登録 03.09.20

独自免震工法



ヘーベルハウスは地震の時へーベル板をスライドさせ負荷を逃がす仕組みになっています.我が家を新築したときの昔のパンフレット(「HEBEL HAUS NEW F -The place you meet the tomorrow history-」:以下旧パンフレットと呼びます)には次のように書かれています.
「外壁のへーベルを独自の免震工法で取り付け」
「外壁材を構造材に完全に固定せず,外から力が加わると外壁材がスライドする工法で,衝撃を”柳に風”としなやかに吸収」
ヘーベルハウスは,ヘーベル板が鉄骨と一体になって「全体で外力に耐える」方式ではありません.衝撃はもっぱら「地震に強いオーソドックスな鉄骨軸組ブレース構造」が受け止め,へーベル板は耐震には寄与していないのです.

このことは,新築時に旭化成営業に教わりました.コンクリート板のくせにとちょっと変な気がしました.

しかし耐震性に関してはどの鉄骨プレハブも十分ある,要塞のように堅固というのは過剰仕様である,ヘーベルハウスの鉄骨躯体も,十分頑丈な筈だと思いました.
この方式を極端に言えば,鉄骨にへーベル板というカーテンがぶら下がっているようなものです.耐火,遮音,断熱などにこの「カーテン」は役立っていますが,耐震性の向上には寄与していないのです.これが旭化成独自の免震工法です.



へーベル板はまさかの時にはずれます.壁だけでなく,床・屋根もそうです.ところが最新パンフレットによると,最近のヘーベルハウスの床には剛床システムというものが採用されています.




地震・台風時の横からの外力に対して,図2のように剛床システムのへーベル板は,がっしりと鉄骨や他のへーベル板とスクラムを組んで,ずれることなく対抗します.

図1をご覧下さい.こちらのヘーベル板ははめをはずしています.こちらが普通のへーベルの床だと思われます.

へーベル板はボルトで鉄骨に固定されているのではなく,「爪」に挟まれて摩擦力で固定しているという話です.数百年に一度という大地震が起こったら,爪からはずれて図1のようになると思われます.

ヘーベルハウスは図1の「地割れシステム」で,壁自体が強度を持つパルコンなどが図2の「岩盤システム」です.
旭化成は独自免震工法を部分的に否定しました.どんな方式にも一長一短があります.車のFF式とFR式にそれぞれ特徴があるように.FF式のある車がよい車かどうかは,その車がいかにFF式の長所を活かし短所を克服しているかできまります.剛床システムも短所克服の試みでしょう.

独自免震工法の短所とは何か.私の独断では後始末に金がかかることです.ずれた瓦を直すようにはいかないのですから.



95年の阪神淡路大震災の際,大阪は震度5強でした.我が家は見た目はどうもありませんでしたし,その年の5年点検時にも旭化成はなにも言いませんでした.

もしへーベル板が1ミリでもずれていれば,その上にべったり塗られている弾性のないサラテックスはシーリング部に沿ってひび割れたと思われます.少なくとも震度5強では,へーベル板がわが身かわいさから,衝撃を勝手に受け流し自らは,ずれた・・・ということはなく,摩擦力で鉄骨躯体にへばりつき,いささかなりとも衝撃の吸収にわが身を挺して頑張ったと思われます.

旧パンフレットには次のようにあります.

「地震の大きさは加速度(単位ガル)で表わされますが,ヘーベルハウスは激震(400ガル)をはるかに超える588ガルに耐えることが証明されました.関東大震災で200ガル相当の力が加わったとされていますので,その3倍程度にも耐えることができたのです.」

(ものの本によると阪神淡路大震災は818ガルだそうです.)


左は新パンフレットから採りました.

旭化成は,従来の「線」で外力に対抗する「ブレースドパネル」と異なり,「面」で対抗する考えを取り入れたと称する高耐震フレームを開発しました.従来の「変形するとなかなか元にもどらない」という欠点に対処するためのようです.

また靭性(粘り強さ,変形能力)に極めて富む「極低降伏点鋼」を採用した制震装置によって,建物の揺れを最小限に抑える仕組みがオプションとして用意されています.

これらの新技術によって,左の実験結果が示すように,阪神淡路大震災の3倍のエネルギーの揺れでも,「比較的容易に修復可能な状態」を保持できたようです.10年前の3階建てなら,「なかなか元にもどらない」状態になってしまったと考えられます.倒壊することはないでしょうが


7月27日の朝日新聞によりますと,気象庁は26日宮城県鳴瀬町で観測史上最大の加速度2005ガルを記録した,また00年の鳥取県西部地震の際は1482ガル,米国では94年のノースリッジ地震で1745ガルが記録されているそうです.

「最大加震は,1000年を超える期間に一度起こるかどうかの地表面最大加速度1064ガル」という表現はかなりひどい誇張表現です.

旭化成の実験結果は,現実的に起こりうる強さの揺れを加えたところ,最新仕様の3階建てヘーベルハウスでも,無傷ではなく「比較的容易に修復可能な状態」に陥ったと評価するのが正しいようです.

「窓ガラス1枚割れることなく,窓や建具にも問題は見られなかった」にもかかわらず,どうして,比較的容易に修復可能と「比較的」がついているのでしょうか.純技術的には「比較的容易に修復可能」であっても,零細個人にとっては絶望的なほど金がかかるということは,まさかないのでしょうね,窓ガラス1枚割れなかったことは当然へーベル板は1枚もずれなかったことを意味するのでしょうね,旭化成さん.
専門的にはこれだけ加震すれば倒壊しないだけでもよしとすべきものなのかもしれません.それならそれで正直にそう表現すべきです,いくら広告だと言っても

これは「絵本」の第1ページです.数百年に一度発生する地震に対しても安心な耐震性を備えているかという問いに対する答えです.

上記の「極低降伏点鋼」を使用した制震フレームが土俵に突っ立っています.「ごくていこうふくてんこう」を,おまじないのつもりで覚えましょうと旭化成は勧めています.

制震とは「エネルギーを吸収して揺れを抑える」もののようですから,「いなす」技というのはちょっと違うような気もします.(いなし技といえば,免震工法でしょう.)

この「相撲絵」は,記念すべき7日間ぶっとおし全面広告の初日を飾りました.技術の旭化成を象徴するシンボルとして,特許登録03256025号「架構体の弾塑性エネルギー吸収体」が華々しく全国の消費者の前に登場しました.

制震フレームは3階建て向け技術でしかもオプションです.ほとんどのヘーベルハウスには縁がないものです.「数百年に一度発生する地震に対しても安心な耐震性」は,こんな「おまじない」ではなく,昔ながらの「オーソドックスな鉄骨軸組ブレース構造」が保証してくれている筈なのです.




ヘーベルハウスの耐震性はもっぱら鉄骨軸組ブレース構造に頼っています.へーベル板は寄与していません.これはこれでいいとしましょう.気になるのは大地震後の修復です.

図1のようにはめをはずすことは,2階建てではありえないとします.こうなってはお終いですから考えないことにするという意味です.2階建てでは,もっと規則正しくもっと慎ましくずれると仮定します.

優秀な旭化成開発陣は,へーベル板が簡単にずれるような馬鹿な設計はしていない筈です.しかしそれは同時に,いったんずれたら,もとに戻すのもそう簡単ではないことを意味します.しかしこれも「比較的容易に修復可能な状態」の筈であり,旭化成に泣きつけばなんとかなるでしょう.いくらかかるか知りませんが.

へーベル板が元のさやに納まりました.あとは素人でもわかります.亀裂の入ったシーリングに充填材を打ち込み,外壁塗り替えです.


数百年に一度の大地震が本当に起こってしまった時,もし他社鉄骨プレハブが倒壊しなければヘーベルハウスも倒壊を免れるでしょう.そしてその修復には,独自免震工法のおかげでへーベル板がずれる為,他社鉄骨プレハブより金がかかることは間違いなさそうです.