「……はぁ、なんなのあいつ。
とりあえずトラブルメーカーみたいな感じだったから
ついてかないほうが正解だと思うけど……。」
マックスに散々コケにされ、憤懣やる形無しといった感じでぶつぶつと独り言を繰り返すアンジェラだったが、後ろから肩をぽんと叩かれたことに気がついた。振り返ると、若い女性が立っていた。こぎれいな身なりではあるが、どこか冒険慣れしている感じである。
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「あの、私と一緒にパーティーを組みませんか…?」
彼女の名はジュディといった。
「見てのところ、貴方はとても腕の立つお方だと思います。」
「ええ。腕は保障するわよ。」
「今、迷宮に挑む仲間を募っていますが、
貴方のように慣れた方々と冒険したほうが安全に進めるし、
何より早く経験を積む機会があると思うのです。
よければ連れて行っていただけないでしょうか。」
「いいわよ。私の名前はアンジェラって言うの。よろしくね!」
「はいっ。」
こうしてジュディとのお話を収めたアンジェラ。そこへ…。
「あ、あのぉ…」
「…すみませんが。」
「おや、お嬢さん方。一体どうしたのかね?」
銀髪のフェルパー、威圧感のあるローブの男、そして重装備のおっさんがやってきた。
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「君たちはもしかして、新しくパーティーを組もうとしているのかね?
ならば、わしらも入れてもらえんかの?」
重装備の……見た所齢60、というところの男性はそう、アンジェラ&ジュディの麗人コンビに持ちかけた。
「ええ、まあ……」
さっきマックスに散々な言われようをしたアンジェラはこの面子に対しても訝しげな目で見ていた。ところが、ジュディの側が乗り気であった。
「あら、それは頼もしいですわね。ええ、ぜひ一緒に冒険しましょう。
ところで、皆さんのお名前とクラスは…」
各自自己紹介をすることとなった。
銀髪のフェルパーのモンク・ジバリア。
威圧感のあるラウルフのビショップ・ヴァラール。
そして古希を迎えたドワーフのロード・バリボー。
彼らがアンジェラ組に同行することとなった……が、一応あと1人パーティーとして入れられる。やはり魔術師系列のキャラのほうが望ましいかの、そんなことをバリボーが思っていたのだが……、コレがなかなか見つからない。
探すのにいい加減飽きてきたので、酒場でしばし歓談をしていたときのことだった。話の途中で、アンジェラが従兄のジャーニーのことを話した。
「…というわけで、従兄(にい)様はめでたく諸悪の根源を倒すことに成功した、というわけ。
でもね、従兄様は『実質私ではない』だなんて謙遜しちゃっててね……」
すると、ジバリアが
「そういえば、噂に聞いたんですけれども、
その、かつて魔道を制覇した冒険者のお弟子さんが1人、
こちらを訪れているとかいないとか…。
何でも……18歳くらいのちょっと童顔の少年で…
あ、そうそう、赤いバンダナがトレードマーク……」
「何ですってぇぇぇぇ、あの従兄様のオプションの
極悪魔術師の弟子がいる、ですってぇ?!?!?」
今聞いた特徴を満たしている人物を、アンジェラはさっき見かけていたのを思い出し、思わず素っ頓狂な声をあげてしまった…。そう、正にその条件を、さっきのパーティーにいた赤バンダナの少年は満たしていたのだった。それにしたってアンジェラ、強調するところが違うと思うのだが…。
「あ、あの……あくまでも噂、ですから…、
本当にそうかはまだわからないかと思います…。」
いつものおっとりした口調で、ジュディがサポートに回らざるをえないほど、アンジェラは興奮していた。
「偶然は2つも重なるものじゃないわ!
きっとあの半獣の小僧が悪党の弟子に違いないわ!」
「アンジェラさん、お…落ち着いてください…!」
クリスの名前を持ち出されたが故なのかはわからないが、ジュディの諌めが逆効果になるほどアンジェラはいきり立っている。その様子にジバリアは(話を切り出した自分へのすまなさも重なって)すっかり萎縮している。
「お嬢さん、落ち着きなさい。その様ではまた揉める元だ。」
「ほらジバリア、あなたも自分を持ちなさい。あなたが悪いのではないですから…」
「はい…すいません。」
どうやら先ほどの喧嘩の声は3人の耳にも届いていたようだ。さすがにアンジェラは落ち着きを取り戻したものの、その顔は興奮と取り乱した自分への羞恥とで紅くなっている。
「ワシらは魔術師の呪文を使える者を探しているんじゃが…
ヴァラールだけではいささか心許ない気がしてなあ…。
どちらか使えませんかな?」
「私は錬金術は使えますけど、魔術師の呪文はちょっと…」
「私も最近ロードに転職したばかりで…
その前の職でも魔術師の呪文とは縁が無かったです。」
「ふむぅ…どうしたものか…」
「私一人ではさすがに堪えますね。
僧侶呪文にしても、司教の私、君主のバリボーさんと
ジュディさんでは後々つらいでしょう。
専門職かMasterクラスの使い手が欲しいところです。」
このヴァラールという司教、同じ神に仕える身でありながらエバイストに比べるとちょっと愛想がよくない。冷静に戦力分析をしているあたり、頼りになりそうだが…という印象をアンジェラは受けた。そこへ…
「Hey! そこのねーちゃんたち!」
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いかにもならず者、という風情の男が割って入ってきた。ハーフエルフであることはすぐわかるが、ティナが持っている穏やかな表情とは違って目がギラついており、善の性格を持つ彼女等の眼にはどうしても極悪人としか映らない。(実際、その通りであることを彼女等はまだ知らない)
「私達に御用ですか?」
相手が悪の性格とはいえ一応他人様である。あくまで丁寧に応えるジュディに対する男の反応は(ある意味)辛らつなものだった。
「他に誰がいるっての? 年サバ読んでるわけでもないんだろ?
それにそこの猫耳じょーちゃん、あんたマニア受けしそうだしな。
連れは…チビじーさんと犬ヅラの司教サマか」
我々の社会なら、もはや毒づきのレベルを超えてセクハラだとか人権問題に発展する嫌味である。それを眉一つ動かさずに言ってのけるその態度には、誰もが唖然とした。この男、筋金入りの悪党であることは間違いない。当然、信仰心など微塵も感じられず、ヴァラールは明らかに怒りに震えている。ジバリアに至っては泣き出す寸前である。
そんな中、正気を保っていられるものが一人…バリボーである。
「お若いの、少し言葉が過ぎるぞ」
「何言ってんのよ、ジーさんよぅ? 俺は事実を言ったまでなんだがな。」
「それが余計だと気付かんのか? お主には思いやりというものが無いのか!?」
「嫌だねえ、年寄りの説教ってのは。思いやりなんざ、ガキの時分に捨てちまったよ!!」
「悲しいヤツよ…」
「ふん、偽善野郎の哀れみってか?
いい情報くれてやろうと思ったが…他のヤツにくれてやることにするよ」
「待って! その情報、聞かせてくれるかしら?」
仲間に関する情報であれば、例え悪党の言葉であっても聞く価値はある。そう思ったアンジェラは努めて冷静に(さっきのこともあるし)、そして下手に出た。もちろん、心の底では今すぐに射殺したいほど怒っているのだが…。
「そうそう、人間あまり怒っちゃいけないよ。では早速…といきたいところだが…」
「いくらかしら? 酒代の一つぐらいなら出すわよ」
「おぉっと! …いいよ、タダで教えてやるよ。」
言葉を先読みされたことに一本取られたと感じたのか、男は素直に話を聞かせてくれた。果たしてそれは仲間の、それも一行が求めていたものだった。
一回組んだことのある者の中に、中立の魔術師がいる。動きやすい服装を好み、一見すると盗賊に見える女だった。――男の話を要約するとそんなところだった。
「ありがとう。そうだ、お礼しなくちゃ」
「お、いいのかい?」
お礼という言葉に一瞬油断したのが、男の運の尽きとでも言うのだろうか。おもわず身を乗り出したところへ…
噴ッ!
アンジェラの腰の捻りが効いた怒りの鉄拳が男のアゴを直撃、男は一発で"Knock Out!!"されてしまった。(お約束のオチですな。でも顔の形変わるまで殴られなかった分だけ、この人たちに感謝しないとね、??君)
「さて、こんなヴァカは放っておいて、
私達はその魔術師を探しましょう!」
5人はボロ雑巾の如くのびている男を横目に、酒場を後にしたのだった。
その頃……
「ぃえ〜〜〜〜っくション!!!!!」
腰を悪くしてしまい、湯治に来ていたどこかの温泉にて、さあ入浴するべって段階において、クリスは裸で加●茶が裸足で逃げ出すほどの超特大のクシャミをかましていた。
すると、そのときの轟音により、積み重ねてあった風呂桶が音を立てて崩れ始めて…
「たわばっ!!」
よりによってクリスの後頭部に直撃。
「はぁ、ヤレヤレ…翔太のやつが俺の噂でもしてんのか?
全く、髪爆発気味のワービーストが来たと思ったら
いきなり『弟子にしてください』だもんな…。
悪いやつじゃないんだけど、さ…。
今頃、ちゃんと魔道調査してんのかな…?
仲間めっけて上手くやってんのかな…?
それともミリアか?
あいつもなんやかんや言って強引に弟子入りしたし。
まあ、魔術の才能は生まれつきあったみたいだが…
あいつの性格からすると『男を追っかけ回してまたドジして』たり…。」
| NAME | CLASS | SEX,RACE | LV |
|---|---|---|---|
| バリボー | G-Lor | M-Dwarf | 1 |
| ジュディ | G-Lor | F-Human | 2 |
| ジバリア | N-Mon | F-Felpur | 7 |
| アンジェラ | N-Ran | F-Human | 10 |
| ヴァラール | G-Bis | M-Rawolf | 8 |
さて、こちらはアンジェラチーム、性悪男の情報を頼りにその魔術師を丸一日かけて探してみたものの、いっこうに見つからない。いいかげん疲れた一行はとりあえず宿をとることにした。
「…んもう、こんなことだったら
あのヴァカから名前を聞き出しておくべきだったわ。」
「それにしても、外見に特徴があるのに
これだけ探して見つからないというのなら、
何か情報が欠けているのでしょう。
例えば今は魔術師ではなくほかの職に就いているとか…」
「それを忘れていたな。しかし、どうしたものか…」
ヴァラールの推測は実は当たっている。その魔術師は今はバードに転職しているのだから。しかし、バードをやっている冒険者は魔術師と同じぐらい人数が多い。容易に探せるものではなかろう。
「もう今日は遅いし、明日にしましょう。見つからないものは仕方ないし、
ヴァラールさんの呪文でどこまで通用するか確かめるのも必要だし。」
「私のことは『ヴァラール』と呼び捨てて頂いて結構です。」
顔色の冴え渡るアンジェラが、意気揚々と確認に入る。
「さて、とりあえず中に入ることにするわ。みんな、準備はいい?」
「とうにできておるが、ジバリアが…」
ジバリアの顔はかなり蒼い。だいぶ恐怖感があるようだが…「超」がつくほどの臆病者であるとはこういうものなのか。
「ジバリアさん、今の私達には一人でも仲間が必要なんです。
あなたが死ぬことがあれば私達も死んでしまうんです。
みんなでお互いを護っていきますから、あなたも勇気を出してください。」
「…はい。」
さて、かなり不安が残るこのパーティ、迷宮内でどんなドラマを見せてくれるのか…?
この手の迷宮の場合、大体はどこかのドアを蹴破ることで最初の敵に遭遇する、というのが常である。
ところが、このチームの場合……、よりによって通路で挟み撃ちを食らってしまったのだ。
しかも相手がまずすぎた。
数がとにかく多いのである。
| 6 Kobolds | (6) |
| 6 Kobolds | (6) |
| 7 Kobolds | (7) |
たかがコボルド、されどコボルド。
数が来ればそれだけで強力な武器なのだ。
不意を突かれたことで、ジュディはいささかの動揺を見せた。
「ま、まずいです! すぐに体勢を立て直さないと!!」
もちろん、彼女だちだって準備を怠っていたわけではない。
「下賎なる魔物よ、去ね! MELITO!!」
グループ攻撃呪文を打つヴァラールの横で、
「……そこ!!」
「!!」
「むん!!」
アタッカー3人の波状攻撃が唸る!
無論、後衛のアンジェラにばかり任せておけない。ジュディだって攻撃に参加する。
「はぁっ!!」
……確かに、ゴブリンはザコだ。
だが、彼女たちの一行は、そのザコに大苦戦を強いられた。数も多かったことはあるし、不意を突かれたのもある。しかし、的確に倒していけば、本質的に負けるはずがない。
それでもなお苦戦を強いられるのは、ゴブリンたちが次々に仲間を呼んだためである。
……が、そんな不利な状況が一瞬で変わったのだ。
突如として、ゴブリンの周囲にプラズマに似た稲妻が巻き起こったのだ。
「こ、これはMOLITO……。 このような高等呪文、いったい誰が……?」
このパーティーで最も魔術師系列の呪文に造詣を持つヴァラールが、驚きの表情で辺りを見回す。
突如起こったMOLITOの稲妻により、はさみ撃ちという最悪の状況は脱せられた。一行を挟んでいたコボルドの群れの片側が壊滅したからだ。いかに数を頼みとするコボルドも、MOLITOの稲妻に種としての本能的危機感を覚え、残ったものは蜘蛛の子を散らすように退散していった。
ゴブリンがいなくなったその後には、一行とMOLITOの詠唱者が取り残された。
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「あなたが助けてくれたのですね?一行を代表してお礼申し上げます。」
「別に気にしなくていいわよ。また死体の山ができるのが嫌だっただけだから。」
「死体の山…って…」
2日前にあんなことがあっただけに、モノにも言いようがあるだろうとアンジェラは心の底で舌打ちをしていた。本人に悪気が無いのは判らなくも無いのだが…。
「もしかして、お一人かな?」
「そんなところね。ここらへんにはパーティを組み損ねてあぶれた人とか、
仲間が死んでどうにも身動きが取れなくなった者とか、けっこういるのよ。
私はそんな人たちの中から適当に見繕って参加するためにここにいるんだけど。」
なんとも強気な発言である。しかし、さきほどのMOLITOを見てわかる通り、魔術師呪文に通じているのは明らかだ。しかしながら、(見てくれからして)戦士ではない彼女が一人でいるというのは危険すぎはしまいか。ちなみに彼女の持ち物で武器と思えるのは腰に佩いた短剣と手に持っている笛(殴って使うのか?)ぐらい。年はアンジェラと同じぐらいなようだが、MOLITOを使える以上はもっと年を取っているのかもしれない。
「それじゃ、私達に力を貸してくれないかしら?
強い魔術呪文の使い手が一人、是非欲しかったところなの。」
「どうしようかしら…?
……いいわ。私もちょうど新しい仲間が欲しかったし。
それに、あなたたちもそれ相応の実力を持っているようだから
私も安心できるし。」
確かに、苦戦は強いられたが、アレだけの数のゴブリンを何とかしのげたアンジェラ率いるパーティーを、MOLITOの女――自己紹介の末に、彼女の名はエリトアということが皆に知れ渡ったのだが――は気にいった様子だ。無論、パーティー内のほかのメンバーも、信頼できる魔術師呪文の使い手に満足のようだ。
「それにしてもこのパーティー、渋いわね。
まあ、変にセクハラ受けたりしないから安心だけど。」
「セクハラ……あなたも気をつけなさいよ。さっきすごく嫌らしい奴に出会って……」
メンツをざっと見回したエリトアに、アンジェラが忠告を入れた。いうまでもなく、彼女が話している「嫌らしい奴」とは、さっきルルンの酒場でアゴに一発叩き込んだ、いかにもな悪人のことを指している。
「もぉームカつくことばっか言うから、アゴ砕いて沈めてやったけど…」
「そうなの」
その時のことを思い出すと、また怒りに燃えそうである。みんな忘れたいのは当然だが、忘れようとすればするほど思い出してしまうものだ。
「時にエリトアさん。バードでそれほどレベルも高くないと見受けますが、
MOLITOを使えるとは相当な修行を積まれたようですな。一体どうやって…?」
「以前、魔術師やってたのよ」
「しかし、そこまで習得していながら何故、詩人に?」
「服装よ。どうも法衣とか胴衣とかは苦手で」
淡々とした会話が続く。
「アンジェラさん、ちょっと…」
ジュディがアンジェラに耳打ちする。
「もしかして、眼がギラついた性悪のハーフエルフ…ご存知かしら?」
「…知っているわ。というより、知っていたというのが正確ね。」
「…やっぱり。アンジェラさん、あの男が言っていたのはこの方ですよ、きっと。」
道理で地上を探しても見つからないわけだ。バードに転職し、さらに迷宮内に滞在しているのだから。
「…あの、何か酷いこととか、言われませんでした?」
心配性のジバリアが聞くと、エリトアはけろりとした顔でこう答えた。
「言われたかも知れないけど、気にしてなんかいられないわ。所詮は他人の戯言よ。」
「…強いんですね。」
ジバリアにとって、同じ中立の性格ながら悪人とも平気で付き合っていけたエリトアはとても頼れるように見える。
一方そのころ…
「へぶしっ!…誰か俺の噂してやがるな…くそっ!」
2日前、酒場で気まぐれに話し掛けた女に顎を殴られて以来、口を動かすたびに痛みが走る。おかげでイライラは募るばかりだ。偶々目に入ったタルに蹴りを入れ、ヒューマはリルガミンの裏路地を歩いていた。
(あの連中…いつか痛い目に遭わせて借りを返してやりたいところだが…)
と、頭の中に5人の顔を思い出してみる。その中の一人、ラウルフのビショップの顔を思い出したところで、ふと別の考えが浮かんだ。
(そういえば…エバイストもここに来ていたりするか?旅好きで真面目君のアイツならここにいてもおかしくないしな…)
自然と彼の足はギルガメッシュの酒場の方に向いていた。
| NAME | CLASS | SEX,RACE | LV |
|---|---|---|---|
| バリボー | G-Lor | M-Dwarf | 1 |
| ジュディ | G-Lor | F-Human | 2 |
| ジバリア | N-Mon | F-Felpur | 7 |
| アンジェラ | N-Ran | F-Human | 10 |
| ヴァラール | G-Bis | M-Rawolf | 8 |
| エリトア | N-Bar | F-Human | 6 |
1階ということもあり、そんなに苦しい場面は点在しなかった。なにせ罠解除、鍵解除なんてのは熟練者のレンジャーやバードにとって朝飯前である。
しかし一行はある点に気がつかない。いや、気がつけないのも無理はない。この迷宮に漂う「ただものではない感覚」を、ヴァラール、エリトアは察知していたのである。
しかしそれを持ってしても、完全に感知することは出来ない。何故なら複数の視点が無ければ…
トントン拍子で進んで2階の階段を下り、ある一角に差し掛かったところで、奇妙な集団が彼らを手荒に歓迎することになった。
「む! 何やら魔術師の気配を感じますぞ!」
バリボーが扉の前で一瞬構えを取って、全員に知らせた。
「恐れることはありません。準備はいいですか?」
「OKよ!」「はいっ。」「当然よ…」「…は、はぁい…」
扉を開けると奇抜すぎる連中が待っていた。
| 5 Level 1 Mage | (5) |
| 1 Level 5 Mage | (1) |
奇抜な連中の実態はレベルの低い魔法使いたちばかり6人であった。が、どうも何やら変なものを意識しているようなのである。
「な、なんじゃお前らは?」
「ひぃっ!ななな、何なんですかおじさん達はぁ…」
「待っておったぞ御主ども!」
「ここにあるはおじさんにあらず!
先の副将軍、三田拷問公でおるぞ!!」
リーダー格を取り囲み、どう考えてもパロディとしてか思えない台詞を口走る。
「アホらし…」
「一体何がやりたいのよ、あんた達は。」
…が、元ネタのわからん者にとっては寒々とさせられるようであった。
「むむむ…仕方がありませんな。スーさん、カーさん、懲らしめてやりなさい!」
一応その中のリーダー格である(と思しき)レベル5の魔術師が気合を入れる。
こちらの反応は全く意に介さず、魔術師たちはさらに自分たちのパロディに酔っている。
「異国のお忍びご一行様の真似ってところね。ということは…」
エリトアが魔術師たちとは反対のほうを向く。
「ヴァラール、アンジェラ、後ろに気をつけて!まだいるわ!」
短剣を抜き暗闇に向かって構える。果たして、一行の反対側から黒装束の人間(体形からそう判断した。もし服だけ見ていたら"men in robes"(ローブを着た者)と判断しただろう)が2人、飛び出してきたのだ。
エリトア:(これは…ますますその気ね)
またしても挟み撃ちである。が今度はエリトアの素早い反応と共にヴァラールがリーダー格と思われるレベル5メイジに向かってMONTINOを放ったこともあり、前回ほど厳しい戦いにはならなさそうである。
しかしながら、呪文の封印には成功したものの、魔術師のほうは呪文を唱える素振りはおろかあせる様子も無く、前衛の戦士たちの攻撃をよけることに徹している。レベル1メイジのほうはというと、HALITOを時々撃ってはくるものの、こちらも手に持った杖で殴りかかってくるばかり。むしろ後方のヤバげな連中の方に気を使ったほうがよさげだ。そのヤバげな連中は後衛の3人とわたりあっている。
…と、そんな立ち回りの実況をしていると…
「スーさん、カーさん、もういいでしょう!」
「静まれィ!」
同時に後衛に襲い掛かっていた黒装束の2名もレベル5メイジのほうに駆け寄っていく。そして…
「この紋所が目に入らぬくぁ!」
と、彼らが所属するギルドのものらしい印章を突きつけてきたが、当然、元ネタのわからぬ一行にギルドのシンボルなど見せられても目に入るわけがない。
同じ術者として思うところがあるのか、それともいつまでもパロディのノリで戦う魔術師たちにいいかげんうんざりしたのか、ヴァラールは姿勢を正し、一つ深呼吸をして言い放った。
「控えよっ!」
「ひ、ひぃっ!!」
「あわわわわ………」
ヴァラールの一喝に怯んだボケ魔術師一行は、青ざめた顔ですごすごと退散していった…。
「全く、情けない…。こちらは真剣だというのに…。」
ヴァラールが、かの者たちの去る姿を見て、情けなさそうにつぶやいた。
再び歩みを進めるパーティーだったが、ふと、アンジェラがあることに気がついた。
(おかしい。あの半獣の小僧とかトラブルメーカーも
今頃この魔道にいるはず…なのになぜ遇わないの?
もしかして、あいつらは違うブロックにいるのかしら?)
などと、1人でぶつぶつつぶやいていたアンジェラだったが、
「あ、アンジェラさん、足元!!」
「え? きゃ、きゃぁっ!!」
ジュディの警告も空しく、アンジェラはものの見事にピットに嵌ってしまった。
「痛た……何やってんだろう、私…。」
アンジェラらしからぬぼんやりした行動を見て、ジュディは一言、こう言った。
「私たちのリーダーなのですから、気をつけてくださいね。
アンジェラさんのおかげでこうして知り合えて、
それで冒険が出来ているようなものですし…。」
「……ごめんなさいね、心配かけて。
……どうしましょう、いったん戻ろうかしら、街に?
この魔道の状況は大体分かってきたし、
今後の作戦会議、ということで。」
「うむ、わしらには異存はないぞい。」
「……そうしましょうか……。」
「それが無難でしょうか。」
「そうね。久しぶりに陽の目も見てみたいし。」
一行は街に戻り、態勢を立て直すことに決めた。