その5:いよいよ競馬場へ


かつて世界中にユニオンジャックを掲げ七つの海を制覇した大英帝国。その帝国国民は世界中どこへ行っても二つのものを作ったといわれる。一つはゴルフ場、そしてもう一つは競馬場。現在でこそ中華人民共和国香港特別行政区だがかつてはれっきとした英国領であった香港。この香港にも当然のごとく競馬場を作った。その旧大英帝国領の面影を残す香港競馬にいよいよ乗り込む。現在の香港で最もイギリスの面影を残している場所の一つが競馬場ではなかろうか。

前夜、翌日の競馬場参戦を目の前にしてレース検討をしているとそのまま寝てしまった。目が覚めると目の前に赤ペン。香港まで行ってもやはり予想には赤ペンを使う癖は抜けない。癖というか、予想は赤ペンでするものという習性だ。相変わらず日の当たらないホテルの部屋は暗い。時計を見ると朝にはなっているようなので、新聞購入のために外へ出る。尖沙咀の朝はどんよりと曇っていた。彌敦道も心なしか暗い。前日マカオのカジノで負けた私の心を象徴するようだ。新聞を購入し、近くの公園で広げる。そこの競馬欄に書かれていたのは「空中聖戰 健康的理由 退出」こうしてエアジハード出走取り消しを知る。おそらく日本にいた方がこの情報は早く入手できたのではなかろうか。前夜も香港版松本憲二みたいな人が調教解説をしているような番組を見ていたのだが、それでも全然わからなかったもん。海外遠征の際は情報入手が難儀であるという教訓を得た。

昨夜も一緒に香港観光をしたSさん夫婦と合流。Sさん夫婦は私が宿泊している日も当たらない安宿と違ってちゃんとしたホテルに泊まっている。それだけでもゆっくり眠れていいだろうなぁと思う。部屋にゴキブリも出ないだろうし。朝食に香港らしくお粥を食べ、いよいよ沙田競馬場に向かう。香港には香港島のハッピーバレー競馬場と新界の沙田競馬場と二つの競馬場がある。沙田競馬場は郊外のベットタウンにあり、感覚的には東京競馬場のような感じ。一方のハッピーバレー競馬場は都心の高層ビルとマンションに囲まれた中にある。ちなみに、香港の国際レースはすべて、重賞もほとんどはここ沙田競馬場で行われる。
1Rの発走2時間ほど前に競馬場に到着。日本だと競馬場に到着すればどこでも競馬新聞を売っているものだが、ここ香港では現場ではそういう類いのものは一切売っていない。だから前もって忘れずに購入しておく必要がある。どうせ英語と広東語なのだから解読にも時間がかかるし、日本でも私は前日に新聞を購入するのでそのあたりは抜かりはない。パスポートを提示して会員席に入る。香港の競馬場には一般席と会員席があり、国外からの旅行者はパスポートを提示すると会員席に入れる。会員席は50香港ドルと値は張るもののゴール板正面にあり、ここに入らないとゴール前の攻防は見られない。一般席は一般席で地元のオヤジとの交流もあるだろうが、会員席から一般席に行くことは可能なのでここは奮発して会員席に入ることをお勧めする。

スタンドに向かう途中、パドックの脇を通る。パドックではバグパイプの楽団がリハーサルを行っている。このあたりがさすが英国風である。会員席と一般席が明確に区別されているのも英国風だしね。これでブックメーカーがいれば完全に英国競馬のノリなのだろうが。そういえば街中を歩いている時から常に思っていたが、植民地香港の中国への返還という歴史的出来事から2年半、政治的にはともかくそれ以外の面では表面的には思ったほど変わっていないというのが正直な感想だ。競馬場に限らずすべての面で。元々市民生活自体はそれほどイギリスの影響を受けていなかったというせいもあるが。
レーシングプログラムを購入する。日本と違って有料なのだ。有料だけあって日本のものよりも情報量は多い。全馬について過去5戦の成績が掲載されている。早目に行かないと売り切れるようなので、入手したい方はお早めにどうぞ。とはいっても1Rの発走が午後1時だからそれほど早起きする必要もないが。それからお勧めはグッズショップ。いや、グッズショップ自体はごくありきたりのものでそれほどたいした物を売っているわけではないのだが、ここのバスタオルがいい。値段は130ドルくらいだからたいして高くはないのだが、高級ホテルで使われているような生地の厚いタオルだ。私もごくまれに高級ホテルに宿泊することがあるが、そういう時って思わずバスタオルを持ち帰りたくなることがある。フロントに問い合わせると数千円すると言われたりして購入も持ち帰りも断念するのだが。このグッズショップで購入したバスタオルは今も我が家で愛用している。もう一枚買ってくればよかったと思うくらいだ。

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