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Day-3 IGNITION,SEQUENCE,START

「ん〜と、どうしようかな……?
 今後のことを考えると、やはり後衛にレンジャーを置くのが
 一番いいんだけどなあ……。」
そんなことをティナは考えていた。

 リストアップされているのは、

 まあ、単純に考えても、少なくともリスト上では能力の高いアンジェラを選ぶというのがノーマルな選択肢である。しかもだ、彼女はあのジャーニーの従妹なのだ。他の冒険者に相手にされないはずはない。

そこへ……その、リストに載っているレンジャーの一人、鈴木賢一が店内に入ってきた。

>illust「え、ユ、ユディク従兄さん……?」
彼女らしくない、素っ頓狂な声を、ティナが発した。
「は…? 私の名前は鈴木賢一ですが。」
「そんなはず無いわ! 私よ! ティナよ!」
「!!」
「思い出した?」
「…いや、人違いでしょう。」
そういうと賢一は店を出た。
「そんな…」


 時は少し進んで、午後5時頃。もう太陽も随分傾きかけていて、そろそろ早く宿を取りたい時間…一人の男が、コツコツと足音を立てながらいろいろな事を考えて歩いていた。そう、宿屋に宿泊して寝るなり酒を飲むなりを考えていたマックスである。木枯らしにほっぺた吹かれながら、ね。
(参ったぞ、あいつらと同行してもよかっただろうに…。
 自分より若い…からと言って人生経験は俺より深いかもしれないし。
  …さーて、困ったぞ。……とりあえずだ、この状況を整理すると、
 今のままだと、孤独なダンジョン探索に挑むことも考えねばって、
 なんで俺はこんな思考にハマるんだよ…
 かつての友、クラフやトルーザあたり誘っていっても良かったかな…
 ホント、誰にしようかなー…)
マックスが、ボーっと歩いていた。
すると前から賢一がやってきて
「ティナ…か、どこかで聞いたような…」
ドンッ!
賢一とマックスがぶつかった。
「あ、すいません。ぼーっとしてたもので…」
「いや、俺もボーっとしてたからな…」
「あ…、あなた旅をしてるんですか?」
「ああ。」
「よければ、一緒に旅をしませんか?」

 マックス本人の判断はこうだ。
(悪く、ない。)
彼はその青年を信じて一応ではあるが話に乗ることにした。
しかし、その後の展開がいまいち良いものではなかった。

「ほーほー、『魔道』とやらの捜索だって?」
「はい。そこは屋内での探索とかがメインになりそうですね。」
「(屋外…うーん、最近ゲリラ戦術に凝っている俺に対して、これがどう出るか。)
 さて、話は変わるけれどあんたって、どっから来たんだい?
 俺は東方の国からきたんだが。」
「私は北方のエルフの里からですが…。…。」

 話をしているうちに、マックスは意識せずとも足がルルンの酒場のほうに向いていた。

 …そのような感じの世間話を賢一とマックスが交わしていると、その場に翔太一行が現れた。
「あ、僕たち、この人(といいつつフラッシュを指差す)と
 一緒に行くことにしました。
 …それで…なんですけど……、ティナさんがそちらの賢一さんと、
 どうしても行きたい、というんですが……。」
「お、おい、ちょっと待て!!
 もう俺たちは組むって決めたんだぞ!!
 それを今さ……」
マックスが不快感をあらわにすると、そこへ、
「ちょっと貴方たち、静かにしなさいよね。
 他のお客さんとか通行人に迷惑でしょ!」
と、一人の女性が早口でまくし立ててきた。短くしたブロンドの髪に、茶の皮袋を肩から提げている。そして、手には愛用と思われる弓の一式が…。
>illust 「な…お…オマエ…は…!」
「何よ? 言いたいことがあるならはっきり言いなさい!」
「ぐ…(こいつ、俺のこと忘れてんのか?)
 あのなあ…なんでオマエがこんなところに?」
「私がどこにいたっていいじゃないの。」
「うぐ…」
「ところでさ、さっきから私のことオマエ呼ばわりしてるけど、
 あなた誰?
「うぐぐ…! オマエ…本当に覚えていないのか…、オレのこと…?」
そばにいる者達には、「どうやらマックスとこの女性は面識があるようだ、そして女性のほうにその覚えがない」ということがわかるだけ。しかし、それだけでは何もわからない。

「まあまあ、ここで立ち話はこの人の言う通りですから、
 そちらで座って話しましょう。」
 酒場の隅に適当に席を設け、マックスたちと翔太一行は座った。その時のエバイストの手際のよさと言ったら、なかなかのものである。彼曰く「その場を収めるのも僧たる者の務めです」などと言ってくれたりするあたり、そーとー手馴れているんだろうな。さて…

「で、何を騒いでいたの?」
女性がそう訊くと、エバイストが脇から一言彼女に質問した。
「その前に、あなたの名前をお聞かせ願えますか?
 いつまでも『あなた』と呼ぶわけにはいきませんし…」
「私の名前はアンジェラ、クラスは…見てのとおりレンジャーよ。
 で、何を騒いでいたの?」
アンジェラの質問に対し、翔太が答える。
「ティナさんがそちらにいる賢一さんとどうしても一緒に行きたいと…」
「だけど、その賢一は俺と行くってことに
 さっき決めたばっかなんだ」
「そうなの。で、ティナさん…だっけ?
 どうして一緒に行きたいのかしら?」
「賢一さん、私の兄によく似ているんです。
 本人は人違いと言っていますが、どうしてもそうは思えなくて…」
「賢一さんはどうなのかしら?」
「親類を含め、私の身内にティナという者はいません。
 第一、(生粋エルフとハーフエルフであるので)
 私とティナさんとでは種族が違いますし、
 それに賢一とティナでは肉親の名前としては
 あまりに不釣合いだと思うんですが…。」
「でも! 私の名前を聞いたときのあなたの反応が!」
確かに、ティナという名を聞いたときの賢一の反応は穏やかではなかった。しかし、翔太たちの中でそのことをはっきり覚えているのはティナ一人、これではさすがにどうしようもない。
「こうなると、大事なのは賢一さんの意識の問題ね。
 ティナさんと組むか、それともこの男と組むか…」
「指示名詞で呼ぶな!
 俺にはマックスという、れっきとした名前があるんだ!」
「!!」
「…これで決心がついたぜ。」
「あんた、さっきから何コロコロと言ってるのよ。」
「決めた。まずお前と冒険する気にゃなれんな。声黄色すぎるし。
 昔冒険した連中のほうが節度わきまえてたな。」
「そんな訳のわからないことばかり言って、結論を出してほしいわね。」
 もはや穏やかに話し合うどころではない。既にマックスは短刀を隠し持っており、アンジェラもキレたら最後、殴り合いに発展するのかもしれない状況である。
「…ハハ、どうしましょう…この状況は…。」
「どのみちこんな場所で、殴り合いもとい起こさせてはいけませんね。」
「(マックス君…頼むよ、早く君の意見を聞かせてくれないか。)」
全員が固唾を飲んで見守る中、マックスの口から爆弾発言が発射された。
「アンジェラ。貴様をさしおいて俺は賢一と組むみことにする。
 そして向こうの事情も考えて、あっちに入ろうと思うのだが。」
「えっ!?」
翔太パーティの全員がぶったまげた。
「それはまあ……あなたのような御仁が同行してくださるのなら
 安心ではありますが……あの、翔太さんはこれについて…」
とエバイストが話を振ったのだが、肝心の翔太はさっきずっこけた勢いでテーブルに頭をぶつけたらしく、蒼白な顔面に「例外OEが発生しました」と書いてある。ティナはそっちの介抱でいっぱいいっぱいである。駄目押しでフラッシュに至っては、突然の話をいまだ飲み込めていないらしい。その目に疑問符がたくさんついている。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! それが一度誘っておいた相手への……」
「とにかく、面倒なことにならんうちにここを出るか。
 この女に何されるかわからんしな。」
「私には『アンジェラ』というれっきとした名前があります!」
「さっきのお返しだ。釣りはいらねぇ、とっときな。」

 ルルンの酒場には、地団駄を踏むアンジェラが一人取り残され、残りの面子はマックスに引きずられて外に出てしまった。

第1パーティー
NAMECLASSSEX,RACELV
フラッシュN-FigM-Human7
マックスN-FigM-Human10
桜庭翔太G-SamM-WereBeast1
鈴木賢一G-RanM-Elf5
エバイストG-PriM-Human5
ティナN-BarF-Halfelf1

 

Day-4 das Bauteil von Shota

 マックスに連れられて酒場の外にでた翔太たちは、町外れのちょっとした木陰にて魔道突入の段取りを整えることにした。
 まるでアンジェラと顔見知りだったかのごとき振る舞いが気になり、エバイストはとっとと準備を済ませていたマックスに尋ねた。
「そうですか…あまりいい思い出が無かった、と。」
「…まあそういうことだ。悪いやつじゃないんだが、
 勝気な上に早口ときてるからな。
 押しが強くて突っ走りすぎちまうんだよ、
 アンジェラってのは。」
 何でも以前パーティを組んだときに、アンジェラの好奇心の強さから無理を利かし、挙句に結構イタい目に遭ったそうな。それ以来アンジェラと組むことはなかったが、偶然の再会となったあの時、過去のことは水に流して組んでもいいかと思ったところだった…あんなことさえ無ければ。
 ようやく準備を終えた翔太が乱れた赤いバンダナ――無論彼のトレードマークであるが――を直し、訓練場でトレーニングしていたマックスのことが引っ掛かっていたのか、エバイストの質問が終わった頃合に更に聞き出した。
「そういえば、訓練場ではかなり威勢のいい訓練を
 していましたけど、あれは一体…?」 「これのことか?」
そういってマックスは剣を抜き、その手に念を集中し始めた。すると…
>illust 「あ…ロングソードがバトルアックスに!」
その様子を直接見ていたティナですら、その様子には驚きの色を隠せないようだ。
「ある程度なら武器の形状を自由に変えられる、俺の特殊能力だ。
 ただ、変えられるのは金属製の武器に限られるし、
 俺が手に持っていないと効かないけどな。」
「では訓練場で見たツヴァイハンダーも、
 その能力で変形させたものなのですね?」
「そういうことだ。
 ただ、狭い迷宮のなかじゃあんな大掛かりなことはできない。
 あれはあくまで訓練の上でってヤツだ。」
不可解だった事象がまた一つ、解けた瞬間だった。
「では、改めて隊列の確認をしておきましょうか。
 翔太さん、マックスさん、フラッシュさんが前衛を務め、
 私とティナさん、エバイストさんが後衛を務めるということでよろしいですね?」
 賢一が改めて確認し、パーティーは正式に動き出すこととなった。6人のうち3人が戦士と侍だったら普通はそうなる。もちろん、全員に異存はない。その後、リーダーを誰にするかとか道具の分担はどうするかなどと一通り決めた後、一行は魔道に向かうことになったのである。早速迷宮に入った6人組は、身の回りの様子を確認し、再点検を始めることにしたのだった。


 食料、装備、道具の再点検。あらかじめ探索に便利な呪文をかける。それらを済ませて、一行は隊列を崩さずに進むことになったのだった。早速、曲がり角に直面する一行。だが全員何かを感じて足を止めた。そこには人外の獣の影が見え隠れする。羽ばたく羽音、何者かがはいずる音、カランカランという乾いた音…。

「…良くない気配を感じる。」
「僕もです。」
「…怪しいな…こりゃ、飛び道具撃って様子をみるか?」
「気をつけてください…」

 早速マックスは潜在能力を発揮し、手に持った戦斧をボーガンにチェンジさせた。そして角から素早く手足を出して、数発撃てるだけ撃ちこんでいく。
 案の定悲鳴があがった。それは人間のものではなく、バケモノのものである。
「よし!やるか!」
早速一行は、弓矢に慌てふためくバケモノを奇襲することに成功したのである。

敵モンスター
3 Eye Wings(3)
2 Green Slimes(2)
2 Kobold(2)

「俺は武器を変えるからその間敵を引きつけといてくれ!」
「わかりました!(わかった)」
マックスの言うとおりに敵をマックスに近づけなかった。

マックスの武器がボーガンからバトルアックスに変わった!

「待たせたな!」
ズバッ!グシャ!ピューン!
この時点でグリーンスライム2体、アンデッドゴブリン1体を倒している。
「KATINO!」
ティナが必殺の(?)KATINOをアイウイングに炸裂させた!

フラッシュのレイピアが唸る! 「とりゃ!」
翔太の刀が吼える! 「ていやっ!」
アンデッドゴブリンを倒した!
「あとはアイウィング2体だけだ!」
「しかも眠ってます! 勝てそうですね!」
「でも油断は禁物です。ていやー!」
グシャ!ドカッ!ピューン!
彼らのレベルを鑑みるに、アイウイングは少々強敵であると想像されたが、難なく撃破できた。

「さて、先に進みましょう。」
 迷宮に潜むモンスターとの戦いを最良の展開で終え、曲がり角から先に進んでいく一行。道中、さらに怪物達が行く手をさえぎってきたのだが、危険は無かった。それなりに腕の立つ者もいるし、良く出てくるのもせいぜいダスターやらジャイアントスラッグなど、そんなに脅威にはならなかったのだから…。

「やったぁ、解除成功!」
「お、回復薬類が6個も。これは良かった。」
道中の宝箱を開いて、成果と中身に喜ぶティナとエバイスト。
さて、そこから少し先に進むと…遠くに壁面に刺さったたいまつが目印の曲がり角と、彼らの位置に近いところに脇道が存在していた。が、脇道の方には罠が存在している。どうやら反応式で足を踏み入れると数本のスピアーが飛んでくるようだ。当たれば死亡、というケースは少ないがさすがにかかると痛い。これにはさすがに普段ほとんど自分から喋らないフラッシュも、思わず翔太に問いかけてしまった。
「どうする? 奥の道を曲がるか、手前の道を調べるか?」
「なんか罠の奥にも変な扉があるし、どうしよう…。」

 奥の道に沿って進む賢一は、
「スピアーの罠はスイッチを踏んでしまうと作動してしまうようです。
 見たところスイッチは5〜6個くらいしかありませんので大丈夫でしょう。」
そういうと、彼は第一歩を踏み出した。そして渡っていったのだが……、油断したことにスイッチは地面の中にもあった。賢一は酒場で説明が軽くあったとおり運が悪い。まず引っかかるだろう。
「ぎゃあぁぁ!」
やっぱり引っ掛かった。
エバイストは「さっき手に入れたポーションを使いましょうか。」と、いつもの穏やかな口調で話しかける。
賢一は「すみません…。」とただただ平謝りするばかりである。
「とりあえず奥の道を行きましょう。」と翔太が持ちかけたところ、エバイストは何か考えているようで、一向に動こうとしない
(あっそうだ! イイ事を思いつきました!)
みんなが奥の道に向かうとき、
「待ってください。」
一同「ん?」
エバイストは妙案を思いついたようだ。
「マックスさんの剣と翔太さんの刀を巨大な盾にして
 横からの槍の攻撃を防げばいいんです!」
一同「なるほど!」
「けどそれじゃあ前列のマックスさんと翔太さんは何も出来ないでしょう。」
賢一の指摘はもっともである。しかし、そういうと賢一は持っている矢から2本の矢を渡した。
「これでも変えられますよね?」
「ああ。」
「これで作った盾を私が持って進む。
 そうすると敵が来ても大丈夫でしょう。」

 エバイストと賢一の案を使って進む一同。案はめでたく成功…とは、簡単には言えなかった。エバイストの案は当たりだったものの、スピアーの勢いは思いのほか強めで、盾を突き破って数人がダメージを受ける事態もあった。幸い大盾のおかげで大打撃にはならなかったのが救いである。
「イテテテ…ディ、DIOS頼むぞ…。」
「マックス。君って戦士の割に打たれ弱いんだね……。」
「(図星…)」
フラッシュに突っ込まれてたじたじのマックスであった。

 奥に到着すると、鈍い色に光る鉄製のレバーが1つ存在していた。ティナがそれを押すと、なんとも言えない大きな音とともにスピアートラップはボロボロに粉砕され、機能を停止したのであった。
「帰り道は問題なくなりましたね。」
「でも、なんだこの扉…変な文字が書いてあるようにも見えるけれど…」
翔太が目にした扉にはヘンテコなアルファベットが骨で飾られていた。

SORIKI2・MARIKI3

「…悪趣味なドアだな。」
扉を見て、マックスは一人舌打ちしながらつぶやく…。
 フラッシュが強引に開けようとしたが、力では無理のようである。さて、この扉にはどのような謎が秘められているのか?
「"RIKI"の2文字は共通していますね。
 後は…最後についている数字2つが気になりますけど…」
「しかし…これだけで扉を開ける方法を知れと言うのも無理があるな。
 第一、呪文の言葉で開くのか、何か鍵が必要なのか、それさえもわからない。」
 揃いも揃って扉の前で固まっている、本来は危険なことであるのだが、やはりそこは素人の集団である。一番のベテラン株であるマックスでさえ、扉の謎にご執心なのだ。おまけに迷宮内は暗く(といっても、発光する石が気休め程度に埋め込まれてはいる)、探索者はたいまつなりランプなりを持って入るのが普通という場所である。

 そう、強い理性を持たない生き物にとって、灯りを狙うのは至極当然の行為なのである。

「しかたがない。他に手がかりが無いか探そう。ここでつっ立っていてもしょうがない」
マックスがそう促し、賢一がふりむいたその時!
「うわっッ!?」
暗くうごめく何かが賢一にのしかかり、そのまま押し倒したのだった。

敵モンスター
1 骸骨(1)

 その生き物が行ったのはバックアタック、酷い言い方をすれば闇討ちである。しかし、エセルナートの迷宮において闇討ちは卑怯ではない。Cultured Races(文化種族)の倫理などこの場では通用しないのだ。「ルールなし」それがこの迷宮におけるただ一つの「秩序」である。さて…
 まずい事態となった。賢一がのしかかられた勢いで気絶してしまったのである。こちらは実質5人、相手は得体の知れない(わかるものと言えば灯りに反応する眼と息遣いぐらい)モンスターが1匹である。おまけにバックアタック故に戦士たちは後衛にまわった状態であり、前衛に出るには1ラウンドかかる。この急場はエバイストとティナが持ちこたえなければならない。
 賢一が倒される寸前に出した声のおかげで、エバイストもティナも臨戦体制は取れたものの、得体の知れぬその相手に用心深くなっている。
 しかし、探索前にかけておいた識別:LATUMAPICの効き目が現れ、すぐにその正体はわかった。
 敵はUndead Wallior、生前の武装をそのままにした骸骨戦士である。不死の性質を併せ持つため、眠り(KATINO・KATIQUREA)は効き目がない。それを見て取ったティナはすぐHALITOの詠唱の姿勢に入り、エバイストは杖を構えUndead Walliorとにらみ合っている。そのUndead Walliorは白装束を着込んで(この迷宮内では)目立つエバイストを次の目標とし、突っ込んできた。
 片やエバイスト、突っ込んでくるUndead Walliorを見据え、振りかぶったその瞬間に杖を振り、その腹に打ち込んだ。一瞬動きの止まったUndead WalliorにティナがHALITOの呪文を打ち込む。眠りに落ち、バランスを崩したUndead Walliorの体は地面に落ちていく…。
 そして間をおいた次の瞬間、フラッシュが飛び出し居合抜きの如くソードレイピアを抜いた。そして、下段・中段と素早く刺突を出し、さらに気合と共に上段から刺突を牙突(from 『るろうに剣心』)のごとく打ち込んだ。電光石火の3連撃の前にUndead Walliorは地面に沈み、そのまま動かなくなった。どうやら仕留めたようだが…そこにマックスが歩み寄り、剣を刺して死亡確認をした。
「止めは確実に刺す、これ基本な。さっきは不覚を取っちまったが…」
「いままで経験した冒険とはえらい違いですね。」
マックスの解説に、ここまで大掛かりな冒険がはじめてである翔太がうなずく。
「ここは文字通り何が起こってもおかしくない場所だ。
 用心しすぎてしすぎることはないのさ。」
Undead Walliorを撃破した翔太達。そして戦いが終わった後、賢一もなんとか起き上がる。
「イタタタ…運がなかったよ…。」
「まぁ、臓器を傷つけられなかったのは幸いだと思うぞ。」
「でも、この扉…とりあえずこれからの行き帰りは問題ないし、
 もう一つの道を進んでみませんか?」
「よし、じゃあここの存在を覚えて…そこに行ってみよう。」

 短い一本道を戻り、さっきの奥の曲がり角を進む一行。途中でたいまつを壁から抜き取り、回収した。
 曲がり角の奥の扉で今度はオークに奇襲されかけたが、急所に一撃喰らわせたのがきっかけで、クモの子を散らすように大群が逃げていったのが救いであった。退治して部屋に入ると、またもや怪しい扉が。

MARIKI1

「また"MARIKI" …なんだ、この扉はぁ〜。」
「…?」
たいまつが照らす部屋のどこかで、ティナは何やら軽い石版を発見した。

魔法の力に頼れ

と、その石版には書かれていたのである。
「魔法の力か…」
「一応DIOSをかけてみましょう。」
エバイストがDIOSを試みた…しかし開かない。
「攻撃系の魔法でないと開かないぞ。LADALTO!」
ドバーン!!
賢一は驚いているが、その力の源にうすうす見当がついている様子である。
「魔術師系高レベルの呪文…いったい誰が…?」
「(まさかアイツが……?) ギャァァ!(落とし穴に落ちた)」
「大丈夫か!!」
翔太の叫びもむなしく、賢一は下の階に落ちてしまった……。
「うわっ!とげだぁ!グワァ!」
「ほんとに大丈夫かな…」
「早くこの謎を解いて助けに行こうぜ。」
ここから落ちたら次の階へ行けるが棘がある。最悪の場合、全滅の危険性すらあるのだ。すなわち、落ちたくても落ちることすらできないのである。

 ところが、それから寸刻して、目の前の扉が開いたのである。
そして、先ほど開いた巨大な穴から声が聞こえてきたのだ。 「おーい、こっちは心配ないから先に行ってくれー!!
 たまたま知り合いがここにいた。後で合流できれば合流するからーー!!」 「賢一の声だな。まあ、いずれにしても先に進もう。」
「しかし、そうなると問題は賢一さんが、
 別のパーティに引き抜かれた、ってことですね…。
 少なくとも、今こちらのパーティーが
 正体不明の扉を前にしている、ということは
 私たち以外で知り得ているの、賢一さんだけですから。」
「あ゛っ。」
扉が開いたは良かったのだが、ここで1人欠員が出た、ということが事実上決定したのである。
一行は頭を悩ませたが、ここであれこれ言い争うよりも先に進んだ方が有益だと判断し、このまま進むことにしたのだった。
「…兄さんに、また会えますように。」

 さて、扉を破壊したその中には赤色に透きとおった宝珠が1つ。
「なんだ、あの宝珠は…取りあえず取ってみよう!」
周りに罠の類は存在しない。そう思って突き進もうとしたとたん…
大音響の音痴な歌(録音)とともに、地面からオーク99体、ヘカトンオーク1体が参上したのである。
「ちょ、ちょっと待てコラー!!」
「多すぎだぁっ!!」
「ぶっ!!」
「…!?」
「な、なんなのこれ…」

勝負の火蓋が切って落とされた!

敵モンスター
1 Hekaton-Orc(1)
9 Orcs(9)
9 Orcs(9)
9 Orcs(9)
9 Orcs(9)
9 Orcs(9)
9 Orcs(9)
9 Orcs(9)
9 Orcs(9)
9 Orcs(9)
9 Orcs(9)
9 Orcs(9)

 たとえ何が出てこようと判っているのは一つ、戦わなければ殺(や)られるということ。5人はすぐに臨戦体制に入った。一人欠員が出たので前衛3人に後衛2人という組合せなのだが、この100体の集団の前には5人は1人に等しい。
(そこらじゅうOrcどもか…ならば…)
「翔太!ティナ! KATINOだ!」

 Orcのような半獣半人には、(長く拘束できるかは別として)獣と同じくKATINOがよく効く。眠った端から斬り倒していこう、というのがマックスの作戦であった。したがって、翔太とティナにKATINOによる援護を指示したのだが…
「こう多くちゃ精神が持たない! エバイスト、援護頼む!」
「承知!」

 ティナを除く4人が前衛に出てOrcを捌くという、非常に危険な状態で戦うことになった。マックスは武器を連弩に変形してまとめて相手にしてやろうという腹づもりだが、如何せん、100体のOrcを相手にするのは不足である。そんな中…
「みんな僕の後ろに下がって!」
その一声と共にフラッシュは剣を高くかざし、念を入れ始めた。Orcの集団の周りが円形に輝きだし、オーロラのような光が集団を取り囲んだ。
「くらえっッ!」
上段に構えられ、そして振り下ろされた一撃…その直後、にわかに信じられない光景が広がった。>illust

「うへぇ…流石に剣術の腕は達人クラスか…。」
100体の化物どもをいっぺんに機関銃で撃退しようとしたマックスは、フラッシュの隠された実力に対して畏怖の念を覚えた。焦っているのはオークたちも同じで、100体の中から残存した連中は20体程。その残りも、恐怖で発狂して割腹自殺するわ回りの水場に飛び込むは、「改心します、だから働き口を紹介してください」と本気で命乞いをする連中までもがでる始末。
結果、残りは指揮官のヘカトンオークを含めて3体のみになってしまった。
後は翔太が切りかかり、2体を順調に撃破する。

 と、その時だった。ヘカトンオークが変な歌を歌いながらダンスを始めたのである。
すると回りの水場から、少し異臭を漂わせて巨大な水蛇が現れた。
「この外見は…モートモンスター!?」
「大丈夫だよ、ティナさん。相手は1体だから心配する必要もないってば。」
「さて…突くか、斬るか、殴るか、締めるか。撃つのもいいだろうか。」

戦況はこちらの優勢である。

敵モンスター
1 Orc(3)
1 Hekaton-Orc(1)
1 Moat Monster(1)

「将を射んと欲すればまず馬から!」
翔太はそういうと、モートモンスターめがけて愛用の刀で一太刀浴びせた。モートモンスターの皮膚に大きな傷口が広がる!
「よし、いいぞ!!」
ところが、その痛みのせいだろう、モートモンスターがその頭を振り回し、パーティーに攻撃を始めたのである。
「ま、まずい!!」
攻撃モーションに入っていた翔太は、避ける術なくして、直撃を受けてしまい、壁に叩きつけられてしまったのだった…。しかも、そのときのショックで頭を打ってしまい、意識が混濁してしまうという、(現実世界だったら、いや、そうでなくとも)非常に危険な状況になっている。
「あ、あっ!!大丈夫か、翔太ぁ!!」
マックスが攻撃に移るのをやめて翔太のもとに走り寄る。そして手首から脈を測ろうとしたのだが、弱弱しくてよくわからない。
「…どうすりゃいいかさっさと決めないと駄目なようだな。」
断念して、この状況で呟くマックス。
「翔太さんのことは私に任せてください。なんとかしてみせます。」
「マックスさん、まずは奴等を倒しましょう!」
「………」
こうして、残る3人で雑魚達との戦いに挑むことになる。
「ひひひ、一般ピープル上がりめぇ。皆殺しにしてやる!」
汚い言葉とともに、またヘカトンオークがモートモンスターをけしかけた。
…失血が進み、どこか動きが頼りないが。

 マックスが前線に戻ってくるまでには1ラウンドほどかかる。迫り来るモートモンスターを相手に、今はフラッシュとティナで持ちこたえないといけない。ティナは先ほどのオーク相手にKATINOを使い切っているので、武器で戦わないといけない。つまり、少々ヤバい状態である。
 そんな実況を交えている間に、モートモンスターが2人に迫る。首を振り上げ噛み付こうとするが…それより早く、フラッシュの剣が閃く。攻撃をかわし、右、左、刺突と連続で叩き込み、最後に蹴りをいれて突き放す。
 もとより失血が進んでいた水蛇はよろめき、動きが一瞬止まる。入れ替わりにティナが短刀でフラッシュが斬った場所に追い討ちをかけようとするが…これは外れてしまう。そうこうしているうちにマックスが戻ってきた。

「止めだ!」
手にした機関銃のトリガーを引き、水蛇相手に撃ちこんでいく。弾丸に翻弄されたモートモンスターは文字通りの蜂の巣となり、倒れた。
「一般ピープルだからって甘く見るなよ!」
ヘカトンオークに銃口を向け、一声浴びせる。
「いひひヒヒ…」
様子がすこし変わった。
「ミナゴロシだアアぁぁァァ!ヒーひひひヒヒヒあああァァァははは…!」
いくら手負いとはいえ、モートモンスターを1ターンで倒されたことがよっぽどショックだったのか、とうとうこの太ったオークは発狂した。手に持った剣をあたり構わず振り回し、残ったわずかなオークさえも巻き込んでいく。
「うわ!とうとう狂ったぞこいつ! うぉ! うわ!」
「まずいな…ふん! はっ!」
下手に手を出せばこっちも無事じゃ済まない。ある意味一番やばい状況だ。

敵モンスター
1 Hekaton-Orc (1)
第1パーティー
NAMECLASSSEX,RACELVSTATUS
フラッシュN-FigM-Human7OK
マックスN-FigM-Human10OK
桜庭翔太G-SamM-WereBeast1KnockOut
エバイストG-PriM-Human5OK
ティナN-BarF-Halfelf1OK

 剣の切れ味は悪いらしく、かすっても支障が出るほどの大打撃には至らない筈。だが、問題点はそれではない。瀕死の人員が1名、マックスとフラッシュの後ろで治療を受けているのだ。しかし以前状況は好転していないことから、この狂乱しているヘカトンオークに襲われたら一大事である。
 死んでも安全に蘇れる保障がこの迷宮に存在するかどうかが怪しいのだから。
 また、マックスも困っていたのである。屋外や他にあった戦いでは強みを見せた自身の潜在能力「メタルコントロール」の不調に気が付いた。何故なら無限に撃てる筈の機関銃の弾丸がモートモンスターを銃撃で倒した際に使い果たしてしまったのである。その上、すぐに変形を起こさないことが一層焦りを高めていたのだ。
「おいおい、そりゃねーぞ…イテェっ!」
剣がわき腹に当たった痛みを感じながら、マックスは打撃戦か、死守するかの判断で迷っていた。
フラッシュも回避し、翔太に気を向かせないようにしてゆく。

 片やエバイストは翔太の気付けのために手を尽くしているところ。
「DIOS!」
さっきの状況から体力が落ちているのは確か、まずは気付けに耐えるだけの体力を確保しなくてはならない。
「それで…」(ゴソゴソ…)
気付けの呪文:DIALKOが使えれば事は早いのだが、Lv3に属するこの呪文をエバイストはまだ使えない。そこで、棒術の修行をしていた時に教わった気付けの方法を試みることにしたのだ。
「…フンッ!」
翔太の背中に回って脇を支え、急所に衝撃を与えて気付けをさせるというのが教わった方法であったが、修行時代に人を気絶させるに至ったことがないため、やはり成功しない。何度か試みてみるが…

 そしてティナである。さっきから発狂したヘカトンオークの気迫に圧され気味で、しかも呪文のストックを使い果たしているために見ているしかない。せめてあの化け物に翔太たちの存在を気付かせないように、と立ち回っているつもりであったが…
「…。…。…きゃっ!」
何かに足をさらわれティナは転んだ。いや、さらわれたのではなく、オークの死体につまづいたのだ。そのとき、ティナの目の前にオークが使っていたと思われる武器が…
「マックスさん! これ!」
その武器…棍棒を拾ってマックスの足元に投げた。
「ぐ…!?」
 足元に投げつけられたものを見てマックスは直感した。
 機関銃の代わりに棍棒を握り、ヘカトンオークの攻撃を捌きはじめたのだ。そのうち、剣が棍棒に当たり、刃がめり込んだ。それと同時にヘカトンオークの動きも止まる。その気を逃さず蹴りで追い討ちをかける。
「…どうよ!?」
 何とか態勢は持ち直したが、自前の特技はうまく機能せず武器は弾切れの機関銃(つまり役立たず)と良いところがない。

「…ふんっ!」
「…んが!?」
別に誰も数えたわけではないが、十数回目の気付けで翔太は気が付いた。しかし、まだ目が覚めたばかりで状況がつかめていない。
「喝!」
「!?…あの蛇とオークは!?」
「やった!翔太さん、早く戻ってください…DIOS!」
そう言うが早く、エバイストは翔太に Dios をかけて立ち上がった。
(そうか、モートモンスターに一撃くらって…)
一足先に戻っていくエバイストを追い、翔太も武器を取って立ち上がった。

「あいあいあいああああぁ!!」
完全に立ち直った3人の前衛の前にじわじわ追いつめられたヘカトンオークはもはや振り回す剣も存在しない。肉の塊になるのも、もはや時間の問題だ…。
 踊り狂うところに翔太の袈裟斬りを喰らい、フラッシュの剣戟で何箇所にも及ぶ傷口がどんどん刻み付けられる。その横からやっと本領を取り戻したマックスが、機関銃をついに変形させることができたようだ。
「まったく、えらい迷宮に来ちまったもんだ…」
そして側面から、両手剣を深く突き刺した。その後翔太の刀に首を撥ねられ、連中は完敗を喫することになる。

「た、助かった…でも呪文が切れた気もします…。」
「この赤い玉は一体何だろう? まぁいいや、これは取っておこう。」
翔太が赤い玉を台座から掴んで回収すると、目の前で変な現象が起きた。また赤い玉が沸くように出てきたのである。
「な、何だ? もう一個サービスってことか?」
今度はマックスがそれをもう1個とろうとしたが、ぐにょぐにょしていて取り上げることはできなかった。
(…良く分からない…)
一行は疑問を抱きつつ、道筋を覚えつつ帰還したのであった。