前回は長調のテンションについてまとめてみましたが、短調でもテンションノートの定義(コード構成音の(原則として)全音上で(但し7thの全音上は考えない)、なおかつその音階の所属音で、コードに一定の変化や緊張感を与える音)は全く同じです。
それと、もう一つ補足。本当はテンションノートを考える上で「アヴェイラブル・ノート・スケール(available note scale)」というものを考えなければならないのですが、この議論をするとテンションがますます分からなくなる恐れが高いので、あえて議論を避けることにします。この議論はチャーチモードとある程度深い関係があるのですが、そこまで語ると議論が際限なくなってしまうので、興味がある人はポピュラーミュージックの理論書やジャズ理論などを片っ端から読み漁ってみてください。
さて、今回の議論ですが、長調をト長調でやったので、短調は長調の場合と比較しやすいように同主調のト短調でやることにします。今度はギターの人もピアノの人もごめんなさい。十三湖のシジミ貝が2つ付くだけでえらく弾きづらくなってしまいましたが、その辺はカポタストなり全音上げる移調(イ短調にする)でカバーしてください(^^; ところが短調の場合、自然短音階、和声短音階、旋律短音階と3つもあるからたまったもんじゃありません。そのせいで画像がごちゃごちゃしてますがご勘弁のほどを。
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まずは、3種類のト短調から見ていきましょう。
| 自然短音階 (natural minor scale:以下nm) | ![]() |
|---|---|
| 和声短音階 (harmonic minor scale:以下hm) | ![]() |
| 旋律短音階 (melodic minor scale:以下mm) | ![]() |
| nm | hm | mm |
|---|---|---|
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基本的には9thと11thを使うことが出来ます。9thならちょっと悲壮な感じ、11thならどっちつかずの中途半端な性格になります。ちなみに旋律短音階では13thも使えるには使えるのですが、これに関してはIm6扱いだと考えたほうがいいでしょう。
| nm | hm | mm |
|---|---|---|
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3つの音階上で問題なく使えるのは11thのみですが、とりあえずこのコードは次にV7を期待させるコードなので、11thのみで十分でしょう。無理にテンションコードにする必要性はあまり感じられませんし。
| nm | hm | mm |
|---|---|---|
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問題なく使えるのは9thのみですが、この9thは使い過ぎると主役のImを喰ってしまう勢いになりかねないので程々に。まして、特定の条件下で使える♯11thや13thなどはなおさらです。あくまでも♭IIIは短調では脇役だということをお忘れなく。
オーグメントコードの場合、第5音が半音上がるので、当然その全音上の13度も増13度(♯13th=♯6th)になります……が、この♯6th、見方を変えれば短7度に相当するので、実際はXaug(+13)という書き方をせず、X7augという書き方をすることが多いようです。
| nm | hm | mm |
|---|---|---|
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全てに共通して使えるのは9thと13th、そして自然短音階上でのみ11thが使えます。割に自由にテンションを使っていいコードです。ただ、IVm7上で13thを使う場合、第7音とテンションの13thが半音でかち合うのでものすごく汚くなりますので注意が必要です。
なお、「ロックマン」のワイリーステージ・ボス戦のBGMでは、Dmadd9〜Gmadd9(Key:Dm)というImadd9〜IVmadd9を4小節単位で延々と繰り返すパターンが使われています。これは要チェックでしょう。
| nm | hm,mm | |
|---|---|---|
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ナチュラルマイナーでは11thのみテンションとして使われますが、それ以外の場合はこれがドミナントセブンスになります。短調の場合、V7のテンションにはマイナーであることを強調するために、テンションの定義から外れるものの音階構成音である♭9th、♭13thを使うことが多いようです。
無論、その部分だけ転調させてわざと長調にしてやるんだー、という場合や、もっと派手にやりたい、ビシッと決めたい、という場合には、被らない範囲でテンションを自由に使うことが出来ます。
| nm | hm | mm |
|---|---|---|
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原則として自然・和声に出てくるメジャーコードには♯11thと13th(自然にはそれに加えて9th)、旋律短音階で出てくるマイナーセブンス・フラットファイブでは9th、11th、♭13thがテンションになります……が、このコードも♭III同様脇役なので、あまりベタベタテンションをつけないほうがいいでしょう。
| nm | hm | mm |
|---|---|---|
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自然短音階の場合は9thと13thのみテンションです。このコードはドミナントセブンスの形をしていますが、あくまでも平行長調のドミナントセブンスなので、このコードにテンションをつけて強調するのは調性を壊しかねないのであまりお勧めできません。
一方、自然短音階と比べてルートが半音上がっている和声短音階・旋律短音階の場合は♭13thのみテンション……ですが、長調の場合と同様、よく見るとドミナントセブンスの転回形になっているので、VII度のコードのテンションだと考えず、V7の転回形だ、ぐらいに考えたほうが分かりやすいでしょう。。
なお、ディミニッシュのテンションも「コード構成音の全音上で、なおかつそのコードが使われている調の音階の所属音」であることに変わりありません。たまたまVIIdimは♭13thしかありませんでしたが、経過和音としてディミニッシュを使う場合はテンションがもっとある場合もあります。
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長調の場合に比べて、音階そのものが3つあるだけに複雑怪奇な短調のテンションですが、実際に音を鳴らしてみて、「あ、このテンションはいける」とか「あ、こりゃ合わない」というのを確認しないと実用的ではありません。
ここで挙げたのはあくまで「とりあえずこれはテンションとしてまだオッケーだろう」というものに過ぎませんので、実際にどのテンションが合うか・合わないかは、メロディーラインやその曲の情景などに左右されます。特に短調のテンションは合うか合わないか分かりにくいし、またもともとコード理論が長調用に作られたものであることを考えると、やはりいくらかの矛盾点が生じてしまうのはやむをえません。その辺を押さえておきつつ、自分なりに「オレ式」を見つけてみることが大切です。
最後に、一つだけこのことを述べて、テンションノートの項を締めたいと思います。
過ぎたるは及ばざるが如し
時々使うからテンションは効果的なのです。