時を越える翼を持つ者・サイゴノチカラ
=Hommage for Hikari Kirihara=

【注意】

この小説はぽぴゅら〜さんのサイト『あすとーんたーみなる〜星と月の終着駅〜』で連載(っていうのかな、この場合…?)を予定されている『不死鳥の卵―light write Knight―』を基にしたオマージュ小説です。あくまでクリス_NKによる勝手なエンディングですので、実際にこのようなエンディングになるかどうかは私もわかりません。というよりもこうはならないと思います。ただ、あの小説を読み終えたあと、私の脳内でこのような物語が構築されてしまい、こりゃ文章にしておかないと損だわ、と思い、あえて書いた次第です。すでにぽぴゅら〜さんからはOKをもらっておりますが、先に『不死鳥の卵―light write Knight―』を読んでおかないと何がなにやらさっぱりわからないと思いますので、そちらからお読み下さい。

カイト・シルヴィス――『時を越える翼を持つ者』
永遠の命・全知全能の能力、そしてありとあらゆる空間を自由に移動できる能力を持つ存在である。「何でも屋」「ソウルマジシャン」「ジェダイ」……さまざまな肩書きを持ち、伝承には必ずといっていいほど登場する人物でもある。「いつかまた、お前が笑顔を無くしそうになったらいつでも呼びな。永遠なんだからよ、俺らは」――いつもそう言い残し、彼は颯爽と立ち去っていく。まさにヒーロー的な存在であった。

 だが、彼の生い立ちは決して幸せだとは言えなかった。生まれながらにしてカイト・シルヴィスとして生まれたわけではない。彼もまた人間だったのだ。その名を桐原光という。生まれながらにして翠緑の瞳を持ち、いつも何かにつけてはいじめを受けていた。さらに、女の子のような外見で成長期に入っても一向に変化がなかったため、そのことで辛い思いをも経験している。
 大学に入ってからはそれほど深刻ではなかったものの、そのときに彼は最大の苦しみを味わうことになる。幼馴染であり、カイトの唯一の理解者でもあった笠山アリス――カイト、いや、光がこの力を手に入れるときに、彼女は光の目の前で天に召されたのだ。彼女が命を失う必要などなかったはずなのだ。しかし、神というものは残酷なもので、その命の灯火をあっさりと消してしまったのだ。もちろんカイトがそのことを忘れるわけはなかった。しかし、意識して思い出そうとしない――というよりも、自分が「桐原光」という存在であったことを忘れているのだ。胸についている黒水晶のペンダントだけが唯一の名残である。旅立ったアリスの置き土産だ。

 全能の能力を持ちながら、彼はアリスを復活させることはしなかった。彼自身、どこか「生命への干渉」に否定的な面もあったのかもしれない。生きとし生けるものはみな死ぬもの。そのテーゼに対するアンチテーゼ、それこそがカイト自身なのだ。実際に彼は2度死んでいる。1度目はこの力を手に入れるとき、すなわちアリスとの永遠の別れを体験したときに、アリスとともに自害したが、どういうわけか彼の深層意識の中で「素質を受け継ぎし者」と称され、謎の存在によって命をつながれた。2度目はたまたま立ち寄った鉄腕アトムの世界でだ。このときはアトムの生みの親である天馬博士の手によってロボットとして蘇生することとなったのだ。不老不死ゆえの悩み――そんなものが彼の中にあったのかもしれない。

 あるとき、彼はいじめられている子供を助けることとなった。しかし、これが彼の生き方を変えることとなった。
 「緑目の化け物」……その子供は周囲の人間からこのように言われていたのだ。さらに、石まで投げつけられる。誰も助けにこようとはしない。おそらくクラスでも孤立しているのであろう。そのときいじめられていた子供も、やはり緑の目を持っていたのだ。そして、その顔もまたかつての「桐原光」そのものだった。
「女顔ー!!」「キモいんだよ!!」「お前なんかどっかいっちまえ!!」
もちろんいじめっ子はカイトの手によってコテンパンにやっつけられたのは言うまでもない。そして、いじめられていた子供が泣き叫び、カイトの元に近寄っている。だが、その涙をボロボロ流す少年を見るなり、その場に立ち止まって動かないカイト。抱きかかえ、まるで子供をあやすかのように愛情表現をするカイトだが、その少年が「ありがとう」といったときの声のトーン、それがあまりにもかつての桐原光に似ているからだ。そして、その面影も――少年は一礼するとカイトの元を去っていった。
ジブントオナジ――?
この瞬間、カイトの歯車が逆回転を始める。
「俺と、同じ……なのか………?」
ロボットに改造されたこと、高い身体能力を得たこと、剣の基礎を学んだこと、魔法の基礎を学んだこと、そして……たくさんの人に会ってきたこと。その中には愛情まで発展したり、ずっと一緒だと約束した人たちも含まれている。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
彼の中でカイトの意識が混濁し始めた。桐原光の形見であるアリスの黒水晶のペンダントのせいだろうか、精神的に死んだはずの光が蘇ったのだ。すべての知り合った人たちを忘れて「ボク」から「俺」になったカイト・シルヴィスと、それ以前の、たくさんの人たちと出会った「一人称ボクのカイト」こと「桐原光」の意識、その両者とも意識レベルは拮抗している。進退を繰り返し、もがき苦しむ両者の意識。だが、かろうじてカイトの意識が優勢に立ったとき、彼は一つの黒水晶のペンダントを作り、そこに写真と1枚の紙切れを収めた。そして、自分の胸に吊るすと、彼のエネルギー源の予備であるもう一つの黒水晶、そして体の奥に眠っている魔力水晶を取り出した。
「後はお前しだいだ、光……」
そう言い遺し、カイトの意識は静かに体を離れていった。
「ボクは……ボクは……アリス……ごめんね、待たせちゃって………」
彼の手に握り締められている命。何も言わず、彼はその命を壊した。意識が薄れていき、視界が真っ暗になる。最期に、その場に流れた一陣の風の音を聞いて、肉体が倒れていった。主を失った肉体は、数千年単位の時間旅行を続けてきたためか、その場で風化が急激に進み、朽ち果て、塵埃となって遠くに舞っていく。


「ん……あ……」
光が目を覚ます。首には黒水晶のペンダントがぶら下がっている。目の前にはカイトがいる。
「ボクたち、死んだんだよね……?」
「ああ……でも悔いはない。お前と俺はいっつもうまく意思疎通ができなかったけど、今回だけは俺も理解できる。」
「力なんかもういらない。アリスが待っているから。」
「俺も……一緒に行っていいか?」
「うん。」
「ごめんな、ずっと俺のわがままでこんなことさせちまって。特に最初のあれは――本当にすまない。」
「いいよ、きっとここにアリスがいる、待っている、そう信じているから。」
「…強くなったな、光。」
「え?」
「いじめられっ子だったお前がそんな風に物事を前向きにとらえられるなんて、って思ってさ。」
「もう、ボクはあんな辛い思いをしなくていい。実際に自分がカイトになってみて、そう思えるようになってきたから。」
「ははっ、それもそうか。」
「もう、いじめられっ子だなんて呼ばせない。前を向いて生きていくよ。」
二人が向かった先は天国。アリスがきっと待っている――二人は信じていた。

「光?!」
「アリス!!」
ようやく対面できた二人である。それを温かく見守るカイトの表情も、とても穏やかなものだった。
「ずっと……待ってたよ……待ってたんだから………一人で………心配したんだからね!!」
「ごめんね、来るのがものすごく遅れちゃって。」
「遅すぎだよ、ほんとにもう……。」
「ねぇ、ボクたち、もう一度人生をやり直せないかな?」
「……やり直す?」
「うん。今度はアリスに助けてもらわなくても大丈夫だから……きっと。それより、アリス、これ覚えてるよね?」
彼は、最期に作り上げた黒水晶のペンダントを取り出した。中からは、昔の二人の写真と「ずっと、いっしょだよ」と書かれた紙が出てくる。
「これ……あたしの……。ずっと、持っててくれたんだ…。」
「絶対忘れないよ、ずっと、一緒だって約束したから。」
「俺も混ぜてもらっていい?」
「ちょっと、あんたが光をずっと縛り付けてたんでしょ、ダメ……って言いたいところだけど、こうやって対面できたから特別に認める。」
「悪い悪い、こいつがそういう不老不死の存在になっちまったんだよ、いろいろあって。でももう大丈夫だぜ。俺はもう力を発揮することはない。また別の人間に力が継承されるかどうかは……多分ないだろう。自分の手で継承の力を破壊したんだしな。」
「わかったわよ。じゃ、今度は3人一緒にね。」
「アリスはボクが守る!」
「光はあたしが守る!」
「俺は……とりあえず二人のサポーターだ!!」

終わりのない夢 終わりのない情熱 これからもずっと 走り続けるさ
どんな過去さえも 君と乗り越えてきた きっとふたりなら 何もこわくはない
We are going to, We are going to make a brand-new day
    (TM NETWORK(TMN) 「Nights of the Knife」より)

 天に召された光とアリス、そしてカイトは、互いに自分の境遇を話し出した。アリスにとって、光(正確にはカイト)の人生は波乱万丈なものだったと思われても仕方がないだろう。だが、今その光が目の前にいること。そのことが何よりもアリスにとっては嬉しかった。目の前にいる翠緑の瞳の少年――彼となら新しい生き方がきっとできるに違いない。3人ともそう信じていた。人間としてのカイト、差別を受けることなき光、そして少年の愛を豊かに受けるアリスとして。幸せな生活はずっと続いた。3人ともずっと同じ姿のまま、記憶と思い出が蓄積されていく。もう、誰にも邪魔されない、そんな世界を築き上げていった3人であった。思い出はたくさんある。だが、その思い出にいつまでも浸っているわけにはいかない。前を向くこと――今の彼らにはそれが必要だったからだ。転生する、ということは全く違う場所に散ってしまう可能性だってある。

 そして、ついに3人に転生の日が訪れた。そのときにカイトはこっそり光がアリスに手渡したものと同じ黒水晶のペンダントを作っていた。
「結婚指輪の代わりだけど…受け取ってくれ。俺がお前を苦しめてたことへの謝罪だ。」
光はカイトと固い握手を交わし、アリスとともにペンダントの交換をした。さしずめ結婚指輪の交換といったところだろう。
「おめでとう。1人しかいない結婚式だけれども、俺、二人がうらやましいな。じゃ、俺が神官役ってことで……二人とも、永遠の愛を誓いますか?」
『誓います!!』
「それでは、改めて誓いの口付けを…。」
アリスは光にそっと唇を近づけた。その口づけには、「生まれ変わっても、ずっと、一緒だよ」という願いが込められていた。
「さて、いよいよ転生のときがやってきたな。」
「もう、離れたりしないよね、ボクたち。」
「うん、絶対離れたりしない。約束する。」
「俺も一緒になるぜ、もちろん。」
転生すると、3人ともどういう運命になるかは全くわからない。こればかりは神様でも全くわからないことである。もちろん3人が散り散りに自分の人生を歩むことになる可能性だってあるのだ。だが、彼らの「一緒に」という意志は強固なものだった。なぜなら――

Oh FREEDOM will be there よかった 居場所がここにあったから
Oh WISDOM will be there 探した 同じ空気 信じあえること
それはきみとぼく
    (globe 「Here I am」より)


そして――
数奇な運命のいたずらが起こった。
同じ日に、同じ病院で、まったく同じ時刻に、ご近所仲間の母親たちから3人の新生児が産声を上げた。
二人の男の子のうち一人は黒髪に緑の目を持ち、もう一人は青い髪に緑の目、そして女の子は金髪の青い目。
それぞれ、「光(ひかり)」「快斗(かいと)」「亜梨栖(ありす)」と名づけられた。
さらに、光と亜梨栖の手には全く同じ黒水晶のペンダントが握り締められていたという。
新しい人生が、今始まろうとしている。

新たな世界――緑の瞳が存在してもおかしくない世界、そして不死鳥が生まれない新たな世界で。

どんなに困難でくじけそうでも 信じることさ 必ず最後に愛は勝つ
    (KAN 「愛は勝つ」より)

Next for the New Life....

 

あとがき

 人様のキャラを、しかもまだ話が完全に書きあがってないうちに最終話を勝手にでっち上げるのは失礼と思いつつ、原作者のぽぴゅら〜さんに問い合わせたところ、なんとOKが出ちゃいました。実はこの面子(緑目のいじめられっ子除く)、『EL DORADO of the CHILDREN』にも登場していることだし、いっちょ最後に幸せなエンディングでも書いたろうかい、ということになり、この物語を書きました。
 実際はカイトの意識がこのように錯乱することはないのですが(桐原光の精神が完全に消え去っているため)、そこは私のアレンジ、ということで勘弁してもらいました。最初は完全にカイトの意識をすっ飛ばす予定でいたのですが、彼のことも忘れてはならないだろう、ということでこの物語では二つの意識を作り上げました。ロボットだからって心がないとは言わせないぞ、という意地もあったんでしょうね、ロックマンを愛する人間が書いているせいもあって(笑) おかげで光とアリスの対面+αという形が出来上がるという結果になりました。これからの未来、きっと3人とも一生の友情を誓うことになるはずです。多分3人で撮った写真をペンダントに入れて、やっぱり「ずっと、いっしょだよ」と寄せ書きしていくんだろうな〜、なんて思いつつ。でもやっぱり「二人」を強調したかったので、引用した曲は「二人」の恋の曲だったりします。

おまけ:桐原光さんと笠山アリスさんの相性診断結果です。

語感で占う!ニックネーム診断より

お二人の相性度は100%です。
 なかなか良い相性です。特に男性が年上であれば、なおGOOD。女性にとっては、男性は優しく包んでくれる包容力にあふれた彼ですし、男性にとっては、女性は可愛くて心を癒してくれる存在です。
 ただ、結婚した場合、男性は仕事に追われて家庭のことがなおざりになる傾向があるので、妻が欲求不満になる可能性があります。