第14話、ヴォーカリスト宇都宮隆の底力
〜声域の話〜

 やっぱり常体でないと気持ちが悪いので、今回も常体で書きます。

 TMのヴォーカルとしてその名を轟かせる、宇都宮隆。氏の歌声は、木根尚登をして「ガラス細工みたいな美しい声」(木根尚登[1993]『A TREE OF TIME』、ソニーマガジンズより引用)と言わしめるほどである。その美しさは高音域においてよりはっきりとする。か〜〜な〜〜り高い音でも、シャウトすることなく平気で出してしまう。恐らく今の日本でも数少ない、シャウトしないヴォーカリストであるといってもいいだろう。

 今回は、その声域について見ていきましょう。

 

宇都宮隆の声域:G1〜B3

 宇都宮隆の声域について調べるべく、スコアとにらめっこして検討してみた結果、声域は左のような感じになる(ただし、男性ヴォーカルの場合は記譜音よりも1オクターブ下で歌うことになっている。上の音域は記譜音で書いてある) 数えてみれば分かるが、2オクターブとちょっとである。

 これが他のアーティストと比較して狭いか広いかは置いといて、少なくとも我々のように特別のヴォイストレーニングを受けていない人間が、左の音域の音を、シャウトせずにちゃんと出せたら大した物である。私みたいに、ドスの効いた太い低音がウリ(?)の人間でなくても、たいていの人は1オクターブ程度で参ってしまうだろう。

 もっとも、宇都宮隆がいつもこのレベルの音域をこなしているのかというと、当然だがそうではない。これは50曲程度を調べた結果のまとめであるから、個々の曲の音域はこんなに広くない。実際に事例を見てみよう。

1、Your Songの場合

「Your Song」における宇都宮隆の声域

 声域:F2〜B3(1オクターブ+増4度*1

 初期の作品だが、この頃からもう音域の広さが明らかになっていた。特に、最高音のBやBが出てくるところが特徴。この域になると、宇都宮隆といえどさすがに裏声(に近いもの)を使っているが、幸いなことに、この最高音が出てくるのは全部で4回なので、無理すれば私たちでも完璧に歌えないこともない。もっとも私は無理だが(音域狭い&ドスの効いた低音) とはいえ、至難の技であることは言うまでもない。

2、This Nightの場合

「This Night」における宇都宮隆の声域

 声域:A2〜F3(長6度*1

 …と思ったら、こちらは声域が意外に狭い曲。逆に、これだけの少ない音で構成されているからこそ、宇都宮隆の美声を堪能することが出来るとも言えるが…。旋律に関して言えば、シンセサイザー中心のサウンド、空間をイメージさせるようなロングトーンの使い方などがあり、その中で流れるような旋律が、ヴォーカルによって奏でられている。

 しかし、この曲はヴォーカルが狭い代わりに、ベースが広い。下がそのベースの音域なのだが…広い。およそ3オクターブというのは異常なまでに広いし、それに加えて最低音のAが…普通の4弦ベースどころか、Low‐B*2の5弦ベースですら出せない音であるってんだから…。

「This Night」のベースの音程(実音で記譜)

 

…ネタが無い…。忙しい…。というわけで、次回以降このコーナーで何を書きゃいいかってのを今探しています。やっぱりそろそろコードの話をしろっていう、神の思し召しなのだろうか…?

Appendix
*1 Low-B 5弦ベースには2種類あり、1つは第4弦よりももっと低い音が出る第5弦(開放弦はB音)を追加したもの、もう1つは1弦よりも高い音の出る第0弦(? 開放弦はC音)を追加したもので、前者をLow‐B、後者をHigh‐Cと言う。前者の第5弦の5フレットが通常の4弦ベースの最低音である4弦開放(E)に相当し、後者の第0弦開放が4弦ベースの第1弦(開放G音)5フレットに相当する。

 なお、ホントに第0弦と呼ぶかどうかは定かではない。ついでに言うと、「開放」と言うのは、フレット(ベースとかギターの押さえるトコについている目盛みたいなもん)を押さえないで弾くこと。
*2 増4度、長6度 これらについてはコード理論第1回をご覧頂いた方が手っ取り早い。

 ちなみに、2002年秋に発覚したのだが、再結成後の「Message」という曲ではもっと声域が広く、G1〜A3までの2オクターブ強を見事に歌い上げている。もう参ったとしか言いようがないね、コイツァ。多分この曲が最高の声域を誇ると思ふ…。