おべっかは飛ばしてヘーベルハウスは頑丈ですからみていきましょう. 30年前ヘーベルハウスがプレハブ市場に登場した時,頑丈さが目玉であったのは確かでしょう.しかし現在の消費者にとって30年前の住宅の性能がどれほどの意味をもつのでしょうか. この広告は実はヘーベルハウス中古(旭化成ではストックヘーベルハウスとよんでいます)の宣伝をしていると読むべきなのかもしれません.旭化成は日本の住宅の平均寿命が約26年だと言っています.日本の住宅の多くは建替えのため強制的に壊されて,その結果26年になっているのではないでしょうか. 業界トップのSハウスが答を提供してくれました.家はなぜ建て替えられるのでしょうか.私は築二十数年のSハウスを潰しましたが,広さが不足していたこと,間取りが古くて使えなかったからです.基本躯体が潰れたからではありません.家というものは26年やそこらで潰れるものではないのです. 「経済的にも,環境保全のうえでも,”住まいの使い捨て”を続けていいはずがありません」とMホームは言っています.ハードが壊れる前に,ソフト(外形デザイン,広さ,間取り,住まいに対する考え方など)が陳腐化して建替えられてしまうのです. 建替えサイクルが短いことを建物の耐久性の問題にすりかえるのはいかにも乱暴な話です. 旭化成は「日本の家の平均寿命は約26年と言われています」と言いました.寿命が建替えサイクルの意味であることは一切省略しました.旭化成はヘーベル以外の日本の住宅が平均26年で潰れる(潰されるのでなく)と消費者が誤解してくれる事を望んでいるのです. 家というものは手入れさえ怠らなければ長持ちするものです.30年が通過点にすぎない例はそれこそ枚挙に暇がありません.手入れしなければ,ヘーベルハウスでも住めたものでなくなるのはもちろんです. Mホームは100年住宅を謳っていました.(11月16日付全面広告『いい家は,厳しい時代に生まれる』) 「当社が必要と認めた有料のメンテナンス及び工事を行うことにより,50〜100年お住みいただけます」と説明してあります.ヘーベルハウスよりずっと安い木造量産規格化住宅でも手入れさえすればこんなに持つのです. ヘーベルは頑丈だという十年一日の宣伝ではさすがに寂しかったのでしょう,増築の話を付け加えています. ヘーベルは通し柱だとその昔旭化成営業が教えてくれました.ということはベランダ上に増築する場合1階から新たに柱を立て直すことが必要になります.「家族構成の変化に合わせて増改築ができる設計自由度の高さが,大きな特徴の一つ」だと言っています.増築の話と設計自由度の高さがどうして結びつくのでしょうか. 設計自由度では鉄骨プレハブが木造に劣るのは明らかです.ハイムのユニットより自由度は高いでしょうが鉄骨プレハブのメーカー間の差はしれたものです.30年前の試験増築の説明をしながら,旭化成は新製品PAOの話をしているのでしょうか. ヘーベルハウスPAOは,家は箱であるというコンセプトのもとに内部は「敢えて細かくつくり込まない」,「内部レイアウトは住み手の嗜好に委ねている」そうです.箱に出っ張りを付ける増築は多分不得手で,その代わり箱の中は柔軟に,あたかもふすまを取りはずすように,設計など不要なりと大口を叩けるほどに柔軟に,改造できるものだそうです. 全面広告にはもう一つ重要な話が残っています.50年点検システムと補修の話です.いずれも建てた後に関係する話です. 旭化成の住宅事業には二つの柱があります.ヘーベルハウス新築事業とリフォーム事業です. リフォーム事業はヘーベルハウス購入顧客(ヘーベリアンと旭化成は呼んでいます)を対象に,外壁塗り替え,防水シート補修,増改築などを行っています. リフォーム事業の2000年度の売上実績は195億円です.2006年度には500億円を目標としています.この不景気の中リフォーム事業は驚異の急成長を見込んでいます. 旭化成は3年前からヘーベルハウスの中古仲介に乗り出し100棟の売買実績をあげています.成約価格平均が4377万ですから3%手数料を売買双方でとったとして3年で2億6000万程度の売上でリフォーム事業の足元にも及びません.中古の仲介・販売は,リフォーム事業の販売促進のための単なる餌です.新築事業とリフォーム事業をつないでいるのが長期にわたる無償定期点検です. 旭化成の「50年点検システム」の点検時期は3ヶ月,1年,2年,5年,10年,15年,20年,25年,30年,40年,50年です.(40年以降は有償です,まだ10年先の話ですが.) 現在では他メーカーも無償長期点検を制度化しています.例えばSハイムの「60年長期サポートシステム」では5年ごと60年間無料で住宅診断するそうです.(11月17日付け全面広告)2001年現在最も古くからのヘーベリアンでも25年点検しか受けていないのです.それを30年点検異常なしとやったのです.5年フライングしたのです. さてプレハブの点検は車よりずっと簡単です.しかし補修は車より金がかかります. 旭化成は全面広告で補修について次のようにさりげなく触れています.
内容を検討してみましょう. (1) 計画的に行っています 主語は旭化成です.無償サービスでしょうか.有償です.「耐用年数に応じた補修や部品交換」は無償ではありえません.試験棟の住人は,自腹かどうか定かではありませんが,補修に金をかけています.壁にも,屋根にも. ヘーベルハウスの原点は陸屋根(フラットルーフ)です.旭化成は一時期(今でも?),陸屋根から勾配屋根へのリフォームを「屋根掛」と称して客に勧めました.これがそのパンフレットの一部です. (2) 部品交換 部品交換とは何でしょうか.旭化成の公式サイトで公開されていた旭化成リフォームの『中期経営計画』によるとサッシとか雨戸の戸車交換などを指しているようです. ヘーベルハウスにはリビングマニュアル(住まいのしおり)と題する66頁のバインダー形式の立派なマニュアルがついています. 広告の説明がおかしいのです.旭化成が計画的に部品交換するというのは嘘です. 旭化成は顧客の心を掴むために「蛍光灯交換から押し売り撃退まで頼まれれば何でも」やるそうです.老夫婦が戸車交換を依頼すれば,やってくれるかもしれません.しかしそれは計画的に部品交換するという事とは違います.マニュアルが本当で広告は嘘です. (3) 綿密なメンテナンスプログラム 上記リビングマニュアルの最終2頁にメンテナンス表があります. 縦に点検個所,横に経過年数です.★は素人でもできる作業,○は専門業者に依頼する作業,そして●は重要なメンテナンスです.(「表の見方」参照) 専門業者に依頼する作業と重要なメンテナンスを区別している点に是非ご注意ください.●は外壁塗り替えと防水シート補修についています.(カラーベストは陸屋根の場合無関係です.) メンテナンスの目安の下に書いてある注意書きをご覧下さい.不適当な方法でやれば取り返しのつかないことになると警告しています. ●を○と区別している点をあわせて考えれば,言わんとしていることは,客の知り合いの街の専門業者は不適当な方法でやるかもしれませんが,旭化成に頼めばそんなことはないということです. 旭化成でも「不適当な方法」で補修すれば「取り返しのつかないこと」になります.そんな自明のことを旭化成が言いたいわけではもちろんありません.マニュアルの表現は抑制されたものですが,広告では次のように一歩進めました.旭化成(の息のかかった専門業者)は旭化成の保有する「綿密なメンテナンスプログラム」に従っている点が街の専門業者と違うのだと旭化成は主張しています. 綿密な(第一弾では緻密なと形容されています)メンテナンスプログラムとは何でしょうか. マニュアルには外壁は10年に一度塗り替える,防水シートは10年目に点検し15年から20年で張り替えると書いてあります.たったこれだけのことを全面広告では綿密で緻密なメンテナンスプログラムと表現したのです. 防水シートはやわです.旭化成でも破ってしまいます.烏がつっついても破れます.傷は旭化成でもなかなか見つけられません.雨漏りして初めてわかります.補修法にはぴんからきりまであります.客の懐もぴんからきりです.そして防水シートの保証期間は10年です.重要文化財住宅ではあるまいに,軽量鉄骨プレハブ住宅の補修に緻密で綿密なメンテナンスプログラムなど存在するわけがありません.ヘーベルハウスが欠陥住宅でない限り,メンテナンスは街の専門業者でも適切にできるのです. 増築や屋根掛の方は,外壁や防水シートと違ってヘーベルハウスの知識がない街の専門業者では難しいように素人には思えます. |