ケルトの薄明 W.B.イエイツ 著
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この本の文章はとても平易だ。
だが、もしかしたら退屈と思われる人もいるかも知れない。
それは確実に普段接している文章に偏りがある証拠ではな
いだろうか、僕はそう思う。
僕らが普段接している文章には 目的、原因、結果があり、
なにより、自分の、相手への気持ちが含まれている。
基本が人であり、個人なのである。
それだけではなく、動物にも植物にも地球にも寓意を折り
込ませないと気がすまない、そんな環境に僕らは世界を限
定し慣れ過ぎてはいないだろうか。
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この本はタイトルが語るようにケルトの物語り、民間伝承
され現存する物語りを著者が脚色することなく蒐集したも
のである。
ここでいうケルトはアイルランドのケルトなのだけれど、
アイルランドはケルト圏のなかでも特にエレメンタルな
(精霊的な)ものへの考え方が肯定的な地域でもある。
本書内にも、妖精、幽霊から妖精の豚、3つクビの巨人や
らが普通にでてくる。 そして人があっけなく死んだり、
あっけなく生き返ったり する。
きっと物語りが生まれた当時は、いまより、死が身近であ
り、生きる為に集団が重要であり、特にケルト圏では森と
いう人間が入り込めない「あちら側」との接触が頻繁だっ
たと考えることもできる。
つまり、現代日本のように、いかに私(個人)が考え、行
動し、どう生きるかなんてことが重要で、それ如何によっ
て社会から評価されるかが決まる、そして、それが生きる
上でなによりも重要という価値観とは大分異なるのではな
いだろうか。
ただし、民族の思想の特性としてはケルトと日本は共通部
分がなにげに多い。
彼らは精霊を崇拝するアニミズムであり、
輪廻転生を信じていたのである。
にもかかわらず、いまではそれぞれの彼岸にいるような隔
たりが現存する。
なにも、どちらかを否定、非難するつもりはない。
そうではなく、普段はモヤがかかって見えない彼岸にも、
美しい世界があるのだ、ということを想像できるか、でき
ないか、どちらが豊かかってことをこの本を読むことで考
えることができるということが重要だと思うのです。
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とは言うものの、そこまで堅くならずに味わえる美しさを
もつ作品でももちろんある。
なにを得ようなどではなく、スッっと読んでスッっと感じ
る、そんな言葉達で詰まっている作品でもあるのです。
アイルランドの自然と、それにまつわる精霊達、そして、
ケルト民族の歴史、その悲哀がつくる世界観がえも言われ
ぬ魅力を作り出しているのです。
あなたは聞いていないだろうか、
天国にさえ鳴り響く、
吟遊詩人の快い言葉を?
あなたは聞いていないだろうか、
死んだ人たちが、
恍惚の世界に蘇るのを?
恋人たちが手足をからませるとき、
どんな「愛」が、
人生の夜が砕けるとき、
どんな「眠り」が、
この世のおぼろな境界を思うとき、
愛する人の歌う「音楽」が、
いったい死だと言えるのだろうか?
(『女王と道化』より)
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関連書籍
ケルト幻想物語 W.B.イエイツ編
(さらにケルトの幻想世界を知りたい人へ)
世界の涯の物語 ロバート・ダンセイニ著
(『ロードオブザリング』にはまった人へ、
アイルランド発のファンタジーの源流)
人類最古の哲学―カイエ・ソバージュ〈1〉 中沢新一著
(神話を人類最古の哲学とする論考)
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2006/4/17