もう30年?って感じです


おべっかは飛ばしてヘーベルハウスは頑丈ですからみていきましょう.

30年前ヘーベルハウスがプレハブ市場に登場した時,頑丈さが目玉であったのは確かでしょう.しかし現在の消費者にとって30年前の住宅の性能がどれほどの意味をもつのでしょうか.
この広告は実はヘーベルハウス中古(旭化成ではストックヘーベルハウスとよんでいます)の宣伝をしていると読むべきなのかもしれません.

日経新聞によりますと「住宅メーカーの宣伝が最近,変わったと思わない?盛んに長持ちを強調し,中古住宅の良さをPRしているわ」だそうです.(日経12月2日付け『中古住宅に脚光』より.この記事には後で触れます.)「中古住宅の良さPR」とはこの広告のことでしょう.中古の良さを宣伝している住宅メーカーは今の所旭化成だけです.

中古ヘーベルを買おうとしている客は錯覚するのではありませんか.ヘーベルは築30年でもまだ通過点だ,それにひきかえそこいらの木造は26年で潰れるのだ・・・と!?
旭化成は日本の住宅の平均寿命が約26年だと言っています.日本の住宅の多くは建替えのため強制的に壊されて,その結果26年になっているのではないでしょうか.
業界トップのSハウスが答を提供してくれました.

Sハウスは11月22日付け全面広告で,日本の家の「建替えサイクル」が約26年だと出典が平成8年版建設白書であることを明らかにして述べています.Sハウスはまず

(A)「日本の美しい四季が家の寿命をちぢめている,という事実」

と大きな活字で宣言し続いて

(B)「家の建替えサイクルが約26年の日本で,Sハウスは永く受け継がれていう住まいを目指します」

と中くらいの活字で決意表明しています.

(A)は温暖な日本というイメージに逆らうコピーであり人目を惹くという意味で秀逸なものです.
東京の温度と湿度が一年を通じて世界の他都市よりも大きく変化することを根拠として説明しています.一年を通じての変化よりも一日の昼夜の温度差の方が住宅の寿命に関係するように思えますが,まぁそれは置いておきます.
(A)は日本の「苛酷な」四季が日本の建物の寿命に悪影響を及ぼしていると主張しています.この寿命は明らかに耐久性の意味です.

Sハウスは(A)と(B)を並べました.並べることによって<寿命(耐久性)がつきた→建替え>という因果関係を暗黙のうちに宣言しました.
Sハウスはさすがです.寿命と建替えサイクルを分離しておきながら消費者の頭の中では結合しているという高等芸を披露してくれました.
読んだ人は思うのです.そうか,ドイツ車でも欧州仕様のままでは日本の真夏の渋滞に耐えられないように日本の気候は案外厳しくて日本の家は26年しかもたないのだと.

こうして(B)は日本の住宅は26年しかもたないが,Sハウスはずっと長持ちする住宅作りを目指しますという意味になります.26年という数値は耐久性を自慢する為に利用されました.26年と短いのは大工さんのせいではなくて日本の苛酷な四季のせいだと理科年表を持ち出して見当違いな説明をしているのです.
家はなぜ建て替えられるのでしょうか.私は築二十数年のSハウスを潰しましたが,広さが不足していたこと,間取りが古くて使えなかったからです.基本躯体が潰れたからではありません.家というものは26年やそこらで潰れるものではないのです.

「経済的にも,環境保全のうえでも,”住まいの使い捨て”を続けていいはずがありません」とMホームは言っています.ハードが壊れる前に,ソフト(外形デザイン,広さ,間取り,住まいに対する考え方など)が陳腐化して建替えられてしまうのです.

建替えサイクルが短いことを建物の耐久性の問題にすりかえるのはいかにも乱暴な話です.

旭化成は「日本の家の平均寿命は約26年と言われています」と言いました.寿命が建替えサイクルの意味であることは一切省略しました.旭化成はヘーベル以外の日本の住宅が平均26年で潰れる(潰されるのでなく)と消費者が誤解してくれる事を望んでいるのです.

もし26年の根拠を尋ねられたら,弊社は平均寿命の定義として建替えサイクルを採用しています,だって他に科学的データがないではありませんかと答えてくるでしょう.目に見えるようです.このアリバイは尋ねた人に対してだけ明かされます.尋ねてこない人に対しては誤解は誤解のまま放置されます.誤解させることが広告の目的だからです.


家というものは手入れさえ怠らなければ長持ちするものです.30年が通過点にすぎない例はそれこそ枚挙に暇がありません.手入れしなければ,ヘーベルハウスでも住めたものでなくなるのはもちろんです.
Mホームは100年住宅を謳っていました.(11月16日付全面広告『いい家は,厳しい時代に生まれる』) 「当社が必要と認めた有料のメンテナンス及び工事を行うことにより,50〜100年お住みいただけます」と説明してあります.ヘーベルハウスよりずっと安い木造量産規格化住宅でも手入れさえすればこんなに持つのです.


ヘーベルは頑丈だという十年一日の宣伝ではさすがに寂しかったのでしょう,増築の話を付け加えています.
ヘーベルは通し柱だとその昔旭化成営業が教えてくれました.ということはベランダ上に増築する場合1階から新たに柱を立て直すことが必要になります.

将来の増築を想定して新築する場合,オープンロッジア(梁と柱に囲まれたベランダ)にしておきます.つまり鉄骨躯体をあらかじめ作りこんでおくのです.なにもないベランダ上の増築は,見積をとった時あまりに費用がかかるのに仰天する結果に終わるでしょう.

試験棟での増築試験の結果をうけて,ヘーベルハウス販売にあたっては増築予定のある客に対してオープンロッジアを勧めていると思われます.言い換えると予定外の増築は大変割高になるのです.割高なこと木造の増築の比ではないでしょう.
「家族構成の変化に合わせて増改築ができる設計自由度の高さが,大きな特徴の一つ」だと言っています.増築の話と設計自由度の高さがどうして結びつくのでしょうか.

設計自由度では鉄骨プレハブが木造に劣るのは明らかです.ハイムのユニットより自由度は高いでしょうが鉄骨プレハブのメーカー間の差はしれたものです.

プレハブの場合,設計自由度云々以前にどんな営業にめぐりあうかの方が大事です.プレハブでは営業が客から見れば設計者(建築家)です.営業が手抜き営業だと,まるで展示場のモデルハウスそのままの,顧客の個別要件が反映されていない住宅ができあがります.私はヘーベルハウスの見学会でその実例を見ました.

我が家を担当した旭化成営業は幸いにもあたりでした.後に外壁塗り替えを担当した「旭化成社員」ははずれでした.数多い現場第一線の人間にあたりはずれがあるのはやむをえません.しかし経営陣にあたりはずれがあるのは大問題です.客にとっても,旭化成従業員にとっても.
30年前の試験増築の説明をしながら,旭化成は新製品PAOの話をしているのでしょうか.
ヘーベルハウスPAOは,家は箱であるというコンセプトのもとに内部は「敢えて細かくつくり込まない」,「内部レイアウトは住み手の嗜好に委ねている」そうです.箱に出っ張りを付ける増築は多分不得手で,その代わり箱の中は柔軟に,あたかもふすまを取りはずすように,設計など不要なりと大口を叩けるほどに柔軟に,改造できるものだそうです.


全面広告にはもう一つ重要な話が残っています.50年点検システムと補修の話です.いずれも建てた後に関係する話です.

旭化成の住宅事業には二つの柱があります.ヘーベルハウス新築事業とリフォーム事業です. リフォーム事業はヘーベルハウス購入顧客(ヘーベリアンと旭化成は呼んでいます)を対象に,外壁塗り替え,防水シート補修,増改築などを行っています.

リフォーム事業の2000年度の売上実績は195億円です.2006年度には500億円を目標としています.この不景気の中リフォーム事業は驚異の急成長を見込んでいます.
旭化成は3年前からヘーベルハウスの中古仲介に乗り出し100棟の売買実績をあげています.成約価格平均が4377万ですから3%手数料を売買双方でとったとして3年で2億6000万程度の売上でリフォーム事業の足元にも及びません.中古の仲介・販売は,リフォーム事業の販売促進のための単なる餌です.
新築事業とリフォーム事業をつないでいるのが長期にわたる無償定期点検です.
旭化成の「50年点検システム」の点検時期は3ヶ月,1年,2年,5年,10年,15年,20年,25年,30年,40年,50年です.(40年以降は有償です,まだ10年先の話ですが.)

現在では他メーカーも無償長期点検を制度化しています.例えばSハイムの「60年長期サポートシステム」では5年ごと60年間無料で住宅診断するそうです.(11月17日付け全面広告)
2001年現在最も古くからのヘーベリアンでも25年点検しか受けていないのです.それを30年点検異常なしとやったのです.5年フライングしたのです.



さてプレハブの点検は車よりずっと簡単です.しかし補修は車より金がかかります.

旭化成は全面広告で補修について次のようにさりげなく触れています.

(定期点検の実施と) 同時に,綿密なメンテナンスプログラムにより,耐用年数に応じた補修や部品交換を計画的に行っています.


内容を検討してみましょう.


(1) 計画的に行っています

主語は旭化成です.無償サービスでしょうか.有償です.「耐用年数に応じた補修や部品交換」は無償ではありえません.試験棟の住人は,自腹かどうか定かではありませんが,補修に金をかけています.壁にも,屋根にも.
ヘーベルハウスの原点は陸屋根(フラットルーフ)です.旭化成は一時期(今でも?),陸屋根から勾配屋根へのリフォームを「屋根掛」と称して客に勧めました.これがそのパンフレットの一部です.

防水メンテナンスコストの削減がメリットにあがっています.屋根裏スペースがないことは百も承知で陸屋根にした客に勾配屋根への変更を決意させるほど,ヘーベル陸屋根の防水コストが高いことを示唆しています.

防水シートの補修については,引用個所のすぐ上で「玄関ドアのビスのゆるみ,屋上防水シートのきずなど,軽微な補修を必要とする数箇所を除いて異常は見つかりませんでした」という形で言及されています.ビスのゆるみを締め直すのと同列の軽微な補修なのにどうして防水シートメンテナンスコストが問題になるのでしょうか.

(2) 部品交換

部品交換とは何でしょうか.旭化成の公式サイトで公開されていた旭化成リフォームの『中期経営計画』によるとサッシとか雨戸の戸車交換などを指しているようです.

ヘーベルハウスにはリビングマニュアル(住まいのしおり)と題する66頁のバインダー形式の立派なマニュアルがついています.

それには出入りの多い個所の戸車は4年くらいで「点検してそのつど交換しましょう.部品はホームサービス課にあります」と書いてあります.

また冷暖房機器や給湯設備の「点検や部品交換は,器具メーカーのサービス体制を利用しましょう」と書いてあります.

旭化成の手抜きではありません.常識的な説明です.


広告の説明がおかしいのです.旭化成が計画的に部品交換するというのは嘘です.
旭化成は顧客の心を掴むために「蛍光灯交換から押し売り撃退まで頼まれれば何でも」やるそうです.老夫婦が戸車交換を依頼すれば,やってくれるかもしれません.しかしそれは計画的に部品交換するという事とは違います.マニュアルが本当で広告は嘘です.

(3) 綿密なメンテナンスプログラム

上記リビングマニュアルの最終2頁にメンテナンス表があります.

縦に点検個所,横に経過年数です.★は素人でもできる作業,○は専門業者に依頼する作業,そして●は重要なメンテナンスです.(「表の見方」参照)
専門業者に依頼する作業と重要なメンテナンスを区別している点に是非ご注意ください.
●は外壁塗り替えと防水シート補修についています.(カラーベストは陸屋根の場合無関係です.)

メンテナンスの目安の下に書いてある注意書きをご覧下さい.不適当な方法でやれば取り返しのつかないことになると警告しています.

●を○と区別している点をあわせて考えれば,言わんとしていることは,客の知り合いの街の専門業者は不適当な方法でやるかもしれませんが,旭化成に頼めばそんなことはないということです.
旭化成でも「不適当な方法」で補修すれば「取り返しのつかないこと」になります.そんな自明のことを旭化成が言いたいわけではもちろんありません.マニュアルの表現は抑制されたものですが,広告では次のように一歩進めました.
旭化成(の息のかかった専門業者)は旭化成の保有する「綿密なメンテナンスプログラム」に従っている点が街の専門業者と違うのだと旭化成は主張しています.

綿密な(第一弾では緻密なと形容されています)メンテナンスプログラムとは何でしょうか.

マニュアルには外壁は10年に一度塗り替える,防水シートは10年目に点検し15年から20年で張り替えると書いてあります.たったこれだけのことを全面広告では綿密で緻密なメンテナンスプログラムと表現したのです.
防水シートはやわです.旭化成でも破ってしまいます.烏がつっついても破れます.傷は旭化成でもなかなか見つけられません.雨漏りして初めてわかります.補修法にはぴんからきりまであります.客の懐もぴんからきりです.そして防水シートの保証期間は10年です.

これらの事情により防水シートの補修は微妙な問題を含んでいます.メンテナンスプログラムが意味する科学的な保守手順とは全く異なる顧客対応プログラムが存在するに違いありません.

もし綿密な補修プログラムがあるとすれば欠陥部位の補修プログラムです.設計欠陥あるいは製造欠陥を表沙汰にならないように密かに補修するために,綿密で緻密でしかも決して公開されることのないメンテナンスプログラムが必要になるでしょう.
重要文化財住宅ではあるまいに,軽量鉄骨プレハブ住宅の補修に緻密で綿密なメンテナンスプログラムなど存在するわけがありません.ヘーベルハウスが欠陥住宅でない限り,メンテナンスは街の専門業者でも適切にできるのです.
増築や屋根掛の方は,外壁や防水シートと違ってヘーベルハウスの知識がない街の専門業者では難しいように素人には思えます.

屋根掛のパンフレットをもう一度ご覧下さい.「ヘーベルハウスを熟知している」旭化成に是非お任せくださいと宣伝しています.してみると屋根掛すらも旭化成に断りなく実行しているお客がいるようです.腕の立つ大工さんなら屋根掛など造作ない話なのかもしれません.

とは言え増築や屋根掛は旭化成に依頼する素人が多いでしょう.ところが旭化成にとって残念至極なことに増築するお客も屋根掛するお客も絶対数が多くないのです.一方「耐用年数に応じた補修」はすべてのヘーベリアンが行います.

旭化成のゴールはすべてのヘーベリアンが旭化成に補修を依頼することです.