第7話、TM楽曲の必殺技その1
〜転調の全て…のうちいくつか(笑)〜

 小室哲哉の楽曲と言えば…そう、転調です。そのため、TMの曲には、ほぼ間違いなく転調が入ります。しかし、そのパターンが必ずしもいい加減であるとは限らず、むしろ一定の法則がそこにはあります。

 そこで、今回は、この「転調」という概念について突っ込んだ解説をしていこうと思います。これから作曲をしてみたいと思っている人、あるいは楽器を演奏してみたいという人だけでなく、音楽が大好きだという人全てに聴いていただきたいですね、こちらとしては。では、行きます!

 ついでに断っておきますが、「転調」と「移調」は、全くの別物です。今回話するのは前者ですが、一応後者について説明。
 「移調」とは、曲全体の調を、そっくりそのままの音程関係で平行移動させるものです。つまり全部変えると、こういうワケです。もっと早い話、作曲者がやるのが「転調」で、歌う方や編曲者が、できあがった曲の調を変えるのが「移調」とでもしてくださいな。

 

 まず、その前に、調というものは何かについて解説しておきましょう。ここをご覧下さい…って、手抜きも甚だしいですね…。まあ、一回書いたことですし…。

 それでは転調パターン分析を…と行きたいトコですが、その前に、実は一見したところバラバラなパターンを持ってそうな調ですが、実は親しい調と、あまり親しくない調とがあるのです。親しい長のことを「近親調」、親しくない調を「遠隔調」などといったりします。まずはそれら「近親調」についての説明から…。

1、同主調

 同主調とは、簡単に言えば、同じ音を基準にして作られているメジャーキー(長調)とマイナーキー(短調)の組です。例えば、CメジャーとCマイナーとかの組ですね。

 この組だと、音域を変えることなく、曲の雰囲気を変えることができます。ちなみに、一般にメジャーキーは明るい感じ、マイナーキーは暗い感じになります。

 で、同じ主音(基準になる音)のメジャーとマイナーですが、どこが違うかといいますと、3番目、6番目、そして7番目の音が違っています。例えば前述のCメジャーの場合、調号(一番左端についている、♯や♭の集まり)に、♯も♭も付いていませんが、Cマイナーだと3、6、7番目の音(ミ、ラ、シ)に♭が付いています。逆に、AマイナーとAメジャーの場合ですが、Aマイナーだと何もつきません。一方のAメジャーだと、3、6、7番目の音(Cメジャーで言うところのド、ファ、ソ)に♯が付いています。

2、平行調

 平行調というのは、同じ調号(調号については前述を参照のこと)を持つメジャーキーとマイナーキーの組です。例えば、CメジャーとAマイナー(共に調号なし)、BメジャーとG♯マイナーという組み合わせです。

 この組だと、音域は少し変わりますが、調号が同じなので、構成している音が全く同じになります。従って、非常に自然に移動することができます。フッと聴いただけでは転調したことに気づかなかったりして…。

3、下属調

 下属調とは、う〜〜んと分かりやすく言えば、♯が一つ少ない調、もしくは♭が一つ多い調ということになります(♯や♭の数と調名に関しては、第4回、もしくは下のループ表、または「コード理論第6回」も参照下さい)。ただし、これに関しては長調同士、短調同士の組み合わせになるので悪しからず。具体的に言うなら、Cメジャーから見たFメジャー、Dマイナーから見たGマイナーとかですね。

4、属調

 属調とは、下属調とは逆に、、♯が一つ多い調、もしくは♭が一つ少ない調ということになります。これに関しても長調同士、短調同士の組み合わせになりますので注意。具体的に言うなら、Cメジャーから見たGメジャー、Eマイナーから見たBマイナーとかですね。

 なお、属調と下属調は、常に表裏一体になっています。詰まり、Cメジャーから見たFメジャーは下属調ですが、逆にFメジャーから見たCメジャーは属調となります。

以下に、調同士の関係図を書いておきましょう (注:表はループしてます。詳しくは「コード理論序論」「コード理論第6回」もご参照下さい)。

メジャーキーAC
(D
F
(G
BEADGCFBEADG
(F
C
(B)
E
調号の数--♯7♯6♯5♯4♯3♯2♯10♭1♭2♭3♭4♭5♭6♭7--
マイナーキーFA
(B
D
(E
GCFBEADGCFBE
(D
A
(G
C

<この図についての説明>

 

 では、いよいよTMの曲の転調パターンについて分析してみよう。

 TMの曲には、主に次のような転調が見られる。

  1. 半音上のキーに転調
  2. 同主調に転調
  3. 平行調に転調
  4. 同主調の平行調に転調
  5. 平行調の同主調に転調
  6. その他、型にはまりきらないタイプ

1、半音上のキーに転調

 小室系音楽にはつきものの必殺技。当然TMの曲にもたくさん見られます。いきなりこれをやっちゃうのは、やはり「いかにも」って感じだからです。

 具体的にどういう状況で出てくるかということを述べますと、一旦サビに入った後、同じサビを半音上げて歌うというパターンが圧倒的です。これによる効果は、締めのテンションを格段に上げるというもの。サビの興奮状態を更にアップさせ、爽快感を高めるのが狙いです。

<最後の最後で半音上がる具体例>

 このパターンはTMのみならず、他の小室哲哉作曲のアーティストの楽曲にも見られる。有名所でいうなら、TRFの「BOY MEETS GIRL(Eメジャー → Fメジャー)」や、華原朋美の「Keep yourself alive(Fメジャー → Fメジャー)」などが挙げられる。

 また、同じ「半音上のキーに」というパターンでも、最後のサビだけでなく、全てのサビで半音上のキーに転調するとか、あるいは曲の途中でこれをやるとまた違う響きになります。

 サビに入った途端に半音上のキーになる例としては、「BE TOGETHER」が挙げられます。

 で、曲の途中で半音上のキーに転調する例は…後でゆっくりと…。

2、同主調に転調

 同主調に転調するというのは、声域は変わらないのに、突然曲が暗く(もしくは明るく)なるので、一瞬戸惑うものですが、さっきも紹介した通り、歌モノではよく用いられます。

 案外TMの曲にも見られますが、それが表立って出てこないのがTMの曲の場合だったりします。

<具体例>……「All-Right All-Night」

 この曲の場合キーは…

曲の箇所キー
(イントロ)Cメジャー(厳密にはちと違う)
「地上に向けて…」×2Cメジャー
「遥かなあの空に…」Cマイナー(厳密にはちと違う)
「All-Right…」 (サビ)Aメジャー
(間奏→イントロ繰り返し)Aマイナー → Cメジャー
「地上に向けて…」Cメジャー
「海の向こうから…」Cマイナー(厳密にはちと違う)
「All-Right…」 (サビ)Aメジャー
(間奏・その2→イントロ繰り返し)Aマイナー → Cメジャー
「All-Right…」 (サビ)Aメジャー
「All-Right…」 (コーダ部分)B♭メジャー

となっていて、このうち同主調に移調している部分がトータル2箇所出てきますね。オマケに最後の最後で、1の「半音上のキーに」が出てきてますし。ですが、このうちCマイナーの部分は、コード進行が A→B→Gm→Cと、完全な形のCマイナーではなかったりします。完全なCマイナーなら、CのコードがCmのコードでなくてはならないのですが…。また、イントロのCメジャーですが、実はミクソリディアンという「特殊な音階」を用いています。

 これらの「特殊な音階」については、第10話で解説を加えてあります。

3、平行調に転調

 構成音そのものは変わらないのに、曲の雰囲気だけが変わった…こういう、自然な変化が、平行調への転調に関する最大の特徴です。これ、意外に見落とすものだったりしますが、上の「All-Right All-Night」だったら、Aマイナーの間奏からCメジャーのイントロに戻るパターンですね。

 他の例は…TMじゃないんですが、ドリカムの「晴れたらいいね」もこのパターンが見られます。ちょっと書きようがないので、歌詞を色分けしてキーを表示します。

Cメジャー ←同主調→ Cマイナー ←平行調→ Eメジャー

山へ行こう 次の日曜 昔みたいに
雨が降れば 川底に 沈む橋超えて
胸まである 草分けて ぐんぐん進む背中を
追いかけていた 見失わないよう
抱えられて 渡った小川 今はひらリ……

と、こんな感じです。

<その他の具体例>

4、同主調の平行調に転調

 2と3のコンビネーションですね。はっきり言って、このパターンと次の5番のパターン、TMの曲ではかなり見受けられます!! 「あ、変わった…」と一発で気づくのは、たいていこのパターンか、次のパターンでしょう。

 例えば、「Confession」がその典型例でしょう。木根尚登の場合、バラードをメジャーキーで作る癖があるのか、この曲に関しても基本的なキーがB♭メジャーだったりします。で、サビの「いくつもの出会いから……」の部分で、何の前触れも…ありますけど(A♭のコード)、突然D♭メジャーに転調します。

<その他の具体例>

5、平行調の同主調に転調

 3→2のコンビネーションです。「何でぇ、4と同じじゃぇか!」って思った方、もう一度上のループ表をご覧下さいな。結論から言うと、全く別物です。上の表を見ていただければ分かりますが、全く別のものになりますね。

<このパターンの具体例>

6、その他、型にはまりきらないタイプ

 典型的なものばかりではなく、ちょっと変なパターンの転調だってもちろんあります。

 例えば「Maria Club」。この曲、さっきの「同主調に」パターンがいきなり出てきます。イントロでBマイナーなのに、ヴォーカルが入った途端にBメジャー、で、「Wow-wow-wow Like this!」の後にまたBマイナー、で、またヴォーカルが入ったらBメジャーとなります…が…、その後が問題(?)なのです。表にして解説しましょう。

歌詞キーコード
いつもの僕じゃBメジャー…だが実際は
Bマイナーのコード及び音階音借用
G
ないから  SweetA
Nineteen ほんとうのGマイナーEmaj7
僕を (うし)Gm7
失いはじめた(こ)Cm9
頃 枯れたGm7  F
涙に 風が(つ)Emaj7
冷たく 夜はGm7
とても嫌いCm7
Bメジャーに戻し中Cmaj7 (on D)
E
F

 何ともはや、荒っぽい表になってしまった…。ハイ、ここで注目すべきは、Bメジャーから、全然関係のないGマイナーに転調しているという点でしょう。これは…何なんでしょうねえ…。

 これはあくまで私の感じ方なんですけど、♭系のキーって、長調でもものすごく寂しさを含んでいるような気がするんですよね。天真爛漫としてる明るさの♯系メジャーキーと違い、何か悲しさを感じさせる明るさを持つ♭系のメジャーキー。そういう、♭系の特徴は、マイナーキーだといっそう強調されますね。それを狙っているのでしょうか?

 あるいは、このGマイナーの部分は過去の話で、その、過去の悲しい事実をわざとGマイナーの半音下のGマイナーで強調してるのでしょうか…?

 もう一つ面白い例を紹介しましょう。「Come Back To Asia」という曲です。問題の転調は、この曲の間奏で出てきます。この曲の基本的なキーはAマイナーなのですが、その間奏では、何と、2小節ごとにAマイナーと全音下のGマイナーが、同じフレーズをそれぞれのキーで演奏し続けるという形式になっています。口で言っても分かりづらいので、実際に耳で聞いてみて下さい。アルバム「humansystem」収録です。

 

 グハッ!! 予想外に長くなってしまった…。というわけで、続きはまた今度!! だって、これ以上書いてたら、ファイルが重くなって(既に21KB)、読み込むだけでも一苦労でしょ、だから、また今度続きを書いて、2部構成にします。