どうも、こういう文章で「です・ます」調ってのはやりにくいので、今回もまた常体でやらしてもらいます。昔っからそうなんですけど、どうしても書き言葉で語り口がですます調ってのは、どうもしっくりこないというか、子供っぽいような感じがして苦手なもので…。
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ここに『Just One Victory(たった一つの勝利)』という曲がある。この曲が今回の主役である。ご多分に漏れず、この曲もまたイントロが長い。q=120で20小節ということは、40秒がイントロである。
それはまあいいとして、この曲の面白いところはベースラインだ。それを具体的に見ていこう。
問題のベースラインが出てくるのは、ヴォーカルが入ってすぐのことである。第1テーマの基本的なキーはBメジャー(正確に言えばB-ミクソリディアン)である。問題の部分を書き出してみた。
| 1 | B7 Bsus4 | B7 Bsus4 B7 Bsus4 B7 | B7 Bsus4 | B7 Bsus4 B7 Bsus4 B7 |
|---|---|---|---|---|
| We've (中略) | groovy night! | 今宵満ち | 足りた 時が | |
| 2 | B7/E AM9/E | EM9 Aadd9/E A69/E EM9 | B7/C♯ A | A |
| 今 | 訪れる | Wow wow wow | wow wow | |
あることに気がつかれただろう。1の部分では、音階の主音であるBがずっとベース音で、2の部分のうち前半2小節では、第4音のEがずっとベース音を奏でている。そして、どちらの部分でも、ベースが安定していると同時に、上のコードはころころと変わっているのだ。
このように、「ある一定の区間、コードそのものが変わっているのに、ベースの音が不変である」というテクニックのことを『ペダルポイント』という。前回お話した『ライン・クリシェ』の逆のパターンだと思って貰えれば分かりやすい。元々はオルガンの足鍵盤に由来するテクニックで、バロック時代の作曲家で、オルガン曲の名手であるバッハの曲にもこのコード進行が見られる。そのため、またの名をドイツ語で「オルゲルプンクト(Orgelpunkt)」という。管理人は第2外国語でドイツ語を取っていないので、この辺は詳しく知らないのだが…。
ただし、ライン・クリシェと違い、この「ペダルポイント」というのはベースにしか使われない。どの音に適用してもいいのだが、よく使われるのは音階の主音(つまり、長調ならド、短調ならラ)、もしくは第5音(長調ならソ、短調ならミ)に使うことが多い。前者を「トニック・ペダルポイント」といい、後者を「ドミナント・ペダルポイント」という。
この曲では、テーマ1が計4回出てくるのだが、その全てにこれと全く同じ形が出てくる。このテクニックが目指すものは「安定性」である。とにかく最低音がコロコロと変わらないので、聴く方は落ち着いて聴くことが出来るのだ。それにこの曲のテーマは「勝利」。勝つためにはやはり基本(Basis)が大事であることは言うまでもない。そのBasisに通ずるBassがしっかりしていないと、この曲は聴くに耐えないものになってしまうだろう。
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ところで、この曲はちょっと変わっている曲で、曲の間奏で全く別の曲がリミックスで入ってくる。具体的に言うと『Chase in Labyrinth(闇のラビリンス)』という曲なのだが(注:『Chase in Labyrinth(闇のラビリンス)』を書いたのは木根尚登。『Just One Victory(たった一つの勝利)』は小室哲哉作曲)、興味深いことに、この曲にもペダルポイントが使われている。どちらもアルバム『CAROL』に収録されているので、ぜひ自分の耳で聞いて確かめていただきたい。
『Chase in Labyrinth(闇のラビリンス)』、リミックスとはいえキーが変わっているとかそういうワケではなく、元のままである。肝心のキーはFメジャーであるが、よく見るとB♭やCのコードでFがベースになっているのがお分かりいただけるだろう。
| F F6 | B♭/F C/F | F F6 | B♭/F C/F |
| 闇のラビ | リンス ドア | から ドア | 駆け抜け |
| F F6 | B♭ C | F F6 | B♭ C |
| 崩れ落ち | て来る 壁 | から 壁 | くぐって |
| F Fmaj9 F | B♭ C | F Fmaj9 F | B♭/F C/F |
| 背中に迫る | あの声に 振り向 | かずに | キャロル |
| F Fmaj9 F | B♭/F C/F | E♭ C/D | D♭ |
| 奪われた僕ら | のメロディ 取りも | どすのさいつか 2人 | ならば怖く… |
…16小節めのコードがD♭になっているが、要するに同主短調であるFマイナーから失敬してきたコードである。この辺の話はコード理論でゆっくりやるので、乞うご期待(←待て)
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この他にも、TMの曲でこのテクニックを使っている曲は結構ある。『WILD HEAVEN』の間奏などもそうだし(トニック・ペダルポイント、B音による)、『RESISTANCE』の第2テーマにもこれが見られる(トニック・ペダルポイント、A音による)。他にも、『All‐Right All-Night』の第1テーマ(トニック・ペダルポイント、C音による)、『Nervous』(トニック・ペダルポイント、D音による)などの例もある。
それだけではない。このテクニックが多用されているアーティストがもう一人いる。ベースの対極に位置するような高い声の持ち主だといえば見当はつくだろう。そう、華原朋美である。私がちょっと確認してみたところ、少なくとも『I Believe』、『Keep yourself alive』、『Save your Dream』(全てトニック・ペダルポイントが使われている。それぞれF♯、D、C音による。ちなみに最初の部分のキーはそれぞれF♯マイナー、Dマイナー、Cメジャー。最初の2曲は最後に半音上のキーに転調する。)の3曲で確認されている。華原朋美クラスの高音になると、低音が不安定に動くとかえって耳障りなので、ベースを動かさずに安定感を出そうとしたが故の試みなのだろう。
最後にもう一つ。実はライン・クリシェとペダルポイントをどちらも使っている曲がある。『8月の長い夜』という曲である。この曲の第1テーマ、及び第2テーマにおける基本的なキーはF♯マイナーである。よく見なくても、2つのテクニックが上手く使い分けられているのがお分かりいただけるだろう。
| Bm BmM7 | Bm7 E7 | F♯m7/C♯ C♯m7 | F♯m7/C♯ C♯m7 |
| 君の声が | 泣いている | 8月のな | がい夜 |
| あいつのことを | 話してる | 8月のな | がい夜 |
| ライン・クリシェ | ドミナント・ペダルポイント | ||
| (中略) | |||
| Bm7 BmM7/B♭ | Bm7/A E/G♯ | E | E |
| 君の姿 | 浮かべる | - | Please Be Only One |
| ライン・クリシェ | - | - | |