第9話、mono-、di-、tri-、tetra-…
(5音音階のお話)

 前述の『Leprechun Christmas』という曲の第1テーマ、「Bye-bye to Sunrise…」、我々日本人にとって妙に耳になじむメロディだと思ったことはないでしょうか。何と言うか、小学校のとき歌っていた歌のような懐かしさというか、そんな感じです。

 実は、この曲には特殊な音階が使われているのです。今日は、その音階のお話をしましょう。

 

 前回の講座でお話しした通り、この曲の第一テーマ、基本的なキーはFメジャーです。

F Major  ←まさにすなわちコレ。

 ところが、普通のFメジャーキーとは決定的に異なる部分があるのです。実際に曲を聴けば分かるのですが、使っている音の数が5つですね。具体的に言うと、F、G、A、C、Dの5音です。結論から言ってしまうと、この「5音」こそがこの曲の「妙に懐かしい雰囲気」を醸し出しているのです。

 

 普通の音階は、「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ」の7音で出来ています。コレをそのまま使えばメジャースケール(長音階)、ラから始めればマイナースケール(短音階)となるわけですが、この7音のうち2音を省略してしまったものこそ、そう、今回の主役、『5音音階』というワケです!

 今回のタイトルを見て、化学に精通しておられる方なら見当がつくことですけど、この5音音階、英語で言うと「ペンタトニック(Pentatonic)」といいます。 "penta-"という接頭辞は、5を表すラテン語が元になっています。最近個人的に文句を言いに行きたい米国防総省の通称は『ペンタゴン』と言いますが、アレは建物を上から見た形が正5角形だからだそうです。

 まあ、雑談はコレくらいにして…再び本線に。この5音音階ですけど、いろいろ種類があります。その中でも特によく使われるものに「四七抜き(よなぬき)」というものがあります。実はこの「四七抜き」こそ、この曲の懐かしさを醸し出しているスパイスなのです。この「四七抜き」ですが、スコットランド地方に伝わる民謡の音階でもあるので、「スコットランド音階」とも呼ばれています。

 「四七抜き」というのは、通常のメジャースケールの第4音と第7音を抜き去ってしまった音階です。第4音と第7音を抜き去ることで半音音程(ミ〜ファ、シ〜ドの関係)をなくしているため、独特の響きを持っています。
 試しに比較してみましょう。この曲がFメジャーなので、モデルもFメジャーでやります。

F Major通常のFメジャー
F PentatonicFメジャー・四七抜き版
 ※はい、見事に第4音(B)と第7音(E)が抜けてますね。

 で、このペンタトニックがなぜ懐かしい雰囲気を持つかというと…実はこの四七抜き、日本古来の音楽(雅楽や民謡、筝曲など)の他、日本の童謡や文部省唱歌やら演歌やらに頻っ繁に出てくるのですよコレがまた。時期的なもので言うなら、「蛍の光」がまさにコレです(そりゃアレはスコットランド民謡なんだから当然だけど…)。

 「独特の懐かしさ」と最初に書いたのは、これらが昔聞いた童謡や文部省唱歌を思い起こす音階だからということですが、この5音音階、我々日本人の魂の奥深くに刻み込まれているのでしょう。だからこそ、このように耳に馴染むのだと思います。

 

 余談ですが、5音音階はコレだけではありません。沖縄の民謡に使われている音階はコレとは全く違うものですし、あと愚弄部…じゃなくてglobeの「DEPARTURES」のテーマにも、5音音階が使われています。愚弄部の方は、スコットランド音階を第2音から始めた変形バージョンと言葉で言っておけばイイとして(ヲヰ)、沖縄の民謡に使われる音階を紹介しておきましょう。

沖縄の5音音階 ←コレが沖縄民謡の音階だ!

 四七抜きとの違いは、その中に半音音階(ミ〜ファ、シ〜ド)を含んでいることです。そのため、どことなく物悲しい雰囲気が出てきます。言うまでもなく、THE BOOMの『島唄』にもこの音階が使われています。