプログラム
4.懲りない詐欺師


第二部 水枕

1.独自絶縁工法
2.防水シートが浮いた!
3.3層構造になった経緯
4.K所長
5.プロの診断
6.素人の徹底反論
7.覆水盆に返らず


第三部 坊っちゃん

1.宿直事件
2.釣り
3.職員会議
4.マドンナ
5.増給の話
6.送別会
7.祝勝会乱闘事件
8.荒肝を挫ぐ


結び 
  真実

寿命すりかえ事件



第一部 詐欺師


旭化成のロングライフ全面広告は03年4月22日から7日間連続で全国紙に掲載されました.私はその資料請求を広告に掲載されたフリーダイヤルで行いました.1週間ほどして旭化成ホームズ高槻営業所の若手社員が,わざわざ自宅まで資料を届けてくれました.

ピンク色の旭イヒ成の紙袋には,要求した『LONG LIFE』(以下「絵本」とも呼びます),おまけのサランラップ,そしてパンフレットが2冊入っていました.パンフレットは見ずに放置していましたが,株主総会翌日の全面広告の紹介も終わり身辺の整理を始めたとき,ついつい手に取って中を見てしまいました.

1冊はなんの変哲もないカタログでしたが,もう1冊の『HEBEL HAUS LONG LIFE HOUSING TECHNOLOGY』というパンフレット(0301改定D版)は,「絵本」と同じくロングライフ住宅基準をテーマにしたもので面白いものが載っていました.

1.M氏邸


パンフレットには01年8月の『30年目点検異常なし』全面広告に登場したM氏邸がまた出ていました.

全面広告では30年目点検,築30年という表現があることから,M氏邸は71年築らしいと推測できます.しかし広告本文でそれは一言も言っていません.わずかに写真余白のS46.11月という手書きメモが,昭和46年すなわち1971年築であると小さな声でつぶやいているだけです.
30年目点検は大々的に宣伝したい,しかし71年築はどうやらできれば隠したいようです.ところがご覧下さい.最新パンフレットでは71年築が踊っています.ご丁寧に3箇所も.




お子さんが映っている中央の写真が全面広告ではS46.11月というメモ付で掲載されたものです.

全面広告によるとM氏邸は01年7月に30年点検が実施されたことになっています.これから逆算して建物完成は71年7月である,そして広告には「子どもの成長に合わせて,室内スペースを広げる必要があった」ので増築したとあり,お子さんがすでに小学生らしいことから,増築は早い時期に行われた,ひょっとするとこの11月の写真は増築直前の記念写真かもしれないと私は皮肉りました.新築直後の増築とは!?

日本の貧しい住宅事情では,子供部屋の確保は新築時に最優先で考慮されます.そして増築が割高であることは誰でも知っています.全面広告の説明はそもそも少しおかしいのです.

このパンフレットによって増築が11年目という早い時期に行われ,増築理由は子供の成長と無関係だったことがはじめてわかりました.全面広告の説明は嘘だったのです.

「2階のベランダ部分を増築して,和室を広いベッドルームにリフォーム」されました.大きな洋間に増改築してご夫妻のベッドをおき,ウォークインクロゼット,書斎コーナーなどを作られたのでしょう.モデルルームでよく見かけるように.

布団生活からベッド生活への変更,つまりこれがM氏の言われる「ライフスタイルの変化」の中身のようです.


ヘーベルハウスは旭化成の沿革にあるとおり72年販売開始です.

左の二つの写真は販売開始当時のヘーベルハウスです.いずれも『ヘーベリアン』02年秋号のヘーベルハウスの歴史から採りました.

上はDシリーズ,下はEシリーズです.ご覧のようにヘーベルハウスの第1号は蒲田展示場のモデルハウスだそうです.見本が1号棟だなんておかしな話ですが.

Dシリーズはこの後長く主役を務めました.18年後に建てた我が家は後継のFシリーズですが,Dシリーズはカタログにまだ残っていました.(一方Eシリーズはすぐ消えたと思われます?)

屋根の形状は家の表情・印象をきめる上で重要なポイントです.陸屋根の場合,なにしろ普通の屋根はないのですから,その代わりに庇の形状がたいへん重要になります.

DとEでは,庇の形がちがいます.Dは先端が斜めになっていますが,Eは垂直です.庇下面の形状も違います.Dの方がふっくらと丸みがついています.

Fシリーズ住人の眼からすると,Eシリーズの庇は不細工です.




ヘーベルハウスは72年販売開始で71年築のM氏邸は商品ではありません.したがってその仕様は商品仕様のDでもEでもなくプロトタイプ仕様いわばXシリーズです.

左の二つの写真はM氏邸の71年新築当時と現在の同じ場所の写真です(全面広告の写真を拡大).映っている部分より左側が増築された所です.

これで見ると新築時の庇はEシリーズ風です.平たい箱を載せたような形で今みれば古臭い形です.ところが現在はご覧のようにDシリーズ風のスマートな庇に変わっています.箱型の例は他社にいくらもありますが,D形庇は旭化成独自でヘーベルハウスを特徴づけるものの一つです.

M氏邸の庇はEシリーズ風からDシリーズ風に化けています.普通の家ではこんな基本仕様の変更は不可能です.

庇は形が変わっただけでなく,長く(深く)なっています.庇のこれらの変更にはへーベル板の取り替え,防水シートの貼り替え,外壁の塗り替えが必要となりますから大改造です.(その他に和室の窓は,しゃれた出窓に変更されています.)


11年目の増築時にこれらの大改造が「ついでに」行われたかどうか不明ですが,M氏邸が金に糸目をつけずに改造されている事がよくわかります.




M氏邸の全景を新旧で比べてみました.

1:新型庇で深くなっている.
2:出窓に変更
3:コーナー出窓を増築部に新設
4:玄関上の庇を厚い庇に変更
5:1階庇を新型に変更
6:新築時になかった雨戸新設

見たところこれだけ変わっています.当時最新だったに違いない大きなコーナー出窓がまるでM氏邸のシンボルのように派手に目立っています.

M氏邸が30年の歳月を感じさせないのは当然です.30年の間に大改造され全く別の家に化けているからです,もちろん大金かけて.


旭化成は金の話は一切出さずに,躯体・へーベル板の頑丈さ,「綿密な」メンテナンスプログラムそして長期無償点検システムのおかげで,ヘーベルハウスは30年経ってもこれこのとおり新築同様だと訴えたのです.






2.東京都鴨川邸


30年目点検異常なしの全面広告は2回掲載されました.M氏邸は2回目に登場しました.1回目に登場した東京都鴨川邸をご覧下さい.




旭化成はこの2枚の写真を次のように説明しています.
同じ場所から撮影した東京都内にあるヘーベルハウス鴨川邸.1枚が,今から30年前の新築当時のもの.もう1枚が,この6月末に「30年目点検」をしたときのもの.見分けがつきますか.(実は左の写真が新築当時のものです.)この30年,見た目にほとんど変化がない.
驚くべきことにM氏邸の場合と全く違って鴨川邸は昔とそっくりだと旭化成は主張しています.本当かどうか念のため細部を比べてみましょう.



古風な庇の形も,庇の深さも,窓の仕様も昔のまんまです.遠目ではたしかに見分けがつかないかもしれません.

鴨川邸の増築時期は,M氏邸と違い14年前(つまり築16年時点)と明記してあります.大阪から帰ってきた長男夫婦と同居するためという増築理由にも疑いをさしはさむ余地はありません.増築にはさぞかし金がかかったでしょうから,庇を新型に変え長くして窓は出窓にしようなどとは夢にも思われなかったに相違ありません.
鴨川邸には一つ不明点があります.建設時期です.71年築であることを直接証明する証拠は全面広告には何もありません.鴨川邸では71年築は完全に隠されています.

鴨川邸は実は72年築(あるいはそれ以後)の正規ヘーベルハウスではないかと思われます.

鴨川邸も71年築だと主張されるのならご自由に.私は鴨川氏は正規ユーザだと思います.
鴨川邸が72年築だとすると30年経っていませんから,旭化成が30年目点検異常なしと宣伝するのは嘘になります.ただしこの嘘は1年フライングしたという嘘でありそれ以上に悪質ではないことにご注意ください.


旭化成がこの広告だけで止めておけば,この広告に含まれているもっと重大なインチキがばれることは多分なかったでしょう.1年さばを読んだということ以上に重大なインチキとは何でしょうか.

30年前と見分けがつかないほどきれいなのは,金をかけて手入れしたからという常識的な理由ではなく,旭化成の無償長期点検サービスと「緻密な」メンテナンスプログラムのおかげであるというインチキです.



3.インチキプログラム


2回にわたる30年点検異常なし全面広告で「緻密な」(1回目),「綿密な」(2回目)と旭化成が自慢したメンテナンスプログラムが,最新パンフレットで説明されています.

パンフレットによるとメンテナンスプログラムのエッセンスは次のようになります.「補修」と「交換」の2段階でメンテナンスの程度が区別されています.

屋根の型勾配屋根陸屋根
実施時期目安15年30年45年15年30年45年
屋根メンテ補修交換補修交換
外壁吹付け塗装交換交換交換交換交換交換
シーリング(目地補修)補修交換補修補修交換補修


このプログラムは99年4月以降に契約されたヘーベルハウスに適用されます.鴨川邸や我が家には適用されません.

90年築の我が家のメンテナンスプログラム(リビングマニュアル所載)では,外壁塗装交換の目安は10年,防水シート交換の目安は,15〜20年となっています.99年以降モデルはご覧のようにそれぞれ15年,30年ですから,メンテナンスコストは昔に比べて格段に削減されている筈です.


メンテナンスコストは,のべ45坪の勾配屋根2階建てをモデルに算出されています.ヘーベルハウス(60年耐用住宅)一般住宅(30年耐用住宅)の年間ライフサイクルコストのイメージが次のように比較されています.(タイトルにご注目ください.)








メンテナンスコストは,ヘーベルは60年で990万,一般住宅は30年で600万になっています.ヘーベルの方が安い?

990万の年別配分は,60年で解体することを前提に後半30年には金をかけない方針で割り振られています(後述).

一般住宅600万の詳細は不明.10年時点で200万,20年時点で400万かけたと考えると,30年経っても解体するには惜しい状態になっているのは確かです.

トータルコストを,へーベルは60年で,一般住宅は30年で割って年間ライフサイクルコストを算出.実にへーベルの方が34万も安いと旭化成は鼻高々です.

イメージにだまされてはいけません.
この比較は,一般住宅を新築・30年居住・解体,もう一度新築・30年居住・解体した場合と,へーベルを新築・60年居住・解体した場合の,トータルコストを比較しているのと同じ意味であることにご注意ください.

30年経ったとき,一般住宅の方は225万かけて解体し,新たに2700万で新築する,かたやへーベルは「生活変化に伴う改築700万」ですませる,これを比較しているのです.ここで2225万もの差が生じ,へーベルの方が年になおすと37万安くなるのです.メンテナンスコストをはじめ他の要素は枝葉末節のごみです.

2700万かけて新築し,30年間で600万も壁・屋根に手を入れている「30年耐用住宅」なるものが,30年で寿命がつきて使い物にならなくなってくれるおかげで,ヘーベルの方が安いのです.

30年点検異常なし全面広告で旭化成は「日本の家の平均寿命は約26年」と言っています.旭化成によるとヘーベル以外の一般住宅の「寿命」は30年なのです.
30年経つと物理的な寿命によって建替えざるを得なくなる30年耐用住宅とは具体的にどんな住宅なのでしょうか.旭化成の競争相手である他社プレハブ,あるいは注文住宅に,そんな住宅があるのでしょうか.

旭化成は正体不明のいかがわしい欠陥住宅を持ち出して比較しているのです.まともな相手と勝負していないのです.これがインチキその1です.メンテナンス費用は枝葉末節のごみの中にうずもれてしまいました.


メンテナンス費用に注目します.ヘーベルハウスの壁・屋根のメンテナンス費用は旭化成によると次のようになっています.

15年時点 30年時点45年時点60年時点
220万550万220万0万

60年で解体するという前提ですから,60年時点は0であることにご注意ください.ヘーベルハウスが気に入って90年もたせるヘーベリアンがいるかもしれません.その場合は次のようになるでしょう.(30年過ぎると点検すら有償になります.αがいくらになるかは知りません.)

15年時 30年時点45年時点60年時点75年時点90年時点
220万550万220万550万+α220万+α0万

60年で990万ではなく1540万(+α)かかることになります.これとは逆に,住んでみて間取りも外観も気にいらんと考えて30年で売り払ってしまったり建て替えたりする場合もあるでしょう.この場合は・・・

15年時点 30年時点
220万0万


中古住宅の場合,550万の補修費は買う人がもつのが一般的です(売る人がもつ場合は中古価格がその分高くなります).建て替える気ならもちろん220万しかかかりません.壊すとわかっているものに金をかける馬鹿はいません.

30年で建て替える場合は,ヘーベルハウスは220万ですむのです.にもかかわらず一般住宅の方はなぜ600万もかかるのでしょうか.ちょっとおかしいではありませんか.

一般住宅が600万(30年)かかると主張したいのであれば,ヘーベルハウスは1540万(60年)かかるというべきです.へーベルハウスが990万(60年)ですむと主張したいのなら,一般住宅は220万弱(30年)ですむというべきです.それが公正な態度です.ところが旭化成は一般600万(30年),へーベル990万(60年)とまるでヘーベルハウスの方が安いようなごまかしをしているのです.これがインチキその2です.


旭化成はヘーベルハウスの新築費,解体費が一般住宅より高いのは素直に認めています.良いもの・頑丈なものは高いのだと言いたいのでしょう.しかしメンテナンス費用が高いことは隠したいのです.

99年以降のヘーベルハウスはそれ以前に比べると格段にメンテナンスコストが安くなっている筈です.それでもなお旭化成にお任せすると,内装リフォーム費用,給湯器交換,水廻り設備の交換などを除いて,屋根・壁だけで30年で770万かかるのです.

さて3つ目のインチキです.これが最後の上塗りです.

ヘーベルハウスの年間ライフサイクルコストは一般住宅より安いと旭化成は主張しました.その根拠を旭化成はスローガン的に簡潔に述べています.タイトルをご覧下さい.「メンテナンスプログラムと50年点検システムが実現するメリット」としゃあしゃあと宣言しているではありませんか!


旭化成はピンハネ以外に何もしていないことが,知らぬが仏事件で明るみに出ました.ピンハネ分高くなった法外価格で契約をとるために,詐欺が必然でした.

旭化成は反駁の必要に迫られました.苦しい限りですがそれでも盗人の三分の理を展開しました.それが「メンテナンスプログラムと50年点検システムが実現するメリット」という珍説です.不当ピンハネ分を「メリット」の中に潜り込ませて正当化しようとしているのです.

金のにおいがしないメンテ***と50年点検***を,堅固な躯体・ALCと組み合わせることにより,旭化成は安心を売っているのです.その代償がいかに高くつくかは,全面広告では一切触れず,パンフレットではむしろ安いと偽りました.

これが01年の全面広告以来の旭化成の論理です.03年のロングライフ全面広告にもこの論理が一貫して流れています.というよりロングライフ住宅基準こそ,詐欺論理の総花的集大成なのです.

旭化成はインチキに拠るしかありません.なぜなら法外ピンハネに正当性がないからです.そして今後もピンハネで儲けたいと考えているからです.

うさんくさいことで儲ける企業は掃いて捨てるほどあるでしょう.特筆すべきは旭化成が,本来まじめな宣伝・意見広告の場であるべき全国紙の全面広告で,偽の商品を見せびらかしながらまるで慈善団体のように振舞える企業であるということです.それだけ旭化成は全国の消費者をなめているということです.




もう30年?って感じです.


ヘーベルハウス宮部邸.千葉県舟橋市,今年築30年.

右は,新築当時家の前で撮った家族の記念写真.左は同じ場所から最近撮ったご夫婦の写真.ご主人の髪はすっかり白くなられました.奥様は変わらずにおきれいです.二人の息子さんは.社会人になり現在独立されて別のところに住んでいます.激動と言われたこの30年.宮部家には平和な時間が流れていたことを,ご夫婦の穏やかな表情がもの語っているような気がします.

さて,家族が幸福を長く維持してゆくために,家にできることってなんだろう.ヘーベルハウスは,このことを考えてきました.その答えのひとつは,家のことを心配せずにずっと暮らせること.ロングライフ住宅ヘーベルハウスを支えているのは,新築当時の性能を保ちつづけられる基本性能です.例えば,外壁,屋根,床材に使用されているALCコンクリート・ヘーベル.完全無機質のこの建材は,経年劣化が極めて少なく,耐水性,耐火性,遮音性などにすぐれた性能を持っています.もちろん鉄骨躯体や基礎部分も,頑丈そのもの.

さらにヘーベルハウスでは,50年目まで定期的に点検するシステムをとっている.この7月に宮部邸で行われた「30年目点検」.玄関ドアのビスのゆるみ,屋上防水シートのきずなど,軽微な補修を必要とする数箇所を除いて,異常は見つかりませんでした.また同時に,綿密なメンテナンスプログラムにより,耐用年数に応じた補修や部品交換を計画的に行っています.

そして家族が幸福を長く維持してゆくために家にできることのもうひとつの答えは,家族の変化とともに,家も変化していくこと.二枚の写真の比較で明らかなように,30年前テラスだった場所の一部が増築されている.子どもの成長に合わせて,室内スペースを広げる必要があったのです.ヘーベルハウスの鉄骨躯体は,家族構成の変化に合わせて増改築ができる設計自由度の高さが,大きな特徴の一つです.

日本の家の平均寿命は約26年と言われています.でもこの宮部邸にとって,それはほんの通過点にすぎません.

ヘーベルハウスを建てた方は,30年後にこうおっしゃいます.家は建てたあとが大事だったんだ,と.あらためて報告します.宮部邸,


「30年目点検」,異常なし.





4.懲りない詐欺師


なぜ旭化成は鴨川邸の宣伝に満足せず,M氏邸を持ち出したのでしょうか.

一つには30年と偽ったことに対する隠蔽です.鴨川邸の30年は多分嘘ですが,M氏邸では30年は嘘ではないことにご注意ください.鴨川邸の小さな嘘をごまかす為にM氏邸で別のより大きな嘘をついたのです.

二つには宣伝効果です.鴨川邸の外観は30年の歳月を感じさせます.形が古いからです.そしてそれが当たり前です.ところが旭化成は当たり前では不満でした.

欠陥住宅でない限りどんな家でも,金をかけて手入れすれば「30年点検異常なし」で当たり前です.ヘーベルハウスでなくても,当たり前です.当たり前のことを金をかけて全面広告で訴えても効果は薄いのです.
鴨川氏は全面広告の中で「30年たっていますから,さすがに家の中の様子は変わっていますが,今だにドアの建てつけもいいし,床のきしみもありません」と極めて穏当な感想を述べておられます.しかしこれではインパクトがないと旭化成は考えました.そして客である鴨川氏の写真がないことが,実績宣伝広告として致命的だと旭化成は考えたのでしょう,きっと.


旭化成は貪欲でした.全国の消費者相手にもっと強烈に,旭化成に任せれば30年経ってもこれこのとおり新築同様だ!と叫びたかったのです.新築同様というからには形も新しくなくてはなりません.旭化成を信頼し切っている客の写真も必須です.こうして旭化成は次のM氏邸で一線を越えました.


M氏邸は鴨川邸と次の点で決定的に違います.
1.増築時期を隠し嘘の増築理由をつけたこと
2.増築以外に大改造していること
  そして
3.商品でないことが明らかなこと
M氏邸の嘘は1年さばを読んだというかわいい(?)嘘ではもはやありません.根本的に消費者をだまそうとしているのです.


M氏邸の11年目は,ヘーベルハウスが世に出て10年目です.増築実績は全国でまだ1件もなかった筈です.M氏邸の増築は旭化成の増築試験のための増築だったに違いありません.客が大金投じてやむなく踏み切る普通の増築ではないからこそ,旭化成は嘘をついたのです.

M氏は家という超高額商品のプロトタイプを,販売開始1年前に入手されたのですから,旭化成の「関係者」です.そしてM氏邸は大金かけて増改築・外装一新・定期補修されている特別な家です.M氏邸が30年経ってどんなに新築同様であろうと,特別な人の特別な住宅ですから,普通の人にはなんの参考にもなりません.


商品を買った普通の人のふりをして特別な人が広告に登場するのは詐欺的です.
プロトタイプ・試験棟を商品にすりかえて宣伝するのは,より一層詐欺的です.
金の話を全く出さずに,無償点検サービス・メンテナンスプログラムのおかげで新築同様だと宣伝するのは極めて詐欺的です.

 そして

ばれてなお,ヘーベルハウスは72年本格販売開始と言い張る旭化成は,ほんとに懲りない詐欺師です.



全面広告は01年夏のことでその秋にはインチキがばれました.同年暮,旭化成山口会長は某所で72年住宅事業本格進出とスピーチしました.旭化成の住宅事業はヘーベルハウスをおいて他にはありませんから,会長は72年以前にヘーベルハウスを販売していた,つまり早い話M氏邸は商品だと言われたのです.

信用失墜の危機に瀕した旭化成は,30年点検異常なしキャンペーンで起死回生を図りました.しかし30年の実績と信用の宣伝に,客でない客,商品でない商品を持ち出すというのでは,まさに詐欺師のすることではありませんか.そしてこの詐欺師はばれた後の態度が並の詐欺師と違います.謝るどころか開き直っているのです.

なぜでしょうか.最高権力者山口信夫会長公認のインチキだからです.


『組織とエリート達の犯罪』(新田健一著 朝日新聞社 01年11月発行)という本には「日本の警察には組織権威防衛のための無謬主義と秘匿主義がある」という記述があるそうです.無謬(むびゅう)主義とはまちがいをまちがいと認めないばかりか,俺達はそもそもまちがいなどしないと強弁することです.官僚ばかりか隠蔽体質の旭化成にも無謬主義がはびこっています.

無謬主義のシンボルとして

新築同様の71年築ヘーベルハウス

これからもずっと

消費者をだまし続けるでしょう.






第二部 水枕


(これは2年半前に書いた『防水シート補修顛末記』の続編です.)

1.独自絶縁工法


最新パンフレット(第一部参照)には次のような防水シートの説明がありました.私には目からうろこの説明でした.



防水シートはへーベル下地にべったりと全面接着されているわけではないのです.ディスクと称する丸いコースター状のものを分散配置し,それを介して下地に部分接着するという「絶縁工法」が採用されているのです.

日射熱によるシートの伸縮は絶縁工法には関係ないと思われます.外壁にべったり全面接着している外壁塗料が日射熱で伸縮しても問題ないように.絶縁工法は主に地震時のへーベル板のずれ対策であるに違いありません.(『独自免震工法』参照)
ヘーベル板に防水シートをべったり全面接着すると,地震でへーベル板がずれた時,防水シートに対する負荷はずれ部位に集中し破断する恐れがあります.しかしもしディスク間隔が仮に1メートルだとすると,たとえば1センチのずれを1メートルで吸収すればいい話になります.負荷を分散・吸収できるのです.

絶縁工法はヘーベルハウスの昔からの基本仕様です.耐久性が30年に向上したことと絶縁工法は無関係です.我が家の屋根も絶縁工法で施工されていますが,30年耐久ではありません.
ヘーベルハウス陸屋根では,防水シートに傷がついて水が入ったらお終いです.防水シートの下には隙間があり水が広い範囲にまわり,防水シートの下の断熱材・へーベル板には防水性がないからです.


Fシリーズの旧パンフレットに次のような表現があります.
屋根には高分子系の最高級防水シート(DNシート)が採用され,まるで家全体が雨合羽を着たような状態です.
普通の家より雨合羽を着ている分,防水性能が高いような誤った印象を与えます.屋根のない家が雨合羽を着たような状態と表現する方が正しいと思われます.ヘーベルハウスは薄い雨合羽が命の綱なのです.


防水シートはベランダにも貼られます.屋根と違ってベランダには人が日常的に出入りします.そのためシート厚は2ミリです.一方屋根は1.3ミリです.(90年築の我が家の場合です.)


左は『ヘーベリアン』96年夏号から採りました.ベランダはこんな感じで普通に掃除できます.




近着03年夏号の『ヘーベリアン』にも同様の記述がありました(左下参照).しかし今度は「防水シートを傷める恐れ」があるので掃除は年に1,2回という注意書きが加わっています.
写真上は,ベランダの土手(と呼ぶことにします)をナイロン不織布で,

写真下は,「広い部分」つまり船でいうと人が乗る甲板すなわちデッキをデッキブラシで掃除しています.


96年の説明はデッキの掃除でした.ここはなにも気にせず掃除していいのです.

ところが土手は注意が必要なのです.毎日土手をデッキブラシでごしごし掃除するのは,多分厳禁です.

左の記事はこう読むべきだと考えます.その理由はあとで説明します.




さてベランダには人工芝を張っても構いません.防水シート保護の意味もあると営業が勧めたので我が家は張っています.人口芝の下はこの13年間一度も掃除したことがありません.人口芝の端をめくってみました.


ここは居室部と近く日当たりの悪い場所です.こけで少し緑色に変色しています.

土手の2箇所(矢印)とデッキの隅をティッシュでぬぐってみました.いずれも表面の汚れをとれば,防水シートのきれいな表面が現われます.旭化成推奨の方法で掃除すれば見違えるようにきれいになる筈です.

土手とデッキのつなぎ目部分(写真の赤の直線)は鋼材に完全接着されていますが,そこを離れると土手の方もデッキの方も,写真から受ける固い印象とは異なり,押すとへこみます.絶縁工法による隙間が下にあるせいです.



10畳ベランダに面した日が良く当たる土手です.
手入れなしですが,上に示した場所よりきれいです.
こちらの方が屋根に条件が近いと考えられます.
へこみを示すため直線を描きました.
右のようにへこみます.



デッキも押せばへこみますが,感じが少し違います.土手は軟式テニスのボールの感じでへこみますが,デッキは下敷きに近い感じがします.

デッキには人が毎日乗ります.デッキの下の隙間は,毎日人の体重で押しつぶされます.防水シートはそれに耐える物理的強度・耐久性を持ったものでなければなりません.もしそうでなければ設計ミスです.

傷むおそれがあるから掃除は年1,2回にと旭化成は警告しました.毎日人を乗せて平気なデッキにそんな注意が不要であることは明らかです.つまりデッキと土手は防水シートのものが違い,デッキは強いが土手は弱いのです.
ベランダシート厚が2ミリというのは,正確にはデッキが2ミリで,土手はそれより薄く1.3ミリ厚だと思われます.土手の取り扱いは要注意です.1.3ミリ厚の屋根も同様に要注意です.どちらも物理的強度が十分ではないのです.



我が家が建てられた90年は,72年のヘーベルハウス販売開始から18年経っています.<15年から20年が交換の目安>というメンテナンスプログラムを実施した家が増え始めてきた時期です.

『ヘーベリアン』96年新春号では,貼り替え時期の目安は15年になっています.15年から20年であったものが,いつのまにか15年前後になっています.



防水シートはその後9?年に2ミリ厚に,98年秋から2.3ミリ厚に変更され,そして現在は2ミリ厚で30年耐久を謳っています.1.3ミリ厚シートに問題があったことは明らかです.



貼り替え時期は旭化成にご相談くださいとなっています.外壁の塗り替え時期はどうでしょうか.

外壁は汚れます.ベランダの土手が13年経つとあれだけ汚れるように,外壁も汚れます.特に砂壁風ざらざら表面の壁は,拭いてきれいになるわけではなく,汚れは蓄積します.そしてボーダー金物も色あせます.ここに業者(含む旭化成)の勧誘が加わり,客は塗り替えを決意します.

一方防水シートの貼り替えはどうでしょうか.防水シートに美観上の要素は一切ありません.外からは全く見えないからです.

防水シートは,きたなくなったから交換するのではなく,破れたら即雨漏りして<家でなくなる>という非常に切実な理由で交換するのです.その緊急性・切実性は外壁の比ではありません.

一般家庭向け防水シート業者の広告・チラシはほとんど皆無です.その上旭化成は独自シートを独自工法で施工と言っています.素人には旭化成が頼りです.そこがつけめです.
破れる危険性があるということは寿命だということです.寿命だと誰が判断するのでしょうか.

ベランダ土手の防水シートは毎日観察できますが,これがどうなったら,いつ破れてもおかしくない状態なのでしょうか?

素人が判断してはならないのです.ハウスドクターの旭化成が判断するのです.客から相談を受けた時,あるいは定期点検時に,屋根にあがって診断し寿命ですと告知してくれるのです.


(↑click)
旭化成はいみじくも「劣化診断技術」と表現しています.


「建物に話かけるプロ」が,「目視やさまざまな道具を使って建物と対話し,建物が訴えかけるわずかな危険信号も見逃さない」のです.


旭化成の「プロの点検サービス技士」が駆使するツールがいかに高度なものか,よくご覧下さい.

(拡大鏡で防水シートを覗いてみて亀の子状のひび割れができていれば,寿命のようです.)

無料診断ですから,テレビの欠陥住宅番組によく登場するファイバースコープまで旭化成に期待するのは酷というものです.





(『LONG LIFE』より)


プロの劣化診断技術はどこで一番真価を発揮するでしょうか.疑いもなく,防水シートの診断です.外壁にしても基礎にしても異常があれば,素人でもある程度わかります.目に見えるからです.一方屋根の防水シートは屋根に上がらない限り見えないのです.


私は1.3ミリ厚シートの本来の寿命は20年超ではないかと思います,(ベランダ2ミリの方は当然それ以上です.)しかし物理的強度は前述したように十分ではありません.

現実には寿命がつきる(かなり)前に防水シートは貼り替えられます.一つには屋根に上がって点検したプロが貼り替えを勧めるからです. そして二つには簡単に「事故死」するからです.事故というより「事件」というべきかもしれません.

我が家の防水シートは,防水シートの何たるかを熟知している旭化成が傷をつけ雨漏りしました.

傷は足場解体屋がつけたことになっていますが,足場解体屋にあらかじめ防水シートが要注意であることを教えていなかったとしたら,未必の故意に該当します.
いったん雨漏りが発生したら,築9年であってもプロは貼り替えを勧めます.パッチ補修は収縮性に問題があるとかなんとか言って.




2.防水シートが浮いた!

左の『LONG LIFE』が示すとおり
独自防水シートは30年耐久であると
旭化成は誇らしげです.

しかしこんなことを言い出したのは
99年以降です.

それまでは15年が交換の目安です
交換時期はご相談くださいと
旭化成は言っていたのです.




我が家の防水シートは特異な経緯(後述)により薄いシートの3層構造になっています.3層目が貼られたのは3年前です.

いくら薄くても3枚も重ねれば当分大丈夫だろうと私は思いました.しかし大丈夫ではありませんでした.


今年(03年)の5月頃から,雨が強く降ったとき2階庇から,雨水がかなり激しく流れ落ちるようになりました.

排水口になにかつまったのではないかと思い屋根に上がったところ原因がわかりました.防水シートが浮き上がって雨水をせき止め,雨水が排水口に入らずに庇からあふれ落ちていたのです.(写真は03年6月27日撮影)

(↑click)


雨上がりの状態です.
たまってはいけない水がたまり,
ちょっとしたどぶ状態になっています.
排水口周辺の防水シートが浮きあがっているため,
水が排水口に入らないのです.
こうして水は矢印方向に庇からあふれ落ちます.
他の隅でも同様の浮きがみられます.
(↑click)


手で押さえると数センチ沈みます.
左のたまった雨水が流れてきています.
もっと押さえると排水口まで流れます.


破れることだけ心配していた私にとって,思いもよらない状態でした.旭化成にすぐ「お願い」するのも業腹な話です.なぜこうなったか考えていましたが,重要と思われるヒントが最新パンフレットに載っていました.防水シートは「絶縁工法」によって,へーベル下地に部分接着されているというのです.


私はこう考えました.
陸屋根の中央部は平ら(なだらかな勾配がある)ですが,庇先端に近い部分は雨水を排水口に導くために,少しくぼんでいます.樋の役目をしているのです.

「樋」の底の防水シートと下地の接着面には,シートが収縮したとき,上向きの力,すなわちシートを下地から剥がす方向の力が働きます.剥がす力は1ミリの防水シートより3層で計3ミリの防水シートの方が強い・・・こうして「樋」は3年で部分的に消滅した?

剥がしのメカニズムが当たっているかどうかは別にして,全面接着されている場合に比べ,部分接着されている防水シートが下地から剥がれ易いのは道理だと思われます.そしてもし部分接着(絶縁工法)の仕様を無視して重ね貼りすれば,剥がれそして浮くのは必然だ・・・
絶縁工法と防水シートの浮きをダイレクトに結びつけて考えてしまったのです.3枚の接着剤でべったりくっついた防水シートがへーベル下地から浮き上がってしまった,これは貼り替えるしかないと私は思いました.



3. 3層構造になった経緯


我が家は90年築で新築時の防水シートの厚さは1.3ミリです.これが1層目です.

2層目は99年2月11日に発生した雨漏りを契機に次の経緯で貼られました.青字は『経緯表』からの引用です.
・2/11 
夜2階和室雨漏り.かなりの量.妻が見つける.築9年の家がどうして雨漏りするのよと妻怒る.
・2/12
旭化成ホームズに電話.(工事店社員)M氏来る.対応はさすがに速い.
雨漏りは旭化成ホームズに連絡しました.前年末の外壁工事に関係することなど想像外でした.旭化成ホームズ→旭化成リフォーム→工事店と連絡が流れ,外壁工事を担当した工事店社員が見にきました.工事監督の責を負うべき旭化成は見にきませんでした.
・2/13
M氏および他一人(足場責任者?)来る.陸屋根2階上の防水シート点検.傷は新しい,周辺部に数ヵ所あるという.M氏犯人が塗装屋か足場屋か調査中であるが,きちんとなおさせて頂くという.また防水シートの補修は,パッチにすると収縮性の違いで問題が多いので1枚貼り直すことを客には勧めているという.個人的には1枚貼り直すほうがいいと思うと説明した.
この工事店のアドバイスは注目すべきです.防水シートの補修は貼り直すことを客には勧めていると言うのです.(経済的にお困りの場合はパッチですが・・・と彼は付け加えました.)

ところがこの雨漏りは,防水シートが古くなったせいでも,客が破ったせいでもありません.旭化成の責任であり,補修費用は当然旭化成もちです.案の定,工事店社員の個人的見解は旭化成に一蹴されたと思われます.1週間以上経ってから工事店社員は顔を出しました.
・2/22 
月曜午前M氏来る.(妻対応)防水シート重ね張りするが5年もつ.あさって水曜工事したい,1日ですむとのこと.夜M氏に電話,5年しかもたないというのはどういうことかときくと,折り返し関西旭化成リフォームから電話させるとのことなので切る.
重ね貼りは工事店社員の意思ではなく,旭化成の意思だから旭化成に説明させるということでしょう.この後かかってきた電話で旭化成S氏が登場します.実に前年10月の外壁塗装の契約から,この電話まで旭化成の人間は一度も登場していないのです.塗料すりかえが発覚するのはこの電話です.

・2/22(つづき)
関西旭化成リフォームS氏より電話.関西旭化成リフォームの正社員と初めての会話.新築10年以降の客には無償で1ミリのシートを張っている(初耳),今回の旭化成100%責任の破損に対し無償品で対処するのは筋が違うと思ったのでちょっと感情的になる.水曜の工事断わる.対応を再度考えるとのことなので,K工業でなくリフォームより連絡してもらうことにして電話を切る.

切る前に念のため本体の塗料の種類を聞く.メーカは違うかもしれないが新築時のものと同じ製品でサラテックスというものであると明言.予想外の答だった.妻が横で聞いていて,私が感情的になったり,塗料の話などもちだしたので,驚いた顔をしたので,年末以来私が持っていた疑念を話す.
この後我が家を訪れた旭化成S氏は言いました.

破れた1.3ミリ厚のシートはすでに製造中止になっていて,新築で使用している防水シートはある時期から2ミリ,そして現在は2.3ミリになっている,そして2.3ミリで貼りかえると100万かかる(だから貼り替えには応じられない)というものでした.(『補修顛末記』参照) 
2.3ミリは施工性に問題があり,現在の30年耐久シートは2ミリだそうです.
その後3月8日の三者話合い(旭化成,工事店,客)において「一筆頂きたい」という旭化成の態度に驚いた私は,それ以後あらかじめ旭化成に書面見解を必ず出させそれを元に話合いすることにしました.


これが旭化成の防水シート補修案(3月28日付けS氏回答)です.

文中のシート幅は次のK文書でわかるように1Mだと思われます.

左側の庇断面図で凹んでいるところが「樋」です.「樋」の位置は庇先端(ボーダー金物の上端)から10数センチあたりです.

傷が「樋」の底部に存在することが明記されている点にご注意下さい.

赤線で,現在の防水シートが浮き上がった状態を示しました.「樋」は部分的に消滅しています.


長い間待たせたにしては,この説明はいい加減だと思いましたので,責任の所在,傷の数・場所,補修法を明記した書面を要求しました.これに対する回答が,4月19日付けK文書の3です.


K文書に添付された図です.屋根を上から見た図です.庇から2M幅(1M幅のシート2列)で1ミリ厚のシートを重ね貼りするという補修方法が説明されています.

矢印は,排水口(5箇所)を表わしています.右上のもっとも長い矢印が,前に示した写真の排水口で庇先端から30センチの位置にあります.

(右下の排水口も実際は他と同じ位置にあります.図が誤っています.)

その他の16の点が傷です.おわかりのように「樋」(庇先端から10数センチの位置)の傷は1箇所も記載されていません.K文書とS氏回答は矛盾しています.

2階和室の×から流れ出てきた雨水は,実際にはどこから入り込んだものだったのでしょうか.


傷の数は最初数箇所と聞いていましたので,16箇所と聞いた時は意外な気がしました.過失がより大きいことを自分から認めたのですから.K文書は次のように述べています.
キズの補修は通常は部分的補修のパッチ(部分当て)補修ですが,今回は弊社がキズをつけ,多々御迷惑をおかけした事もあり,社長回答の内容は通常の部分補修のみではなく,庇の先端部より内側へ2m幅で全周シートを増貼りする工事のご提案をさせて頂いております.この点についても,御相談させて頂ければと思います.
「通常」ならパッチ補修だが,旭化成は責任を感じている,したがって2m幅で全周シートを増貼りしてやる,これで不足なら相談にのってやる・・・と旭化成は言っています.

この恩着せがましい見解を過大評価する必要は全くありません.屋根の広い範囲で16箇所も旭化成責の傷があるのなら,もともと「通常の部分的補修」で話が済む筈がないのです.(それとも旭化成傘下の工事店が防水シートを破損することが「通常」であると認めるのなら,話は別です.)「通常の部分的補修」を持ち出した事自体,旭化成責であるという責任意識がいかに希薄かを物語っています.


ここまでの旭化成の対応を整理すると次のようになります.

1)2月24日に旭化成はどう補修するのか具体的に説明しないまま補修しようとした.
2)3月28日付けS氏回答では,屋根の一隅を1M幅で増貼り補修すると回答した.傷は3箇所?
3)4月19日付けK文書では,全周2M幅で増貼り補修すると回答した.傷は16箇所.

もし旭化成お任せで1で補修していれば,どんな補修をしたでしょうか.常識的に考えて,2のS氏回答よりさらに安直な方法で補修したに違いないと思われます.

旭化成はなぜ譲歩したのでしょうか.責任を痛感したからでしょうか.そうではありません.塗料すりかえ詐欺が裏にあるからです.塗料すりかえで腹を立てた客を懐柔する手段として,防水シート補修を使ったのです.(それは後に2.3ミリシート使用の貼り替えという更に奮発した補修案を口頭提案してきたことで明らかです.)


こうして99年5月21日に,3の方法で補修工事が行われました.これが第2層です.(屋根の中央部は1層のままです.)


さて第3層は翌00年5月に施工されました.上の経緯でおわかりのように,10年経過時点で5年保証の1ミリシートを,無償で貼るサービスを行っていると旭化成は言いました.それを実行してもらったのです.『補修顛末記』に書いたとおり半ば意地でした.

このサービスの実施に関して事前になんの案内も来ていませんでした.10年点検に来た人に,あのサービスの話はどうなっているのかと訊きました(平日でしたので訊いたのは妻です).その結果旭化成はサービス工事を行いました.

この3層工事の仕様は,5年保証の1ミリ厚シートの全面重ね貼りということ以外不明です.この工事が問題でした.



4.K所長


さて3枚の接着剤でべったりくっついた防水シートがへーベル下地から浮き上がってしまった,これは貼り替えるしかないと私は思いました.

03年7月28日(月)旭化成リフォーム大阪事業所にTEL.受付の女性に,防水シートが浮き上がり,雨が庇から流れ落ちるので見に来てほしいと伝える.担当者が休暇をとっているので明日連絡するとのこと.所長はどなたですかと訊くとK所長だった.K所長に連絡があった旨の伝言を依頼.

7月29日朝,K所長よりTEL.防水シートの浮きは広い範囲ですかと訊いてきた.段取りするとのこと.

4年ぶりの会話はほんの1,2分で終りました.
30分後,K所長よりTEL.8月2日(土)に旭化成リフォーム社員1名,他4,5名で伺うという.そんなに大勢で来られるのですかと訊くと,すぐ直せるものならその場で直すとのこと.電話を切った後,釈然としない思いが残った.

貼り替えるしかないという私の素人判断が誤りかもしれないことをK所長は示唆してくれました.
30分後,私の方からTEL.旭化成リフォーム社員1名,他1名でまず見てもらうだけで結構ですと伝える.K所長がお急ぎだと思いましたのでと言ったので,雨漏りしているわけではありませんからと答える.こうして診断日が土曜午前に決まった.


K所長はなぜ防水シートが浮き上がったのか,どのように対処するのか一言も説明しないまま(第一現場をまだ見ていません),「4,5人」で一気にかたをつけようとしました.K所長の対応は,99年2月雨漏り直後の対応と同じです



広い範囲かどうかは確かに前の写真ではわかりませんので,翌30日午前もう一度写真を撮りました.雪景色のように見える周辺部はツール(Photoshop LE)の自動選択機能を使用してカットしたためです.写真はクリックすれば拡大画像がでます.屋根マップの排水口の位置を参考にご覧ください.






1の水際の曲線が防水シートがいかに膨らんでいるかよく表わしています.2,3は前掲の写真と同じ個所です.

5に写っている園芸用のはしごで屋根にあがります.6月3日に初めて屋根に上がったときは,高所恐怖症の私はおっかなびっくりでしたが,もう平気です.5の個所の水溜り(樋部)は底が浅く,すぐ庇から流れ落ちるようです.右下に日当たりのいい方のベランダ土手が写っています.

量的にもっとも多量の水が流れ落ちるのは,我が家の屋根でもっとも長い辺である北辺に沿ってできた水溜り,つまり1,2,(3)の水溜りからであり,台所の斜め前に流れ落ちてきます.


K所長は対処法があることを示唆してくれました.

防水シートの膨らみは次の手順で簡単になおる.穴をあけ,浮き袋の空気を抜くように空気(まさか水ではないと思うが)をしぼりだし,そのあと穴から接着剤を流し込み防水シートを下地にはりつけ,あなを塞ぎ,パッチを貼ればおしまい.

接着剤は十分広範囲にまわる分量を注ぎ込む必要がある.広範囲といっても全面接着ではないので,「絶縁工法」の規約に抵触しないだろう.

これで5年保証(あと2年)という約束は守れる.あとは野となれ山となれ.
と私は考えました.なにしろ防水シートの浮きと絶縁工法を結びつけて考えていますから,こんな荒療治を想像してしまったのも仕方がありません.



5.プロの診断


8月2日土曜日晴れ.

朝10時前から旭化成リフォームY課長,工事店親方,工事店若手の3人が,屋根に上って点検.はじめから立ち会うのはまるで監視しているようなので遠慮して2階のパソコン前で一服.そこに台所で洗い物をしていた妻が,水が流れ落ちているのでどうなっているか見ておいてよと言う.(庇からの水は台所の窓の前に落ちるのです.)

そろそろ上がって説明を聞こうと思っていたところですから,催促されるとうるさく感じるものです.水が流れ落ちることなどいつもの事だとちょっと腹をたてながら,屋根に上がり課長,親方より説明を受けました.納得した後,私は先に屋根から下り,しばらく「診断」は続きました.全員が降りた後,妻がアイスコーヒーを出し1階和室で雑談.昼すぎまで.


まさかが現実でした.たまっていたのは空気でなく,水だったのです.3枚のシートは接着剤でべったり接着されているという前提が大きな誤りでした.第3層シートは第2層に全面接着されていなかったのです.

私が屋根の上で聞いて理解したところを模式的に表わすと次のようになります.
内容
庇に沿った水たまり
第3層00年10年点検後に貼られた1ミリ厚シート
接着剤による(線状)部分接着 (・・・水・水・水・・・)
第2層 99年旭化成責の傷に対する1ミリ厚補修シート
接着剤による全面接着
第1層90年新築時の1.3ミリ厚DNシート
ディスクを介した部分接着(*)
建屋本体断熱材・へーベル板
(*)樋の底にはディスクではなく板状の鋼材が入っているとの事.(ベランダの土手とデッキのつなぎめのようなものか.)

課長は屋根の上で書いた図面をもとに水枕の原因を簡単に説明してくれました.そして私が要求する前に,現状の説明と今後の対処を書面で出しますと言ってくれました.その後1時間近く雑談,言わば4年半ぶりの新三者話合いです(人,工事店は全く別ですが).

このサイトの事や詐欺事件のことは話題にしていませんが,世間話をしたわけではありません.メンテナンス価格の話題から例のシーリング46万を持ち出した時,親方が身を乗り出したように見えました.

課長はあわてて46万の中身を親方に説明したのですが,その中につい足場代が入ってしまいました.足場代でもいれないと46万は説明できないのです.私は足場代は別ですと事実だけを言い,それでその話題はお終いです.

課長,工事店の対応には説明責任を果たそうとするまじめな姿勢が感じられました.気分を良くした私たち夫婦は,その日の午後車のディーラーの夏祭りフェアにでかけ,クイズでレジャーチェアをゲット.さてその夜阪神ー中日戦で井川の好投をビールを飲みながらテレビ観戦していた時,妻がなにげなく言ったのです.

「あれだけ水を出せば,2,3ヶ月大丈夫ね.」
「なにをあほなことを言うてる.外に溜まっている水を出しただけで,雨が降ればまた同じ・・・?!」

まぬけな私はこの時ようやく気付きました.外に溜まっている水は,膨らみを抑えることによって排水口に流れるのです.防水シートを破ってまくりあげないでもしない限り,上に溜まった水が庇から流れ落ちるはずがないのです.もちろん今日は雨など降っていません.

妻によると,水は旭化成が屋根に上がってしばらくしてから流れ出し,我々4人が和室で雑談していた時も流れ続け,話合いが終ったころようやく止まった,つまり2時間近く流れ続けていたのです.相当な量だと思われます.(3層の下に溜まった水の量は前記北西の写真で想像できます.この写真はよく見ると3層下の水が漏れ出して排水口に流れた水跡が映っています.)

水はいつもの場所より,少し西側のやつでの木に流れ落ち,流れの幅はいつもより狭かったようです.

雨の時いつも流れ落ちる水は3層上の水たまりからあふれた水,晴天の今日流れ落ちた水は3層下にたまった水,つまり別ものでした.にもかかわらず,よく似た場所に流れ落ちていたのです.


旭化成は診断だけではなく,治療もしていたのです.

私が屋根の上でここから水が入ったと説明を受けた3層と2層の「溶着」個所,課長が金属ヘラでめくって説明してくれた所,まさにそこ又はその近辺が,水が入ったところというより,水を出したところだったと思われます.

溜まっている水はいずれどこかに穴をあけ出さなければなりませんが,治療法を説明せずに黙って手術するのは,たとえその手術がいかに正当なものだったとしても,ルール違反だと思いますよ,K所長殿.台所の前を落としどころに選んだところが,なんともいえずおかしいところです.水が流れ続けたのはサイフォン現象でしょうか.


1層と2層はまさに室内プールの防水シートと同様に一滴の水も漏らさなかったと思われます.この命の綱の1層と2層に傷つけないように治療することが絶対の条件です.

3層は防水シートとしてはでき損ないでしたが,3年間紫外線を一身に浴びて,1,2層に対する保護シートとしてはお役に立ったと考えることもできます(ベランダの人工芝のように).排水口近傍に「水抜き穴」でも開いていれば,保護シートとしては万全でした.

保護シートのたすけがあれば,1.3ミリ厚DNシートでも,それこそ課長が言われたように亀の子状のひび割れができるまで,「老衰」で寿命が尽きるまで20年以上お役に立てるのではないでしょうか.


6.素人の徹底反論


8月6日2時から4時過ぎまで,旭化成リフォームY課長より別紙2枚付の回答書面を頂き説明を受けました.8月2日が診断日ですから,たいへん迅速な対応です.昔とはえらい違いです.


(1)状況

「原因は3層目のシートの庇先端の接着不良部(X,Y)より雨水が浸入し,

2層目と3層目の間に水がたまり(水枕とよんでいます),

3層目のシートが持ち上がった為に雨水が庇よりオーバーフローしております.」


第3層が浮き上がっています.もし第3層が樋の底の鋼板にきちんと接着されていれば,たとえ雨水が浸入しても,薄い水の層ができるだけであり水枕にはなりようがありません.

課長の図は排水口まわりの防水シートが膨らみきっている個所の断面図です.水枕の上から流れ落ちる水の量はしれています.(ほとんどは排水口に入る.)

右は課長の図を改ざんして作った解説用の補足図です.こちらは3層のにできた水溜りの絵です.この水溜りは屋根の広い範囲の水を集め,満杯になると庇から一気に流れ落ちます.こちらの水に悩まされました.


(2)雨水侵入部位

「接着不良個所(X,Y)の周りを踏むと溜まった雨水がでてきます.

水枕は庇全周囲にひろがってきています」


雨水侵入個所が見事に2箇所に特定されています(Xはちょうど台所の窓の前にあたり,Yは排水口近辺です).

下はこの場所の写真です.X,Yの位置は私のデモ用で正確ではありません.1と3は第3層防水シートのつなぎ目,2は屋根の勾配が変化している線(2より庇側が急勾配になっている)です.




課長の断面図はY,私の改ざん断面図はXに,それぞれ対応します.Y近辺の防水シートを足で踏んづけると,もし穴が開いていれば水はYから勢いよく噴出する筈です.一方Xの方は,庇周辺は水枕ではなく水溜りです.水溜りに足を入れて踏んづけても,水はYほど勢いよく出ない筈です.妻の証言によると,8月2日の診断当日ちょうどXあたりから2時間水が流れていたことになります.妻はYからの水には気付きませんでした.

Xから水が流れ出たのは,結局のところ原因調査の顧客向けデモを見せて頂いたと考えておくことにします.どちらにしろ大勢に影響はありません.旭化成はX,Yから水をすべて抜き出し,穴を塞いでお終いなどとは,一言も言っていないのですから.


・・・と考えていたのですが,8月10日の日曜日,実に簡単なことに気付きました.あいもかわらず間抜けな話です.

Xが1平方センチの大きな穴だとします.毎日毎日50ミリの大雨が降ったとしても,そこから入る水の量は,1年で1.8リットルにしかならないではありませんか.XもYも庇の上で,言わば丘の上です.雨水が集まるような場所ではないのです.
Xは水溜りに接していますが,そもそも水溜りは水枕ができた結果であり,水枕がなぜできたかを今問題にしています.

水枕は5月には庇上端の線より上まで膨らんでいます(課長の断面図のように).その結果水は排水口に流れずに,庇から流れ落ちるようになったのです.水枕ができはじめたのは,ずっと前からだと思われます.そして水枕の水の全量は,少なく見ても浴槽の水くらいはあるでしょう.

小学校の理科の知識で,旭化成が特定したXYは水枕の主犯ではありえないことがわかります.真犯人は別です.


私は写真をとる時,平部の上を歩きました.その時踏んだことによって防水シートのつなぎ目から水が染み出たと思われる水跡が前にも触れた北西の写真に映っています.接着不良個所は庇先端だけでなく平部にもあると思われます.


水が集まる場所という意味では上記写真の3のつなぎ目が非常に怪しいと思われます.3の線は水溜りの底を這っています.樋の底をこのつなぎ目が走っているのです.



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つなぎ目は最初のこの写真によく映っています(写真の水は水たまりから流れてきた水で水枕の水ではありません).

ベランダは土手とデッキが別のシートです.ここも同じ考えのようですが大きな違いがあります.ベランダはつなぎ目が鋼板にがっちり接着されているのに対し,こちらはつなぎ目が宙に浮いています.

庇上で接着不良個所が簡単に2箇所見つかる程度の施工技術であれば,この長いつなぎ目のどこかに不良個所があっても何の不思議もありません.そして樋という「谷」には,広い「高原」に降った雨水の全量が流れ込むのです.

そもそも樋底で底に固定せずにシートをつなぐような工法が許されるのでしょうか.



旭化成が提案した改修方法をみておきます.

(3)改修方法

「改修方法はリフォーム本部に確認し,別紙2の手順で行います.」
別紙2

庇先端水枕部の改修方法
 
別紙2は改修手順の詳細な説明(図入り)です.防水シートに関しては「社内の誰もがいうことをきく」人が作成したとのことです.隠蔽文書を作文する人がいる一方,こういう職人肌の人もいることが,大企業の強みです.

この資料は庇の構造図や接着剤の固有名などが入っていて,社内資料に近いものかもしれませんので,原文の公表は控えておきます.私が理解した範囲を次に説明します.

改修工程は次の6工程からなります.庇先端から30〜40センチにところで第3層をカットし,工程3までが平部側にめくった第3層の処理,工程4からが庇先端側の新設第3層の処理です.

工程作業内容コメント
工程1第3層シートの庇先端から30から40センチの所をはさみで切り,平部側にめくる. (排水口の中心が30センチですから,上記写真の2の線より庇側です.)
工程2平部側にめくった第3層下面,および第2層上面に代5センチ残し接着剤塗布.(めくれるのは1の線までと思われる.第3層と第2層は1の線で部分接着されている筈だから.)
工程3第3層をもどして第2層に接着.代部は熱風溶着.(カットした線と1の間が今度は全面接着され「3層べったり構造」になります.)
工程4 カット位置から庇先端側の第3層シートを撤去.可能であれば,第2層も撤去(第2層に罪はないので,なぜ第2層が邪魔なのか気になります.後述します.)
工程5 新設シート装着.庇先端部およびカット部は熱風溶着,その他は接着剤で接着.ただし
樋の底の鋼板部はXXXXXXを打設
(樋の底は,このような特別の処理がされています.)
工程6新設シートの庇先端部およびカット部のコーキング,シーリング処理.(端,つなぎ目には必ずこのような後処理がされています.)


この改修手順によると,めくられた平部側第3層は第2層に全面接着されます.
8月2日屋根の上で,既存第3層がなぜ第2層に全面接着されていないのかと質問した時の親方の答えは,8月6日にY課長によって否定されました.結局のところ,そのような仕様で施工したという以上の答えは得られませんでした.
第1層の絶縁工法には必然性がありますが,既存第3層の袋貼施工には必然性がありません.手抜きしただけだと思われます.また庇側はこの改修方法によると樋をまたいでシートを貼り,かつ樋の底には特別の処理がされています.これは既存第3層の施工方法とは全く違います.

既存第3層には2箇所の接着不良云々ではなく施工方法自体に問題があるようです.


ところで「名人」は庇側は第2層の撤去を望んでいるように思われます.第2層はK文書によれば庇先端から2M幅で第1層に全面接着されている筈です.第1層を傷めずに第2層を部分的に剥ぎ取ることが可能なのでしょうか.そもそもなぜそんな危ないことまでして第2層を撤去する必要があるのでしょうか.

庇側は庇という山あり,樋という谷あり,排水口という井戸ありで,施工の難易度は平部に比べるとずっと高いと思われます.さらに樋底の鋼板にはXXXXXX打設という特別の処理が必要です.接着剤でべったり全面接着した3枚の計3.3ミリ厚のシートでは,これらの施工に実績がないのでしょうか.

いろいろ考えてみた結果,「可能であれば,第2層も撤去」が何を意味しているのか訊いた上で,旭化成の改修方法を受け入れるかどうか決めることにしました.10日の日曜日午後,旭化成リフォームに電話して火曜日に連絡くれるよう伝言を依頼.


8月12日(火)1時から2時間,Y課長に上記疑問点を質問.妻同席.

丘の上の接着不良個所だけではあれだけ多量の水はたまらない筈だと訊きましたが,2個所以外にあるかもしれない・・・とのこと.残念ながらそれだけでした.

樋の底につなぎ目がくるようなつなぎ方はしないということだったので,屋根に上って全周そうであることを確認してもらった.こんなつなぎ方の例があるのか調査してもらうことにした.
例の道具を使ってつなぎ目をチェックしてもらったが特に異常なし.ちょっと残念.(しかしこんな道具で,水漏れのような細かい隙間がわかるかのか不明だと内心思う.)
「可能ならば第2層撤去」の意味は,第2層が簡単にはがれるような状態になっている(そういうことはないと思うが)ならば,撤去すると言うことだった.関連して鋼板に打設するXXXXXXとは何かを訊いたが,接着剤の種類だと思うが確認するとのこと.工事は天気がよければ盆明けの21日にしてもらうことになった.



旭化成のXY水枕主犯説をもう少し突っ込みます.


旭化成は2箇所の接着不良個所が原因で水枕ができたとしました.しかしなぜ接着不良ができたかは不明です.
屋根の上の説明では,補修シートに含まれている補強用のネットのせいかもしれないということでしたが,どのシートも同じ構造である以上これは説明になりません.
もし第2層が例えば7年経過しているとしましょう.すると経年劣化したため2箇所で接着不良を起こした,他にもあるかもしれない・・・という説明が,正しいかどうか別にして,素人に対しては通用すると思われます.

単に接着不良があったというだけでは,水枕の原因をシートが古くなったせいにする余地が残っています.




これは課長の図の庇上部を拡大したものです.

防水シートは下から第1層(新築時),第2層(K文書補修),第3層(無償サービス)です.

各層の端の様子が実物と少し違っています.

実際は次の図のようになっています.

1はボーダー金物,2は第2層施工時に打設されたコーキング(幅3センチの立派なもの),3はコーキングと第3層の間の隙間,そして4が接着不良部位です.

図は接着不良があるYの断面図のつもりですが,3の隙間はここに限らず庇の全周に見られます.幅5ミリ,深さ1ミリ,全長30数メートルの細い溝が全周をめぐっています.

8月2日課長は接着不良部位をヘラで全周チェックしました.どのようにチェックしたのでしょうか.上記の隙間からヘラを水平に突っ込んで調べたのです.第2層で同じチェックができるでしょうか.できません.図でおわかりのように接着部位はコーキングの下に埋もれているからです.

ヘラでチェックできたこと自体がすでにおかしいのです.


「名人」の水枕補修法の工程6には「新設部及び,既存部を覆うようにDNシリコンを打設する」となっています.K文書補修時に打設された2のコーキングはまさにそのような形になっています.

ところが第3層の施工では,その処理が省略されました.手抜きです.



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隙間は前に挙げた樋のつなぎ目の写真にも映っていますが,庇側から接写してみました.

1はボーダー金物,2がK文書補修時のコーキング,3が問題の隙間,4が樋底のつなぎ目です.

この写真はベランダの上の庇で,脚立が映っている写真の個所です.ここはどういう理由かはっきりしませんが,北側庇に比べて「樋」が浅い個所です.

ボーダー金物には雨水があふれ出たときの水跡がついています.
前に丘の上の穴では,どう考えても大きな水枕ができる筈がないと書きました.しかしその穴に細い溝がつながっていれば,話はすこし変わるかもしれません.

接着不良部位はヘラでめくれるように見えました.完全に熱風溶着されているのか疑問です.だとするとヘラで検出できる大きな穴XYだけでなく接着面全域に細かい穴があるかもしれません.そして溝は無数の毛細管で水枕と繋がっているかもしれません.

年間降雨量を1500ミリ,細い溝の全長を30メートルとして,溝に降る量は1年で150*(3000*0.5)で225リットルとなり,かなりの量です.溝周辺の水も入り込むと思われますが,いくら(XY+毛管現象)でせっせと溝の水を水枕に移しても,大部分は溝からあふれてしまうと思われますので,水枕事件の主役をはるには力不足だと私は思います.しかしとにかくプロはXYが原因だとしました.

丘の上の細い溝に降った雨水が水枕の主犯であるとすると,2箇所の接着不良が原因で水枕ができたではなく,コーキング処理の手抜きが原因で大きな水枕ができたというべきです.
2箇所に接着不良があったという言い方には,100%完璧な工事などない,どうしても不良個所がでてくるというニュアンスがあります.

正しくははじめから40点の工事しかしていないのです.その上やったところにも不良個所XYがあったということです.

第3層の無償工事には,先端コーキング処理が省略されている,樋の底で宙吊り状態でシートをつないでいる,全面接着ではなく袋貼されている,熱風溶着すべきところをしていない等の問題点があります.問題であることは,「名人」の施工方法に照らせば明らかです.


水は,庇の上の接着不良部位から入ったでしょう.平部の接着不良部位からも入ったでしょう.そして樋の底の接着不良部位からも入ったでしょう.大きな水枕は手抜き工事が原因でできたのです.



8月21日,22日の両日,炎天下改修工事が行われました.当初1日で済むはずでしたが,まる2日かかりました(課長,親方,若手2人).工事開始直後,第3層にはさみを入れた時点で,第2層がどうなっているか見せてもらいました.(その時排水口の上蓋をはずした状態も見せてもらいました.)

工事が終わって翌23日土曜日の写真です.水枕は消滅しています.庇先端の隙間,樋底のつぎめはもうありません.

1は今回のコーキング,2はベランダ上の庇部分につけてくれた水押さえのための鋼板,3は2層補修時のコーキングです.なぜここだけ,古いコーキングのままになっているのかは,訊く前に若手が教えてくれました.

4に脚立に乗って写真をとっている私の姿が映っています.庇金物には水があふれたときの汚れがついていましたが,スプレーできれいに塗装してくれたようです.


00年の第3層工事は無償のサービス工事です.その仕様は旭化成お任せです.無償のものにあれこれ客が口出しすることはできません.「手抜きは仕様である」と主張することは可能です.

旭化成は「庇先端水枕部の改修方法」に則した方法で2日間かけて改修しました.第3層工事のやり直しです.旭化成は前の工事が手抜き工事だったとは一言も言いませんでしたが,サービス工事の仕様が,最低限守るべき一定の品質水準に達していないと認めざるをえなかったからこそ,無償で工事をやり直したのです.
旭化成が謝るときの決まり文句は,「迷惑をかけて申し訳ございません」の一言です.リフォーム工事を始める前に,近隣に挨拶する時と同じ言い方です.
説明は(客の立場から言えば)決して十分とはいえませんでしたが,「庇先端水枕部の改修方法」はその不足を補ってあまりあるものでした.それを読めば旭化成の本来あるべき工事基準が明らかです.そして旭化成はその基準で工事をやり直しました.これは誠実な対応であると評価すべきだと思われます.



7.覆水盆に返らず


00年の第3層シートは,既に述べたように「新築後10年経過時点でどの1.3ミリ厚の顧客に対しても一律に5年保証の1ミリ厚シートを全面重ね貼りする無償サービス」として施工されました.

旭化成に限らず営利団体ならどこでも,自分に落ち度がないのに馬鹿にならない額の持ち出しサービスなどするわけがありません.

この無償サービスのことを初めて聞いた時,防水シートが薄すぎたためのクレームに対するリコール隠しの類ではないかと思いました.どの顧客に対してもサービスしているというのは後から旭化成が追加したものです.
もし本当に世間に公表されたサービスなら,1.3ミリ厚シートが薄すぎると公式に認めリコールしているようなものです.隠蔽体質・無謬主義・儲け主義の旭化成がそんな潔い行動をするとは,残念ながら到底信じられません.

旭化成の行動指針は密室での個別対処です.「欠陥」に気付いた客にだけ対処するのです.旭化成は組織としておおやけに非を認める体質ではないのです.

根拠はもう十分示しました.旭化成は打合せ記録書の偽造を認めましたか? 客に罪を着せるインチキ文書発行を認めましたか? 71年築のプレハブが商品ではないことを認めましたか?

一律というのは嘘だと思っていましたが,課長は無償一律サービスですと仰いました.意外な感じがしましたが,ひょっとすると,本当かもしれません.無償サービスの質が鍵です.


すでに述べたように無償サービスの仕様は旭化成お任せです.我が家の例では手抜き仕様でした.旭化成ははっきり言いませんでしたが,無償サービスでは「手抜きが標準仕様」なのです.旭化成が慈善団体でない以上,これは考えてみれば当たり前です.

防水シートはたとえ薄いものであっても,広範囲にかつ丁寧に重ね貼りすれば,性能・耐久性は貼る前より向上します.これは客の望むところですが,営利団体にとっては儲ける機会の損失です.

重ね貼りは,あくまで傷部に対する負荷を分散させるための局部補強でなければならないのです.全面重ね貼りで性能が格段に上がっては絶対にならないのです.
無償サービスには実はもう一種類あります.こちらは有償の場合と同等の良質のサービスです.これを無償出血サービスと呼んでおきます.

1.3ミリ厚シートの物理的強度はすでに述べたように十分ではありません.なんらかの経緯でその弱点が露呈し,客が弁護士あるいは消費者センターなど公的機関の関係者同伴で,そこを衝いてきた場合,旭化成は無償出血サービスを強いられます.

我が家の第2層は,旭化成に詐欺事件を隠蔽するという下心があったため無償出血サービスになりました.隠蔽をあきらめた時期の第3層は通常の無償サービスです.

客に一律に無償出血サービスを提供したのなら,それはリコールと同等であり責任感にあふれた立派な行為です.旭化成の場合それはありえません.

もし課長の言われるように無償一律が本当なら,手抜き仕様無償サービスの提供であり,それならば十分ありえる話です.なぜなら少ない投資で不定の未来ではなく5年という決まった期間内に確実に何倍にもなって返ってくるからです.

客からすれば結局ただほど高いものはないということです,たとえば次のように.


X氏宅の防水シートはなにも異常がありませんでしたが,築10年段階で無償サービスの恩恵を受けました.

高齢のX氏は旭化成お任せの客で屋根にあがって自分の眼で何がどうなっているか確かめるようなことはしません(4年半前の私と同じです).
3年後,庇から雨水が流れ落ちてきました.X氏はすぐ旭化成リフォームに電話します.「すぐ直してください」

旭化成リフォームは社員1人他4,5人を手配しすぐ客の家に向います.

旭化成は,排水口の近傍の膨れあがっている個所に穴をあけます.水枕の中の水は勢いよく排水口に流れ込みます.水枕を足で踏みしめ十分だし終れば,あけた穴に蓋をします

屋根から下りた旭化成社員は,X氏に口頭で説明するでしょう.

「防水シートが古くなっているため水枕ができていました.これで当分は大丈夫ですが,この機会に貼り替えられてはいかがでしょうか.それともこの際いっそのこと勾配屋根に変更されてはどうでしょうか.」

X氏が金に余裕のある場合,100万(?)かけてシートを貼り替える,あるいは更に金をかけて屋根掛けし木に竹を接いだ家にリフォームすることになります.

もしX氏が金欠なら,3年後にまた水枕が発生し今度は引導を渡されます.なぜならすでに築16年になっており,旭化成が主張する交換時期になっているからです.


客が水枕に驚いて旭化成に泣きついた時,「庇先端水枕部の改修方法」できちんと改修してくれると考えてはいけません.我が家は<無償サービス>に対する改修が<無償出血サービス>で実施された例外パターンです.無償サービスに対する改修は上記のように無償サービスで行われるのが原則です.これですべての話の辻褄が合うと思われます.




さて知らぬが仏事件は塗料すりかえ事件です.発覚後,旭化成は契約塗料で工事やり直しを提案しました.無償でやり直すという意味では今回と同じです.しかしその意味は全く違います.月とスッポンほど違います.

今回やり直した00年の無償全面重ね貼りサービスと98年の外壁塗装工事を比較します.

00年サービス工事 98年外壁塗装工事
特徴 無償サービス 旭化成リフォームの中心業務
仕様 旭化成お任せ 契約書で規定
結果 水枕発生 塗料すりかえ
対応 別仕様で工事やり直し 契約塗料で工事やり直しを提案


リフォーム事業は旭化成の「建てたあと」商売の中核です.そしてその中心は外壁塗装です.正体不明の無償サービス工事と異なり,外壁塗装は収益の柱となるべき最重要業務です.知らぬが仏事件は,その中核業務のまさに根幹に位置する契約書が改ざんされたことによって起こった詐欺事件です.

仕様は契約書で明確に規定されています.私は性能の良い新製品塗料の注文書に署名捺印しました.しかし旭化成は全く別の安物塗料が契約塗料だと思いました.
工事店は打合せ記録書の写しを客に提出した後,旭化成に原紙を提出しました.その原紙に安物塗料への変更が追記されていました.こうして旭化成は塗料が変更されたことを認識しました.

にもかかわらず旭化成発行の記名捺印入り請書には,客の注文した塗料がそのまま記載されています.旭化成は嘘の請書を嘘と知りつつ発行したのです.このことに弁明の余地はありません.旭化成は詐欺に加担しているのです.
打合せ記録書を媒介にした契約書改ざんは日常化していたと考えられます.法外価格が原因で本来とれるはずのない契約までとって売上を増やすために,旭化成は工事店にだまされたふりをしていたのです.



 
Y課長は旭化成リフォームの売上は同業のSハウス,Dハウスに負けていると言いました.ただしヘーベルハウス自体が少ないですからと付け加えることを忘れませんでした.そうです.それで当たり前です.

左は日経掲載の「ザ・リフォーム」の広告(01年2月)です.

00年には,旭化成リフォームは,「顧客への徹底フォロー」で年率25%の急成長をとげ,全国450社中堂々7位を占め「高収益ぶり」が注目されています.

対象客がヘーベリアンに限定されていることおよび旭化成リフォームが新機軸を打ち出したわけではないことを勘案すれば.これは異常です.

この時期旭化成は工事店に一切を丸投げしすきにさせていました.旭化成の信用と(一部)工事店の手練手管という本来両立しえないものが,両立どころか相乗効果を発揮して売上が急伸していたのです.

「打合せ記録書原紙こそ客の意思を表わす」と旭化成が信じるふりをすることによって不可能が可能になったのです.(*)


このランキングは旭化成を信用し疑うことを知らなかった知らぬが仏がいかに多かったかを雄弁に物語ります.
(*:03年10月21日補足.宮家の名を騙った詐欺事件に対して,テレビで弁護士が興味深いコメントをしていました.大掛かりな詐欺事件つまり複数の人間・組織が関与する詐欺事件では,詐欺犯側にだます・だまされるという関係が生じるのが一般的なようです.もちろんだまされる側もだまされて潤っているのであり,うすうすにしろ本当はわかっているのです.旭化成と工事店の関係がまさにそれです.)

旭化成中枢は恥ずべき業務実態を徹底的に隠そうとしました.隠蔽プロの汚い作文で契約書改ざんを言った言わない問題にすりかえようと謀りました.しかし隠蔽は失敗しました.失敗がすでに明白であった01年に,打合せ記録書の偽造原紙を公表して責任をなおも免れようとした事は旭化成という企業の消すことのできない汚点となって残りました.


工事やり直しは,盗んだことが露見した品物を持ち主に返してそれで無罪放免を主張しているのと同じです.この盗人はだまして盗みましたとは一言も白状していないのです.責任をとるべき中枢が潔く責任をとらない限り,本当の意味で信用の回復などできるものではありません.



以上の点を厳しく指摘した上で,今回の現場旭化成の対応には深く感謝いたします.旭化成という組織ではなく,我が家に来てくれた人達を信用して,今度こそ大丈夫ではないかと思います.暑い中本当にご苦労様でした.





第三部 坊っちゃん


先日ある方からメールを頂きました.趣旨は

 ・今後のねらいがはっきりしない
 ・私なら示談または裁判に持ち込む
 ・相手も馬鹿ではないから時効を狙っているのではないか

というものでした.

夏目漱石「坊っちゃん」の力を借りてお答えしようと思います.

1.宿直事件

坊っちゃんは裏表のある人間が大嫌いです.宿直の時にバッタ事件が起こりました.
「イナゴでもバッタでも,何でおれの床の中へ入れたんだ.おれがいつ,バッタを入れてくれと頼んだ」
「誰も入れやせんがな」
「入れないものが,どうして床の中にいるんだ」
「イナゴは温い所が好きじゃけれ,大方一人で御這入りたのじゃあろ」
「馬鹿あいえ.バッタが一人で御這入りになるなんて−バッタに御這入りになられてたまるもんか.−さあなぜこんないたずらしたか,いえ」
「いえてて,入れんものを説明しようがないがな」
坊っちゃんは思います.
けちな奴らだ,自分で自分のした事がいえない位なら,てんで仕ないがいい.証拠さえ挙がらなければ,しらを切るつもりで図太く構えていやがる.おれだって中学にいた時分は少しはいたずらしたもんだ.しかしだれがしたと聞かれた時に,尻込みをするような卑怯なことはただの一度もなかった.
坊っちゃんはいたずらを否定しているのではありません.いたずらをやった後の態度を問題にしているのです.

『知らぬが仏』:塗料すりかえ事件もたかが塗料です.すりかえが発覚した後の旭化成の態度が問題です.)


おれはこんな腐った了見の奴らと談判するのは胸糞が悪るいから,「そんなにいわれなきゃ,聞かなくっていい.中学校へ這入って,上品も下品も区別が出来ないのは気の毒なものだ」といって六人を逐っ放してやった.おれは言葉や様子こそ余り上品じゃないが,心はこいつらより遥かに上品なつもりだ.六人は悠々と引き揚げた.上部だけは教師のおれよりよっぽどえらく見える.実は落ち付いているだけになお悪い.おれには到底これほどの度胸はない.
坊っちゃんはバッタ事件に続いて同夜起こった吶喊(とっかん)事件で生徒らの図太さを改めて感じます
おれが宿直部屋へ連れて来た奴を詰問し始めると,豚は,打っても擲いても豚だから,ただ知らんがなで,どこまでも通す了見と見えて,決して白状しない.


2.釣り

坊っちゃんは教頭(赤シャツ)に釣りに誘われます.画学の教師(野だいこ)が同行します.赤シャツは学校というのはいろいろ情実のあるところで書生流に淡白にはいかないとたしなめた上で,前任者がやられたから注意しなければならないと坊っちゃんに吹き込みます.
「僕の前任者が,誰れに乗ぜられたんです」
「だれと指すと,その人の名誉に関係するからいえない.また判然と証拠のない事だからいうとこっちの落度になる.とにかく,折角君が来たもんんだから,ここで失敗しちゃ僕らも君を呼んだ甲斐がない,どうか気を付けてくれ玉え」
「気をつけろったって,これより気の付けようはありません.わるい事をしなけりゃ好いんでしょう」

赤シャツはホホホホと笑った.別段おれは笑われるような事をいった覚はない.今日ただ今に至るまでこれでいいと堅く信じている.(略) 赤シャツがホホホホと笑ったのは,おれの単純なのを笑ったのだ.単純や真率が笑われる世の中じゃ仕様がない.清はこんな時に決して笑った事はない.大に感心して聞いたもんだ.清の方が赤シャツよりよっぽど上等だ.

「無論悪るい事をしなければ好いんですが,自分だけ悪るい事をしなくっても,人の悪るいのが分らなくっちゃ,やっぱりひどい目に逢うでしょう.世の中には磊落なように見えても,淡白なように見えても,親切に下宿の世話なんかしてくれても,滅多に油断の出来ないのがありますから・・・・・・.(略)」
下宿の世話をしたのは数学の主任(山嵐)です.宿直事件は山嵐が生徒を扇動して起こったと赤シャツは示唆したのです.赤シャツが「蔭口をきくのでさえ,公然と名前がいえない位な男」だと坊っちゃんは気付いていますから,決して鵜呑みにしたわけではありませんが・・・
ここへ来た時第一番に氷水を奢ったのは山嵐だ.そんな裏表のある奴から,氷水でも奢ってもらっちゃ,おれの顔にかかわる.おれはたった一杯しか飲まなかったから一銭五厘しか払わしちゃない.しかし一銭だろうが,五厘だろうが,詐欺師の恩になっては,死ぬまで心持ちがよくない.あした学校へ行ったら,一銭五厘返して置こう.
『知らぬが仏』:私も詐欺師のお世話にはなっていません.)



3.職員会議

宿直事件は職員会議に諮られます.坊っちゃんはこんな黒白のはっきりしていることを,なぜ会議に諮ってまとめる必要があるのか疑問に思います.
纏めるというのは黒白の決しかねる事柄についていうべき言葉だ.この場合のような,誰が見たって,不都合としか思われない事件に会議をするのは暇潰しだ.誰が何と解釈したって異説の出ようはずがない.こんな明白なのは即座に校長が処分してしまえばいいに.随分決断のない事だ.校長ってものが,これならば,何の事はない,煮え切らない愚図の異名だ.

『知らぬが仏』:塗料すりかえも黒白がはっきりしています.「異説の出ようはずがない」のです.)

校長(狸)は事件は自分の寡徳の致す所で慙愧に絶えないが,起こってしまった以上,善後策について腹蔵のない意見を望むと述べます.
おれは校長の言葉を聞いて,なるほど校長だの狸だのというものは,えらい事をいうもんだと感心した.こう校長が何もかも責任を受けて,自分の咎だとか,不徳だとかいう位なら,生徒を処分するのは,やめにして,自分から先へ免職になったら,よさそうなもんだ.そうすればこんな面倒な会議なんぞを開く必要もなくなる訳だ.第一常識からいっても分っている.おれが大人しく宿直をする.生徒が乱暴をする.わるいのは校長でもなけりゃ,おれでもない.生徒だけに極ってる.もし山嵐が扇動したとすれば,生徒と山嵐を退治すればそれで沢山だ.人の尻を自分で背負い込んで,おれの尻だ,おれの尻だと吹き散らかす奴が,どこの国にあるもんか.狸でなくっちゃ出来る芸当じゃない.
赤シャツ
「事件その物を見ると何だか生徒だけがわるいようであるが,その真相を極めると責任はかえって学校にあるかも知れない.だから表面上にあらわれた所だけで厳重な制裁を加えるのは,かえって本来のためによくないかとも思われます.かつ少年血気のものであるから活気があふれて,善悪の考はなく,半ば無意識にこんな悪戯をやる事はないとも限らん.」
坊っちゃんは狸が狸なら赤シャツも赤シャツだ,生徒があばれるのは教師が悪いのだと公言していると憤慨します.
活気にみちて困るなら運動場へ出て相撲でも取るがいい,半ば無意識に床の中へバッタを入れられて堪るもんか.この様子じゃ寝頸をかかれても,半ば無意識だって放免するだろう.
『知らぬが仏』赤シャツの「半ば無意識」と旭化成の「認識まちがい」は同じ穴のむじなです.

続いて野だいこ
「・・・・・それでただ今校長及び教頭の御述べになった御説は,実に肯綮に中った剴切な御考えで私は徹頭徹尾賛成致します」
坊っちゃんは野だ(いこ)が生意気にもへらへらと意見を述べるのがやたら癇に障ります.阿諛者は誰が見ても,坊っちゃんが見ても,そうとわかるからです.
野だのいう事は言語はあるが意味がない,漢語をのべつに陳列するぎりで訳が分らない.分ったのは徹頭徹尾賛成致しますという言葉だけだ.おれは野だのいう意味は分らないけれども,何だか非常に腹が立ったから,腹案も出来ないうちに起ち上がってしまった.「私は徹頭徹尾反対です・・・・・・」といったがあとが急に出て来ない.「・・・・・・そんな頓珍漢な,処分は大嫌いです」とつけたら,職員が一同笑い出した.
『知らぬが仏』:K文書も「意味は分らないけれども,何だか非常に腹が立った」点で全く同じです.)

博物も漢学も歴史も,赤シャツの穏便対処説に賛成します.忌々しい,みんな赤シャツ党だと坊っちゃんは思います.すると今まで黙って聞いていた山嵐が奮然として起ち,窓ガラスを振るわせるような声で演説します.
「私は教頭およびその他諸君の御説には全然不同意であります.というのもこの事件はどの点から見ても,五十名の寄宿生が新米の教師某氏を軽侮してこれを翻弄しようとした所為とより外には認められんのであります.教頭はその原因を教師の人物如何に御求めになるようでありますが失礼ながらそれは失言かと思います.某氏が宿直にあたられたのは着後早々の事で,まだ生徒に接せられてから二十日に満たぬ頃であります.この短い二十日間において生徒は君の学問人物を評価し得る余地がないのであります.軽侮されるべき至当な理由があって,軽侮を受けたのなら生徒の行為に斟酌を加える理由もありましょうが,何らの原因もないのに新米の先生を愚弄するような軽薄な生徒を寛仮しては学校の威信にかかわる事と思います.教育の精神は単に学問を授けるばかりではない,高尚な,正直な,武士的な元気を鼓吹すると同時に,野卑な,軽躁な,暴慢な悪風を掃蕩するにあると思います.もし反動が恐しいの,騒動が大きくなるのと姑息な事をいった日にはこの弊風はいつ矯正出来るか知れません.かかる弊風を杜絶するためにこそわれわれはこの学校に職を奉じているので,これを見逃す位なら始めから教師にならん方がいいと思います.私は以上の理由で寄宿生一同を厳罰に処する上に,当該教師の面前において公けに謝罪の意を表せしむるのを至当の処置と心得ます.」
事件被害者すなわち坊っちゃんになんの非もないことを論理的に説明し,赤シャツに堂々と反論します.説得力のある見事な演説です.むろんわが愛する坊っちゃんは・・・
おれは何だか非常に嬉しかった.おれのいおうと思う所をおれの代わりに山嵐がすっかり言ってくれたようなものだ.おれはこういう単純な人間だから,今までの喧嘩はまるで忘れて,大にありがたいという顔を以て,腰を卸した山嵐の方を見たら,山嵐は一向知らん顔をしている.
『知らぬが仏』:99年4月20日私が旭化成に要求したのはただ一点です.公けに謝罪することです.40年ぶりに「坊っちゃん」を読み返して漱石が同じ言葉を使っているのを知り,何だか非常に嬉しくなりました.密かに謝るのではなく,みんなの前で謝れ,それが私の気持ちでした.)


ところが山嵐は一言つけたしました.
「ただ今ちょっと失念して言い落しましたから,申します.当夜の宿直員は宿直中外出して温泉に行かれたようであるが,あれは以ての外の事と考えます.いやしくも自分が一校の留守番を引き受けながら,咎める者のないのを幸に,場所もあろうに温泉などへ入湯に行くなどというのは大きな失体である.(略)」
坊っちゃん
妙な奴だ,ほめたと思ったら,あとからすぐ人の失策をあばいている.おれは何の気もなく,前の宿直が出あるいた事を知って,そんな習慣だと思って,つい温泉まで行ってしまったんだが,なるほどそういわれて見ると,これはおれが悪るかった.攻撃されても仕方がない.そこでおれはまたも起って「私は正に宿直中に温泉に行きました.これは全くわるい.あやまります」といって着席したら,一同がまた笑い出した.おれが何かいいさえすれば笑う.つまらん奴らだ.貴様らにこれほど自分のわるい事を公けにわるかったと断言できるか,出来ないから笑うんだろう.
寄宿生は一週間の禁足および坊っちゃんに謝罪という形で事件は決着します.ただし,教師はむやみに飲食店に出入りするなというおまけがつきます.
蕎麦を食うな,団子を食うなと罪な御布令を出すのは,おれのように外に道楽のないものに取っては大変な打撃だ.すると赤シャツがまた口を出した.「元来中学の教師などは社会の上流に位するものだからして,単に物質的の快楽ばかり求めるべきものでない.その方に耽るとつい品性にわるい影響を及ぼすようになる.しかし人間だから,何か娯楽がないと,田舎へ来て狭い土地では到底暮らせるものではない.それで釣に行くとか,文学書を読むとか,または新体詩や俳句を作るとか,何でも高尚な精神的娯楽を求めなくってはいけない・・・・・・」
坊っちゃんは鋭い反撃を食らわします.
だまって聞いていると勝手な熱を吹く.(略)あんまり腹が立ったから「マドンナに逢うのも精神的娯楽ですか」と聞いてやった.すると今度は誰も笑わない.妙な顔をして互に眼と眼を見合わせている.赤シャツ自身は苦しそうに下を向いた.それ見ろ.利いたろう.

釣りに行った時,マドンナのことは小耳にはさんでいました.芸者かなんかだろうと坊っちゃんは思っていました.


4.マドンナ

坊っちゃんは下宿の婆さんから,マドンナが英語の教師(うらなり)の婚約者であったこと,赤シャツがマドンナを横取りしようとしていること,山嵐がマドンナの件で赤シャツに談判に及びそれがもとで両者は険悪な関係になっていることを教えられます.

温泉の町から帰りの野芹川の堤の上で,坊っちゃんは二つの影法師を見かけてぴんときます.
おれは苦もなく後ろから追い付いて,男の袖を擦り抜けざま,二足前へ出した踝をぐるりと返して男の顔を覗き込んだ.月は正面からおれの五分刈の頭から顋の辺りまで,会釈もなく照らす.男はあっと小声にいったが,急に横を向いて,もう帰ろうと女を促すが早いか,温泉の町の方へ引き返した.

赤シャツは図太くて誤魔化すつもりか,気が弱くて名乗り損なったのかしら.所が狭くて困っているのは,おればかりではなかった.

坊っちゃんは坊っちゃんなりにいろいろ考えて,どうも山嵐より赤シャツの方が悪いと思い始めます.
この様子ではわる者は山嵐じゃあるまい,赤シャツの方が曲がっているんで,好加減な邪推を実しやかに,しかも遠廻しに,おれの頭の中へ浸み込ましたのではあるまいかと迷っている矢先へ,野芹川の土手で,マドンナを連れて散歩なんかしている姿を見たから,それ以来赤シャツは曲者だと極めてしまった.曲者だか何だかよくは分からないが,ともかくも善い男じゃない.表と裏とは違った男だ.
曲者ときめつけたのはいいのですが,もう一つ確信がありません.そこで
野芹川の土手でも御目に懸りましたねと喰らわしてやったら,いいえ僕はあっちへは行かない,湯に這入って,すぐ帰ったと答えた.何もそんなに隠さないでもよかろう,現に逢ってるんだ.よく嘘をつく男だ.これで教頭が勤まるなら,おれなんか大学総長がつとまる.おれはこの時からいよいよ赤シャツを信用しなくなった.
これが決定打でした.赤シャツは面と向かって嘘をつく人間であることを坊っちゃんははっきりと知ったのです.

『知らぬが仏』:99年4月20日旭化成幹部社員は会ってもいない日に「仕上げ確認」したと面と向かって嘘をつきました.旭化成は嘘をつく企業であることを,私は知りました.なぜ見え透いた嘘を吐くのだろうという疑問が事件の出発点でした.)



5.増給の話

弱みを握られた赤シャツは坊っちゃんの懐柔にかかります.うらなりが「半分は自分の希望」で延岡に転任するから,坊っちゃんの給料をあげ,そのうち主任にするというのです.坊っちゃんは釈然としないまま承知します.ところが下宿の婆さんに好きで転任なんて「大違いの勘五郎ぞなもし」と言われてしまいます.
月給を上げてやろうというから,別段欲しくもなかったが,入らない金を余して置くのも勿体ないと思って,よろしいと承知したのだが,転任したくないものを無理に転任させてその男の月給の上前を跳ねるなんて不人情な事が出来るものか.
坊っちゃんはすぐに赤シャツの家にとってかえし増給を断ろうとします.
「それは失礼ながら少し違うでしょう.あなたの仰ゃる通りだと,下宿屋の婆さんのいう事は信じるが,教頭のいう事は信じないというように聞こえるが,そういう意味に解釈して差支えないでしょうか」
『知らぬが仏』:「ぷうたろうのいう事は信じるが,日商会頭のいう事は信じないというように聞こえるが,そういう意味に解釈して差支えないでしょうか」)
おれはちょっと困った.文学士なんてものはやっぱりえらいもんだ.妙な所へこだわって,ねちねち押し寄せてくる.おれはよく親父から貴様はそそっかしくて駄目だ駄目だといわれたが,なるほど少々そそっかしいようだ.婆さんの話を聞いてはっと思って飛び出して来たが,実はうらなり君にもうらなりの御母さんにも逢って詳しい事情を聞いて見なかったのだ.だからこう文学士流に斬り付けられると,ちょっと受け留めにくい.
正面から受け留めにくいが,おれはもう赤シャツに対して不信任を心の中で申し渡してしまった.下宿の婆さんもけちん坊の欲張り屋に相違ないが,嘘は吐かない女だ,赤シャツのように裏表はない.
赤シャツはさらに「堂々たる教頭流」の形式論理を展開します.
「下宿の婆さんが君に話した事を事実とした所で,君の増給は古賀君の所得を削って得たものではないでしょう.古賀君が延岡に行かれる.その代りがくる.その代りが古賀君よりも多少低給で来てくれる.その剰余を君に廻すというのだから,君は誰にも気の毒がる必要はないはずです.古賀君は今よりも栄進される.新任者は最初からの約束で安くくる.それで君が上がられれば,これほど好都合のいい事はないと思うですがね.」
おれの頭はあまりえらくないのだから,何時もなら,相手がこういう巧妙な弁舌を揮えば,おやそうかな,それじゃ,おれが間違ってたと恐れ入って引き下がるのだけれども,今夜はそうはいかない.
坊っちゃんは遣り込められ反論できません.しかし断固自分の「好き嫌い」を通します.
「あなたのいう事は尤もですが,僕は増給がいやになったんですから,まあ断ります.考えたって同じ事です.さようなら」といいすてて門を出た.頭の上には天の川が一筋かかっている.

うらなり君の転任のそもそものきっかけは,彼のお母さんが校長に増給を頼みにいったことです.赤シャツはそれを逆手にとったのです.

『知らぬが仏』:赤シャツはうらなり君側の「増給してほしい」という希望を満足させました.旭化成は「スタッコ模様がよい」という客側の希望を満足させました.赤シャツはそれによって,邪魔なうらなり君を追い出すことに成功しました.旭化成はなにしろ「客の希望」ですから良心を傷めることなく,安物塗料への変更を承認しました.)

『知らぬが仏』:もし打合せ記録書のコピーに安物塗料に変更と書かれていれば,旭化成も「堂々たるイヒ流」の形式論理を展開したことでしょう.)



6.送別会

うらなり君の送別会の日,坊っちゃんは山嵐を誘います.山嵐の力でなんとか「赤シャツの荒肝(あらぎも)を挫(ひし)いでやろう」と考えたのです.増給の件,地位を上げると約束した件を山嵐に話すと山嵐はおれを免職する気だなと言います.
自分が免職になるなら,赤シャツも一緒に免職させてやると大に威張った.どうして一所に免職させる気かと押し返して尋ねたら,そこはまだ考えていないと答えた.
まことに残念にも山嵐は赤シャツと刺し違えする手段が思いつかないようです.
今度の事件は全く赤シャツが,うらなりを遠ざけて,マドンナを手に入れる策略なんだろうとおれがいったら,無論そうに違いない.あいつは大人しい顔をして,悪事を働いて,人が何かいうと,ちゃんと逃道を拵らえて待っているんだから,よっぽど奸物だ.あんな奴にかかっては鉄拳制裁でなくっちゃ利かないと,瘤だらけの腕をまくって見せた.
坊っちゃんは山嵐に持ちかけます.
君どうだ,今夜の送別会に大に飲んだあと,赤シャツと野だを撲ってやらないかと面白半分に勧めて見たら,山嵐はそうだなと考えていたが,今夜はまあよそうといった.何故と聞くと,今夜は古賀に気の毒だから−それにどうせ撲る位なら,あいつらの悪るい所を見届て現場で撲らなくっちゃ,こっちの落度になるからと,分別のありそうな事を附加した.山嵐でもおれよりは考えがあると見える.
山嵐は優しくそして分別があります.さてうらなり君の送別会です.
ことに赤シャツに至って三人のうちで一番うらなり君をほめた.この良友を失うのは実に自分に取って大なる不幸であるとまでいった.しかもそのいい方がいかにも,尤もらしくって,例のやさしい声を一層やさしくして,述べ立てるのだから,始めて聞いたものは,誰でもきっとだまされるに極ってる.マドンナも大方この手で引掛けたんだろう.
こうして赤シャツは坊っちゃんにとって「ハイカラ野郎の,ペテン師の,イカサマ師の,猫被りの,香具師の,モモンガーの,岡っ引の,わんわん鳴けば犬も同然な奴」になります.しかし坊っちゃんにとって赤シャツは手にあまる存在です.坊っちゃんの相手には野だいこが手ごろなところです.



7.祝勝会乱闘事件

坊っちゃんと山嵐は祝勝会での中学と師範学校の乱闘事件に巻き込まれます(赤シャツの弟が手引).そして事件は翌日四国新聞に報道されます.このローカル紙は,軽薄なる堀田某と東京から赴任してきた生意気なる某によって,善良温順の気風をもって全国に知られた本県中学の名誉が著しく毀損された,当局はこの無頼漢の上に相当の処分を加えよと,「一字ごとにみんな黒点を加えて,御灸を据えたつもり」でいます.
「ひどいもんだな.本当に赤シャツの策なら,僕らはこの事件で免職になるかも知れないね」
「わるくすると,遣られるかも知れない」
「そんなら,おれは明日辞表を出してすぐ東京へ帰っちまわあ.こんな下等な所に頼んだっているのはいやだ」
「君が辞表を出したって,赤シャツは困らない」
「それもそうだな.どうしたら困るだろう」
「あんな奸物の遣る事は,何でも証拠の挙がらないように,挙がらないようにと工夫するんだから,反駁するのは六ずかしいね」
「厄介だな.それじゃ濡衣を着るんだね.面白くもない.天道是か非かだ」
続いて
「まあ,もう二,三日様子を見ようじゃないか.それでいよいよとなったら,温泉の町で取って抑えるより仕方がないだろう」
「喧嘩事件は,喧嘩事件としてか」
「そうさ.こっちはこっちで向うの急所を抑えるのさ」
狡猾な敵の急所は「下半身」しかないようです.今に通じる話です.


山嵐一人だけが免職に追い込まれます.

辞表提出後,山嵐は赤シャツが芸者と密会するらしい角屋の前の枡屋で見張ります.見張り始めて8日目,坊っちゃんが「如何に天誅党でも飽きる事に変わりはない」と弱音を吐き出したころ,夜の7時半に子鈴という赤シャツなじみの芸者が他1名の芸者とともに,角屋に入るところを山嵐は目撃します.そして10時過ぎ,
赤シャツと野だが瓦斯燈の下を潜って,角屋に這入った.
山嵐と坊っちゃんは,出てくるのをつらい思いしながらじっと待ちます.朝の5時にようやく出てきた赤シャツと野だを,町外れの杉並木で捕まえます.
「教頭の職をもってるものが何で角屋へ行って泊った」と山嵐はすぐ詰りかけた.
「教頭は角屋へ泊って悪るいという規則がありますか」と赤シャツは依然として鄭寧な言葉を使ってる.顔の色は少々蒼い.
「取締上不都合だから,蕎麦屋や団子屋へさえ這入って行かんと,いう位謹直な人が,なぜ芸者と一所に宿屋にとまり込んだ」
山嵐の追求はあくまで論理的です.赤シャツの欺瞞を衝きます.

坊っちゃんは逃げ腰の野だいこ退治にもっぱら専念します.
おれはいきなり袂へ手を入れて,玉子を二つ取り出して,やっといいながら,野だの面へ擲き付けた.玉子がぐちゃりと割れて鼻の先から黄味がだらだら流れ出した.野だはよっぽど仰天した者と見えて,わっと言いながら,尻持をついて,助けてくれといった.おれは食うために玉子は買ったが,打つけるために袂へ入れてる訳ではない.ただ肝癪のあまりに,ついぶつけるともなし打つけてしまったのだ.しかし野だが尻持を突いた所を見て始めて,おれの成功した事に気がついたから,こん畜生,こん畜生といいながら残る六つを無茶苦茶に擲き付けたら,野だは顔中黄色になった.
一方山嵐はあくまで首魁に迫ります.
おれが玉子をたたきつけているうち,山嵐と赤シャツはまだ談判最中である.
「芸者を連れて僕が宿屋に泊ったという証拠がありますか」
「宵に貴様のなじみの芸者が角屋へ這入ったのを見ていう事だ.誤魔化せるものか」
「誤魔化す必要はない.僕は吉川君と二人で泊ったのである.芸者が宵に這入ろうが,這入るまいが,僕の知った事ではない」
この期に及んで赤シャツはまだしらを切ったのです.「君たちは私が小鈴と同衾しているところを見たのですか.ホホホホ」というところです.

『知らぬが仏』打合せ記録書の偽造原紙は旭化成と工事店が同衾している現場写真です.

「だまれ」と山嵐は拳骨を食わした.赤シャツはよろよろしたが「これは乱暴だ,狼藉である.理非を弁じないで腕力に訴えるのは無法だ」

「無法で沢山だ」とまたぽかりと撲ぐる.「貴様のような奸物はなぐらなくっちゃ,答えないんだ」とぽかぽかなぐる.おれも同時に野だを散々に擲き据えた.
山嵐は最後に言います.
「おれは逃げも隠れもせん.今夜五時までは浜の港屋にいる.用があるなら巡査なりなんなり,よこせ」と山嵐がいうから,おれも「おれも逃げも隠れもしないぞ.堀田と同じ所に待っているから警察へ訴えたければ,勝手に訴えろ」といって,二人してすたすたあるき出した.
赤シャツが警察に訴えなかったことはもちろんです.朝帰りの途中でやられた事を公けに知られて聖職者としての地位を危うくすることは,絶対に避けなければならないからです.赤シャツにとって地位は命です.

坊っちゃんは港屋で辞表を書きせいせいした気持ちで「不浄の地」に別れをつげます.「船が岸を去れば去るほどいい心持ち」になります.同行した山嵐の気持ちはどうだったでしょうか.彼は濡れ衣を着たまま免職に追い込まれたのです.赤シャツと刺し違えるという本懐を遂げることはかなわなかったのです.

こうして事件は幕を閉じます.




作家大岡昇平に「夏目漱石−『坊っちゃん』−」という短文があります.
主人公は,あまり知恵はないが,正義感に満溢した快男児である.人生の不正と欺瞞は,その美しい心情の反応から,立ちどころに裁かれる.結局「坊っちゃん」は地方生活に敗れ,辞職する.敵役たる学校上層部に「天誅」的暴力を振るっただけで,東京へ引上げるのだが,みじめな敗北感はない.
「坊っちゃん」は20日足らずの間に一気呵成に書かれました.その文章を大岡は激賞しています.
漱石は『猫』の好評に気をよくして希望にみちあふれていたのであろう.感興にまかせて書いていて,のびのびしたいい文章である.といって,決して一本調子ではなく,漱石という複雑な人格を反映して,屈折に富んでいるのだが,作者の即興の潮に乗って,渋滞のかげはない.こういう多彩で流動的な文章を,その後漱石は書かなかった.また後にも先にも,日本人はだれも書かなかった.
「坊っちゃん」は中学生が読んでおもしろく,大人が読んでもおもしろいのです.江藤淳を鋭く批判した理論派大岡が読んでもおもしろいのです.「坊っちゃん」は大岡の一番の愛読書で40回以上読んだそうです.
読み返すごとに,なにかこれまで気がつかなかった面白さを見つけて,私は笑い直す.この文章の波間にただようのは,なんど繰返してもあきない快楽である.傑作なのである.



8.荒肝(あらぎも)を挫(ひし)ぐ

「坊っちゃん」はさらっと読むと世の中こんな単純なものじゃないと読めます.少し斜めに読むと,世の中「結局」このとおりだと読めます.悪の象徴の赤シャツが結局勝者であり,正義漢山嵐は結局敗者です.ぽかりとやられる位の「ガス抜き」ですめば赤シャツからみれば恩の字です.

主人公の坊っちゃんは単純そうに見えますが,決して間抜けではありません(主人公が間抜けな小説,推理小説など読めたものではありません).単純に見えるのは,彼が思ったことを即実行に移すからです.そしてこの点が傍観者,博物・漢学・歴史などと決定的に違う点です.

坊っちゃんは裏表のある人間の,表面だけ取り繕ったじめっとした論理が生理的に肌に合いません.相手の汚い土俵で論争するのはごめんなのです(山嵐はそれも厭わなかったのですが).
「あなたのいう事は尤もですが,僕は増給がいやになったんですから,まあ断ります.考えたって同じ事です.さようなら」といいすてて門を出た.頭の上には天の川が一筋かかっている.
坊っちゃんおよび山嵐が象徴するものに対する漱石のシンパシイが印象的です.それは高みから見下す鴎外にはないものです.

正義を貫こうとした人間が結局敗れるというありふれた図式に,まぎれもない勝者・坊っちゃんを配したことが,なんど繰返して読んでもあきない快楽の秘密があるのではないでしょうか.


「坊っちゃん」10章に次のような個所があります.

生徒があやまったのは心から後悔してあやまったのではない.ただ校長から,命令されて,形式的に頭を下げたのである.商人が頭ばかりさげて,狡い事をやめないのと一般で生徒も謝罪だけはするが,いたずらは決してやめるものではない.よく考えて見ると世の中はみんなこの生徒のようなものから成立しているかも知れない.人があやまったり詫びたりするのを,真面目に受けて勘弁するのは正直過ぎる馬鹿というんだろう.あやまるのも仮りにあやまるので,勘弁するのも仮りに勘弁するのだと思ってれば差し支ない.もし本当にあやまらせる気なら,本当に後悔するまで叩きつけなくてはいけない.

  ***

おれが組と組の間に這入って行くと,天麩羅だの,団子だの,という声が絶えずする.しかも大勢だから,誰がいうのだか分らない.よし分ってもおれの事を天麩羅といったんじゃありません,団子と申したのじゃありません,それは先生が神経衰弱だから,ひがんで,そう聞くんだ位いうに極まってる.こんな卑劣な根性は封建時代から,養成したこの土地の習慣なんだから,いくらいって聞かしたって,教えてやったって,到底直りっこない.

  ***

つまりは向から手を出して置いて,世間体はこっちが仕掛けた喧嘩のように,見倣されてしまう.大変な不利益だ.それなら向うのやるなり,愚迂多良童子を極め込んでいれば,向は益増長するばかり,大きくいえば世の中のためにならない.そこで仕方がないから,こっちも向の筆法を用いて捕まえられないで,手の付けようのない返報をしなくてはならなくなる.そうなっては江戸っ子では駄目だ.
被害者側に責を負わせる例の論理を漱石は卑劣な根性と切り捨てています.卑劣な根性は「いくらいって聞かしたって」直りっこないと諦めています.江戸っ子である漱石は「向の筆法」を用いて「手の付けようのない返報」を考えるのが面倒になったに違いありません.だからだまれ・ぽかりとなったのです.
K文書の分析は,旭化成の筆法,旭化成の土俵で手の付けようのない返報を目指したものです.

客の責を匂わせながら嘘で固めた論理でごまかすという卑劣な根性を,それがいかに卑劣であるかを証明し表現することほど,精神衛生上よくないことはありません.ぷうたろうは分析の過程で何度もだまれ・ぽかりの気持ちになりました.

山嵐は心ならずも「下半身攻撃」しかできませんでした.狡猾な赤シャツは他に尻尾を出していないからです.本当に無念だったことでしょう.

ぷうたろうは違います.旭化成の「金のなる木」つまり本業そのものを,旭化成の「筆法」で,証拠を挙げて攻撃しています.
『知らぬが仏』は,旭化成に対してぷうたろうが下した「鉄拳制裁」です.
関西人の「鉄拳制裁」は江戸っ子や会津っぽの鉄拳制裁ほど切れ味のいいものではありません.
いわば錆び刀です.しかし錆び刀でごりごりしつこくやるほうが,かえって骨身にしみるに違いありません.


『知らぬが仏』の「鉄拳制裁」を不十分だと思う人は, 口先だけの評論家に違いないと, ぷうたろうは思います.

逆にやりすぎだと思う人は, 坊っちゃんの鉄拳制裁がやりすぎだと思う人に違いないと, ぷうたろうは勝手に思います.

しまいには二人とも杉の根方にうずくまって動けないのか,眼がちらちらするのか逃げようともしない.

「もう沢山か,沢山でなけりゃ,まだ撲ってやる」とぽかんぽかんと両人でなぐったら「もう沢山だ」といった.野だに「貴様も沢山か」と聞いたら「無論沢山だ」と答えた.

「貴様らは奸物だから,こうやって天誅を加えるんだ.これに懲りて以来つつしむがいい.いくら言葉巧みに弁解が立っても正義は許さんぞ」と山嵐がいったら両人ともだまっていた.ことによると口をきくのが退儀なのかも知れない.
旭化成もきっと口をきくのも退儀なのでしょう.一言も弁解しません.


赤シャツはマドンナと結ばれ,長いものに巻かれた人たちに囲まれて,ホホホホと笑いながら安穏な余生を送ったことでしょう.旭化成も安泰です.毎日『 イヒ! イヒ! イヒー! イヒ! ヒ! イヒ! イヒ! イヒー!』(03年10月1日 日経掲載の旭化成全面広告)と嗤いながら今日もきれいごとを言いつつピンハネに励んでいます.

ちらと思うのですが,イヒは赤シャツほど悪知恵が働かないようです.しかし図太さでは明らかにイヒの方が一枚上です.



漱石と旭化成の接点!?

「坊っちゃん」に続いて,漱石の「野分」を読んでいて気付きました.漱石研究家には常識かもしれませんが.

「野添が例の人造肥料会社を起こすので・・・・・・」という会話が主人公の横でかわされる場面が園遊会のところに出てきます.2週間で50円株が65円に値上がりした,惜しいことをしたと会話は続きます.「例の」とあることから,この起業は当時評判になっていたのでしょう.野添が起こした工場は九州にあることが示唆されています.

野添のモデルは,チッソの創始者野口遵だと思われます.野口と漱石は同窓です.チッソが九州に出来たのは明治39年(チッソの沿革),「野分」の発表は明治40年です.ほぼ100年前の話です.

野口遵は旭化成の創始者でもあります.野口遵の写真が旭化成の沿革の先頭に掲げられています.

チッソと旭化成はできの悪い保身だけの後継者が偉大な創始者の名を汚した点でそっくりおなじです.





結び 

真実


「藪の中」が好きな人がいます.『知らぬが仏』にも藪が存在します.
子会社社長はなぜ事件を経営会議に諮ったと客に教えたのでしょうか?
K所長はなぜ旭化成がチッソの子会社であることを客に教えたのでしょうか?
山本一元前旭化成社長はなぜあの時期にあんな大見得を切ったのでしょうか?
人の心の中まで断定的に立ち入れるのは小説だけです.小さな藪があることをもって真実は結局わからないと言い出す人は,幹と枝葉の区別がつかない人か,赤シャツと同じ立場の人です.

事件発覚直後の99年4月20日に遡ります.K所長はK文書の説明にX氏宅を訪れます.

X氏はわけのわからないK文書は無視し,工事やり直しはぬすっとが盗んだものを返してそれで終わりと言っているに等しいと一喝します.そして旭化成に公けに謝罪せよと要求します.

X氏に真実がわかっているわけではありません.しかし<工事店が契約と違う塗料で施工したことを旭化成が知っていた>ことに気付いています.旭化成が出した尻尾の「利用価値」は直感でわかっています.賢いX氏は旭化成と「話合い」し,そして「問題解決」します.

これが「おとな」の示談決着です.事件は密室で処理され「観客」は存在しません.

X氏が事件を外部に漏らしても旭化成は痛痒を感じません.事件は解決済みで念書が存在します.K文書にはX氏はクレーマーだと書いてあります.それになによりX氏に真実は何もわかっていないのです.

旭化成は,増給で坊っちゃんを懐柔しようとした赤シャツのように<話せばわかる>と思いました.ところがぷうたろうは坊っちゃんと同じく「こども」でした.公けに謝罪せよというのは,ポーズではなく本心からの要求だったのです.

もしお望みなら「こども」を馬鹿と言い換えても構いません.そもそも馬鹿相手でなければ,工事店がぬけぬけと新製品を2世代前の安物にすり変えるようなまねをするはずがありません.詐欺師が人を見てだますのは常識です.

ぷうたろうは確かに馬鹿ですが,旭化成の法外価格を鵜呑みにするほど間抜けではありません.間抜け相手なら,工事店も詐欺する苦労はありません.
本章では馬鹿と間抜けという2種類の罵倒語を上のように使い分けます(本文の「イヒ流」,「旭化成流」の被害者にそれぞれ対応します).馬鹿の方が間抜けより幾分ましです.

馬鹿と間抜けの違いがわからず似たようなものだと考えるのは,旭化成の考え方です.旭化成は詐欺などしていない,つまり客はみな間抜けだと考えていました.

旭化成はぷうたろうが愚直にサイトで真実を明かしていく態度が理解できませんでした.そこらへんでやめておかないと「利用価値」がなくなるぞとアドバイスしたくてたまらなかったでしょう.ところがこの馬鹿は「話合い」を拒否したのですから旭化成に手の打ちようがありません.事件をあなたが隅から隅まで居ながらにして知りえるのは疑いもなく実に馬鹿のおかげなのです.


関西旭化成リフォーム村田社長(事件後この会社は旭化成リフォームに吸収され消滅,旭化成ホームズ役員を兼務していた社長はどこかへ異動)は99年4月6日付手紙で次のように述べています.
会社として御契約の基本部分である仕様変更確認,変更契約なしで工事を完了致しました事は御客様への御迷惑,信用面において大変な反省点と考えており,今後の再発防止に全力を上げる所存でございます.
安東様のお手紙,ご指摘を極めて重要と受け止め,弊社内に於いてその内容をもとに事実確認,問題点,今後の改善点を話し合いました.
形式的に迷惑かけたと謝っている文章ではありません.旭化成に非があったと反省しているのです.大変な反省点とは何だったのでしょうか.


社長は同じ手紙で事件を次のように述べています.

吹付剤,リウォールWからサラテックスへの仕様変更の経緯につきましては,Mリフォームコーディネーターの認識確認不足でありました.安東様がリウォールWにて,吹き替え前の模様と同様の仕上げを希望されているところを,前の仕様のサラテックスにするものと認識し,弊社Sに報告をしておりました.

(ここでリウォールWとは新製品塗料でこれが契約塗料,サラテックスとはすでに商品価値のなくなった2世代前の旧製品塗料で,実際に使われた塗料です.)
最初の文では工事店社員Mの「認識確認不足」すなわち過失が原因だとしています.これは社長がついた唯一の嘘です.Mは新製品で見本が間に合わなかったと嘘をついて故意に見本を見せなかったのです.過失ではなく詐欺です.

次の文で客の希望はサラテックスだとMが弊社つまり旭化成に「報告」したと述べています.この報告はK所長によれば口頭報告です.

 Mは口頭で客の希望は安物だと報告し,旭化成はああそうかと客の希望を認識したというのです.そして
 安物が客の希望だと認識したにもかかわらず,高級品で請負ったという請書を旭化成は客に発行したのです.

旭化成が悪質企業ならこれでなんの不思議もありません.契約書(請書)が絵に描いた餅であることはむしろ当然です.

しかし真実は少し違います.旭化成はそこいらの悪質企業と少し違うのです.社長が「無断という考えはありませんでした」と述べているように,客の希望は安物であると信ずべき理由が旭化成にあったのです.

口頭報告というのが嘘です.打合せ記録書が報告資料なのです.打合せ記録書は客も目を通しています.そこに客の希望は安物であると書いてあったのです.ところがあろうことか旭化成が受け取った原紙にだけそう書いてあったのです.


K所長や担当S氏は事件後くびにもならず元気に働いています(第二部に登場するY課長はS氏も元気だと教えてくれました).事件は個人レベルのミスが原因ではなく,打合せ記録書を最優先の契約書面として運用する次に示す業務手順に大きな問題があったのです.

注文書の内容は,打合せ記録書で変更されます.打合せ記録書のコピーは客に手渡され,その後,原紙が旭化成に提出されます.リフォームコーディネーターという名の工事店社員にすべてを任せる「工事店完全丸なげ方式」では,原紙に追記による改ざんがあるかどうか工事店だけが知っています.

・・・そして旭化成は注文書とそっくり同じ内容で請書を発行します.
この業務手順こそ旭化成が良心を痛めることなく詐欺に加担できる魔法の杖でした.なぜ良心が痛まないか.原紙は客の意思を表すと信じていたからです.客は自らの意思で商品価値のない安物塗料を希望したと思っていたからです.つまり早い話,旭化成は客は間抜けと考えていたのです.


打合せ記録書で契約の最重要仕様を変更するこの手順は,その抜群の効率性の故に正規手順を駆逐し,99年2月22日事件発覚時点では旭化成社員がなんの疑問も持たない日常業務手順になっていました.だからこそ塗料は何かという客の質問に,S氏は原紙に書かれている真実を答えたのです.

旭化成社印の入った明細付き請書の中身は真っ赤な嘘です.真実は手書き打合せ記録書原紙に書かれています.立派な請書とぺらぺらの手書きメモ,これが旭化成リフォーム事業の表と裏です.


社長が「大変な反省点」があったと非を認めて謝ったのは当然です.社長の手紙は全体として誠実な内容で客に責を負わせる卑劣なことは一言も述べていません.しかし社長は詐欺という核心を認めずに,反省します,再発防止に努めますと言ったにすぎません.

社長の見解は中途半端な個人的見解です.旭化成の正式見解は2週間後の4月19日付K文書です.こちらは徹底しています,ただし逆の方向に.

K文書は嘘まみれです.客は安物を希望していた,塗料見本は塗料販売開始して1年後にできた,客には安物使用の確認をとった,安物は実は高級品より高い,仕上げ確認して客の希望がわかった・・・などなどと真っ赤な嘘を並べました.そして高級品で工事をやりなおして責任をとると主張しました.盗んだものを返して責任をとると言ったのです.

客の希望は契約書(注文書・請書)に明らかです.契約書は客の希望を記録し,旭化成がそれに合意した証です.K文書は契約書にはまったく触れずに,嘘八百の作り話でごまかそうとしました.契約書の何たるかも知らない間抜けであると客をなめているのです.
K文書は工事店社員の「過失」すら認めていません.旭化成に「反省点」などまるでなく,それどころかあたかも客がクレーマーであるかのような口ぶりです.K文書はなりふりかまわず事件を徹底隠蔽しようとしています.

なぜそこまで隠すか.簡単な手口で詐欺が成立した事実は,旭化成の全施工物件に詐欺の疑いがあることを強く示唆します.事の重大性に青ざめた旭化成は,打合せ記録書原紙を一斉に調査し,おそらくほとんど全件で請書が絵に描いた餅であることを確認しました.そして工事店が白状しない限り,馬鹿と間抜けの比率は旭化成にはわからないのです.

工事店は旭化成に皮肉をこめてこう答えたかもしれません.「何をいまさら.事情はご存知だとばかり思っていましたが.」
真実の一端が露見したことを知った旭化成中枢は,徹底隠蔽によって組織防衛の名を騙った自己保身に走ったのです.
村田社長は99年8月10日付手紙で4月の経営会議に事件を諮ったと告げました.徹底隠蔽は旭化成の組織方針でした.破廉恥極まるK文書は,旭化成の「裏の専門家」が作成したのです(当時の住宅総務部長だと思われます).

私は山本一元旭化成社長(当時)に対し01年6月25日付手紙で打合せ記録書原紙の公表を迫りました.拡大すれば容易に偽物とわかる子供だましの偽造原紙(のコピー)が送られてきました.
おまけとして追記による改ざんが習慣化していたことを証明する偽造ミスが付いていました.
偽造原紙には客は安物を希望という記述はありません.口頭報告で契約変更したとするK文書と整合性をとったのです.この時点でK文書の嘘はすでに全てばれていました.しかしまだ隠したのです.
山本社長にはその前に2回手紙をさしあげています.99年6月15日付1回目の質問に対しては住宅西日本営業本部長重富一彦氏(現旭化成ホームズ執行役員)から6月30日付手紙が返ってきました.
私は,村田に対して,今般の問題解決のために直接安東様にお目にかかり,経営者として責任をもって,しかるべきご説明を差し上げるよう申し付ました.
旭化成は一言も見解を出さず子会社村田社長にすべてを押し付け<おれは知らん>と逃げています.

01年1月15日付2回目の手紙ではK文書の中身を質問しました.すると住宅総務部長から1月31日付手紙が返ってきました.ご覧のように,私の理解不足の点を説明したいから是非会いたいと述べています.

私はいずれも会うことを拒否しました.書面見解を出さず手ぶらで会おうとしたからです.客は安物を希望した間抜けであると主張している旭化成の,その場限りのきれい事や泣き言を客がどうして聞かなければならないのでしょうか.K文書は真っ赤な嘘でしたと書面見解を出すのが先です.

旭化成に真実を話す気のなかった事が,3回目質問に対し本物原紙を隠したことで証明されました.
旭化成の隠蔽工作は一方でK文書の汚い日本語で客の希望は安物だと主張し,他方で打合せ記録書の原紙を偽造することにより詐欺の証拠を隠したのです.しかしばれてしまえば,どうあがいても所詮無駄なあがきです.旭化成は契約書が絵に描いた餅である悪質企業と本質は同じです.


子会社村田社長の「反省」はどこまで及んだでしょうか.業務手順に多くの問題があったことは明白です.しかし手順を正せばそれで問題がなくなるでしょうか.断じて否.手順は原因ではなく結果です.詐欺手順が定着したのは,業務自体が詐欺的だからです.

工事店の訴えに耳を傾けましょう.

「あなたがた旭化成は詐欺せずに法外価格の契約がとれるとお考えですか.それほど客は間抜けばかりとお考えですか.それほど旭化成ブランドに力があるとお考えですか.リフォーム売上が驚異の高成長率を遂げたのは,いったい誰のおかげと考えているのですか.我々の手練手管のおかげではありませんか.」
なぜ法外価格になるのか.旭化成の法外取り分が価格に上乗せされるからです.
高くても売れる,それが旭化成の信用だと旭化成は考えています.うさんくささがここから生じます.
日経広告賞に何度も輝く旭化成全面広告のなんともいえないうさんくささが,ここから生じます.
Mは口頭で客の希望は安物だと報告し,旭化成はああそうかと客の希望を認識しました.そして
そう認識したにもかかわらず,旭化成は高級品が記載された請書を客に発行しました.
これが旭化成中枢の保証書付き旭化成ブランドの中身です.こんな偽ブランドでも信用する間抜けがいるから法外価格でも少しは売れるでしょう.しかし莫大な宣伝広告費(ロングライフ住宅研究所人件費込み)をまかなうには馬鹿を相手に詐欺しなければならないのです.


一個の詐欺事件はリフォーム事業の正当性に関わる重大事件でした.子会社社長がいくら反省しても,どうしようもないのです. 私は山本一元氏の見識に期待しました.しかし社長は一言の見解も出さないまま辞めてしまわれました.辞任理由は極めて不透明(業績不振など責任をとるべき失態は見当たりません)で結局のところ辞めさせられたのです.なぜか.

旭化成中枢はすべてばれてなお沈黙したままです.その中枢から山本氏は追い落とされました.ということは氏自身は公的謝罪やむなしの立場に与していたと推測されます.「改革の人」を自任する山本氏には次のような印象的な言葉があります(発言時期にもご注目ください).(『財界』01年7月10日号より)
「悪いことをやったりしたら殴られる,痛い目に遭う」
社長を追い出せる人は社長より「えらい」人であることは小学生でもわかります.


山口信夫殿

前略.山本前社長に宛てた99年6月15日付1回目の手紙をもう一度今度はあなたにさしあげます.

この間の関西旭化成リフォーム株式会社の対応をみて,本当にこれが『あさひかせい』という名前が入った会社のやることかと思いました.酷いものです.平然と嘘をいいます.誠意などかけらもみられません.わたしはこの件は『あさひかせい』の信用問題だと考えています
2回目の手紙3回目の手紙もそのままあなたにさしあげます.旭化成の名前に責任をもつべき人は,あなたをおいて他にいないことがわかったからです.

旭化成の名において
塗料見本は販売開始して1年後にできた
口頭報告で契約の最重要仕様を変更した
へーベルハウスを販売開始の1年前に販売した
と真っ赤な嘘を公然とつくことができる力を有するのは,あなただけです.

「終身旭化成トップ」のあなただけです.


もしあなたが99年4月の経営会議で居眠りし何がどうなっているのか記憶にないということであれば,是非正直にそうお答え下さい.

もしあなたが工事店完全丸なげ方式でリフォーム事業を推進し破廉恥文書で徹底隠蔽した責任は,住宅事業の総責任者だった当時の住宅事業担当副社長,現旭化成ホームズ会長土屋友二氏がとるべきだとお考えであれば,あなたの口から土屋が責任をとるべきだと是非仰ってください.

いやいや山本がとるべきだ,重富がとるべきだ,元住宅総務部長がとるべきだ,元子会社社長がとるべきだ,K所長がとるべきだ,担当Sがとるべきだ・・・そうだ忘れていた,工事店Mこそ真の責任をとるべきだと,もしあなたがお考えなら是非そう仰って下さい.


もしあなたが,あくどいピンはねは「泥沼のような建設業界」の常識である,どこでもやっていることでだまされる馬鹿が悪いのだとお考えであれば,是非そう仰って下さい.

経営監視の重責を担い代表権をお持ちのあなたには答える責務があります.

お答えは書面でお願い致します.K文書,偽造契約書,詐欺全面広告に続く第四の書証になるでしょう.
草々


某年某月某日 
ぷうたろう

ありえないことを期待する人はおめでたい人です.この手紙は単なる解説用です.


赤シャツは殴られながらそれでも
「これは乱暴だ,狼藉である.理非を弁じないで腕力に訴えるのは無法だ」と抗弁できました.
ところが旭化成は理非を弁じた追求に「会いたい」を繰り返すだけで一言も反論できないのです.

旭化成は責任を取ったでしょうか.
詐欺を否認しているのですから,責任のとりえるはずがありません.
工事やり直しは,責任を認めずに金を施すというあの恥知らずなチッソ見舞金と同類です.

客の責にすりかえて隠蔽した責任を取ったでしょうか.
客は契約書の何たるかもわきまえない間抜けである,これが旭化成の正式見解です.
旭化成は正式見解の一言一句撤回していません.

山本一元氏,沢田恵氏,村田義昭氏は表舞台から去りました.
彼らが責任を取ったのでしょうか.否.
旭化成は一言も彼らの辞任と事件の関連に触れていません.

事件の根本責任は詐欺事業を強引に推進した人にあることは明白です.
真の責任が徹底隠蔽を指示した人にあることも明々白々です.
彼らはいまだに旭化成中枢に居座っています.
ほお被りしたまま逃げようとしています.

旭化成トップ山口信夫が沈黙を続ける限り
旭化成ホームズがいくら必死に『いい家は,いい人生をつくる』と全面広告を打っても
季刊「へーべリアン」をいくら立派な体裁に「リニューアル創刊」しようと
すべて間抜けをだますための詐欺師のきれいごとだ
詐欺師であればあるほどきれいごとだけいうものだ
とばっさり切られて一言も返す言葉がないのです.

旭化成は詐欺師です.
消費者をなめた慇懃無礼な詐欺師です.

匹婦にしてなほかつ廉恥の心あるを思へば,白昼堂々として仁義道徳を説いて世を欺く偽君子ほど憎むべきものはなし.宜しくその面上に唾するも可なり.(荷風『断腸亭日乗』)

旭化成は,絶対に,反論できません.なぜか.
契約書改ざんという事の本質があまりに単純だからです.
旭化成は密室で,間抜け相手にしか,弁舌がふるえないのです.
<契約の何たるか>に関する恥知らずなすりかえ論理をもう一度,公けに,主張することは,
絶対にできないのです.

旭化成中枢は保身体質です.
官僚と同じく絶対に誤りを認めない体質です.
反論できず,誤りを認めず,
こうして沈黙するに至るのは必然です.

事件がもっと複雑だったらどうでしょうか.例えば水俣病事件のように.
100%旭化成責を顧客責にすりかえて恥じず,ばれてなお一言も謝らないその態度からみて
旭化成が盗人の三分の理で,執拗に,反論するであろうことは,
火を見るより明らかです.

知らぬが仏事件の本質は信用問題です.信用問題に時効はありません.



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