作成 2003.02.05
修正 2003.02.16

悪乗り?


2003年正月元旦NHKで奥田碩・日経連会長と建築家安藤忠雄の対談が放映されました.

奥田会長は,消費税上げを反論覚悟で提言した,ところが反応がほとんどない,がっかりしたという意味のことを言われました.私は消費税はやはり上がるのかと暗い気持ちになりましたが,この発言は印象に残りました.経団連の消費税に対する見解は,会長個人の問題意識,見識に基づいたものであることがわかったからです.二人の対談は結構おもしろいものでした.




左は1月7日朝日新聞の「めでたさ見えぬ仕事はじめ」と題する記事の一部です.


山口信夫日本商工会議所会頭は,ごらんのように消費税について「引き上げることは反対でない.上げ方は情勢を見ていきたいが,間接税の財源として消費税率の引き上げは早晩くる」と発言しました.

消費税率の引き上げは「早晩」くると発言したのです.

その結果

 消費税上げ容認,日商も
 経済3団体一致,論議に弾み

という見出しになりました.朝日に限らず他のマスコミもそうとりました.そして政府もそうとりました.

奥田日経連会長は記事に「改めて」とあるように消費税率の大幅引き上げが持論です.これに対し中小企業を多く抱えた日商の会頭である山口氏は恒例の経済3団体年頭記者会見で初めて消費税について旗幟を鮮明にしたのです.



これには後日談があります.(囲み記事の上にある山口会頭の不良債権に関する発言にもご注意下さい.)



さて左は1月13日付け日経新聞です.容認発言の後,日商基盤である中小企業から「上げの容認などとんでもない」という反発がありました.そして塩川財務相に対し「苦言」を呈し,「景気回復が税率上げの条件」と「クギを刺し」ました.すぐ上げるというのは「筋違い」で「悪乗り」だというのです.

朝日記事と違い早晩来るのは引き上げではなく,「議論をする時期」にぼかされています.そんなことを誰も日商会頭に訊きたいと思っていません.日経は会頭の「思い」を思いやり,精一杯事態を取り繕おうとしています.しかし日経はその「思い」に中身がないことを暴露することにより,逆の働きもしています.

山口会頭は「景気回復が上げの条件」などと,日商会頭として経済界リーダーの一人としていかに景気回復すべきかを提言すべきこの時期に,なにをいまさらという言い訳をしたことが明らかなりました.

山口会頭も元旦のNHKを見て,そうか消費税上げを世間は容認しているのかと情勢判断し年頭会見で容認姿勢を明確にした,ところが予想外の反発にあわてて軌道修正した・・・案外こんなところでしょう.

山口会長は自己の失態をマスコミ,政府が真意を理解せず悪乗りしたと責任転嫁したのです.苦言を呈した,クギを刺したという格好のよいものではありません.奥田会長は自己の見識で消費税上げを提言し,山口会頭は「情勢を見て」同調した,この差が反論がでた時明白になったのです.





国民は小泉首相に期待して応分の「痛み」を覚悟しました.しかし肝心の税金の使い道はほとんど改められず,国民負担だけは現実にすでに増えています.

企業中心の一時的減税も将来増税となって跳ね返ってくることを国民は予感しています.山口会頭は中小企業の立場を代弁し影の薄い日商の存在を世に示す絶好の機会に,大失態を演じたのです.

山口旭化成会長は30年目問題で尻尾を出しました.しかし今度は尻尾どころではありません.馬脚をあらわしたのです.


昨年2月26日の朝日新聞に銀行への公的資金再注入論の解説記事が掲載されました.積極派代表が竹中,慎重派代表が柳沢です.(その後柳沢解任,木村剛のプロジェクト発足,そして竹中バッシングと続いた経緯はご承知のとおりです.民間人に結果責任はとれないと言い放った人物がいたことは記憶に新しいところです.)さてこの記事で山口日商会頭は積極派に入っています.

記事によりますと,山口会頭は1月7日の年頭会見で「中小企業への貸し渋り,貸しはがしが起こっている.再投入をためらうべきではない」と発言しました.これは竹中の不良債権処理の切り札として銀行国有化も視野に入れた強制注入とは,「全く異なる期待感」から出たものです.大手行幹部が「公的資金の再注入が融資姿勢の軟化につながる可能性はほとんどない」と言明しているにもかかわらず.

山口会頭のホンネは改革とは対極のものです.朝日記者は会頭は「「不良債権処理は後にしてデフレ対策をして欲しい」とまで言う」と表現しました.(上掲朝日記事参照.)

デフレの根元原因は不良債権です.日銀がいくら銀行に金を回しても,貸しはがしは減りません.メガバンク7頭取は目をむくような自己の退職金を守るため保身に走り,自己資本比率を高め,国債をせっせと買い,金は貸さないのです.(木村剛の受け売り)

不良債権処理より景気回復と言っているのは,抵抗勢力と最近「極めて明快」な「理論」を展開する内閣府系エコノミスト(日経2月9日『今を読み解く』)だけです.



左は今年1月28日に日経に掲載された『財界 (2/11)』の広告です.

「真の改革への直言」というテーマで3人の方が登場されています.真中の方はご存知のとおり道路公団の民営化委員会でもっともラディカルな態度を最後まで貫かれた松田昌士JR東日本会長です.

(2月15日付け朝日新聞に委員会「七人の侍」の一人川本裕子が2面にわたって紹介されていました.なんだかすごい人です.すごい人が集まっていたのですね.)


松田氏の右横はわが山口日商会頭です.(財界主幹の村田博文氏ではありません,念のため.)

真の改革へ直言というテーマで松田氏が登場されるのはよくわかります.しかしなぜ山口会頭なのでしょうか.山口会頭に改革を語る資格などあるのでしょうか.こういうのを味噌もくそも一緒にするというのです.



保身を旨とするメガバンク頭取が日本経済に流し続けている害毒に比べると,日商会頭の影響力などたかがしれたものです.しかしいやしくも日商会頭は経済界のリーダーの一人なのです.しっかりした定見のある人物でなければなりません.



ぷうたろうの私見では山口氏は調整プロとして「江戸開府400年事業推進協議会会長」(日経2002年12月20日)に専念されるべきだと考えます.それがひとり旭化成のためだけでなく,日本の中小企業のため,さらにいえば日本経済再生のためです.