Tim's filmograpfy

我が銀幕のティム・ロス

  宮廷料理人ヴァテール(2000)

last update:04/01/31


● 作品データ ●
原題 VATEL
上映時間 118分
製作 フランス/イギリス
日本ヘラルド映画
日本初公開 2000/11/04
ジャンル ドラマ
   

あなたが歴史に残るのは  愛なのか 誇りなのか。

監督・製作 ローランド・ジョフィ Roland Joffe
脚本 ジャンヌ・ラブリューネ Jeanne Labrune
トム・ストッパード Tom Stoppard (英語版)
撮影 ロベール・フレース Robert Fraisse
音楽 エンニオ・モリコーネ Ennio Morricone
衣装 イヴォンヌ・サシノー・ド・ネール
● 出演者リスト ●
フランソワ・ヴァテール ジェラール・ドパルデュー Gerard Depardieu
アンヌ・ド・モントージェ ユマ・サーマン Uma Thurman
ローザン侯爵 ティム・ロス Tim Roth
コンデ大公 ジュリアン・グローヴァー Julian Glover
ルイ14世 ジュリアン・サンズ Julian Sands
グルヴィル ティモシー・スポール Timothy Spall
王弟オルレアン公フィリップ マーレイ・ラクラン・ヤング Murray Lachlan Young
財務長官コルベール ハイウェル・ベネット Hywel Bennett
医師ブルドゥロ リチャード・グリフィス Richard Griffiths
コンデ公妃 アリエル・ドンバール Arielle Dombasle
ロングヴィル公夫人 フィリピーヌ・ルロワ=ボリュー Phillippine Leroy-Beaulieu
アテナイ・ド・モンテスパン マリーヌ・デルテルム Marine Delterme
エフィア侯爵 ジェローム・プラドン Jerome Pradon
王妃マリー=テレーズ ナタリー・セルダ Nathalie Cerda
ルイーズ・ド・ラ=ヴァリエール エミリー・オアナ Emilie Ohana
ロシュフォール パトリック・サヴォリオーニ Patrick Saverioni
ロングヴィル公 ジェームズ・ティエレイ James Thierree

あの「キリング・フィールド」の、あの「ミッション」の巨匠ローランド・ジョフィが
フランスの大御所ジェラール・ドパルデューを主役に迎えて贈る史劇。

フランス映画としては当時最高額を投じてゼータクに撮られた作品ですが
どうも日本人の観客にはほとんどそのよさがわからなかったようで、
宮廷の極楽美食ライフが見られると期待していった観客が大半だった模様。
ジョフィのこれまでを考えれば、それこそ『仮面の男』のような話であるわきゃ
ないというのはわかりそうなもんなんですがねぇ……。

ある意味、ヨーロッパの封建体制・階級社会の理不尽さ、それを集めて凝縮した
ようなフランス・ブルボン王朝のアンシャンレジームの最盛期を映像にしたような
物語。でも、そこらについて予備知識のない人にはつらいかも。

人間関係や時代背景といったことが判っているかいないかで、ストーリーの理解が
相当変わってくるはず。例えば最低でも主人公ヴァテールの《前の主人》のことは
知っておいた方がいいかも。また物語の背景には、フランス宮廷の内紛・
フロンドの乱があって、《負け組》コンデ大公一派と、《勝ち組》ルイ14世派の
勢力図があることも。
実を言えば、劇中ローザンに言い寄られるロングヴィル公爵夫人は、コンデ大公の
実のきょうだい。国王のご機嫌を損じれば我が身が危うい彼女の立場が
あのローザンの申し出を断れない状況を生み出している。また、その立場を
知っていて、そこに付けこむローザンの性格の悪さも窺い知れるというもの。

でも、予備知識がなくたって、見てれば、どうして後にフランス革命が起こったか
わかるのでは? よーするに、ヴァテールのように人間性を阻害される例が
この後120年も延々続いたら、いーかげん庶民もキレるってことですよ!

だとしても、バブルの時代、あのエセ美食の時代のあとの日本で公開されたのは
この作品にとって不幸だったかもしれません。

とはいうものの…上述したようなことはあくまで私の解釈にすぎず、
仮にこの話のテーマが「封建主義に翻弄される人間性」とか
「封建制vs近代の本人主義」みたいなものだったとしても、監督の描き方が
妥当だったとはいいがたい…いや、はっきりいってパッとしません、この話。
それは過去のきらきらしいジョフィ監督の仕事ぶりを考えると、いかにも物足りない。
ま、来日時の監督インタヴューを聞いたのですが、かなりヴァテルという人物に
入れ込んでたみたいですねぇ、ジョフィ監督ったら…入れ込みすぎたのかなぁ。

さて「王は踊る」も、ルイ14世治世の同じ頃の話なので、見てみるのもいいかも。
人物や時代の描き方がちょっと違ってて面白いですが、何よりポイントなのは
この時代、芸術家とはルイ14世を飾り立てるために機能してこそ、ということが
いえるんですね。思い返してください。この話の中でのヴァテルの台詞を。
「ただの仕事であっても、つきつめれば芸術にもなりうる」といった彼の台詞…
彼の考えは現代でこそ当たり前ですが、絶対的な権力者である王が第一という
時代にあっては許されず、また貫き通すことも難しいポリシーだったんですよね。
● この作品におけるティム ●
勤勉で誇り高いヴァテール、その彼に一目で反感を抱く貴族ローザン侯爵がティムの役。
見下したり反感だけならともかく、命さえ奪おうとするんだから、フランス宮廷貴族の見本のような…

いや実に、このローザンて「あいつ、気にくわねぇ」とイジメを働く今時の子供と同じなんですわ。で、上で書いたことですが、ロングヴィル公爵夫人との一件を見れば、女の弱みに付けこむなんだかサイテーの男ということもいえそう。あ、よく考えたら、アンヌをものにしたのも同じだ!
うっわ〜、ヤな男っす〜。

ああ、なんでティムがこんな役を、と思う一方で、恐らく、人間がありのままでのびやかに行動できず、阻害され迫害されている現状について、理解しているからこそ、人間性迫害の告発がテーマの一つであろうこの話で、その主題のためにあえて憎まれ役を引き受けたんじゃないか……私はそんな風に思います。

とはいうものの、正直、この役、別にティムでなくっとも…と思っちゃうんだな、私は。
脚本が悪いのか、監督が悪いのか、ティムの演技が悪いのか、わかりませんが、精彩に欠ける。あの『ロブ・ロイ』におけるアーチーボルト・カニンガムのような存在感を期待すると肩透かしをくらいます。ましてや『レザボア』や『パルプ』の作品のようなティムが好きな方にはおすすめしません。『コックと泥棒、その妻と愛人』のような脇役でも目が吸いつけられるような存在感とは雲泥の差です。うううむ、ジョフィ監督との仕事で、何でこうなっちゃったんだ?!

あと、史実でも、このローザン侯爵って、ルイ14世治下の名うてのプレイボーイだったそうで、そこのところは劇中では、ユマ演じるアンナを口説く辺りで匂わされるだけでしたが、そんなプレイボーイをティムが演じたというのも、歴史好きとしてはなかなか面白いものがありました。(しかし、このローザンて『アンジェリク』に出てくるローザンと同一人物なのかなぁ、ううむ)

また、彼のナレーションで物語が幕を開ける、というのは、なんともファンには嬉しい限り。
● 出演こぼれ話 ●
 食事 パンフレットに紹介されている話ですが、
フランスでの撮影中、ティムの印象に残ったのは
なんといっても《食事》だったとのこと。

「あんなによく食べる国は知らないし、
あんなに大勢の人が食べる光景も見たことがない。
セットでは毎日、すごい量の昼食が出された。
フランスでの仕事がすっかり気に入ったよ。」


ううむ、なんとなくティムって食べ物に執着しない人
みたいな印象があるんで、これも揶揄すれすれの
ジョークなのかとか思っちゃうんですが、
でも、牡牛座生まれのティム、牡牛座ってのは
暮らしの中の快適なもの、例えばおいしい食事とか
大好きだったりする。となると
案外、ティム、本気でそう思ってたりして……

● 映画祭歴 ●
2000.05.10 カンヌ国際映画祭 オープニング
2001.02.09 ベルリン国際映画祭
2001.03.10 Mar del Plata Film Festival(アルゼンチン)
● 受賞歴 ●
米国アカデミー賞
2000年第73回
美術賞 ノミネート
セザール賞
2001年
プロダクションデザイン賞 受賞
衣装デザイン賞 ノミネート
Camerimage(ポーランド)
2000年
シルバーフロッグ 受賞
ゴールドフロッグノミネート

 

● 関連書籍 ●
「ヴァテル 謎の男、そして美食の誕生」 ドミニク・ミッシェル著  藤田真利子訳
東京創元社 
2001年1月発行 293P 
ISBN: 4-488-01314-7



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