精神疾患、心の病気は身体の病気とは異なり、それぞれ独立した病気があるわけではなく、明確な区別があるわけでもないのです。人によって症状・程度もいろいろですが、症状が1つだけという人もいません。ある程度、典型的な例やパターンがあるので、便宜的な概念・名称として診断名、病名をつかっているに過ぎません。
例えば、内因性精神病のうつ病と心因性の抑うつ神経症の鑑別診断が必要だ、などと考える人もかつてはよくいましたが、実際の病気に種類があるわけではなく、そのような区別は書物の上や精神科医の頭の中にあるだけです。
医師や病院、地域によっても診断が異なることがあるのは、ある程度、当然のことですが、明らかに間違ったとらえ方や、診断をしている場合も少なくありません。
うつ病
・一日中いやな気分が続き、朝起きたときが特にひどい。
・夜はなかなか眠れず、朝早く目が覚めてしまうことも多いが、日中でも眠気におそわれる。
・食欲もわかず、体重が減ってしまう人が多いですが、過食傾向になる場合もある。
・思考がまとまらず、集中力もなく、本も億劫で読めなくなる。
・決断力がなくなり、いつまでもくよくよと迷ってしまい決められない。
・意欲がなくなり、仕事はおろか、趣味や好きなことも手につきません。
・テレビや新聞にも興味がわかず、映画や音楽、スポーツなども楽しめない。
・身体が鉛を詰め込んだように重く、少し動くことさえ重労働のようになり、億劫になってしまう。
・気分が落ち着かず、イライラしたり気持ちばかり焦ってしまう。
・物事を悪い方に、マイナスにばかり考えてしまい、自分はダメな人間としか思えない。
・いっそのこと死んだ方がましだ、自殺したいと思ってしまう。
以上のようなことが、うつ病の症状です。
パニック障害
特に身体の病気がないのに、突然、動悸、呼吸困難、めまいなどの自律神経症状(パニック発作)をくり返し、そのために発作への不安が増して、過度に心配になり、外出などが制限されます。
電車やバスなどの乗り物に乗ったときに、パニック発作が起こる人が多いのですが、人混みの中や狭い場所にいるときに、起こる人もいます。以前は不安神経症のうちと言われていましたが、近年、このような症状の人が多くなり、パニック障害(パニック症候群)として扱われるようになりました。
あがり症
一般に精神医学では、あがり症という言葉は使いません。病院に行くと、あまり気にしないように、性格的なものだと言われるだけだったり、気休めに安定剤を処方されたりします。
人前で話すときなど、動悸がしたり、声や身体が震える、冷や汗をかく、赤面する、表情がこわばる、などの「人前で緊張してあがってしまった」といった体験は誰でもありますが、あがる程度や頻度がひどく、またそれを極度に恐れ、そのような状況を避けてしまうようになると、日常生活や仕事に差し支えます。
あがり症は対人恐怖症・対人不安のうちとも言えますし、程度はともかくとして神経症でもあります。
対人恐怖症(対人緊張、対人不安)
最近では、社会恐怖症、社会不安障害などと言うことも多くなりました。人前で恥をかいたり恥ずかしい思いをすることを極度に恐れ、そのような社会的状況や対人的な状況に強い不安や苦しみ、恐れを感じ、避けてしまいます。
人前で字を書くとき手が震えてしまう書痙症や、人前で話すとき声がうわずったり、吃ったりしてしまう吃音症や、人と一緒にいると不安や緊張で飲食できなくなる会食不能症(会食恐怖症)、人前でドキドキして顔が赤くなる赤面症(赤面恐怖症)、他者や自分の視線が気になってしまう視線恐怖症なども対人恐怖症ということができます。また、対人恐怖症も神経症のうちです。
神経症
神経症の症状は、通常の心理の中でも起こりうるものですが、症状が過度になると仕事や生活に支障をきたすようになり、そうなると病気として考えるべきでしょう。
神経症という名前がついていますが、神経そのものの疾患ではありませんが、心理・精神的な働きは常に神経の働きでもありますから、神経の働きや状態が悪くなっている状態ともいえます。
神経症には以下のようなものがありますが、多くの症状が重なり、以下のように分類し難い場合も多いです。
不安神経症
全般性不安障害ともいう場合があります。過剰な不安が全般的、持続的にあり、落ち着きなさ、疲れやすい、集中力がない、などの精神症状の他、不眠や自律神経症状を伴うことが多です。
恐怖神経症(恐怖症)
動物(ヘビなど)、昆虫、高所、雷、飛行機などの乗り物、閉所や暗い所、血液、注射、歯科や病院、トンネル・橋などのような特定の対象や状況を避けるために、日常生活にも不都合を生じるようになります。しかし、特定の動物などが怖がる人は他の症状を置き換えており、そのような方はある程度自分の症状を理解・洞察しなくては心理療法には向きません。
抑うつ神経症
気分変調症とも言うことがある。うつ病というほど重症ではありませんが、うつ状態がある程度長く(2年以上)続く場合です。しかし、うつ病とはっきりした区別があるわけではありません。
離人神経症
自分自身や外界に対してごく当たり前に感じている感覚が変化したり、場合によっては無くなってしまう。
ヒステリー
身体面を中心とした転換症状(転換性障害)と、精神面を中心とした解離症状(解離性障害)に分類される
心気症
心気症はささいな心身の不調にこだわり、執拗にとらわれて、重大な病気の徴候ではないかとおびえる。さらに心身の不調や疾病恐怖を周囲の人に訴え続け、実際には病気でなくても医師や他者の言うことも受け入れません。
また、パニック障害、対人恐怖症、会食不能症、吃音症、視線恐怖症、赤面恐怖症、なども神経症ということができます。
自律神経失調症
最近は不定愁訴症候群ということもあります。様々な身体症状が出現しているのに、検査をしても異常はなく、症状は心理的ストレスにより、しばしば動揺することが多いです。
症状としては、全身の倦怠感、疲れやすい、微熱といった全身症状や、頭痛(偏頭痛)、耳鳴り、めまい、筋肉痛、手足の冷え、しびれなどの感覚異常、動悸、息切れなどの呼吸循環器症状、食欲不振、胃のもたれ、腹部不快感、などの消化器症状など、身体の様々な症状があり、腹痛を伴う下痢や便秘を繰り返す、過敏性腸症候群も自律神経失調症といえます。
また、不安やイライラ、不眠、抑うつ気分などの精神症状が伴うことがあります。神経症、うつ病などのほとんどの場合、程度の違いはあれ、自律神経失調症にもなっています。
心身症
身体疾患の発症や経過にストレスや、心理・社会的因子が大きな要因となっており、実際に器質的・機能的な障害がある場合。
外傷後ストレス障害(PTSD)
地震や洪水などの自然災害、戦争や内戦など、大きな事故、他人の変死の目撃、拷問やテロリズム、誘拐、人質、強姦などの犯罪の犠牲になるなど、どんな人でも大きな苦悩を引き起こすような出来事や状況、すなわち極度の心的外傷(トラウマ)によって生ずる。症状としては、神経症・精神病と重なるものが多いです。
|