リレー小説第3弾
管理人、クリス_NKから一言
現在執筆中。そんだけです。
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かつて狂王がその実権を握りしリルガミン王国――
その王の名も忘れ去られ、新たな王ワードナも没し、この地は再び統治者を求めんとしていた…。
闇の力を持ちし魔物がこの地に現れる――人々はその魔物の存在に怯えていた。
しかし、4人の勇者たち戦いの末、魔物は打ち倒され、人々は安息の一時を取り戻した。
しかし、その平和な世を脅かす、一つの黒い影――
それが何であるかは、いまだに分かっていない。
しかし、預言者たちはそろって口にした。
「その黒い影が、再びこの地を支配せん」と…。
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さて…安泰を保ち、ひっそりと栄えているこのリルガミン国。そこはいつしか、別の国などから旅人が少しずつではあるが流れ着くようになっていた。そしてまた1人、ここに流れ着く者あり。
ギルガメッシュの酒場…あるときは密かに、王国からの使命などを受けたり、噂を聞きつけたりした冒険者達の集う場所であり、出会いあり、希に別れもあり。
その中に、ろくに酒を酌み交わせない青年――いや、青年というより、少年といった感じの風貌である。赤いバンダナを、鉢巻の如く締めている侍だ。その耳は人間のものではなく、獣のような耳をしている。ワービーストと呼ばれる種族である。
>illust
「う〜ん、師匠、『ここで修行するがいい』なんて
話しておられたけれども、…本当なのかなあ…。
あの方の仰ることだから間違いないと思うけれども…。」
彼の名は桜庭翔太(さくらばしょうた)。かつてこの町が未曾有の危機に陥ったときに、その危機を救った勇者一行の一人である、魔術師クリスを師と崇め、(話の元ネタはリレー小説・ラウンド2)彼の元で修行を積んでいる侍である――といっても、クリスのような極悪非道な輩ではなく、むしろ正義感が強く、困っている人を見ると放っておけない、熱血な好漢である。
「少年の風貌」と書いたが、彼はこれでも18歳である。実年齢より幼く見えてしまうのは髪が爆発したように広がっている(註:ボサボサではない。おそらくワービースト特有の髪質なのだろう)ためだろう。少年漫画によくいそうなタイプである。ついでに言うと、黒いTシャツに白いズボン、その上に重ね着している青い服がセンスの良さを表している。腰に佩いた剣からも、彼が(侍かどうかは別にして)剣士であるとひと目でわかる。
え、クリスは今どうしてるのかって? ちょっと前までは冒険者稼業を続けていたんですけれども、つい最近、まだ若いのに腰を痛めてしまい、冒険者を引退しちまったとか…(壁)。
「さてと、仕事の話は…ん…? なになに、『”魔道”の調査依頼』…?」
そこにあった掲示板に貼られた1枚の人材募集のチラシ…。そこには、次のように書いてあった。
《”魔道”を探索する強者、募集》
預言者たちが口にしている『黒い影』の正体――
為政者として、民を不安に陥れるような状況は何としても避けなければならない。
魔道に赴き、彼らが言う『黒い影』の正体を、その目で突き止め、報告して欲しい。
謝金は10,000,000G.P.。
我こそはと思う者は、国王代理、タンモ・ノミまで。
「1千万G.P.か…」
翔太はため息が出た。それもそのはず、過去にこの地で出た報酬はせいぜい万単位の経験点程度、そして依頼を達成したという証ぐらいのもの。ここにいれば英雄だろうが、他の土地では何の足しにもならない。
それが今度は現金である。それも1千万という大金である。他所の土地で両替手数料をふんだくられたって数ヶ月は仕事無しで暮らせるだろう。
しかし、一国が探索の報酬に出す金額としては大きすぎるのも事実。なにやら危険な匂いが満載だ。
「こんなところで考えても仕方が無いな。」
もとより正義感が強い翔太のことである。打算的な思考よりも張り紙の言う「民を不安に陥れるような状況は何としても避けなければならない。」という一文に心を動かされたのは想像に難くあるまい。
かくして、翔太はリルガミンの城に向かうことにした。
「恐れ入ります、貴方もその依頼を受けるのでしょうか?」
一人の男性が翔太に声を掛けた。いかにも、という風貌の僧侶の男性。年齢は…まだ20に達していないと思われるが、それにしたって、これだけの徳を積んでいる(少なくとも翔太はそう感じている)のは大したものである。翔太がひと目で僧侶とわかったのは首に下げたロザリオのせいである。それだけでなく、着ている服は上から下まで白で統一され、ゆったりとした身ごろを持っている。ついでに膝上ぐらいに達するマントを羽織っているが、それも白一色である。手には術士らしく杖を持っているが、結構な長さがある。
>illust
「え、ええ、そうですけど…。」
翔太はそう答える。
「私はエバイストと申します。実は私も同じことを考えていたのです。」
「僕は翔太、桜庭翔太です。」
「それでしたら、私と一緒に探索に行きませんか?」
僧侶の男性はそう言うと、飲んでいたものを空にし、翔太とともにリルガミン城に向かおうと言い出した。もちろん翔太にも異存はない。戦闘スキルの面で大幅に良好になるし、なによりも互いに気が合いそうだったからだ。
「ええ、喜んで。一緒に行きましょう!」
翔太は即答した。
翔太にとって驚きだったこと――それは、エバイストが自分より年下だったことだろう。
さて、早速意気投合した二人が酒場を出ようとした矢先、彼等の背後がざわつき始めた。よくある酒の上での小競り合い――「よくある」といっても、それはつい最近になって増えたものも含まれた上で、である。開放的になってきたせいか、最近は異国から訪れた者も少なくはない。しかしその陰で、原因もわからずこんな争いの数が増えるのは嘆かわしいことである――だろう、それぐらいに思った翔太が横を見るとエバイストがいない。人だかりに目をやると人を掻き分けて前に行こうとするエバイストの姿が目に入った。その先にはいきり立つリズマンと殴られて倒れているハーフエルフがいる。
「やめなさい!」
「なんだお前!?コイツに肩入れしようってのか?」
「事情は知りませんが、やたらに人を殴るものではありません。」
「事情は…って、関係ない奴ァ黙っとかんかい! なめてんのかゴルァ!」
そういうが早いか、そのリズマンは翔太めがけて殴りかかってきた。普通なら捌いて一発とか、したたか殴られてひっくり返るかするのだろうが、翔太は捌くどころかそのままパンチを食らい、でも倒れずにリズマンを見返している。
「これで、いいでしょ?」
「…てめぇ…!」
「これ以上無法をしようというなら、私も黙ってはおりませんが…。」
殴られた翔太を気遣いつつ、エバイストも言葉を返す。
「…ちっ!」
気まずい雰囲気になったのを察知したのだろう、そのリズマンは舌打ちを残して去った。倒れているハーフエルフとそこに近づく翔太を除いて、酒場はいつも通りの風景に戻っていった。
「イテテ…全くもう……。」
さすがに痛かったのか、打撃を受けた箇所を手でさすりながら一言、翔太は嘆くように呟く。顔が少し蒼くなっており、意識を失って倒れているそのハーフエルフに(あのリズマン、ちょっとやりすぎてないだろうか?)と心中で思いつつ、翔太は恐る恐る、声をかけて意識の確認をする……幸いにも、一声かけ終わった後に無事目を覚ました。
ホッとする翔太とエバイストの2人。外に出てこれからとりあえず国王代理の元に行こうとしているところだ。さて城に入ろう、という段階で、翔太がエバイストに質問を投げかけた。
「…ところで、エバイストさん、今どのくらいお金を持っていますか?」
「お金…ですか?
ええと…路銀はあらかたこちらの教会に寄付してしまいまして…、ほとんどありませんね…。
せいぜい、ポーション(=POTION of DIOS)が1瓶(=10G)か2瓶買えるかどうか、というところですね。」
「あらら…実は僕もあまり持っていなくて…。
やはり、かろうじて解毒剤(=POTION of LATUMOFIS)が1瓶(=15GP)買えるくらい…。」
2人とも、どう考えても無駄遣いするタイプではない。だが、エバイストは路銀以外を全部最寄の教会に寄付してしまうわけで、碌にお金を持っていない。翔太は翔太で、たびたび仕事は請けるのだが、その仕事内容の割に対価が見合っていない…というより、本人が安くても請け負ってしまうのだ。
互いに財布の貧弱さを報告しあっていると、一つの人影が彼らを追いかけてきた。ハーフエルフに特有の、白銀色の髪が太陽に照らされ、眩いばかりの光を発している。
>illust
?「あ、あの…先ほどは…その…」
「おや、貴女は…。」
「あの…あ、ありがとうございました…。」
ハーフエルフの少女は、顔を真っ赤にしてエバイストたちに礼を述べると、続けざまにこう言った。
「も、もしかして…お2人は魔道探索に…」
「え、ええ、僕たち、そのつもりですが…。」
「あの…、いきなりこんなことを言うのもなんですが、…先ほどのお礼をしたいので…」
「お礼だなんて、そんなわざわざして下さらなくても一向に構いませんよ。
神に仕える者として当然のことをしたまでですから。」
「…い、いえ、あの、そ、そうではなくて…
私も一緒に探索に連れて行ってくださいませんか?」
エバイストと翔太は思わず顔を見合わせた…というよりも、目のやりどころに困ってしまった。見た感じは普通の少女である。しかも、さっきの酒場の出来事で明らかになっているように格闘能力はまるでない。…魔法のスキルもまるでなさそうである。
「ええっと…僕たちについてきてもらえるというのはありがたいですけど…その…」
翔太はとても言いにくそうであるが、それも仕方ない。取柄があるように見えないのを面と向かって言うのは翔太の性格からいって無理があるし、かといって放っておくわけにもいかない。それはエバイストも同様、悩みどころである。そんな二人の雰囲気を察したのか、ハーフエルフの女のほうから話し掛けてきた。
「酒場で傍らにいた方たちに、に、あなた達がいたから殴られただけで済んだと聞きました。
お礼の言葉だけではとても足りません。少しでも力になれれば恩返しになると思って…」
「あれは私が勝手にやったことです。恩返しをしてもらう程のものでもありませんし、気にしないでください。
でも…どうしましょうか。魔道探索の危険は計り知れませんし…。」
「それはわかってます。でも…このままあなた方をただ危険にさらすわけには…。」
「んーんー…(考え中)…どうする…?」
再び沈黙。しかし、思い出したように翔太が喋り始めた。
「ここの訓練場で何か特技を身につけていけばいいんじゃないかな?
どうしてもついてきたいなら心強い仲間でいてほしいし。」
「それはいい考えですね。(女のほうを向いて)どうしますか?」
「はい!よろしくお願いします!」
女は深く頭を下げた。
「それじゃ、行きますか…!」
こうして男二人の旅路に華がひとつ添えられることになった。
早速一行は訓練場へと手続きを行って、進入する。一回り視線を見回して、翔太は最初に一言。
「…さっきから激しい音がするなぁ。人が少ないのに。」
その後、すぐ側で台詞に耳を傾けていた少女が続いて話を始めた。
「あら? よく見たら…物凄いものを振り回している方が。」
少女の視線の先には、デカい剣を2本も振り回す男が約一名。
「(物騒な印象があるなぁ…ハハハ…)」
翔太は少し引いたが、とりあえず当初の目的である、特技の習得とやらに挑戦することになった。併し特技と一口に言っても多種多様。帯に短し襷に長しとならぬ様、この少女に覚えさせねばならない。又、この少女じゃ肉弾戦の技術を学ばせても効果は薄そうだ。剣士(翔太)、僧侶(エバイスト)…と来たら、やはりセオリーとしては……。
そんな事を考えながら、訓練場内を歩いていると、1人の男にトンとぶつかってしまった。どうやら稽古中だった様だ。
「あ、済みません」
軽く頭を下げて通り過ぎる翔太をじっと眺める稽古中だった男……服装も平凡。顔も特徴無し。此処迄、特徴の無い男も珍しいかもしれない。だが…彼、田中金平の眼は、冥い焔を爛々と灯していた。
「そうだ、貴女は何を習得したいんですか? ……え〜っと………」
ハーフエルフ少女に向き直って彼女の意見も聞こうとする翔太だが、彼女の名前を聞いていない事に気付く。
翔太の表情を見、はっとした感じで少女は名乗った。
「あっ! 私、ティナって言うんです。」
これで彼女から回答を得ることに、翔太は成功したのだった。同時に彼らも、自分達の名前を名乗っていないのに気が付き、自己紹介を行ったのであった。勿論、2人とも。
「へぇ、ティナって言うんですか。いい名前ですね…。あ、僕の名前は翔太。桜庭 翔太です。」
「はい、私の名前はエバイストと申します。」
さて、自己紹介に花を咲かせているその場に一人の青年が舞い込んできた。その青年を見て、翔太達ははっと思い当たる節が。
(さっき大剣の二刀流をやっていた人だ…)
しかし不思議なことに、それはどこにも見当たらない。彼は荷物を納めるリュックと、肝心の武器は腰に差したロングソードが1つだけ…
「…ん? 何だ?」
彼が足を止め声をかけてきたのは、3人が不思議に見つめてから数十秒後のことだった。
「あ、いえ、あの…その…
さっきまで振っていた大剣はどこに行ったのかな…と…。」
いきなり話を振られたことに、翔太は戸惑うばかりである。
「…大剣…? ああ、これのことか…。」
「こ、これは…標準的な長剣ではありませんか。
…私たちの目の錯覚とは思えませんし…。
どういうことなのか、差し支えなければ私たちに教えていただけませんか?」
「……む、そいつは教えるわけにはいかんな……。」
男は参ったな、というリアクションで一人つぶやいた。
ティナの目には明らかに疑問符が浮かんでいる。
「は、はあ……。」
「もしかして、あんたらも魔道を志すのか?」
「え、ええ……その通りですが…。」
「なるほど…、もしかしたら、あんたらとは
他人じゃない関係になるかもしれないな。
今はともかくとして…。」
3人の目がいっせいに丸くなる。
「??????」
「もうすでに俺は準備を全て整えているのだが…
ちょっと仲間に恵まれてない上に決まらないんだよな、コレが。
あ、ちなみに俺はマックスだ。魔道で見かけることがあれば、
一声かけてくれ。歓迎する。」
そういうと、大剣の男――マックスは、訓練場を足早に去っていった。
マックスと名乗る男が去った後、その場には謎を抱えて首を傾げている3人が残された。
「あの御仁、気になりますね。
今は、って…探索のどこかで遇うかもしれないってことでしょうか?」
「そうじゃないですか? 見た感じ、ハイクラスの人だと思いますけど、
僕たちよりずっと腕が立つ人ですよ。
仮に仲間になったとしても……
逆に僕たちが足手まといになるでしょう…
あ、そういえば。」
彼の正体を考察している場合ではない。そもそも、ティナに何か技術を習得させにきたのではないか。というわけで、一行は登録所に向かった。
「ふむふむ。それで、お連れの女性に
何か技術を身につけさせたいと、そーゆーわけだな?」
「そういうわけです。」
「んじゃ、ティナさんだっけか? ちょっとこっちにきてくれるかな?」
その受付係に案内され、ティナは奥に消えた。
しばらく後、受付係はティナと共に現れ、翔太に告げた。
「うーんと、ティナさんのことだけどね、知性以外に目立つ特徴が無いんだな、これが。」
そういって彼は一枚のリストを翔太に見せた。そこには次のように書いてあった。
| 身体能力評価 |
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|---|---|
| 現在就ける職業 | 魔術師・詩人 |
| 将来就ける職業 | 錬金術師・召喚士・盗賊・野伏・超能力者・侍・モンク・ヴァルキリー |
「選択の余地はあまりない、か…。」
「そーゆーことだね。だけど、もうちょっと鍛えれば他のクラスへの道はすぐに開けるうよ。
見たところ、おたくは剣士だし、連れの兄さんはどう見ても僧侶だし、
いまのところ不足は無いと思うけどね。」
「ティナさん、どうしますか?」
なんだかんだ言っても、決めるのはティナである。が、結局翔太には剣戟に専念して欲しい、ということで、ティナは魔術師と盗賊の技能を併せ持つ、詩人に就くことになったのである。
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さて、ティナがバードの職に就いて1週間が経った。その間、ティナは訓練場で基礎訓練を受け、翔太とエバイストはリルガミンに滞在していたのだが…。
ギルガメッシュの酒場にて、彼らは今後の打ち合わせをすることにした。第一声はエバイストである。
「できればもう一人、戦士の方がいると心強いですね。」
「でも、エバイストさんなら代役は務まりそうな気がしますけど…?」
リルガミン城があるエセルナート地方では、僧侶呪文の使い手は男女種族を問わず誰もが基礎体力に恵まれているのが通説である。実際、エバイストもその通りであり、聞けばある程度は棒術の心得もあるらしい。その気になれば前衛を務めることも十分に可能だろう。
「ええ、でも私の場合は護身目的で習得したものですし、
旅を繰り返す身なので自然に体力がついてしまった部分もあるのです。
私も探索中は本業に専念したいところですし、
格闘戦専門の戦士型のスキルを持つ方がもう一人…
たとえばマックスさんのような方がいれば安心できると思います。」
確かに、考えてみれば呪文専門の使い手はエバイスト一人、ティナは言ってみれば兼業である。翔太も侍の職にあるが、何か剣戟以外のことをやった場合、打撃面の弱体化は避けられない話である。その面において、確かにエバイストの指摘は正しいのだが…、
「でも、どうやって探すんでしょう?
私たち、こう言っては何ですけど文無しの集まりですし…」
ずいぶんハッキリ言うなあと翔太は心の中で苦笑していた。
(しかし、どうやって誘うか…?)
「あなたたち、ちょっと待ってン?」
不意に、男二人が後ろから声をかけられた。見ると、荒くれ者たちが集う酒場には似つかわしくない、妖艶な女性が立っていた。
「貴女は…?」
「私はマルシェ。ここ、ギルガメッシュの酒場の支配人よ。
ちなみに、ギルガメッシュは私の大切な人。」
このギルガメッシュの酒場は、かの冒険王ギルガメッシュが、かの地を訪れた際に立ち寄り、そこで大きな「仕事」を成し遂げたことに由来して、その名が付けられている。だが、実際の支配人が本人ではないことはご当地エセルナートの人間ならいざ知れず、よそ者(観光客含めて)にはあまり知られていない。
「…あ、あの、僕たち、何かまずいことでも…」
「まずいこと…っていうわけじゃないわ。ただね、この酒場は……
結構レベルの高い連中が集まるから、初めての人にとっては、なかなか居づらい場所じゃないかしら。」
ティナは明らかに動揺している。
「え、それじゃ、私たちがここで仲間を集うのは…」
「ちょっと難しいかもよ…。でもね、大丈夫、心配しないで。」
心配するなという方が無理でしょうにといわんばかりの表情で、エバイストが相槌を打った。
「といいますと……?」
「実はね、つい最近、うちに勤めていた若い子が
独立して新しい酒場を作ったのよ。
『ルルン』って子なんだけど、
そっちなら初心者が集まっているし、
話しかけやすいんじゃない?
それに、慣れない人たちへの基礎講習もやってるから、
なおのこと安心できるわよ。」
路銀を稼ぐためにそれなりの冒険もしてきた彼らだが、このような大掛かりな探索となると、経験はないに等しい。まして、ティナにいたっては生まれてこの方まともにダンジョン探索をしたことすらないのだ。
「となると……やはりそっちに行きませんか?
さっきのようなこともあって、何か怖いですし…。」
どうやら、ティナはまださっきのことを気にしているらしい。幸い、店内に先ほどのリズマン(の戦士と思われる)はいないようだが…。
「腕の立つ方のほうがやはりいいのでしょうが、
そういう方だと、私たちみたいな"Novice"と
同行してくださるとも限りませんしね。」
「ですね。そちらでやりましょうか。」
こうして、彼らは冒険者を『ルルンの酒場』で集うことにした。
「あの子たち…3人とも『あの人』と同じ力を感じる…。」
まるで何か不思議なオーラを感じたのだろうか、彼らが立ち去ってから、マルシェは一人つぶやいた。
3人はトラブルも喧嘩の一つもなく、目的のルルンの酒場に到達した。そこの雰囲気はギルガメッシュのそれとは異なっており、どこか心から落ち着ける場所でもあったようだ…。
が、店内で面食らうことになった。
「お、あんたらもここで仲間探しってか?」
「ええ、そうですが……って、あ!!」
「す、すまん! 驚かせたのなら悪かった!」
そう、休憩目的でこの場を訪れていたマックスと再会してしまったのである。
果たしてこの先、どうなるのやら…?
| NAME | CLASS | SEX,RACE | LV |
|---|---|---|---|
| 桜庭翔太 | G-Sam | M-WereBeast | 1 |
| エバイスト | G-Pri | M-Human | 5 |
| ティナ | N-Bar | F-Halfelf | 1 |
「ん、あんたらもここに来たってのかい。
ってーと、やっぱり初心者だからって断られたクチかい。」
「…というわけではありませんで、
あちらの酒場の支配人の女性に、
こちらを勧められたものですから…。」
「ってことは、まだパーティーは決まってないわけだな。」
決まってない、と聞き返すマックスに対し、ティナが
「じゃあ、マックスさんはもう決められたんですか?」
と更に聞き返した。それに対してマックスは
「いや、候補はいるがまだちゃんと決めてはいない。
とはいえ、とりあえず件の国王代理のオッサンのところに
行ってきたんだが…。」
明らかに何か言いたげである。翔太が
「が…何かあったんですか?」
と聞くと、マックスは投げやりな口調で
「まあ、聞いてくれよ……。」
と、国王代理の反応を話した。
国王代理 タンモ・ノミ
「なるほど…貴方たちもセンターステージに…。」
マックス
「は、はあ…(センターステージってどこやねん?!)」
国王代理 タンモ・ノミ
「ファイナルアンサー?」
マックス
「?!?!??!!?!?!?」
国王代理、タンモ・ノミ
「ファイナルアンサーですか?
ドロップアウトしないんですね?」
マックス
「ファ……ファイナルアンサー…」
エバイストもティナも、開いた口が塞がりきらない様子だ。
「……なんですかその質問は…?」
翔太はふと、師匠が見ていたテレビを思い出してしまった。
「あ、あの…それ、僕、どこかで聞いた気が…。」
「まあ、それはおいといて…。
今はここにはいないんだが、とりあえず俺の仲間候補について簡単に紹介しておくか。」
そういうと、マックスは懐から3枚の紙切れを取り出した。先ほどの訓練場で手渡されたリストの写しである。
| NAME | CLASS | SEX,RACE | LV |
|---|---|---|---|
| 鈴木賢一 | G-Ran | M-Elf | 5 |
| ジュディ | G-Lor | F-Human | 2 |
| アンジェラ | N-Ran | F-Human | 10 |
| フラッシュ | N-Fig | M-Human | 7 |
「…といっても、まだ本当に組むかどうか決めた訳じゃない。あくまでも『候補』だからな…。
ところで、あんたらは決まってないんだよな。なんなら、この面子から紹介してやろうか?」
まだ仲間を見つけることに慣れていない翔太は即答…とまでは行かないが、ちょっと考えてから結論を出した。
「う〜ん、そうしてもらえるとありがたいですね…。
何せ僕たち、まだここに来て日が浅いので…。」
以前から彼に関心があったエバイストが、マックスを誘ってみる。
「では、マックスさんは私たちと同行は…」
「そいつはちょっと無理な相談だな。
いや、正直なところ、ちょいとワケアリでな…。」
「そ、そうですか…。聞くべきではないことを聞いてしまったようで…。」
「いや、気にしなくて構わんぜ。」
「えっと…私たちのパーティーだと…」
ティナは、冒険者となって日も浅い彼女なりに今後のパーティー構成を考えた。
「まずは、翔太さんが基本的に前で戦って、
あとはエバイストさんと私が後ろから呪文で援護…
呪文はと…、魔術師系列は翔太さんと私で、
僧侶系列はエバイストさんだから…
あとは、前衛が2人欲しいかな。
できればアルケミスト系か僧侶系の呪文持ち、
後衛に一人、アルケミストかサイオニック呪文を
使う人がいると助かりそうだな…。
盗賊技能(鍵開け・罠識別&解除)は一応私ができるし…。
だれか都合の良い人、いないかしら?」
少なくとも前衛要員を一名、状況が許せば何か手に技術のある者を一人、迎え入れたいところである。しかし、さきほどギルガメッシュの酒場で直面した事実はここ、ルルンの酒場でも同じである。どうやって誘ったものか? 今度は無一文でもどうにかなりそうな気はするが、きっかけがつかめない。
翔太は心の中で決意した。
(ここまで来て退くわけにはいかない。ここはひとつ…)
「あのー、失礼ですが…」
迷ったときは最短距離を進むに限る。思いきりをつけて翔太は手近なテーブルにいる、どこか異様な風貌を持つその男に話し掛けてみた。
>illust
「…なんだい?」
「見たところ冒険者の方と思うんですが…
僕達とパーティを組んでみませんか?」
翔太が話し掛けたその男は剣をテーブルにかけ、彼のものと思われる帽子をその柄に引っ掛けて一杯やっているところだった。他に連れはいないようだ。
「う〜ん…それは構わないけど…なんで僕なのかな?」
この反応に翔太は一瞬迷った。直感でなんとなく、という説明をして納得してくれるのか?
「その…僕の師匠が敬愛する歌手の人に似ているから…」
思わず出任せを言ってしまった…気がした。しかし、口にしてからふと考えると、当たらずとも遠からず、という感じがしてきた。何故だかは当の翔太にはわからないのだが。
「おもしろい人だね。いいよ、一緒に行こう。」
いとも易く承諾してくれたその男は、杯を空けて席を立った。男は見たところ…20代後半といったところか。背は高めだが平均的な体格、戦士だと思って話し掛けたのは剣を持っているからであったが、その剣にしてもよく見ると細身である。普通なら一瞬、まずい選択をしたと思うだろう。
さらに異様な風貌、と翔太が思ったのはその服装である。エバイストがひと目で僧侶であるとわかるのは、その白で統一された服装と装飾品ゆえである。その男の服装はまるで貴族が私邸にいるときのような、よく言えばスマート、酷い言い方をすれば旅人の服装ではないといういでたちだ。
男は翔太の連れ(もちろん、エバイストとティナ)を含めた3人にむかって自己紹介を始めた。
「僕の名はフラッシュ。
音と光の支配者クラーク・マクスウェルに仕える
ラ・パス・ル・パスの剣士…
って、ここじゃその肩書きも意味ないよね…。
とりあえず、戦士として君達に協力するよ。」
突然、意味不明な言葉が出てきて迷いまくる翔太とティナだが、エバイストはやや落ち着いているようである。
「ラ・パス・ル・パス…って確か…」
「ん? 何か知っているのかい?」
「昔読んだことのある小説にでてきたような気がするのですが…。」
「それは奇遇だね。ひょっとしてティコって人物が出てくるかな?」
「あ…それ作者の名前です。ティコ・ブラーエ、
本業は天文学者と聞いています。」
「…惜しいね。ブラーニだったら BINGO! なんだけど。」
なんだか話に華が咲いているようだが、全く話についていけない翔太とティナは、もう一人ぐらい仲間ができないものかと考えを巡らせている。
「これで戦士は一人確保、後はもう一人ぐらい…」
「できれば錬金術か超能力を使える人がいるといいですね。」
「マックスさんがくれたリストには錬金術の使い手はいるみたいだ。」
今のところ前衛要員2人、後衛要員2人である。できればmultipleに物事をこなせるほうが何かと融通が利くのだが…どうしたものか。
| NAME | CLASS | SEX,RACE | LV |
|---|---|---|---|
| フラッシュ | N-Fig | M-Human | 7 |
| 桜庭翔太 | G-Sam | M-WereBeast | 1 |
| エバイスト | G-Pri | M-Human | 5 |
| ティナ | N-Bar | F-Halfelf | 1 |