『ガープの世界』 ジョン・アーヴィング
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この作品はジョン・アーヴィングの自伝的小説である。
作家T.S.ガ−プを主人公とし、彼の生涯を描くものである。
日本語訳『ガ−プの世界』とは
『The World According to Garp』(ガ−プによると、世界とは〜)
とも訳せる。
つまり、ガ−プを通して、フィルタとして、
人とは、世界とはと問うているのかも知れない。
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なぜこの作品は 登場人物がみなひとくせもふたくせもあり、
素直に感情移入できない人びとであるのに、
これほどすんなり、すっと心に入り込んでくるのか。
色んな事件があり、救いようもないような世界であるのに
なぜ、心をゆさぶるのか。
それは、読後感じる調和のある幸せな世界のせいであろう。
異色で欠点の多い登場人物である彼らは、色々なものを失いながら
(時には命まで!) 世界を、自分達の生活を幸せの方に向かわせる
ことに成功したのではないだろうか。
そしてそれこそが、人と人との繋がりが、
人それぞれがもつ悲しさやら欠点やらを 補ってあまりある成果と
してその人を失っても残っているのではないだろうか。
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主人公ガープは良き夫良き父であり、才能豊かな作家だが、
時にエキセントリックなほど
頑固で不寛容であり人を怒らせトラブルを産む。
ガ−プの母であるジェニー・フィールズは男性を信用しておらず、
戦後負傷兵として帰還 した見ず知らずの脳障害を患ったガ−プ軍曹
と性交渉を持ち、 ガ−プを産む。
その他にも
ジェニーのボディーガードの性転換者ロバータ
強姦され、舌を切られたエレン 等、
登場人物に一般の普通な人は見当たらない。
当然、そこには様々な事件、事故が潜んでいる。
誰かを失ってしまうもの、なにかを失ってしまうもの、
そんなレベルのものもある。
それゆえ世間から攻撃されることもある。
一見殺伐とした緊張と窮屈さをも感じる世界を感じるかもしれない。
ただ、最後、悲劇的な最後をガ−プが迎えるシーンでも彼は
「心配するなよ−死後の世界がなくたって、どうだというんだい?
ぼくの後も世界はあるじゃないか。
たとえ(死後の)死後に死しかなくても、
小さき良きものに感謝しようじゃないか」
と、本当にやすらかに逝ってしまう。
そう、外野からどうみえようと、幸せでなかった人に、
愛するものに囲まれてない人に そんな台詞は言えないのである。
彼は幸せであったのだ。
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この作品は紛うことなきフィクションで、娯楽作品にすぎない。
なにかを求めたりするのはとんだお門違いである。
ただ、アーヴィングのストーリーテラーの力量にのっかればいいのである。
が、個人的にガ−プが幸せをつかんだ、
その根底にある彼の思想に共感したところ があるので、
蛇足ではあるが紹介したいと思う。
彼の作品『寝取られ男の巻返し』を読んだ読者からの抗議の手紙を受け取った
シーンでのこと。
その読者はガ−プが他人の問題をばかにしてこっけいに笑い者にしていると、
世の悲惨さをも知らず人の悩みも知らぬばか者だと非難する。
それに対し、それは誤解だとガ−プは主張する。
人は「こっけい」であっても、同時に「真面目」であることができる。
笑いとは同情に関係するものであり、笑いが自分の信じる宗教であると。
笑い飛ばすことも人生を生きる上での処方になるうると。
『人間の抱えている問題はしばしばこっけいであり、にもかかわらず
もの悲しいものである』
のだから、と。
僕は彼に賛成である。 だからこそ、
彼の死でしめくくるこの物語は喜劇である、そう結論付けたいのである。
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関連書籍
『ホテル・ニューハンプシャー』 ジョン・アーヴィング 著
『サイダーハウス・ルール』 ジョン・アーヴィング 著
『オウエンのために祈りを』 ジョン・アーヴィング 著
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2005/10/2