『鬼平犯科帳』池波正太郎 著
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ただの正義を愛する清廉潔白な男であったら失望していた
ただの無頼あがりだったら軽蔑していた
お馴染み火付盗賊改方長官 長谷川平蔵は、現代で活躍する人にも共通する魅力を持った
上記の範疇に収まらぬかっこいいおっさんだった。
現代でもかっこいい人、その魅力の共通点の1つに 自分の為に仕事をしているというのがあげられる。
それは自分勝手ではなく、自分という判断基準をちゃーんと持っていると いうことだ。
俗にいう正義
俗にいう社会
という概念が根っことなっているものではなく、
自分というものを持って 判断する。
自分という存在から社会と交わる、
その結果としての正義であったり、
社会貢献であったりするのだ。
この鬼の平蔵もそんな人である。
ちょっと長いが、その「御役目」に対する思いを引用してみよう。
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平蔵:「つくづくと、ばかばかしく思うのだよ、久栄」
(いつであったか平蔵が、妻女におもわず零したことがあった。)
平蔵:「このように、一生懸命にはたらなくてもよいのだ。
よい加減にしておいて、他の人に交替してもらうのが、もっともよいのさ。
これではおれも、とうてい長生きはできまいよ」
久栄:「では、よい加減にあそばしたら、いかがで。。。」
平蔵:「できれば、な。。。だが、どうもいけない」
久栄:「なぜ、いけませぬ?」
平蔵:「この御役目が、おれの性にぴったりはまっているのだ。
これはその。。。まことにもって、困ったことだ」
久栄:「まあ。。。」
平蔵:「他のだれがやっても、自慢ではないがおれほどにはできまい。
なればこそやめられぬ。
これはな、久栄。
なにも悪党どもを征伐して諸人の難儀をふせぐ、
などという偉そうな気持ちからではないのだ。
つまりは、その。。。」
久栄:「この御役目が好きなので。。」
平蔵:「いや、そうではない。好きではないが、やめられぬという。。。
理屈ではわからぬことだ。
つまりはその、盗賊相手にはたらく御役目へ、
おれはどっぷり足をとられてしまっている。
いまのおれとくらべて見て、以前にいろいろつとめた他の御役目なぞの
味気のなさをおもい出すとぞっとしてしまうのだ」
久栄:「まあ、そのようなことを。。。」
平蔵:「そのとおりだ。いずれも堅苦しく肩ひじを張ったおつとめをする役目で、
なんの新しさも感動もなかった。
それにくらべると、いまのおれがしえいることは、
日に日に新しい。いろいろな人間たちの、いろいろな心とふれあい、
憎みながらあわれみ、あわれみつつ闘わねばならぬ。
四十をこえて長谷川平蔵、人の世がまことにおもしろくなってきて、な。。。」
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かなりかっこいい。
平蔵がお頭をつとめる「火付盗賊改方」は凶悪盗賊を捕らえるために特別な機動性を
をもたされた、切り捨て御免の特殊警察である。
二言目には「正義」やら、陶酔に近い台詞が顔を出してしまいそうな役職だ。
それを「そんな偉そうなもんではない、性分にはまっているだけなのだよ」と さらりと言えてしまう。
それも、体面を保つためではない。
自分のやっている仕事に「やりがいを持ちたい」と思うが故に、
自分の仕事に 誇りをもっているとうそぶいてしまう、そんな言葉でもない。
単なる仕事ばか、働きマンなのである。
そんな平蔵の人間的魅力に加えて、
引き込まれるのはその江戸の世界観。
携帯どころか電話もろくすっぽ郵便もない、そんな時代の火付盗賊改と盗賊との駆け引き。
ある商家にターゲットを絞り、綿密な段取りを持っておつとめを行う盗賊 集団。
その集団内の絆、裏切り。
どんなに名立たる名盗賊の頭領でも、あっさりと寝首をかかれることもある。
どんなに切れる平蔵の部下でも、あっさり小物に刺されて殉職ってことだって ざらだ。
そして、そんな部下の殉職をも覚悟している平蔵の沈痛な立場も、
殺された数多の無念も
その一切を引き受けて悠然と存在する江戸の粋。
その登場人物とストーリーと風物すべてが混然となっているのである。
それがすべて「く〜っ、たまらん!」のである。
ちなみに僕は、TV版は断然中村吉右衛門派である(笑)
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『鬼平料理帳』
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Between The Lines Vol.6 2005/7/7