
乳牛の繁殖技術は今や日進月歩であり、ここでは新技術の紹介を交えながら生産性向上のためには酪農家は何をすべきか、シリーズで連載します。
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どんな牛も発情させる魔法の竹トンボ?
「徐放性黄体ホルモン製剤」
最近よく酪農家に行くと牛の陰部から白いシリコンのヒモのようなものがぶらさがっているのを見かけたことはありませんか。今回はそのヒモ付器具のお話です。
実はこれは、牛を簡単に発情に導いてくれる便利な器具、正しくはControlled Internal Drug Release Device(CIDR)と呼ばれる黄体ホルモンの徐放性腟内挿入製剤のことです。一見竹とんぼのように見えるこの器具を専用のアプリケーターによって牛の腟内に挿入して一定期間保持後、ヒモを引っ張って除去すると4日間以内に90%近くの牛が発情すると言われています。
CIDR(イージーブリード)販売、家畜改良事業団
原理はCIDRを1週間程度挿入すると腟内で黄体ホルモン(プロゲステロン、P)が徐々に放出されて、人為的に牛性周期中のP濃度を1ng/ml以下のレベルに下げないように維持することにより(E/P比が高いまま推移するので)、発情は発現せずに抑制され、CIDR除去により急激なP値の減少が起こり発情が発現するというものです。
CIDRを専用のアプリケーターにセット、膣内に挿入するので装着は衛生的に行う。ホルモンが手に付着するので必ず手袋を着用すること。
外陰部は洗浄・消毒後にアプリケータを用いて膣内に挿入、この時に入れにくいようであれば、外科処置用ゼリーを小量塗布したり、腟鏡を使用すると良い。
挿入後はこのような状態となる。CIDRを除去する時はこのヒモをゆっくりひっぱる。
このCIDRのメリットは、畜主が簡単に処置できて、性周期中のいずれの時期にも使用が可能であり、任意の日に発情を起こさせることから、定時授精や受精卵移植の同期化処置、発情不明瞭牛への応用が期待されています。
また、デメリットとしてはやや価格が高いことと、一部の牛では脱落したり、取り扱いによっては腟炎を起こすことがあると言われています。また、1週間以上挿入すると結果的に排卵されないで維持されたままでいる卵子の老化が進み卵質が劣化することによる受胎への悪影響を懸念する声もあり、それを防ぐには長くても1週間以内に除去した方が良いと言われています。
いずれにしても、新しい発情誘起へのアプローチ製剤として牛の繁殖領域に大きく貢献することに間違いはなさそうです。一度使用してみてはいかがですか?
次回は「CIDRの受精卵移植技術への応用、
新しい過剰排卵処理方法」です。お楽しみに…
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