日本の伝統 岡本太郎著

         ・・・

ジャンルがなんであれ、伝統が、過去に作り上げられたものが現在
なお忘れ去られることなく伝えられているということは、他でもな
く、現代の我々の要請である。

岡本太郎は

要請した側の我々

要請された側の過去の事物

両者に切っ先を突き付ける。

         ・・・

文化伝統を必要とする現代の要請。

それはややもすると、

単なる
自己の正当化
もしくは、現代の批判

に堕してしまう怖れがある。

「我々はこんな伝統を持った由緒ある人間なのだ」

「(自分は違うが)現代の世の中は醜く軽薄だ。それにくらべて伝統
ある事物はなんてすばらしいことか」

と。

それは恣意的であり観念的であり、形式論でしかない。

自分のルーツを探り、自己を正当化するためだけに、過去の事物を伝
統と称し愛でる。
反面、現代を真摯にみつめ、未来を思うことなどないのであれば、そ
こになんの意味がるというのか。

岡本太郎は執拗に切り掛かる。

日本人が後生大事に祀りたてる形骸化した伝統に。

         ・・・

日本の伝統というと、

京都、奈良、侘び、さび

なんてローカルでドメスティックな固定観念が頭をよぎる。

そして、反対に我々が生きる現代はグローバルだ、と皆言い切る。

岡本太郎はこれは全く逆だと言う。

日本の伝統は大陸から伝来したものがあり、レヴィ=ストロースが言う
ように、世界各地の伝承とシンクロする部分もある。
伝統は時間、空間的にも想像を絶する程の深度を持つ。
つまり、「日本の伝統」と日本がついたところで、その地域に縛られる
ことは本来ないのだ。
世界の伝統を見る目で接する必要があるのだ。
日本人がヨーロッパのバロックを伝承しても良いのだ。
逆に欧米人が自分のモノとして侘びでも良いのである。

逆に、現代、我々はどこにでも行ける自由を有したといえども、同時に
二ケ所に生息することなどできない、ドメスティックな存在なのである。

そんな制限された環境をオリジナリティとし、強烈な独自性として創造
の契機とできるか。

世界の奥深い伝統をその創造に生かせるかどうか。

それが今現代の日本で我々が日本の伝統を作るということなのだ。

日本の伝統とは過去の遺物の事をさすのではなく、これから我々が作り
あげていく、現在と未来のことなのだ。

         ・・・

僕らに与えられた時間とは数十年。
圧倒的な過去を酌み、それらにくみ倒されることなく、撃ち破り、新た
な地平を開くにはなんと少ないことだろう。

それくらいの意気をくれた本書、著者をまずは撃ち破らなければならな
い。

         ・・・

関連書籍

青春ピカソ

自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか

今日の芸術―時代を創造するものは誰か

*すべて岡本太郎著(彼の言葉は熱くそして、なによりまっとうだ。)

         ・・・

Between The Lines 無料購読/購読解除  

2006/3/19