第10話、「クリフト、今回はお前に任す(笑)」
〜チャーチモードのお話〜

 前述の『Seven Days Wa』という曲、第7小節の「乗り越えて行くこと」の部分が、妙に悲痛な叫び声に聞こえたという方も多いことでしょう。実は、この部分にはある「特殊な音階」が使われています。

 また音階の話で恐縮ですが、これから作曲を心がける方に限らず、一応耳にしておくと音楽の聴き方が変わるかもしれません(保証は出来ませんが…)。

 

 ここで使われている音階は、「チャーチ・モード」の中の「ドリアン」と呼ばれているものです。念のためお断りしておきますけど、ドリアンと言ってもあのくっさ〜〜〜い果物とは何ら関係がありませんし、ましてチキンライスの上にホワイトソースをかけてチーズをふりかけてオーブンで焼き色をつけたアレでは決してありません(笑)

 まあ、チャーチって言うくらいなので、教会に関係があるというのはご想像に難くないと思います。これは、中世から16世紀にかけてヨーロッパ音楽の基調となっていた教会音楽の音組織で、特にグレゴリオ聖歌によって体系化されたものです…といっても敬虔なクリスチャンでもない限り聖歌なんてそうそう聴きませんから、日本人にはいまいちピンと来ないでしょうけど…(まあ、こんなこと書いてる私も無信仰なんでピンと来ません)。でも、現代音楽ではよく用いられていますし、ジャズの世界ではしょっちゅう出てきますから、無意識のうちに耳に馴染んでいるのかもしれません。

 で、その歴史については…長いので省略します(爆)が、ここでチェックしておくべきは、現在使われている「チャーチモード」は、「教会旋法」そのままではなく、新しく編成し直したものです。

 で、その「チャーチモード」、全部で7種類あります。まず、いわゆるハ長調のドレミファ…を思い出して下さい。ハ長調は、ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シの7音から出来ています。コレを真面目に「ド」から始めれば普通の長音階になる…のですが、「ド」以外の音から始めると、また違った響きの音階が出来あがります。こうして出来たものが「チャーチ・モード」だと思って下さい(下表参照・大きさがガッタピシなのは気になさらずに)。

アイオニアン『ド』から始める
 …アイオニアン(Ionian)

 =メジャースケールに一致
ドリアン 『レ』から始める
 …ドリアン(Dorian)
フリジアン『ミ』から始める
 …フリジアン(Phrigian)
リディアン『ファ』から始める
 …リディアン(Lydian)
ミクソリディアン『ソ』から始める
 …ミクソリディアン(Mixolydian)
エオリアン『ラ』から始める
 …エオリアン(Aeorian)

 =ナチュラルマイナースケールに一致
ロクリアン『シ』から始める
 …ロクリアン(Locrian)

 始まる音がバラバラなのが原因でしょうか、何だかごちゃごちゃして分かりにくいので、全部Cの音で始まるように書き直してみました。なお、チャーチモードにも、実はメジャー系(長音階系)とマイナー系(短音階系)が存在します。それも一緒にどうぞ。

C-IonianC-Ionian
(=Major Scale)
長音階系
C-DorianC-Dorian短音階系
C-PhrigianC-Phrigian短音階系
C-LydianC-Lydian長音階系
C-MixolydianC-Mixolydian長音階系
C-AeorianC-Aeorian
(=Natural Minor Scale)
短音階系
C-LocrianC-Locrian短音階系

 …今度は「短音階系」の4つがすごく見づらいので、短音階系の「ドリアン」「フリジアン」「エオリアン」「ロクリアン」だけ、A音から始まるように書き換えてみました。

ドリアンA-Dorian
フリジアンA-phrigian
エオリアン
(Aマイナー)
A-Aeorian(=A minor)
ロクリアンA-Locrian
<参考>
アイオニアン

(Aメジャー)
A-Ionian(=A major)

 要するに、まとめると次のような感じになります。

 で、ドリアン(くどいけど、あの激臭封印的果物にあらず!!)の話。このドリアンという音階の最大の特徴は、第6音と第7音の間に出来る半音の関係。それを活かしたのが、この『Seven Days War』の「割れたガラスの破片、机の上のナイフの傷…」の部分。

 この部分、キーはFマイナーなのですが、第6音に当たるD音が半音上がってDになっています(=ドリアンスケール化)。何かに縛られ、もがき苦しんでいる様子を歌詞とともに伝えてくるのは、実はドリアンの特異な響きなのでした。


 ところでこのドリアンに限らず、チャーチモード、「聴かせ所」で使うというのは当たり前ですが、あまり使い過ぎると、凄まじくくどくなってしまうので要注意です。

 また、TMの曲で他にチャーチモードを使っている曲は…ありましたよ。『All-Right All-Night』のイントロに、ミクソリディアンが使われています。ここのキーはCメジャーなのですが、なぜかBが入ってます(しかもコードで)。あとは…探してみます(滅)