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4.雨水を多段階に生かす

 公害の著しい地域の雨や、初期雨水の混入を除けば、雨水は蒸留水に近いと言われている。雨水をトイレのフラッシュに使うケースはよく見られるが、そんなきれいな水を、糞尿のように養分の多い物質を流し捨てるために使用してしまったのでは、雨水を短い寿命の資源としてしか用いていないことになる。これは最善の方法とは言えない。
 建物が建てられる以前の自然のままの敷地で、雨水がたどる道筋は、極めて複雑であり多段階になっている。そこに育っている植物の葉が雨を受け、その滴を下草が受ける。下草の下の落ち葉がそれを保ち、さらにその下の土や微生物が保ち、余った雨水が下流の土地に流れていく。これらの仕組みから学ぶべきことは非常に多い。
 かつては私達も水を段階的に使う文化をもっていた。たとえば、一番きれいな水を上がり湯として取り置いて、一番風呂二番風呂と家族が順番に使い、その後、残り湯を洗濯に使うといった習慣はその好例だ。
 今日まで、水循環のシステムは、水の「量」を単位に把握され、計画されてきている。何トン分のダムが必要で、河川に何トン、水道と農業用に何トン分配するか、排水は下水道と河川で、それぞれ何トン受けもつか、という考え方であった。しかし、雨を多段階に生かすという考え方を数値で表現するためには、今までの「量」の単位は、まったく役に立たない。ここで必要なのは、「量」ではなく「質」を数値化した単位であり、その単位を用いて水循環のシステムを「養分循環」としてとらえていく方法である。
 上空の雨は、ほとんど蒸留水に近い水だ。したがってほとんど養分というものを含んでいない。それが空気中の汚れを吸って養分を増す。さらに大地に降って地表を流れると、さまざまな養分を拾い集め、それを増やしていく。生き物が体内に水分として取り込めば、食べ物と共に消化され、排泄物となってかなり養分が増加する。川に流れ込めば、下流へいくほどにさらに養分が加わり、海の水は極めて多様な養分を含むようになる。
 一方で、生き物の排泄物や植物の腐敗物など、濃度の濃い養分は、微生物により濃度が薄められ植物に吸収される。植物が体内に取り込んだ後、葉や大地、あるいは海や川の水面から蒸発し、ほとんど養分を含まなくなる。このように、一度増えた養分がまた減って、それが雨になるという複雑な「養分循環」があるのだ。
 この「養分循環」は「エネルギーの資源性循環」としてとらえることも可能になっている。地球全体の資源は有効に使いたいが、そのためには、地球規模でめぐる雨の循環の、それぞれの段階における「資源性」を無駄にしてはならない。
 「雨を多段階に生かす」とは、その無駄をつくらないシステムを実現するコンセプトである。このシステムを語っていくためには、どうしてもその「量」ではなく「質」の領域に触れなければならない。この難しい領域を理解しやすくするためには、循環において、ある段階がどんな資源性をもち、次の段階ではそれがどの程度減っているか等を、数値化できる技術の発展が極めて重要である。
 「多段階に生かす」ことは、排水までのタイムラグをつくるので、「ゆっくり流す」という結果を生じさせる。これは総合治水対策の一部にも見られる視点である。
 この本で触れてきている「雨水の循環」とは、建物内や地域内で、トイレの汚水を再びトイレの洗浄用水に用いて循環させるような、閉鎖系の循環とは異なり、空にかえる雨水までを含めた開放系の循環である。多段階のフローを示す現象は、開放系循環の一つの特色ということができる。

 

 

初期雨水
降り始めてから2〜3mmの降水量の雨水を指していう。この間の雨水は大気や屋根、壁面などの建物の汚れを含んでいるため、雨水利用する場合には使用範囲が限られる


雨のたどる道すじにおける段階的な養分量の変化を示すモデル図

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建物まわりの雨コントロールに期待される効果

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