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3.雨水を空にかえそう

 それぞれの敷地で雨を大地にかえそうという活動が始まっている。しかし現時点では、かえされている総量が多いとは言えない。空へかえそうという意識にいたっては、さらに希薄であり、計画的にはほとんど実施されてきていない。
 空へかえす過程の中には、一旦、大地にかえし、そこから蒸散させたり、植物に吸収されてからかえされるという機構がある。そうした機構への関心や、「空にかえそう」という意識を育て、それを実現する技術を工夫していきたい。
 すでに、雨水浸透貯留技術というものがあり、採用されてきている。これは、降雨時に敷地から雨が、一気に地表や道路、下水管を通って河川等に流れていかないようにする技術をいう。雨水貯留槽、調整池等によって敷地内に一時溜めたり、雨水浸透桝や透水性舗装等によって大地に染み込ませる方法がそれである。
 この技術は、総合治水対策の一環である、雨水流出抑制技術として効果を上げている。しかし、治水効果を上げることが目標であるから、地表面や下水道から河川や海へ流出する量を減らすために、雨を大地にかえす(大地に浸透させる)ことはあっても、空にはほとんどかえしていない。この詳細については、「雨水浸透施設技術指針(案)」((社)雨水貯留浸透技術協会編)を参照されたい。
 雨水利用の技術も多方面で採用されてきている。たとえば、学校や庁舎などでは水の総使用量の約30%を雨水に頼っているところもある。その量に相当する水道使用量が削減されるから、水資源対策には貢献している。しかし下図のように、大半はトイレの洗浄水などに使われているため、下水に捨てられており、敷地内で大地や空にはほとんどかえされていない。
 なかには、雨水を庭や畑などに撒き、大地や空にかえそうという試みもないわけではない。一部の島嶼地方などに残っている昔からの雨水利用のように、使用した後も、敷地内の環境容量を越さない範囲で大地や空へかえしている事例もある。しかし、残念ながら、それらの総量は極めて少ないようだ。




図1
雨を空にかえす考え方のモデル

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 さて、ここで前述の身近な事例と、地球全体という大きな領域のことを一緒に考えてみよう。
 もし、雨や水蒸気によって行われている大気中の対流現象が、地球上に一切存在しなかったら、地球の地表面の平均温度は、現在の15度から29度にまで上がってしまうという。(図2)
 雨水をそれぞれの敷地で、大地だけではなく空にもかえす技術を整理し、それを実践しながら建物を建てることはこれほど重要な意味をもつことなのだ。
 ところが、雨水を空にかえす蒸発散の機構は、じつに多様であり、それらについて総合的に研究していかなければならない。
 たとえば、われわれの糞尿も、微生物達に上手に食べさせると、ほんのひとかけらのミネラル等を残して、すべて二酸化炭素等のガスと水蒸気になって、空にかえせる。また、われわれの体温は、汗が蒸発し空にかえることによって保たれている。人や動植物、さまざまな燃焼機器等、かなり多くのものが蒸発散の機構を有していることに驚かされる。(図3)
 大地に降り注ぐ雨の多くは、このような多様な蒸発散の機構によって空にかえされる。敷地の中にあって、そこから空中にそびえ地表のかなりの部分を覆う建物や建物まわりは、大地に雨水をかえすと同時に、空にかえす部分に、さらに大きく関わることになる。
 したがって、「健全な雨をつくる」ために、建物がどのような雨水を空にかえすかを考えていくことが重要である。大気中にもともと存在していない物質を含んだり、よけいな廃熱などを伴うものであってはいけない。本来の敷地が備えていた蒸発散の仕組みに、できるだけ近い性能をもった、建物や建物まわりをつくっていきたい。
図2
地球表面のエネルギー収支モデル

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図3
さまざまな蒸発散の事例


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