リレー小説第5弾
管理人、クリス_NKから一言
まだ執筆中ですが、これ、一波乱どころか二十波乱ぐらいありそうな気がする…。
私はごく平凡な高校生、タイチ。DQやFFなどのRPGが大好き。
そんな私が、今日、初めてRPGツクール2000を購入しました。
「これで自分も好きなようにRPGを作れるんダー!」
さて、何を作り始めましょうか…
まずはDQを参考にしよう。キャラクターは…。えーと。
「タイチー、ご飯よー。」母の声だ。
「あーい、今いくからー。」
ツクール2000をインストールしようとした矢先に晩御飯が出来上がったようだ。
階段を下りるタイチ。
ドタドタドタドタ………
「!!!!!!!」
何かを急に閃くタイチ。
今夜のおかずは何か、ではなさそうだ。
「母さん、おれご飯いい。ちょっとやることがあるんだ。」
「え、あらそう。」
それだけ言うとタイチは部屋に戻り、製作を始めようとした。
その時。
ピンポーン
ん?誰か来たようだ。
ドタドタドタ…
「おーい、タイチ。俺、ヨシキだ。」
タイチの家にやって来たのは同じクラスのヨシキだ。
「お前に借りてた物を返しに来た。」
「そうか、まあ、上がれや。」
ヨシキは家に上がり、タイチの部屋に来る。
と、ヨシキはタイチの作業中のパソコンに目を留める。
「お、何だそれ?」
「今RPGツクール2000でゲーム作ってるんだ。」
「へーえ、すごいじゃん。完成したらやらせろよ。」
どどーん!
辺りに白煙が立ち込めた。
「わわっ!」
「な、なんだ?」
見知らぬ老人が現れた。
「わわっ! あんた誰だ?」
「ふぇふぇふぇ、わしはツクール仙人じゃ。」
「???」
老人は眉間にしわを寄せ、ゆっくりと近付いてきた。
「………タイチ、取り敢えず警察か?」
「………だよなぁ…、どう考えても住居不法侵入…だよなあ………」
「…これこれ、何言っとる? わしは仙人ぢゃぞ?」
「あー、はいはい。偉大なる仙人様万々歳。
もうちょっと待って下さいね、パトカーがお迎えにあがりますから。」
「ええぃ! わしは泥棒じゃない! ホンモノの仙人じゃ!
今、其の証拠を見せて進ぜようッ!!」
老人はいきなり座りこむと、何やら怪しい呪文を唱え出した。
「……」
「何が始まるんだ?」
「むおーーーーーーー
きえーーーーー!!!!」
「うわーーー!?」
老人は突然空を飛ぶと、そのままどこかへ行ってしまった。
すると、タイチたちの周囲が白く、まぶしく輝き始める!
「う……うわぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!!!」
どのくらいの時間が経ったのだろうか…。
2人は意識を取り戻した。
「何だよ…一体…。」
最初に口を開いたのはヨシキだった。
「分からない…。
少なくとも、ここは私たちの暮らしてる世界ではないな。
とにかく、何としてでもここから出たいところだが…。
「つーか……
お前がこんなもん買ってあれこれいじくったから
こんなわけワカメな事態になっちまったんじゃねーのかよ?!
元の世界に戻れなくなったらいったいどーすんだ!!」
ヨシキが至極真面目に突っ込みを入れる。
だいたいにおいてだ、タイチとヨシキのこのコンビ、この二人が対子ると、必ずと断言しちまっていいほど、タイチが何か問題を引っ張ってくるというのがお約束となっている。その尻拭いをヨシキがする、というのももはや定説。
RPGツクールの世界へ、ようこそ…。
どこかから、謎の声が聞こえてきた…。
声の主はいったい何者なのか……
そして、ここはどういう世界なのか……
タイチたちが元に戻るにはどうすればいいのか……
謎は深まるばかりである。
まず、北に進めば町がある。 そこで情報収集するが良い
「な…何?どーなってんだよコレ!?」
北へ向え。全ては其れからだ。モンスターと戦っても良いが、
LV1の貴様等ではゴブリン一体をリンチして辛くも勝利といった所か。
逃げながら町へ行き、装備を整えるのだ!
そう…
実はタイチの買ったRPGツクール2000には、購入者がプログラムの中に引きずり込まれて、その世界の中でいろいろ行ったことが自動的にプログラミングされてゲームとして作られていく、という5000本に1本だけの『バグ』が入っていたのだ!(しかもこのRPGツクール2000はVALUE版)
注・この話はあくまでも「フィクション」です。
「…まあ、右も左もわかんねんだから、
とりあえず北に……って、北ってどっちだよ?!?!?!」
そう、タイチ一行がこの地に降り立った時間は真っ昼間。しかし、それが何時であるのか、まではさっぱり分からない。しかも…である。私たちの世界では「太陽は東から上って西に沈む」というのはもはや定説であるが、この世界がそうであるとは限らない。
「………ムー、こうなったら野生の勘で……」
ってをゐ、大都会で暮らしてきたタイチよ、お前に野生なんてあるのけ?!?!
「…こっち!! こちが北だ!!!」
あーあ、勝手に決めちゃってもう…。
どーなったって知らないぞ、お前ら……。
サァ行くぞ、と言わんばかりに歩き出すタイチ。
しかし、である。行けども行けども目に映るのは見渡す限りの大草原。
町はおろか、木立のひとつも池のひとつも、果ては動くものさえない。
「おいタイチ、本っ当にこっちで大丈夫なのかヲイ?」
「…さぁ…?」
「…マジかよ」
いよいよ不安感が増してきたヨシキである。そこへ…
♪ちゃららら ら〜ら〜ら〜ら〜 ちゃ〜ら〜(戦闘1)
スライムが現れた
スライムが現れた
スライムが現れた
とーとつな様であるが、敵の出現である。
「ぬわぁ!? す…スライム!
初めて見た……んだが所詮は最下級の雑魚!
経験値にチェンジしてやるぜぇ!!」
スライム=RPGの代表雑魚、という偏見でもって大胆にスライム達へと突撃するヨシキ。
が……
フニャッ
まともにパンチを当てたはずなのに、もンのすごい手応えのなさ。
「…ヌカに釘ってこーゆーこというんだな……」
って、タイチ君、ぼけっとつっ立ってないであんたも戦いなさい。
「だぁりゃぁぁぁ!!!」
ムニュ〜
「ふン!!!」
ヌル〜
「……くそっ、何だよこいつら!!!!
まるで攻撃がクリーンヒットしやがらねぇ!!」
半ギレのヨシキが怒鳴る。
スライムどもには攻撃がまるで通じてないらしい。
それどころか………
ベチャッ!!!
いきなりタイチの顔にへばりついてきたスライムA(仮称)
「はうっ……ご……あ……」
地面をバシンバシン叩きながらもがくタイチ。
窒息寸前である……ってをゐ、ここで死んだら大変じゃないか!!!
その刹那……
ピキーン
…仮東(違)の方角から、冷気の光線が飛んできた。
すると、襲い掛かったスライム3匹は一瞬にして凍結、そのまま細胞が破壊されていき、消滅した。
「……あ、あの……大丈夫…ですか…?」
振り向くと、淡い桃色のケープに茶色のマントをまとった、「私、実は魔法使いなんです」といわなくともわかる風貌の、タイチと同じぐらいの年頃の少女が立っていた。
「魔女っ娘、萌え!」
ヅガッ!
ディスプレイを激しく振動させるほどに強烈なヨシキのツッコミが、タイチの脳天に炸裂する。その痛々しいドツキ漫才に相手の魔法使いは少々退き気味である。
「すいません、こいつには後でよく言って聞かせておくので…許してください」
「あ…はい。あの、お連れの方は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫です。この程度ではくたばりませんから」
と言う割には白目を剥いて落ちているタイチである。
「ところで、あなたのお名前は?」
「私はキャロルといいます」
「ところでキャロルさん…、つかぬ事をお聞きしますけれども、
『北』ってどっちの方角なんでしょうか…?
何か『北へ行け。そこに町がある』とか言われて、
ところがどっちが北だか分かんなくなって…」
「……だから4人で風牌をジャラジャラやって仮東がサイコロを……」
「違うっ!!!」
起き上がりにヨシキにデビルリバース(↓溜め↑+P・P)を重ねられ、またもダウンするタイチであった。
「き……北ですか……?
……もしかして『チサトの町』のことかしら…?
だとしたら、そこ、私の住んでいる町なので、
とりあえずご一緒しませんか?」
「え、いいんですか?
いやー、こんな美人とご一緒できるなんてなんて幸せなんだろ、俺?」
とりあえずハコってるタイチをずんずり引きながら、北へと向かうキャロルとヨシキ。
まさかこれが運命的な出会いになるとは、彼らは絶対知らない。
一行はキャロルの道案内でチサトの町の近くに着いた。
「なんつーか、こう…『大草原の小さな村』って感じで…」
「タイチ、それは言うな…」
「おー帰ってきたなー、キャロル」
なんだかタルそーに門の見張りをしている傭兵風の男が一人。
鎧をガッチリ着込んでいて、なかなか腕も立ちそうである。
「…で、そのアヤシげな二人はどちらさん?」
気絶しているタイチと、それを引きずりながら格闘家のごとくたたずむヨシキを見て男の目つきが険しくなる。
「気にしないで、ブライアン。町の外でスライムに襲われていたのよ」
「ふーん、そりゃあ難儀なこった。ま、キャロルが連れてきたんなら問題ないな…さ、入った入った。近頃は田舎といえど騒がしくてな」
ブライアンと呼ばれた男は、ヨシキ(と気絶しているタイチ)を中に招き入れると、そのまま見張りの仕事に戻ってしまった。
「とりあえずチサトの町に着いたはいいが…俺たちにどーしろと?」
「まずは……そうですね、この町の案内でもしましょうか。」
キャロルはそういうと、一通り町の施設などを案内してくれた。
商店街、病院、役場、公園、宿場……
生粋のチサトっ子のキャロルの案内は至極丁寧なものだった。
彼女にとってはよほど愛着のある町なのだろう。
そうこうしているうちに、だんだん日も暮れてきた。
そろそろ宿泊する場所を決めねばならない。
が、肝心なことに気が付くのがあまりに遅かった。
「俺たち、こっちの世界の金ねーじゃん!!!!」
さあ大変だ、どうにかして金を捻出しなきゃならないぞ。
「…そいや、この辺に雀荘とかってありませんかね?」
ヨシキがキャロルにたずねる。
どうやらこの男、麻雀で一発稼ぎにかかろうとしているらしい。
「え、ま、まあ……あるにはあるんですけれども…
でも、結構危ないところもありますから……
あの……よかったら私の家に泊まりませんか?」
「なぬぅっ?!?!?!」
「よ、よかとですか?!?!!」
男2人が激しく興奮しだす。
「ええ、今、父に確認を取ってみますから。」
(ちっ、オヤヂ付きかい……)
何考えてんだよお前ら、この。
というわけで、すったもんだはちょっとあったものの、
一行はキャロルの家に宿泊することが決まった。
「…なあ、ヨシキ?」
「ん?」
「俺ら…なんでこっちに来たんだろな…?」
「…お前があんなソフト…」
「いや、それはわかってるよ、その件は悪かった。
でも、何で俺ら『だけ』こっちに来ることになったんだろ?
他に来ているやつはいないんじゃねーのか、おそらく?」
「……そりゃそーだろ。だいたい…
まあいいや、とりあえずアレだ、明日からどうするか
とりあえず決めとかないとな。」
「だな。いつまでもこうやって居候生活してるわけにゃいかないし。」
その頃、キャロルは別室で父と長老と、意味深な会話をしていた……。
「…あの二人、冷静に考えるとおかしいと思わんか?」
長老がキャロルに尋ねる。
「…確かにそうです。
あの一帯を丸腰で歩くなんて、普通考えられません。
なぜあんなところにいたんでしょう?
それに、私に方角を尋ねてきたということは、
いきなりあの辺りに放り出された、ということでしょう。」
「…だとすると、何者かによってあの付近に飛ばされてきた、
そう考えて間違いなさそうだな。
しかし、いったい誰がそんなことを……?」
「…ただ一つ言えることは、なるべく早いうちに、
ここから出て行ってもらいたいものだ、ということじゃの。
食い扶持も稼げるかどうか怪しい連中じゃからの。」
「……でも……」
「どうした、キャロル?」
「…何かあの二人から、不思議な力を感じるんです。
私の魔術師としての勘がそう告げているというか、
こう、世界を変えるような、とてつもないパワーを…。」
「何をいっとるか、キャロルよ。
お前の才能はわしらも認めるところじゃが、
それは買いかぶりすぎ、というものじゃぞ。
まあ、しばらく様子を見てやることにはするが、の。」
新しい朝が来た。
コンコン
ドアを叩く音がした。
「朝ですよ。二人共。ほらほら、起きて下さいって。」
キャロルは、二人をゆさぶり起こした。
「ん〜…。」
やる気の無い返事をする、二人。
「朝ごはんが出来てます。早く降りてきて下さい。」
キャロルが階段を降りていく音が聞こえた。
「ん、はぁっ!?俺はこんなトコで何やってんだ!?」
寝ぼけているのか。
「ココ、どこ…?」
部屋の中を見渡して、ハッとする。
ヨシキは、今までの事を思い出していた。
「そうだ…。あのソフトのせいで…。俺達は…。」
考えれば考えるほど、実に奇妙な運命である。
だが、タイチは気持ち良さそうに眠っていた。二度寝である。
「…っつーか。お前のせいだよ!」
ヨシキは隣に寝ていたタイチを蹴飛ばした。
「ん〜〜…。」
タイチがやっと目を覚ます。
「ん〜、飯、飯〜。母さ〜ん。飯〜。」
タイチは階段を下りていった。
自分の家と勘違いしているようだ。
「何はともあれ、動かなきゃ始まらんな。RPGなんだし。」
ヨシキもタイチについっていった。
…「ん、はぁっ!?ここどこだよ!?」
先ほどのヨシキと同じ反応である。やっと目を覚ましたか。タイチよ。
二人が階段を下りると、キャロルと彼女の父親は、
すでに席についていた。
「よく眠れたかな?二人とも。」父親が言った。
「あ、おはようございます。」
挨拶をし、二人はキャロルに言われた席についた。
「さぁさぁ。どうぞ召し上がって。私が作ったんですよ。」
「うわー!おいしそー!」
確かにおいしそうである。
朝はいつもトーストぐらいしか食べない二人にとっては、である。
だがお世辞にも、豪華とは言えなかった。何か事情があるのだろうか。
「いただきまーす。」
隣でガツガツ食ってるタイチは無視して…。
ヨシキは、考えごとをしていた。
「ところで、二人のことなんだが、君達はどこから来たんだ?」
やっぱり来たか、とヨシキは思った。
当たり前である。奇妙な格好をして、
草原を、子供二人が歩いていたんだから、気にならないワケが無い。
「あ、それは……。」
どうしようか…。ここで本当のコトを言って、信じて貰えるだろうか
むしろ、余計怪しまれるような、そんな気がした。
ここは何とかうまい言い訳を…。
だが、ヨシキが何か言う前に、サラダを食っていたタイチが言った。
「いやー、実は俺たちRPGツクールっつうソフ……ぶふぇっ!(謎)」
タイチが話し終える前に、ヨシキがテーブルの上のパンを、
タイチの口に突っ込んだ。
アホか。ここにはゲームはもちろん、パソコンなんか無いのだ。
ちょっと頭がおかしい、とか思われたら困る。
「いやー、俺たちちょっとワケありで旅してまして〜、
長旅で疲れたのか、ボーッと歩いてたらモンスターに見つかっちゃって
そこをキャロルちゃんに助けてもらった、というわけなんです。」
ちょっと無理のある説明だが、今はこう言っておくしかない。
だが、キャロルと父親は、ヨシキの説明よりも、パンを突っ込んだことに
気がいっているようだった。キョトンとしている、そんな感じだった。
…食事は終わり、二人は二階の部屋に戻っていた。
タイチが言った。
「いや、しかし、いつまで嘘が続くかね。」
「あんな事言って、変に思われたらどーすんだ。俺たちには、
今、金も無ければ家も無いんだぜ。追い出されたら困るだろ。」
確かな事は、それだけである。金も家も無い。
どーしたものか。
「ところで…真剣な話なんだが。」
「何だ?どーした?」
「…さっき食ったほうれんそうが
歯に挟まって取れん。つまようじ持ってない? ぶふぇっ!」
タイチの歯が一本折れた。
「…まあ、とりあえず、だ。
戻る方法を探すためにはこの世界を旅しなきゃならん。
…しかし、俺たちにはその旅をするために必要なスキルを
一切持っていない、ということがアレで分かったわけで、
そうなるとどうにかして何とかまともにモンスターどもと戦える
能力をつけなきゃならん、ということになるわな。
ここ、典型的なRPGの世界なわけだし。」
至極もっともなことを言うヨシキ。
「まあ、ほりゃほーだ。
ほーにかして戦えるのうりょふを身につけなならん。」
「タイチ、発音変だぞ。」
「おまへがいきなりぶんなぶったから……
ん、まへよ、お前、そんだけぶんなぶるひからがあったら
はくとうか(←タイチは格闘家と言ってるつもり)にでも
なったらろうら?」
「……どうやって?」
「それはここの人とそうらん(相談)して……」
「…いちいち聞きづらい発音しやがってこの。
じゃお前はどうするんだ、タイチ。」
「んー、ほりあえず戦士でもやってみっかな。
やっぱRPGの主役は戦士でしょ。それに俺主人公だし〜。」
「いつからお前が主人公になったーーー!!!!!」
「…だってこのソフト買ったの俺だもん。」
「…ようやく聞きづらい発音が直ってきたな。
まあいい、とりあえずそれ身につけて旅すんぞ。
とにかく、ここから早く元の世界に戻りたいからな。」
とりあえずだが目的を見つけた二人だが、果たしてどうなるやら…。
「……ん…?」
タイチは部屋の隅に、赤い本を見つけた。
「なんじゃこりゃ。」
本を開くタイチ。
その時、タイチとヨシキには不思議な声が聞こえた。
「セーブをしますか?」
……はぁ?
「セーブをしますか?」
その声は、頭の中に響いてくるようだった。
ヨシキが聞いた。
「セーブってのは、つまりセーブのコトなのか?」
「セーブしますか?」
「あ〜…うるせぇっ!!!」
バタン!とタイチが本を閉じた。
「とりあえず、はい・いいえで答えるんだろうな…。」
「いや、もううるさいし、どーでもイイ。」
…改めて、二人は旅に出ようと誓った。
「と、言うわけで、俺たちまた旅に出ます。
…が、その前にここでちょいとばっかし修行させてください。
もちろん、それ以外にちゃんと食い扶持稼ぎますから。」
タイチとヨシキが長老とキャロル一家に丁寧に頭を下げる。
「まあ、……わしらもそこまで言うなら止めはせんが、
ただこれだけは言っておくぞい。外の世界は厳しい。
生半可な修行ではとてもじゃないが生きて帰れん。
その心積もりでしばらくここに逗留して、
その上でわしらが見ても大丈夫そうだったら
ここを出ることを認めよう。
もちろん、自分たちの食い扶持は自分たちで稼いでもらうがの。」
そんなわけで、この2人の修行が始まることとなった。
が、意外なことがこのあと起こるのであった。
「ところで、この辺に腕の立つ剣士の方はいませんかね?」
タイチが尋ねると、長老は少し考えてこういった。
「まあ、一番腕が立つのは『あいつ』なんじゃがの…、
ちょいとばかしワケアリの男での、こちらとしては
あまりお勧めしたくないんじゃよ。
だからここの門番の男に稽古をつけてもらった方が
幾らかマシじゃろうと思うぞ。
あやつらだってそこらの魔物を威圧するだけの力は
十分持っているわけじゃからして。」
何だか長老は奥歯に物が詰まったような言い方をする。
少しばかり気になったタイチだが、まあ、そういう事情なら、と
門番の男たちに稽古をつけてもらうことにした。
そんなわけで、格闘実践を積むことになった二人。
と同時に、自分たちの食い扶持稼ぎということで、
あちこちの畑の手伝いなどもすることになった。
基本的にこの村では自給自足が原則である。
貨幣は外に出るときだけ、村の中での取引は
物々交換、という、昔ながらの町だ。
当然タイチやヨシキはそんな経験をしたこともなく、
たどたどしい動きで手伝いをしていくし、
そのあとさらに格闘、である。
帰ればヘロヘロになっているのが当たり前。
「居候、3杯目にはそっと出し」などという川柳など
意にも介さない大食らいっぷりを発揮する。
が、やはり長老の言った言葉が頭に引っかかる。
さて、こんな生活が続き……1ヶ月もすると2人の身のこなしも
それ相応になってきたようで、門番とも互角に争える、
魔法に関してはさすがに無理のようだが、
まあ、戦士と武闘家なので問題はなかろう。
とにかく何としてでもこの世界から抜け出さなくては…
そのために、2人は再び旅を続けることを志願した。
「ふむ、なるほど、そうか、ここを出て旅をするのか。
まあ、気をつけて旅を続けることじゃ。」
そういって長老に今まで世話になった礼を言い、
散々戦った門番を後にしようとしたそのとき…
「待ってください、私も連れて行ってください!!」
後ろから、聞き慣れた声が聞こえてくる。
その声の主はキャロルだった。
「……正直に言って、お二人が旅を続けるには、
まだ実力不足の面があると思います。
だから、ある程度魔法も使える私も連れて行ってください!」
「え? そ、それはありがたいけれども……」
「いいの、勝手に村を出ちゃったりして?」
「大丈夫です。私のような人、町にはたくさんいますし。」
「…むふふ…それは実にありがた…」
ゴキッ!!
スケベ心を発揮したと思われるタイチに、すかさずヨシキが関節技をかける。悶絶するタイチをよそに、
「改めて、よろしくお願いします。」
そう丁重に挨拶すると、再び一行は冒険のたびに出始めた。
とぼとぼと大草原を歩んでいく3人。行き先が特に決まっているわけでもない。村人のから、ただなんとなく南西の方角に集落がある、という話を聞いただけだ。とにかくひたすら歩く。
と、そんな3人の目の前にひょっこり飛び出した魔物が!!
スライム 3匹
「フフフフフフ…この俺の剣技、とくと見せてやるわ!!」
タイチが先日の恨みだとばかりにハッスルし始める。何せあの時はキャロルの冷気呪文で死に掛けたというのもあり(もちろんキャロルに怒ったりはしていない)、相当恨みつらみがあるようだ。
「とりゃーーー!!!」
ダンゴ3兄弟をほうふつとさせる縦列行進をしているスライムを相手に、タイチが一刀を振りぬく! すると、3匹まとめて刃が入ったらしく、スライムが全部はじけ飛んでしまった。やはり修行の成果は伊達ではない。
そんなこんなでのんびり旅を続ける一行だが、険しい山地に差し掛かったとき、一つの洞窟を見つけた。
「……南西の集落に向かうには、ここしかないよな…?」
ヨシキが洞窟を指差す。普通に考えれば、山登りというリスクを背負うよりは洞窟を使ったほうが安全だ。ということで一行は洞窟に足を踏み入れた。
「かび臭いですね…。」
キャロルが二人に話しかける。松明の炎が揺れる中、3人が進んでいくと、そこには何者かが住んでいると思われるエリアに差し掛かった。イスにテーブル、その他本やらかまどやら、一通り生活することができるようになっている。
「だ、誰じゃ?!」
奥のほうから声が聞こえてきた。
見ると、奥からオークの姿と思しきものが現れた。
いや、実際にオークであったのだが……。
オークはこちらを見るなり声高らかに叫んだ。
「わしの住処に勝手に忍び込んで何をする気じゃ!!」
「い、いや、俺たちはただ単にここを通りたいだけで……」
「何ゆえ?」
「いやだから町の長老がそっちに行けって……」
「碌な目的もなくここを荒らそうとするとは!」
「い、いえ、荒らすつもりはありませんから!!」
「ではなぜそんな風に武装しておる?」
「だーかーらー、ここを荒らすつもりは毛頭ないと……」
「ホントにないと言い切れる根拠を示してみよ。」
「う〜、そんなこと言われてもなぁ……」
「なら仕方がないの、こちらも実力行使……」
オークが指パッチンすると、奥からぞろぞろとオークの群れがやってきた。その数はざっと考えて30体はいそうであり、この狭い洞窟であればキャロルの呪文でも全員には届かないであろう。絶対的に不利な状況である。
「野郎ども、やっちまえ!!!」
「いや、ちょっと待った、待ってくれぇ……」
「お願いです、こちらの話も聞いてください!!!」
さて、どうしたものか……
戦闘
> 話す
逃げる
「だから、私たちはここを荒らすつもりじゃなくて、
この向こうに行きたいだけですから!!
ここには何もしませんってば、約束します!!」
「……ほほう……ならそこの嬢ちゃん、
その体、ちょっと貸してもらおうか…」
「な、てめぇらキャロルさんに何をするつもりだ!!」
「なぁに、悪いようにはしないわい。
ちょいとばっかし愛を求めてるだけってもんだ……」
タイチとヨシキが身構える中、キャロルに抱きつこうとしたオークの頭領だったが……
「この……ドスケベェェェェェェェェェェェ!!!!」
何と、以外にもキャロルがストレートパンチをオークの頭領にぶちかましたのだ! しかも、その威力たるやすさまじく、後ろに控えていたオーク全員をなぎ倒してしまった。もちろん全員意識を失っている。誰一人反撃できない。
「…おい、キャロルさんを怒らせるような真似は
しないようにするべきだな」
「ああ……あのパンチ食らったら死ぬな、確実に。」
「ふぅぅぅぅ…危なかった……。さあ、先に行きましょう。」
タイチとヨシキがぼやいているところで、キャロルが急かす。とりあえず危機は脱したらしく、この洞窟に潜むモンスターもおとなしくなっている。やはりさっきのパンチの音で相当ひるんだのだろう。出てくるモンスターもそんなに恐るべき存在ではなかった。着実に経験値に化けていく。
ようやく洞窟の外に出られた一行。久しぶりに太陽の光を浴びた一行は、そのまぶしさにしばらく目を開けていられなかったが、眼前には草原とはいえ、別の種類の草が生えている。ここから南西の集落に向かうことになる一行。
「南に向かっているということで、
だんだん暖かくなってきましたね。」
キャロルもこちらのほうに来たことがないせいか、嬉々として旅を続けている。
もちろん、タイチとヨシキもこの空気を楽しんでいるようだ。
「でもまだ結構距離ありそうだよな。
まあ、その間経験値稼ぎにいそしむべ。」
どうやら、二人ともこの世界に完全に順応してきたのだろう、戦闘技術も少しずつうまくなってきている。登場する敵は洞窟の連中よりは幾分手ごわかったが、それでも勝利を収めることが出来るようになったのは大きい。……とはいえ、キャロルのハードパンチは出ていないのだが。
やがて、船が見えてきた。どうやらアレが「南西の町」と思われる。方位磁針も間違いなく南西を示しているので、のんびりし照られなかった一行は走って走って走りまくって町に向かっていく。 ……が、さすがに3人とも無茶したらしく、町に到着したらすっかりばててしまい、しばらくの間入り口でゼェゼェヒィヒィしていた……傍から見れば相当間抜けである。よほど強いモンスターからトンズラしてきたのかと思われても文句は言えない。