GAGAWIN KO ANG LAHAT
(すべて私のやったこと)
 
98年:グッド・ハーヴェスト・プロダクションズ
監督:タタ・エステバン
主演:トントン・グチェレス
    アンジャネット・アバヤリ
    アドニス・ラクサマナ
    ラヴリー・リヴェロ
    テレサ・ロイサガ
    ロベルト・アヴィレス
 腹の立つタクシー・ドライヴァーにはマニラで嫌というほど出会うが、当然ながらけっこうイイ奴もいる。妹の夫が日本人だと嬉しそうに話しかけられたケースもあるが、そりゃあ車を買ってもらって、商売ができるんだから親日になるよねと感じるものの、そんなことはどうでもいい。タクシー・ドライヴァーを主人公にした作品であり、マーティン・スコセッシの『タクシー・ドライバー』のようにゆがんだ人物を扱うのではなく、普通の男が追いつめられてしまう過程を、そこそこのリアリズムで描いている。
 トントン・グチェレス演じる主人公は真面目にタクシーの仕事をしているのだが、家へ帰ればラヴリー・リヴェロ演じる妻から生活が苦しいと小言をいわれ、リチャード・オン演じる中国系のオーナーに条件をよくしてくれと頼んでも断られる。まったく、よくある庶民の苦しい家庭事情がストレートに登場。交通事故を起こしてしまったことなどが重なって、妻がみつけてきたアーチー・ヴェントサ演じる金持ち弁護士のお抱え運転手に転職する。
 ところがアーチーの名づけ子であるアンジャネット・アバヤリ演じる娘の専属なのだが、これが安全運転をしていると「もっと飛ばせ」と無理やり命じるし、ロベルト・アヴィレス演じる不良たちと夜中まで遊び、トントンの拘束などまったく考えない性格の悪さ。
 アドニス・ラクサマナ演じる友人のパトロン的な恋人であるテレサ・ロイサガ演じる女性からカネを融通してもらうも、テレサに誘惑されたことがバレて、アドニスから殺されかけるし、子どもが病気になってテレサからのカネはなくなってしまうし、AJの理不尽なワガママに我慢できなくなって、ついに暴言に対して反論したらクビになるし、タクシー運転手に戻ったら車が故障するしで、まさに踏んだり蹴ったりとはこのこと。誰だってキレるよという状況をうまく現出させている。
 幻想シーンをたくみに交えて、トントンの心理を伝える表現力がまずまず。
 ついにたまった不満を解消すべくAJを気絶させて誘拐し、レイプしようとするも、根が善人だからやっぱりダメだと悟って、気がつかないうちに返しにくる。そこへロベルトたちの待ち伏せにあって拉致され、AJが犯される寸前に助けるものの、ロベルトらを殺してしまう。
 テス・ヴィリアーラマ演じるロベルトの母などがアーチーの顧客だったから、AJが偽証し、トントンは殺人罪で裁判に。
 まったくこれだけだと運のない男の救いのない話なのだが、AJが良心の呵責から真実を証言して逆転無罪となるわけである。
 本当は恩人であったトントンへの感謝からAJが改心するふうに終わるのだが、AJの揺れる心理も幻想シーンなどを加えながら、それなりに説得力をもたせていて、破綻のないドラマに仕上がっているといえよう。タタ・エステバン監督は平均的によくまとめた感じである。
 ただ元々はAJのほれぼれするようなくびれのプロポーションがみたくて、それだけを期待していた作品だっただけに、乳房がこぼれんばかりの谷間が露出したシャツで前かがみになったり、半ケツになりそうなジーンズ姿などセクシーぶりは堪能させてくれるものの、くびれの強調がないのはやや不満。
 いや、けっこう不満。
 相当に不満。
 トントンが愛撫しようとシャツのボタンをはずし始めるカットなど、オオオっと興奮したのだが、ブラもみせないうちに終わり。後半で感情をむきだしにするときの表情が意外とブスだたりして、AJの魅力は不発のままになってしまっている。まあ美人という観点ではラヴリーのほうが上だと思うが、貧乏所帯の妻役として浮いていないあたりはさすが。ただこちらも色っぽいシチュエーションがなく、大人のムードのあるテレサも、ほとんど露出しないうちに愛撫シーンが中断してしまうから、女優の魅力という点では失格である。
 そんなことは普通の感覚からすれば、映画のできにまったく関係ない要素だと指摘されれば、その通りなのだが…