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2.健全な雨を作ろう
前項で示した、建物まわりに溢れ出る排水や雨水を、何のための資源とし、どのように扱っていけばよいのか考えてみよう。
自然の大地に降った雨水は、染み込んだり、植物に吸収されたり、地表を流れたりしながら、最後には水蒸気となって空に戻り、また雨になる。降った場所から遠く離れた川や海に流れるものもあるが、かなりの量の雨水が降ったその場所から空へ戻る仕組みになっている。
大地に建物を建てるということは、この自然の循環の回路の中に、建物を組み込むことだ。建物が組み込まれることによって、その自然の循環回路が壊されてはならない。
しかし現実には、建物を建てた敷地では、雨水が大地に染み込むことも、空に戻ることもかなり少なくなっている。屋根で受け止めた雨水は、素早く樋の中を流れ、下水道に直結し、敷地から離れた川や海に捨てられる。自然の循環回路とは大きくかけ離れた状況だ。これらは、都市型の水害を引き起こす一因となっており、国の改善策として「総合治水対策」も示されている。
一方で、一般にはクルマの排気ガス等が問題にされているが、建物に付随するさまざまな燃焼機器からも、窒素酸化物や硫黄酸化物などが排出され、雨を汚し、酸性雨の遠因となっている。これらの水害や酸性雨、さらには地球全体の多雨や少雨などの原因に、建物の存在が大きく関わっている。いわば、建物は「不健全な雨をつくってきた」一因といえる。
私達の子孫のためにも、建物を計画しそれをつくる際に、「健全な雨をつくる」ことをしっかりと意識することが重要だ。具体的にその方策を知り、その導入を図らなければならない。これが、われわれの研究の立脚点であった。
「健全な雨をつくる」とは、「本来、自然の大地がもっている『雨水循環』のしくみと同じ性能をもつ建物や建物まわりをつくること」である。建物や建物まわりが「敷地に代わって雨を受け、かりて、かえす」ためには、どのような意識で建物や建物まわりを形成していけばよいのか。それについて示していく。
自然のままの敷地では、雨の恵みによって大地が潤い、そこに生える草花や樹木、地表に暮らす小動物、地中のバクテリア、飛来する鳥たちが生きるための糧となっている。また、それらの生き物たちの新陳代謝を支えるために、盛んに蒸発散が行われている。
この、すべての生き物にとって大切な恵みの雨水を、われわれが「かりる」のだと考えてみよう。「かりる」のだから、「かえす」ことを前提にする。元の状態にしてかえす。無駄にはしない。
すでにあちこちで雨水利用の意識は高まっており、さまざまな形で実践されている。しかし、必ずしも雨水循環を考えたり、大地や空にかえすことまで意識しているとは限らないようだ。雨水を「利用する」といった、消費の感覚を念頭におくのではなく、循環を意識して雨水を「かりる」という姿勢をもつことが大切だ。
敷地内では、「大地」「地表」「空」に、「かえす」ことができる。その関係性は複雑である。われわれが大地に「かえす」ことにより染み込んだ雨水のいくらかは、そこに育つ樹木などが大地から「かりる」ことになる。つまり敷地の樹木は雨水を「かりる」と同時に、大地から空へ蒸散する形で「かえし」ている。「かえす」は常に「かりる」と対になって扱われる。
雨水循環の回路の中で建物が担っていくべきポイントは、これら樹木が示すような、「かりながらかえす」性能である。「かりる」も「かえす」も、われわれの暮らしの多方面に雨水が生かされることを前提にしている。とくに重視したいのは敷地から上手に「空にかえす」ことにある。それらについては次項で述べていこう。
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「健全な雨」のための建物まわりの役割
大きく分けて雨の循環サークルには「健全な雨が降る回路」と「健全な雨水蒸発散の回路」がある。 降った雨を受けることで、「健全な雨水蒸発散の回路」に建物は組み込まれている
総合治水対策
「総合治水対策の推進について(昭和55年5月15日建設事務次官通達)」 この通達では「急激な都市化に伴う洪水流出量の増大等に対して治水上の安全を確保するためには、当面、治水施設の整備を促進するのみならず、流域の開発計画、土地利用計画等と有機的に連携、調整を図る総合的な治水対策を講じる必要がある」といわれており、以降その対策が推進された
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