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高知県土佐清水市中浜という太平洋に面した小さな農村と漁村を持つ地に私は生まれました。

日本で初めての国際人、ジョン万次郎が生まれた地でもあります。
そこには美しい海が広がり、ウナギや手長エビがいる澄んだ川が流れ、母やお婆
さんは畑仕事に明け暮れ、父は収入が安定しない漁師から外国航路の船員にな
り家族の生活を助けました。小学校は木造平屋のすきまだらけの教室で学び、また海や山や川そして畑が私の自然の教室でもありました。そう…ないものといえば
都会くらいなものでした。

私の家は当時木造平屋の囲炉裏や土間、芋つぼ、かまどを持つごく普通の田舎の家でした。親の留守をいいことに屋根に登りスズメの巣をよく観察したものです。
その時感じた事は屋根の上から見える景色がいつもと違っていた事でした。それは今も仕事に役立っています。

そして小さな太平洋に面した村は造成された土地ではなく、自然の形をくずさないで道をつけただけのシンプルなものでしたが、とても美しい景色でした。畑に行く道の土手には、お茶の木が植えられ、それが根をはり、土の流れを止め、やがて私達の食卓にお茶としての恵みを与えてくれます。

コンクリートで固められた擁壁とは違い自然の景観としてもいい環境だったと思って
います。今の都市周辺の造成は、切り土や盛り土をしながら宅地をつくっていきます。いくら構造計算して擁壁を作ったとしても自然はそれを平気で裏切り壊してし
まいます。

傾斜は傾斜のまま表面には緑を、また木を植え根をはらし地盤を守るという考え方も大切ではないでしょうか。その方がコストもかからず街も建物も自然と調和した形になっていくと思うのです。

もちろん傾斜にも限度があり何もかも自然のままというわけにはいきません。
建物やそこに暮らす人達を守る為には地すべり等に対しても安全なものを作ることはいうまでもありません。自然のままがすべてだとは思いませんが平坦地だけを
宅地としてつくるのは著しく可能性を摘んでいると私は思います。


『家はもっともっと美しい風景になるようにつくれるはず』です。

ヨーロッパの町はどうしてあんなに美しいんでしょう?
それは個々の家が自己主張するのではなく、ひとつひとつの家はとてもシンプルな
原理で出来ていて、家並み全体がひとつの群れとして町の風景になるようにつくられているからだと思います。そして人が、時間が町を育てています。町全体をひとつの「庭」と考えるような町をつくっているのです。


すべての芸術は自然界からインスパイアーされます。

スペインの建築家アントニオ・ガウディの言葉より『自然の中に最高のものがある』
できるだけ自然の環境を壊さず自然と共に共生していける家づくりができたらと願っています。

そして60年から80年たち、いよいよという時は土に還る材料を使う事がなにより大切ではないかと考えています。