刑事法関係の駄文

以下の文章は、99年に刑事訴訟法の授業におけるレポートで使用したものです。
無断転用はご遠慮ください。

これこそ読む人は皆無だと思う…



刑事弁護の流れ    (1999.05.17 作成)


1 冒頭手続

 冒頭手続で行われる手続で主要なものは,裁判所に出頭した被告人が検察官により公訴を提起された者に間違いないかどうかを確かめる人定質問,審判の対象を明らかにする起訴状朗読,事件の争点を明らかにする罪状認否の三つです。裁判官は,事件について予断を持たないようにするため,起訴状に記載されている事項のほかは,事件について白紙の状態で公判に臨みますから,この手続で初めて事件の争点を知り,以後はその争点を中心に手続を進行させることになります。


2 証拠調べ手続

(1) 検察官の立証

 冒頭手続の次に行われる証拠調べ手続は,検察官側の立証と被告人側の立証に分かれます。最初に行われるのは検察官側の立証です。
 刑事事件においては,「疑わしきは被告人の利益に」の原則が貫かれていますから,まず,検察官が,証拠によって公訴事実の存在を合理的な疑いを容れない程度にまで証明するための立証活動をしなければならないわけです。具体的な手続としては,検察官は,まず冒頭陳述を行って,証拠によって証明しようとする事実を明らかにした後,個々の証拠の取調べを請求します。これに対して,裁判所は,被告人側の意見を聴いた上で,検察官により請求された証拠を採用するかどうかを決定し,その上で採用した証拠を取り調べます。証拠には,人証,物証,書証の3種類があり,それぞれの種類ごとに,例えば,人証であれば尋問,物証であれば展示というように取調べ方法が法律に定められていますので,それに従って取り調べるわけです。


(2) 被告人側の立証

 検察官側の立証に続いて,反対当事者である被告人側の立証が行われます。この立証は,裁判官に対して,公訴事実の存在につき,検察官の立証が合理的な疑いを容れない程度にまでは証明されていない,と考えさせるだけで十分であり,それ以上に,公訴事実が存在しないことまで証明する必要はありません。公訴事実の存在に争いがない事件については,主に,被告人にとって有利な情状の存在を証明することを目的とすることになります。裁判所は,検察官側の立証の場合と同様に,被告人側が取調べを請求した証拠を採用するかどうかを決定し,採用した証拠を,法律の手続に従って取り調べます。

(3) 弁護人の役割

 現行刑事訴訟法は,当事者主義的訴訟構造を採用し,証拠の収集・証拠の公判への提出等の訴訟活動を原則として当事者双方の手に委ねています。そのため,当事者が十分にその活動を行い,攻撃・防御を尽くすことが,適正・迅速な刑事裁判の実現のための不可欠の前提となります。検察官は法律家ですから,このような法の要請にこたえることが可能ですが,被告人の方は,ほとんどの場合,そうはいきません。そこで,その補助者としての弁護人の役割が極めて重要になります。死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる事件の審理では,弁護人がいなければ開廷できないものとされ(必要的弁護事件),また,被告人が貧困その他の理由により自ら弁護人を選任することができないときなどに,国が弁護人を付ける国選弁護制度が設けられているのも,弁護人の役割の重要性を考慮したものです。

(4) 弁論手続

 証拠調べ手続が終わると,弁論手続が行われます。まず,検察官が論告を行い,事件に対する事実面,法律面の意見を述べます。通常は,その最後に求刑を行います。次に,弁護人が弁論を行い,被告人の立場から見た事件の事実面,法律面の意見を述べます。最後に行われるのが被告人の最終陳述です。これが終わると結審となり,判決が宣告されることになります。

3 判決宣告手続

 判決の宣告手続においては,裁判所が判決の言渡しをします。公訴事実の存在が合理的な疑いを容れない程度に証明されており,かつ,その事実が刑罰法令に触れる場合には,有罪判決がなされ,刑が言い渡されますが,被告事件が罪とならないとき又は被告事件について犯罪の証明がないときは,無罪判決が言い渡されます。


上訴手続その他

1 控訴及び上告

 第一審の判決に不服がある当事者は,高等裁判所に控訴することができ(ただし,高等裁判所が第一審である事件の場合は,最高裁判所への上告だけが可能です。),高等裁判所の判決に不服がある者は,最高裁判所に上告することができます。

2 略式手続等

 以上に述べたのは通常の手続ですが,刑事の手続には,このほかに,罰金及び科料の財産刑を書面審理のみで言い渡す略式手続等,より簡略な手続もあります。もっとも,この手続は,被告人から公開裁判を受ける権利を奪うものではありませんから,本人の承諾がある場合に限って行われ,また,その裁判に不服があるときは,正式裁判の申立てができることになっています。




外国人訴訟における通訳について    (1999.07.16 作成)


 東京地裁の受付でその日の事件の記録を見ると、案外外国人が被告人になっている事件が目立つ。平成10年度の犯罪白書を見ると、わが国における刑法犯検挙人員総数中に占める外国人の比率は、3.3%となっている。起訴猶予率は、日本人が被告になった事件では60.0%なのに対し、外国人が被告になった事件では91.2%なので、裁判まで来るケースは3.3%よりも低いはずである。しかし、受付にある記録を見る限り、その割合はもっと多いように思えた。
 言葉の通じない異国の地で裁判にかけられるというのはどんな気持ちなのだろうか。手続の面では日本人と変わりなく裁判を受けられるのだろうか。例えば、通訳はちゃんと機能しているのであろうか。そのようなことが頭によぎり、外国人が被告人となっている事件を傍聴しようと思ったのである。
 外国人の事件であると、一番問題となるのはやはり言葉の問題であろうと思う。犯罪白書によると、通訳の言語は中国語が42.6%でトップ。英語はわずか3.4%でしかなかった。
 二つの事件を傍聴したが、通訳は中国語とスペイン語であった。中国語通訳の事件では特に問題は感じなかったが、スペイン語の事件では、傍聴していても多いに問題がありそうな感じがした。傍聴席にスペイン語通訳の方が居たのは偶然か必然か分からないが、その人に言わせると、この裁判の通訳人はあまりよくないらしい。素人が端から見ていても、よくつっかえるし、通訳にやたらと時間がかかったり、長いセンテンスを訳すのに一言で済ましてしまうことがあったりと、かなり怪しげであった。
 一体、通訳人はどのようにして選任されているのだろうか。これが傍聴をしてみてまず思ったことである。軽微な事件なら通訳が多少不備であってもそれほど重大なことにはならないかもしれないが、この事件はお世辞にも軽微な事件とは言いがたい。思うに、起訴状や弁論などの書類を裁判所に提出する際には、あらかじめ翻訳済みのものも添付し、それをその言語が分かる者に事前にチェックをさせ、ある程度以上重大な事件には通訳人は複数つけるべきである。そうすれば通訳の不充分な点はいくらかは緩和されることであろう。そして、内密に傍聴席にも通訳監査人などを座らせ、不充分な通訳をした通訳人は罷免させることができるようにするなどすればもっと良い。これは、通訳人のついた外国人事件の有罪人員がこの10年で約16倍にも増加しているということからしても、急務なことであると思われる。しかし、そのための経費をどうするかと言われると困ってしまう。




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