『SHAPER'S HIGH』富田薫 著

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正直に言うと、
この本を読むまで「富田薫」を知らなかった。

テイ・トウワや安室奈美恵や小泉今日子等のCDジャケットやプロモーションビデオの美術を歴任し
「美術」 という枠を超えた活動「HandSomeWorks」を主催している人物だいうことを。

いや、ちがう。
知っていた。
書店で、この本に出会った時から知っていた。

造本自体で、本文を読まなくてもその人を臭してしまうような、そんな本なのだ、本書は。
そこには手にとらずにはいられない、なにか、が宿っていた。

カバーはキャンバス地のようなちょっとハードな質感。
そして、タイトルとイメージがコッパーの箔押し。
(シルバーとかゴールドではなくコッパーというところに なんとなく手作業を感じる)

それにつつまれたものは、 ふかふかな紙の表紙にエンボスでタイトルを刻んだのみの暖かい本だった。
印刷のインキ等、後から付け加えたものはなく、
素材をへこましたエンボスのみのその本は 遠くからみたらただの白い塊に見えた。

そして、そのふかふかの表紙が折り返してあって
(これまた「折る」という工程が、作業を感じさせる)
それを紐解くと、今度は刷りのコッパーの見返しが顔をだす 。

判型もB5の天地を若干短くし、タテヨコ比を少なくすることにより 、親しみやすい形になっている。

タイトルの英文フォントも、箔押しや、彫刻など「刻み込む」のに適したフォントだ。

随所にしっかりSHAPER富田薫の匂いが刷り込まれていたのだ。
(もとい、「刻み込まれていた」の方が適切か)

奇を衒った表現、手法はどこにもない。
デザインも主張しすぎることなく存在している。

このデザインのポイントは富田薫の匂いを見ず知らずのヒトに伝えることだ。
それを発する最小限のデザインなのではないだろうか。

僕はみごとにその企みに引っ掛かってしまった。。

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それでは、肝心な中身は?というと、
「富田流」美術、「富田流」モノ作りが、 熱く、楽しく語られていて面白い。

「うんうん」と共感してうなずいてみたり、
自分と照らし合わせては「自分はまだまだだなあ」と反省してみたり、
胸に手を置いてみたり。。 なにはともあれ惹き付けられる。

富田さん曰く、ものを作るにあたり、必須の感覚があるという。
それは
「sense of wonder」=「わあ、すげえ!」という感覚

「単美主義」という考え である。

「わあ、すげえ!」という感覚は、読んでそのまま、物事にどれだけ興味を持つ 事ができ、
どれだけ愛着をもてるか、である。

話は飛んでしまいますが。。

例えば、TVのUFO特集の番組があるとする。

仮に、作り物だと思ってしまっても、なぜ、昔っからUFOってあんなイメージが ついてしまったのか?
なぜ「空飛ぶ円盤」だったのか?
なぜ「空飛ぶ四角」や 「空飛ぶ円錐」ではなかったのか?
円盤と宇宙人がもつ共通項があるから、そのイメージが定着したなら、それはな んなのか?
はたまた、人類が想像もできない例えば厚さ1m/mのものがあっても いいのではないか。
とか、 そもそも「やはり宇宙人はいるのだ!」と宇宙に神秘に思い巡らしたり。
とか、くだらないと思われるかもしれないけれど、そんなことだと思う。

そんなくだらないことにビビッときてしまう感覚が「sense of wonder」なので ある。

「単美主義」という考えは、 きちんと、自分の感覚という基準を鋭敏に使い、
「美しいから美しい!」と宣言できる かどうか、
その意志こそが唯一の美の判断基準であるということである。
へたくそな理屈をつけて、いろんなところから寄せ集めた知識なんかに頼らないで、
自分に自信をもち、そのジャッジを楽しめるか、それが大切なのだ。

「美しい」とか「楽しい」とかという感覚、もしくは、その対象は、
必ずしも直接に何かを生むというわけではないのかもしれない。
へたすると「無駄だ」と省かれてしまうものかもしれない。
ただ、個人的にはその「無駄」こそが人間らしさだと思っている。

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最後に、モノ作り諸君に富田さんの名台詞を載せておきます。

『もし、「SHAPER'S HIGH」というものが本当にあって、作業する私の脳内に快 楽物質 が生成されているとしたら、それは間違えなく興奮剤である。 心拍数を上 げ、総身に不自然な程の力を漲らせる、ギンギンのアッパーだ。 私は作る事で癒されない、私は作る事で昂揚する。』

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(追記)
この本で、富田さんは五人の面白い方々に展覧会に向けて、自分に作ってもらい たいもの というお題を出している。

*ちなみにその五人とは
・小泉今日子
・ 永瀬正敏
・佐藤雅彦
・林海象
・広田レオナ
の五人です。

こりゃあおもろい。
それじゃあ、勝手に作ってもらいたいものを考えてみよう!

『30世紀の未来を統治している王様が自分の権威を後世に伝えるべく作ったクロニクル』

ポイントは
・大衆が主役の現代においてうまれることのない、自分の権力を誇示するだけのための豪奢 な本

・そんな未来のくせに、やっぱり、紙で情報をしまいこむ所謂「本」という形をとる

・インディージョーンズやトゥームレイダーに出てくるような、 なぞ解きに使われる遺跡に祀ってある 超自然なパワーを持っている本。但し、時間の経過を経てない新品な状態で
(やっぱりエイジングしないとらしくみえないのかなあ。。?)

・レイ・ブラッドベリの『華氏451度』にでてくる、近未来、焚書が行われてしまうような時代のイメージ

・歴史を感じさせつつ、そこは未来っぽい素材を豪勢に使った造本

ポイントを書いているととまらなくなりそう(笑)
真夜中だけど目が冴えてきてこまります。。
ほんとに実際考えはじめるとわかります。はまりますよ。
皆さんもよかったら!

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関連URL HandSomeWorks(富田薫さん公式HP)

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