第8話、 第7話〜転調〜の続き

 ずいぶん手抜きした表題ですが、あまりお気になさらずに(オイ)。それでは、今回はTMの曲を用いて、具体例を見ていきましょう。

 

<その1、『1974』>

 「なんかずいぶんまた古い曲(1984リリース。別段1974リリースではないので注意)を出してきてまあ…。」と思われるのを覚悟でこの曲を出して参りました。なぜこの曲を選んだかと言うと…『かなでーる2』で作成しているため、愛着があること。ただそれだけだったりします。ちなみに、この曲はTMの2枚目のシングルです。

 では、この曲の転調パターンを見てみましょう。

曲の箇所キー
 イントロEメジャー
「夜の丘に…」(Aメロ)Gメジャー
「探していたよ…」(Bメロ)Eマイナー
「I wanna…」(サビ)Eマイナー
 イントロEメジャー
「覚えているかい…」(Aメロ)Gメジャー
「忘れていたね…」(Bメロ)Eマイナー
「I wanna…」(サビ) ×4Eマイナー
 エンディングAメジャー

 こんな感じでございます。ではアナライズのお時間、タ〜〜イム、ショック!!(違)

 まず、イントロ→メロディー1の、EメジャーGメジャーですが、これは、「同主調の平行調(パターン4)」に移調するパターンですね。おまけにシンセが刻む16分の複雑なメロディのイントロと、ベースが中心になって、それをアコースティックギターとシンセで受ける、シンプルなメロディー1と、曲そのものも雰囲気が違いますし。

 で、サビですが、ここのコード進行が、

EmCBm CDGD onF
I Wanna See the Fan-tasy 生まれ変わるユニバース 
EmCBm CDGD onF
心にあつくFlash In the Dark Sixteen あの頃 の気持ち 

ってなってるわけです。前半は Em→C→BmなのでEマイナーなんですけど、後半が C→D→G、つまりGメジャーの基本パターンなので、Gメジャーっぽい響きになってます。そのせいであんまり沈んだ雰囲気ではないんですね。ちなみに、メジャーキーではIIIm、VImがImaj7の代わりに出てきます。これを「代理コード」と言います。 (コードの話については別ページを参照のこと。)


<なんじゃいこのローマ数字のアレは?>

 このローマ数字は、その音が音階の第何番目の音かを表しています。

 例えばこの曲のようにGメジャーなら、Gから始まるメジャーキーを考えてみればいいわけです。トニック(つまり、キーの基準になる音。これを「主音」という)のGが"I"、以下順次、Aが "II"、Bが"III"……といった具合です。メジャーキーを1オクターブ分ローマ数字で表すと、I、II、III、IV、V、VI、VII このようになります。

例えば、Cメジャーのキーだったらこうなります。

C Major

 マイナーキーの場合はというと、例えばGマイナーなら、同様にしてGから始まるマイナースケールを考えればイイのです…が…、この場合、Gメジャーキーを基本にするので、Gが"I"、Aが "II"、ここまではイイのですが、次のB♭は"♭III" となります。で、マイナーキーを1オクターブ分並べると、I、II、♭III、IV、V、♭VI、♭VII こうなります。

 余談ですが、一口にマイナースケールと言っても3種類あります。(メジャースケールは1つだけ)

 つまり…

自然短音階C natural minor
和声短音階C harmonic minor
旋律短音階C merodic minor

 何でそんなややっこしいものを作るかと言うと、メロディーの流れに原因があります。

 音階において、根音の半音下の音、つまり"VII"のことですが、この音は、「導音」と呼ばれ、非常に強く根音を呼び寄せる働きがあります。ところが、自然短音階ではそれがありません。そのため、自然短音階のまま和音を作ろうとすると、音がスムーズに流れなくなります。

 でも、かといって単純に "VII"を作ればイイというわけでもなく、こうすると今度は、6番目と7番目の間が半音3つ分と、広がり過ぎてしまいます(普通は半音2つか1つ)。それを修正するために、今度はVII だけじゃなく VI も上げちまおうってことになったのが旋律短音階です。ちなみに、音が下がっていくときに自然短音階を使うのは、下がるときに導音は必要ないからです。ソからファになるのに、どうしてラを呼ぶ♯ソが必要でしょうか(いや、要らん)。


 ま、そんな話はおいといて…。で、サビの次はイントロの中間からまた始まりますが、ここではさっきの逆のパターン「平行調の同主調」に転調してますね。で、さっきと同じようにメロディーが進んで行き、最後の最後でまた転調しています。今度は、「EマイナーAメジャー」というパターン。ンと…Eマイナーの平行調がEメジャーで、その下属調がAメジャー…ってことは…。

 ちょっとここで確認。イントロはEメジャーでした。そして最後の部分がAメジャーのキー。そう、実はここの部分、「イントロの下属調」というパターンで転調しているのでした!!

 最後になりましたが、Bメロの部分、一応Eマイナーなんですけど、ここ、コードがちびっと変です。ここのコードですが、次のようになっています。各セルは小節を表しています。

BEmDGC  BmAm G Fm  B   B A G7 BonF
探していたよ君との夜をSince Nine-teen Seventy-FourMovin' the TimeEverything...From Tonight

 キーを知る上で一番重要な手がかりが、この「コード」なのですが、あっちこっち、いろんなコードが出てきて一体何のキーなんだか分かりませんね。途中にEマイナーじゃないコード(Fm、A、G7)が出てきている辺り、チャーチモードの影響かもしれませんです。

 

<その2、『Leprechum Christmas』>

ライーダ「またこういう知名度の低めな曲を出してくるんだから…。
 知ってる人しかついて来れないでしょ…。」
クリス_NK「イイじゃねぇか! この曲も転調がメチャクチャ多いんだから!!
 それに、これ書いてるのが12/24なんだし。季節柄だって考えてるんだぞ!!」

 ハイ、マイ弟子、ライーダ君(13歳・男)と私の掛け合い漫才でした(爆)。そんなのはどうだってイイので、早速行ってみましょう。 なお、この曲は、アルバム『humansystem』に収録されています。前述の『Come Back to Asia』と共にどうぞ。

 では、例によって転調マトリックスを。

曲の歌詞(冒頭部分のみ)キー転調の形式
 イントロFメジャー 
「Bye-bye to Sunrize…」Fメジャー 
「Who's Laughing…」Bマイナー平行調の同主調の平行調
「Have a Merry Christmas…」Fメジャー平行調の同主調の平行調
「Who's Coming…」Bマイナー平行調の同主調の平行調
「Doo di da da Santa Claus is…」Gメジャー平行調の下属調
「Doo di da da Here the Bells Ringing…」Bメジャー同主調の平行調
「Bye-bye to Sunrize…」Fメジャー下属調
「Who's Laughing…」Bマイナー平行調の同主調の平行調
 間奏〜「虹に触れたかった…」〜フェードアウトFメジャー 平行調の同主調の平行調

 AGの軽い音色がとても綺麗なこの曲。そして、対照的に重みのあるEG。そして、リズミカルなドラムと、イイトコどりな曲ですが…やはり転調は多かった…。ちなみにこの曲は、転調するとリズムパターンも変わります。

 で、転調パターンですが…なんじゃいこれは…。この、「平行調の同主調の平行調」って何ですかい!! ねえこ●平さん!!

 こ●平:「あたしにゃ、そういう難しい事はよく分からないんですが…」

 …もうええわ。とにかく、どういう訳だかそういう転調が多いのですよ。これが。解説していると日が暮れる(ってか、これを書いてる時点で既に日が暮れてる。現在、16:36)ので、この辺で切り上げましょう。

 ちなみに、この曲のBメジャーFメジャーの部分ですが、ちょっと面白いコード進行を見つけちゃったんですよ。何かというと…歌詞付きでどうぞ。

Am7(-5)/EDsus4D7G
MerryChris-mas To- night

 何ともはや、無茶な進行です…。次FメジャーなのにGで繋いでるし、その前にAm7(-5)なんていう、不安定この上ないコード(というのは言い過ぎ。実はもっと不安定なコードがある)が来てるし。まあ、典型的な "II−V進行"+ "ドミナント・ケーデンス"ではあるんですけど、この部分、かなり独特の響きです。

 というのは、通例IIm7(-5)の次にV7が来た場合(これが "II−V進行")、それは基本的にマイナーキー(というかマイナーコード)に進むことになるので、その次はIm(またはIm7)がくることになっているのですが、この曲の場合、その直後にIのメジャーコードが来てます。(注:この部分の本来のキーはBメジャーですが、ここではGメジャーで説明しています) 何を狙ってるのかは知りませんが、一瞬この部分のキーが分からなくなり、次に来るキーまでも思いつかなくなります。

 "II−V進行" や "ドミナント・ケーデンス"など、コードに関する話はまた今度時間を取って行いますね。

 

<その3、『Seven Days War』>

 宮沢りえ主演の映画『ぼくらの七日間戦争』のテーマ曲。ミディアムスローの8ビート、徐々に楽器が加わり、厚みが増していくサウンドに、聴く方のテンションも徐々に上がって行くこの曲ですが、上がっていくのは何もテンションだけではなく、キーも実は上がっていってるのです。

-歌詞キー転調パターン
 「Revolution…」Fマイナー 
*「全てを壊すのではなく…」Aメジャー同主調
「全てに背くのではなく…」Bメジャー半音上のキー
 「Seven Days War…」Aメジャー半音下のキー
  間奏Bメジャー全音上のキー
 「Communication…」Fマイナー属調の同主調
*「誰かと争うのではなく…」Aメジャー同主調
「誰かを憎むのではなく…」Bメジャー半音上のキー
 「Seven Days War…」Aメジャー半音下のキー
  間奏Bメジャー全音上のキー
 「Seven Days War…」Cメジャー半音上のキー

 特筆すべきは、AメジャーからBメジャーに転調する、*の部分。わずか4小節だけ半音上のキーに転調しているワケですけれども、これが恐ろしくインパクトに残るのですよ。*の8小節は、前半4小節と後半4小節で似たような歌詞ですが、半音上のキーで歌うことにより、説得力が数段アップしています。

 そして、それだけでは飽き足らないのか、その後の間奏で全音上がってBメジャー、最後の最後でまた半音上がってCメジャーとなっています。結局、サビの部分は最初のAメジャーの同主調(Aマイナー)の平行調であるCメジャーになるわけです。

 ここでちょっと付け足しておきましょう。最後の最後、Cメジャー部分の歌詞を書き出してみましょう。

Seven Days War 闘うよ
僕たちの場所 この手で So Do It Now
Seven Days War Get Place To Live
ただ素直に生きるために
Seven Days War 闘うよ
僕たちの場所 この手で I'll Never Give Up
Seven Days War Get Place To Live
俯かず生きるために

Seven Days War 闘うよ ただ素直に…生きる…ために

 そう、ここでCメジャーを使ったのは、たぶん作為的なものでしょう。Cメジャーというのは、ご存知の通り♯も♭も付かない、いたって「素直な」調です。そこで、最後の最後にCメジャーを持ってくることで、「素直に生きる」というキーワードを引きたてる目論みから、その前のメロディーの調を選択したと思うんですけど…いかがでしょ? その上、それまでどんどん増えつづけていた楽器の数が、最後の最後でどんどん減っていって、最初と同じピアのソロだけになり、「ただ素直に生きるために」などといわれた日にゃ…
もうメロメロにならないほうが不思議なくらい効きますわ〜〜。

 

<その3、『一途な恋』>

 イントロが異常に長いという傾向を持つ小室哲哉の曲ですが、この曲に関しては逆にイントロが異常に短いです。ドラムのフィルインに、ちょこっとEGが入るだけという、なんとわずか1小節!! ある意味貴重な曲かもしれないな…。

 では、例によって転調マトリックスから。

-歌詞キー転調パターン
Bridgeイントロ〜「一途な恋…」Gマイナー 
-間奏・1Eマイナー 
Theme「毎日のリズム…」Eマイナー 
Bridge「一途な恋…」Gマイナー平行調の同主調
-間奏・2Eマイナー同主調の平行調
Theme「ラッシュアワー…」Fマイナー半音上のキー
Bridge「一途な恋…」Aマイナー平行調の同主調
Bridge間奏・その3〜「一途な恋…」Aマイナー半音上のキー

 曲全体を通してマイナーキーで、オマケにやたらめったらに転調していますけど、実はちゃんと法則があるのです。その法則に関わってくるのが、左端にある「Bridge」と「Theme」の関係です。Bridgeというのは、いわゆる「サビ」、Themeがそのまんま「主題」ですが、この曲の場合、サビ部分とテーマ部分とで、独立した半音上昇モデルになっていることにお気づきでしょうか? つまり…

 と、こういうワケです。曲の終盤に近づくにしたがってテンションが上がるようにする意味で、このような半音上昇モデルを採ったんでしょう。意外に手の込んだ曲なんです。ちなみにLast Groove以前に出されたシングルの中では、最後から2番目の曲です、これ。

 

 さ〜て…なんかTM論というより、音楽全般の講義になりつつありますな…。でもまあ、TMの音楽を素材にしているので、OKってことにしてくださいな。