【難しい】
ステロイド外用剤の薬害について語るのは、いささかデリケートな問題である。
難しいので、実はあんまり書きたくない。
医学的に間違った事を書いてしまう可能性もある。その点、読んだ方からのご教示・ご指摘をお願いしたい。
ということで、以下の文章は今後書きかえる事も予想されるし、一素人の考え、ある患者が感じた事ととして読んで欲しい。
エイズを起こした血液製剤の場合、エイズ・ウィルス入りの薬など、悪に決まっているし、代替手段があるなら、直ちに使用禁止にすべきなのは、素人目にも明らかだ。
また、その被害の結果も、血友病とエイズははっきりと違う病気だから、エイズになった場合、それが元の病気ではなく薬害である事を識別するのは、簡単だ。
(もっとも、これほどはっきりしている薬害でさえ、裁判で和解に至るまで、患者が大騒ぎし、厚生省に陳情し、マスコミを巻き込んで、7年も掛かったのであるが。)
アトピーとステロイド外用剤の問題は、そう簡単ではない。
【ステロイド外用剤の副作用】
まずは医学書から、ステロイド外用剤の副作用を見てみると、
「大きく分類すると
1.易感染性の亢進
2.皮膚の日菲薄化
3.血管壁の脆弱化
4.毛包脂腺系の異常活性化など
(以下略)」(p13)
「表13(p14)から抜粋
細胞の増殖能の抑制による副作用…………
皮膚萎縮・乾皮症ないし魚鱗癬様変化・創傷修復遅延 等
細胞機能の変調に基づく副作用…………
毛細血管拡張・ステロイド潮紅・酒さ様皮膚炎・ステロイドざ瘡 等
免疫抑制に基づく副作用…………
感染症の誘発と憎悪(細菌、真菌)
その他…………
接触皮膚炎・光過敏症・ステロイド緑内障・ステロイド白内障 等」
――――――『皮膚外用剤の選び方と使い方』西岡清著・1992年・南江堂
とある。
しかし、これを読んでも、何がそんなに問題になっていのか良くわからないだろう。
アトピー性皮膚炎に関する医学書を読んでも、この程度の事しか書いていない事が多い。添付書もまたしかりだ。
それを読んだだけでは、「ちょっと副作用に気を付けで使えばいいんだな。」程度にしか、思わないだろう。
「ステロイドの副作用」という言葉がよく使われているが、マスコミを含めて一般人は薬の害という、もう少し広い意味の問題を指しているように思われる。
医学的な狭い意味では、「アトピーがちっとも治らない。むしろ悪化して来る。」事や、リバウンドは副作用に含まれない。(副作用と重複してる部分もあると思われるが)
「ステロイドはアトピーを治す薬ではなく、抑えているだけの薬である。」という問題もあるが、これも副作用ではない。
ステロイド内服剤の副作用に、副腎皮質の萎縮と言うのがある。
ものの本によると、外用剤の場合は1日10gとか、よほどの大量でない限りそんな事は起きないという。
ただ、外用剤の使用でも、副腎皮質の機能の抑制が起こっている、というのは何度か聞いた事がある。
ステロイド皮膚症という言葉もある。ステロイドの益より害(副作用?)が勝ってきた状態と、ごく文学的に今の所、解しているが、この言葉の厳密な定義もまだ見た事はない。
私が経験した事も、副作用だったと診断できるものなのか、良く分からない。
ただ、上記の副作用の項目を見ていても、私がステロイドを何年も使用して感じていた、皮膚が少し掻いただけですぐ崩れる、すぐかぶれる、過敏になる、と言うような事は、ステロイドの作用だったのではないか、と思える。
ステロイド内服が、IgE産生を増加させることから、外用剤にも当てはまるのではないかという説とも、符合する。
ステロイドを塗っていた額が真っ赤になっていたのは、ステロイド酒さだろう。これは分かり易い。
それにしても、この副作用の項目を見ても、乾皮症とか、なんだかアトピーと似たようなのが多い。どうやって区別するのだろうか。
ここでは、上記のような狭い意味での副作用ではなく、広い意味でのステロイドの弊害という意味で考えていきたい。
【ステロイドの問題点】
狭い意味での害(副作用)以外のステロイドの問題点は、先に書いた事と重複するが、
○アトピーを治す薬ではなく、抑えているだけである
○長期に使うのは避けるべき薬であるが、そもそもアトピーの定義は長期疾患である事を含む
○アトピーを余計に難治化させている(ステロイド皮膚症)
○長期使用で効果が薄れてくる
○効かなくても、やめると悪化するのでやめられない(ステロイド依存症)
○やめると、元の状態より悪くなる
○長期使用の後やめると、リバウンドを引き起こす
○問題点があるにも関わらずインフォームド・コンセントが無い例が多い
という事だと理解している。
さらに、付け加えれば、
○薬の添付書に上記の問題点について、何も記載が無い
事である。リバウンドなど、あれほど酷い症状をもたらすのだから、大きな字で警告を付すべきではないのか。医学的定義では、リバウンドは副作用の範疇に入らないから、書かれないのだろうか。実に非実用的だ。
念のために書いておくが、ステロイド使用者が皆、害を被ると言っているわけではない。数年ステロイドを使用していたが、何とも無かった人、難なくやめる事ができた人、もちろんその後アトピーも治ったという人もかなりの割合いる事は、重々承知である。
だが、害を被った人の割合もかなりなものだろう。その辺りの正確な数字はないが、たとえ数が少ないからといっても無視してもらっては困る。
問題になった非加熱血液製剤でも、感染した人は40%位であったと記憶する。
感染しなかった人もいる、その人たちにとっては血友病の苦痛を軽減する良い薬だ、だから、あれは良い薬だった、と強弁する人がいるだろうか。
【症状の区別】
ステロイドの問題が難しいのは、まず、アトピー性皮膚炎の症状と、ステロイドによる害の症状との見分けがつきにくいという点がある。
というより、ステロイドがアトピーを悪化させる面が害であるなら、この二つは、そもそも区別できない。
ステロイドの害は、患者から見ると、
「アトピーが一向に治らないじゃないか。」
「むしろ悪くなってるじゃないのか。」
「薬を塗らないと、元の症状より悪くなる。」
「何年たっても、薬をやめられない。」
「長期使用した後、やめたら、大変酷い症状になった。(リバウンド)」
というように、アトピーが治らない、アトピー自体が悪化している、かのように見える。
医師にしても同じだろう。顕微鏡で皮膚を見ても、その症状が、アトピーかステロイドの副作用によるのか、区別はつかないと聞いた。
私自身、ステロイドを使用し続けていた19年目まで、ステロイドの害など全く気がつかなかった。もちろん、私を診察していた医師も同様である。激しいリバウンドに見舞われても、まだよく分からなかった。
ステロイドをやめて、何年も経って、すっかり良くなって、「ステロイド治療していた頃より遥かにいい。」という状態が5年も6年も続いて、初めて、自分にとって、ステロイド治療は害の方が大きかった、という確信が持てた。
ステロイドの害は、その症状からというより、その経過によって、やっと判断できるものではないかと私は考えている。あるいは、ステロイドをやめて、初めて分かるとも言える。
しかし、私のような事例は、1980年代から数多く報告されているのだから、今なら、ステロイドを使い始める最初の段階から、予測してしかるべきである。
「多くの症例が離脱後2〜6週でリバウンド現象のピークを迎えている。(略)最終的に多くの症例が離脱前より軽快してくる。そして驚くべき事には、ほとんどで略治状態になってしまう症例がかなり存在するということである。」
「ステロイドの誤用・乱用によって作り上げた一つの病態だけを取り除く事に
よって奇麗になる方は、成人型アトピー性皮膚炎の50〜70%にのぼる」
【見ていない】
信じられない事だが、いまだに「自分はステロイド治療で悪くなった患者を診た事がない。自分の言う通り使用していれば問題ないのだ。」と言う医者がいる。
私の場合、ステロイドを自動販売機のように出すしか能の無い医者には見切りをつけ、その後二度と行っていない。その医者には、リバウンドの症状も、その後すっかり良くなった状態も見せていない。その医者の勉強のために、わざわざ見せに行ってあげる気持ちにはならなかった。今でも、この医者と同じ事を言ってるかもしれない。
私を診ていた医者にすれば、「19年間もステロイドを塗り続けていて、何の問題も無かった。」「ステロイドのおかげで、アトピーをコントロールしていた。」「ステロイドは医者(自分)の言う通り使用していれば安全だ。」という事になるのだろう。
しかし、患者の私から見れば、「19年間もステロイドを塗っていて、少しも良くならない。」さらに、「30年間の経過から判断して、自分にとって、ステロイド治療は害の方が大きかった。」となる。
一般に、患者は悪くなっても、文句を言いにわざわざその医者に文句を言いに行かない。黙って去るだけである。
アトピーの経過は、長年にわたる事が多く、変化もゆっくりであるため、目の前に見ていても良く分からない面もあるのかもしれない。さらに普通の医者は「その後」を知らない。
私自身、ステロイド薬害の確信を持ったのは、なんと、ステロイド使用し始めて25年(止めてから5年)も経ってからである。
しかし、現在は、文献を読めば、ある程度、判断・解釈・予測できるはずだ。専門家を名乗るなら、できて当然ではないか。
たとえ、自分がそれを目撃していなくても、そういう患者がいる事を知らないとは、もう言えないはずである。
患者達の声を、真摯に受け止めて欲しい。
「アトピっ子地球の子ネットワークに寄せられる相談電話のうち、(中略)半数は成人型のアトピーの人からのものです。そのうちの8割近くの人が、ステロイド外用剤の連用による副作用や、突然に中止したためにおこるリバウンドの後遺症に苦しんでいます。」
【コントロール】
「ステロイド外用剤で、アトピーをコントロールしている」というのも、しばしば見かける表現だ。
「コントロール」というと、さも自由自在に良い状態を保っているような印象を与える。
実際は、ある程度以上酷くならないにしても、いつも痒くてちっとも治らない状態が、ずっーと続いている事だったりするのではないか。
しかも、薬をやめれば酷いリバウンドに見舞われる。そうすると、「患者が勝手に薬をやめるから悪いのだ。」と言うのである。
そんな、梯子を外された塀の上をフラフラ歩いているような状態を、「コントロール」している等と自慢できるのだろうか。勝手にやめてはいけないのなら、永久に塗っていろと言うのだろうか。
ずっと塗り続ける事ができる程の安全性が、ステロイドにあると言う気か。
どの様にステロイドをやめるのか最初から説明し、ステロイドをやめても大丈夫な所まで実際に指導して始めて、少なくとも「上手にステロイドを使った」と自慢できるのではないか。
実際、止める事を前提としたステロイドの使い方を書いている医師もいる。
それなら、私にもまだ理解できる。
ともかく、「慢性病をコントロールしていく」というのは、「治せません」と同義であると、私は理解している。
以前は、ステロイドの問題が出てきたのは、薬局で買ったり、医者の指示に従わず「患者が勝手に使用したからだ。」という事を書いている医者がよくいた。
だが実際は、私も含めて、そのほとんどは病院で薬をもらい、医師の指示どおりに使用していた患者が多い。
「かつてステロイド酒さや口囲皮膚炎の多くなった理由として、ステロイド軟膏市販の問題があげられたことがあるが、われわれの調査では、むしろ皮膚科医の使用、処方によるものが大部分であった。」
最近は「患者が勝手に使用したからだ。」とはさすがに言えなくなったのか、今度は「患者が勝手にやめたからだ。」と言い出す医者がいる。やれやれである。
勝手にやめるのが悪いと言うなら、あらかじめ、
「この薬は、やめると化け物みたいになって、全身ずるずるになって、のたうちまわるほど痒くて苦しくて、大変な事になるから、絶対やめないで下さいね。」
と、患者によーく説明しておくべきだろう。
いや、それ以前に、やめればリバウンド必定という段階にまでステロイドを使用するのが間違いなのではないか。
そういう状態であっても安全に止める方法があるのなら、それを説明すれば良いだろう。
「○ヶ月のうちに、このように減らして、最終的にやめる計画です。計画どおりしないとうまく行かないから、医師の指示どおり塗って下さい。」
とか。
(私は計画どおりうまく行くのか知らないが、本にはそういう風に書いてある。)
だいたい、安全に降りれる階段があると示されるなら、わざわざ好き好んで、大怪我覚悟で、高い塀から飛び降りる物好きはいない。
いつまでも、「○○ちゃんが悪い。ボク悪くないもん。」みたいな事を言ってないで、ステロイドのもっと詳細な作用とその出現期間とか、ステロイドを塗り続けた皮膚がどうなってるか、副腎皮質機能がどうなっているか、免疫との関係とか、
専門家らしい議論をして欲しいものだ。【専門医以外の医者が……】
今まで専門医以外の医者が、間違った使い方をしていたから、問題を起こしただけで、専門医が正しく使えば、ステロイドは何の問題もない、というのも、良く聞く。
私は、医学生ではないから、医大の教科書に何が書いてあったのか知らないが、1970年代は、「アトピーは大人になれば治る。」「外用剤は、内服剤と違って安全だ。」程度の事しか書いてなかったのではないか。専門医の方々もそう考えていたのではないか。
現在騒がれているような、ステロイド問題点について、書かれた文献が、当時既にあったのなら、是非教えて欲しい。
【ステロイド恐怖症】
この語もよく見かける。だから、なんの気無く使っている人も多いだろう。そういう人を、いちいち批判するつもりはない。
リバウンドの経験を「恐ろしい」「恐怖の体験」と表現しているのを何度か見た事がある。
なぜ「辛かった」とか「痛かった」ではないか、わかるだろうか。そんな言葉を越えるほどの激しい症状が出るのである。信じられないような経験をするからである。「底のない地獄」と表現した人もいる。
私は、ステロイド恐怖症だ。
離脱後約5年くらいの頃だろうか。あるお年寄りに、「そこにあるチューブ取って、ちょっと塗ってちょうだい。」と頼まれた。普通なら何でもない事である。
しかし、それは、ステロイドだった。すぐには手に取れなかった。お年寄りに事情を長々と話す訳にも行かない。無理に手に取った。
その時、手が震えた。自分でも驚いた。
お年寄りに塗ってあげた後、バカバカしいとは分かっていながら、水道に飛んで行って、ゴシゴシと手を洗わずにはいられなかった。
いったい、どれほどの事を経験すれば、人間の身体はこんな反応を示すのだろうか。
過去に、ステロイド恐怖症を起こしてしかるべき事例が、数多くあったのである。
ステロイド恐怖症になるには、それだけの理由があるのである。
恐怖症になるのは、リバウンド経験者だけではない。
先に私は、ステロイド使用中の様子を、高い塀の上を歩いている事に喩えた。その塀はどこまでも続いているわけもなく、また、けして堅牢な物とは言えない。一日や二日歩いていても気づきはしないが、ある部分から先は、内部からボロボロと腐食しているかもしれないのである………。
この塀の上を歩き続けている事が恐怖でなくて何であろう。しかも塀の下には地獄が待っているのだ。
患者が、医師より、薬の危険性に過敏であるのは当たり前だ。傷つき苦しむのは、患者だけである。失敗しても、医師もマスコミも、痛くも痒くも無い。危険性を考慮する真剣さが違うのは当たり前だ。
人に投与するのと、自分の身体で試すのでは、雲泥の差がある。他人事には、鈍感になるのは仕方ないかもしれない。
しかし、「ステロイド恐怖症」というような揶揄するような言葉で、問題を故意に矮小化する事は、やめるべきだ。
【桃の木畑】
リバウンドがようやく収まった頃、ある桃の木畑を訪ねた事がある。
その持ち主は、無農薬栽培がしたかったのだが、事情で、まず、普通の農薬を使っている桃の木畑を譲り受けた。
そして、農薬を一切使うのをやめた。
すると、とたんに病虫害が大発生し、それは無残な姿になった。まともな実は一つもならず、全て腐って落ちた。それでも、そのまま放置していたのだそうだ。
ところが、2〜3年経つと、何もしないのに桃の木は徐々に回復し、小さくて奇麗な実をつけるようになった。すがすがしい甘さのおいしい実だった。
元々、農薬は病虫害を治す、あるいは防ぐつもりで使用しているはずのものだ。しかし、深層では、逆に病虫害に弱い状態を作り出すという、パラドキシカルな状況が進行していたのである。
それは、農薬をやめて初めて、表面化し、目に見えるようになったのである。
あまりにも、アトピーとステロイドの関係にそっくりで、深く印象に残っている。
【判断はあなたが】
これまで、ステロイドの問題点をいろいろ書いた。
しかし、念を押しておきたいが、けして、人に「ステロイドは使うべきではない。」という趣旨ではない。そんな資格は私には無い。
まず、既にあなたがステロイドをたっぷり使っているなら、私の文章を読んで慌ててやめたら、酷いリバウンドに襲われる可能性が高いので、注意して欲しい。白内障の危険もある。
脱ステロイドを試みるなら、先に十分知識を持ってからにして欲しい。
8年前の私の時は、ほとんど情報も無かったが、今なら、情報収集はかなりできるし、脱ステロイドに経験豊富な医師を探す事も可能だ。離脱の苦痛を軽減する方法もそれなりにある。
アトピーは近年の環境悪化や食事の変化などの影響で、ステロイド以外の要因からも、重症化・難治化しているというも面ある。
実際、ステロイドを使わなくても、重症になっている人はいる。
また、ステロイドをやめれば、誰もがアトピーが治るというわけでもない。
ステロイドを使わないなら、それ以外の何かが必要になってくる。
その「何か」も、これでアトピーが治ると保証できるものはない。
ステロイドの使用方法も、間歇法(3日塗ったら2週間休む等)のように、過去の失敗を踏まえて、以前とは違う方法を提唱している医師もいる。
ただし、「アトビーにステロイドは使うべきでない。」と断言する医師もいる事を申し添えておく。
ただ、私は自分の経験した事、自分が感じた事しか書けない。そこから何を汲み取るかは、あなた自身で判断して欲しい。