デフォルト標準装備のV7を基本として、セカンダリー・ドミナントとしてII7、I7、III7とやってきましたが、今回はVI7を取り上げようと思います。
VI7というコードは、Key:CであればA7なのですが、その出所が下属調(Key:Cから見たKey:F)の平行短調であるDmということになります。ちょっと変なところから持ち出すコードですけれも、ジャズにおいては平気な顔をして使われるコードの一つです。
普通の曲に慣れていると、VI7が登場したときに「えぇっ?」と思うことでしょう。しかしながら、このVI7の力は想像以上に大きく、まるで曲全体が大人びた感じになります。VI7は原則IIm7に進みます。次のIIm7→V7という流れを強調したい場合にVI7を用いると効果的でしょう。
本来VImがいる位置にVI7を配置すると、全体的に大人っぽい雰囲気を持つようになる、これがVI7の肝です。
「We Are Starting Over」のAメロや「Winter Comes Around」のBメロで実際に使われているパターン。IIIm7→VI7というのがこの進行の肝で、(この部分が見事にツーファイブしているせい)第1の盛り上がりをこの部分で表し、次のIIm7→V7の流れをより美しくする効果を持っています。「Winter Comes Around」では、IImから直接V7に進まず、一旦IVやIVmをはさむことで、ダイナミックではなく、静かに進んでいく感じを作り上げています。
「We Are Starting Over」 Aメロ (key:C)
{C・Em7|F・G|Em7・A7|Dm7・Gsus4,G|}×2
「Winter Comes Around」 Bメロ (Key:F)
Am7・D7|Gm7|B♭(onC)・C7|Fsus4・F|Am7・D7|Gm7|B♭m(onA♭)|B♭(onC)・C
もとはIIIm7→VIm→IIm7→V7、という形だったのですが、片っ端からセカンダリー・ドミナントを組み込んで複雑にした形。全てのセカンダリードミナントがIIIm→VI7、VI7→IIm7、II7→V7のように完全4度上のコードに進み、どっしりした安定感を持っているのが特徴です。III7のために若干雰囲気がマイナーっぽい感じですが、最後のV7から長調の明るい進行に持ち込むことで、この部分が引き立ちます。
セカンダリー・ドミナントは、全て強調したいコードの直前に補助的に挿入されます。このように、特定のコードを呼ぶために挿入されるコードを前置和音といいます。Xsus4→X、というパターンのXsus4も前置和音の一種です。また、進行のルールに一見即していないコードは、たいていこの前置和音だ、と考えていいでしょう。
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さて、I7、II7、III7、V7、VI7とやっていくと、ある疑問にぶつかることでしょう。「1、2、3、5、6はあるのに4と7はセカンダリードミナントがないのかな?」と。
結論から言ってしまえば、この2つにもセカンダリー・ドミナント形があります。
まずVII7ですけれども、当然のごとく完全4度上(完全5度下)のIIImに進もうとする習性があります。でも、もともとVIIのコード(ダイアトニックではVIIm7(-5))は長調を暗くしてしまいがちで使用頻度が極端に低い(使わないわけではない)ため、VII7もまたそんなに使用頻度が高いわけではありません。どうしてもIIImを際立たせる用事(一時的な転調など)がない限り、無理に使わないほうがいいかもしれません。
で、IV7ですけれども、これはブルースと呼ばれる曲においては多用されます。ブルースというのは12小節を1コーラスとして扱う形式なのですが、各コードが全てドミナントセブンスであるのが特徴です。具体的には以下のようなパターンで演奏されます。
| I7 | I7(or IV7) | I7 | I7 |
| IV7 | IV7 | I7 | I7 |
| V7 | IV7 | I7 | I7(or V7) |
このパターンをそのまま使ってメロディを乗っけたり、部分的に繰り返して小節数を増やしたり、更にはロックやファンクなどのリズムを用いたりと、このパターンは応用が利きますので、覚えておいて損はないでしょう。ただし、ポップスでIV7が登場することはあまりないので注意。
IV7は本来ならば完全4度上のコード(=♭VII)に向かいたがる性質を持っているのですが、♭VIIはダイアトニックコードではないため、どこにいっていいか路頭に迷うことになります。しかし、IV7は実はVII7の裏コード(裏コードについては第7回・ドミナントセブンス参照のこと)なので、VII7と同様にIIImに進もうとする力を持っています。
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長調編の最後は、ディミニッシュコードとオーグメントコードを取り上げます。この二つのコードは間違いなくダイアトニックコード外ですが、あるコードが別なコードに進もうとするときに、その間の微妙な空白を埋める目的で使われます。このような隙間うめのためのコードを経過和音といいます。

実はディミニッシュ・セブンスコードは3種類しかありません。というのは、音程の関係上転回形が他の音をルートにしたディミニッシュ・セブンスコードになってしまうからです。具体的にいえば、次のようになります。
ディミニッシュを経過和音として用いた進行は、構成音が半音ずれる動きをするのが特徴です。主な進行例としては、以下のようなものが挙げられます。
ルートが半音ずれて進行するパターン。I→Imaj7→♯Idim7→IIm7とすると、1→7→♭7→6という流れも生まれます。
この2つは、IV→VやIV→Iなど、全音単位で進むコード進行において、半音ずらす感じでディミニッシュ・セブンスを挿入した形。上のパターンが「We Are Starting Over」のサビで(key:Cで、F・C(onE)→D♯dim7(≒F♯dim7)・G)使われています。
Iが続くようなパターンで、3rdと5thを半音ずつずらして、ちょっとした違和感を出すパターン。「We Are Starting Over」のエンディングや「Feel Like Dance」(globe)の間奏1回目に実装。
このほかにもいろいろなパターンが考えられますし、各和音を転回形にして別ルートのディミニッシュ・セブンスにしてもOKです。
オーグメントを用いるパターンは、通常Iのコードのみです。Iから他の和音(I6など)に進む際に、一時的にIaugという形をとり、そのあんまり安定していない響きで隙間を埋め、次のコードへ続いていく、というパターンなどがありますが、詳細はここでは割愛します。クリシェラインで用いることが多いので、クリシェやペダルポイントを用いるパターンを解説している第8回に譲ります。