3) 悲哀の過程/喪の作業→「異常であって欲しい状況」における「正常な反応」
スイスのテューリヒ出身で、ユングJung,C.G.から最も影響を受けたと言う合州国の精神科医エリザベス・キュブラー=ロスKübler-Ross,E.は、多くの末期癌と告知された患者さん達とインタヴューする中で、自分の死という、「自己愛的万能幻想」にとって最悪とも思われる痛手を被った人々に、概ね共通した次のようなプロセスを見出しています(⇒参考図書;括弧内は筆者による加筆。尚、これらのプロセスは決して直線的に進むものではなく、行きつ戻りつしながら進行するものですし、途中で頓挫することもあり得ることは、キュブラー=ロス女史も強調しています)。
ショック(マヒ状態):思いがけない現実に
茫然自失してしまう段階です。
→否認(現実への没頭):その思いがけない現実を見ようとせず、
別の事柄に没頭したりします。
→怒り:ある程度現実を認めますが納得はできず、
その現実に対して怒りが湧いてきます。
→取引:その現実にさまざまな意味づけを行って
自分を納得させようとします。
→抑鬱:結局はどうにもならないことを悟り、
打ちひしがれます。
→受容(再起):どうにもならない現実を受け容れ、
その中で生きて行く気持ちになります。
そして、受け容れ難い現実は「悪夢」等で繰り返し想起されながら「消化」されて行くようです。
これらのプロセスは、イギリスのクライン派精神分析の概念で述べれば、現実の否認と苦痛な体験の活発な分裂排除を特徴とする妄想-分裂ポジションparanoid-schizoid positionから、分裂排除の幻想性に気づき現実を受容する抑鬱ポジションdepressive positionへの移行、ということになっているでしょう。
以上のようなプロセスは、心の本質に根差した自然な流れに従っており、経過を早めたり、苦痛を軽減したりすることは難しいようです。強いて言えば、そのような心の痛みを理解し共有しようとして傍に居てくれる誰かの存在のみが恐らくは、この心の痛みを軽減し得るのでしょう。
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